第 6 章 解析例 1 (脳動脈瘤の病態解明)
6.4 結果
6.4.1 定性的観察
図6.4に、ブレブ発生前後の血流シミュレーションの結果を示す。ポスト処理において、流 線による流れ場の観察、流速等値面による流入血流の観察、壁面せん断応力および圧力(入り 口からの差圧)のコンター面による血流が壁に及ぼす影響の観察を行った。なお、全ての画像 は、心収縮期における計算結果を可視化したものである。
脳動脈瘤壁のうち、将来にブレブとなり、その後、増大をきたしてくる部位に対して、流入 血流が一直線に衝突している。衝突部位においては、壁面せん断応力および圧力の上昇を認め る。差圧の拍動性変化を調べてみたところ、ブレブの発生・増大部位においては、他の部分に 比べて大きな拍動性変化が認められた。
Fig 6.4: Results of hemodynamic simulation at the baseline (upper row: A-1, B-1, C-1, D-1, and E-1) and at the first follow-up (lower row: A-2, B-2, C-2, D-2, and E-2). A-1 and A-2, streamlines colored by velocity. B-1 and B-2, iso-velocity surfaces. C-1 and C-2, contour maps of pressure. D-1 and D-2, contour maps of wall shear stress. All four images were captured at peak systolic phase (indicated by black arrows in E-1 and E-2). Blood inflow impinged on two sites: the right side of the aneurysmal body (arrowheads) and the tip of the aneurysm (black arrow). E-1 and E-2, graphs showing three variables of pressure:
pressure at the aneurysmal tip, mean pressure of the daughter sac, and the mean pressure of the dome except for the daughter sac.
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6.4.2 MRA所見との比較
図6.5に、心収縮期における流速の等値面を呈示する。図4.1のMRAで認められたジェッ ト状の流入血流が、血流シミュレーションによって再現されていることが確認された。また、
動脈瘤入り口の狭窄部位で加速された血流が、ブレブ発生位置に衝突していることが分かった。
6.4.3 周囲組織との関係
図6.6に、この脳動脈瘤と周囲の脳組織との関係を示す。脳動脈瘤の右側の壁は海馬鉤に接 している。図6.4に示すとおり、この部位も流入血流の影響を受けている部位であるが、経過 中に増大してくることはなかった。
Fig 6.5:
Surface images created by the velocity of 1.2 m/s. Note the inflow jet inside the
aneurysm which was observed in the magnetic resonance angiography.
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Figure 6.6: Enhanced T1 weighted images showing perianeurysmal structures. The aneurysm was segmented and colored red to demonstrate the positional relation between the aneurysm and the surrounding tissue. Note that the right side of the aneurysmal body contacted with uncus (white circles).
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6.5 考察
本症例に対する血流シミュレーション結果から、以下の 3 つが示唆された。すなわち、流入 血流の衝突がブレブ形成の原因の一つであること、そのような血流衝突部位では圧力の拍動性 変化が大きいこと、脳動脈瘤の成長には周囲組織が関係していることである。
流入血流がブレブ形成の一因であることを支持する 2 つの先行報告がある。Cebral らは、
20 個の脳動脈瘤について CFD による血流シミュレーションを行い、ブレブが、流入血流が動 脈瘤から流出していくまでの主流上に存在することを見出した [5]。Russell らは、27 個の脳 動脈瘤について同様の CFD 研究を行い、Cebral らが報告した結果を追認している [6]。また、
最近の報告では、血流が脳動脈瘤壁に及ぼす圧力が高い部位に、壁のひはく化が起きる可能性 が報告されている。
脳動脈瘤の成長と周囲組織との関係については、Sforza らによる少数例の報告にとどまる。
脳動脈瘤の周囲には脳組織、脳神経、骨が存在する。血管外にある生体組織の影響については、
今後の検討課題であろう。
6.6 結言
流入血流に起因するブレブ発生・増大を認めた脳動脈瘤の一例について、血流シミュレーシ ョンの結果を呈示した。血流シミュレーション結果は、MRA 所見と合致していた。血流シミュ レーションは、血流が脳動脈瘤の自然歴に及ぼす影響について検討する有力な手段であること が示唆された。