第5章 外気導入を考慮した変風量方式
5.4 シミュレーション結果
5.4.3 行過ぎ量最大時の居住域温度
人体負荷立上がり時における行過ぎ量最大時の居住域温度を表 5 - 6 に示す.行 過ぎ量が最大となるのは開演直後であり,C O 2 濃度が低い状態であるため吹出し 風量は温度制御により決定される.よって,C O2濃度制御を考慮しない F M - P I D 制 御( 表 4 - 1 2 ) と同様の傾向を示し,2 ケースにおいて一時的な許容値を超えている.
5.4.4 CO2濃度
各モードにおける温度センサー a の居住域 C O2濃度を図 5 - 8 ~図 5 - 1 0 に示す.
モード A ( 図 5 - 8 ) では,開場時間である 1 2 0 m i n から C O2濃度が増加し,C O2セン サー濃度は 2 1 0 m i n 付近で最大値約 9 0 0 p p m となる.居住域最高 C O2濃度は 2 2 0 m i n 付近で最大値となり,1 , 0 0 0 p p m をわずかに超える.その後 C O2濃度は徐々に減少 する.居住域最低 C O2濃度が 2 1 0 m i n 付近で低くなるのは吹出し温度が冷房に切替 わった際( 図 5 - 3 参照)に気流が下降し,スタンド上部の C O2濃度が一時的に減少 するためである.その後等温から暖房へ移行するため元の 状態に戻っている.
モード B( 図 5- 9) では開場と同時に CO2濃度が急上昇し,約 18 0mi n で最大となっ
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
時間 [min]
CO2濃度 [ppm]
Csns Crmin Crmax
図 5 - 8 モード A ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した FM-PID 制御の CO2濃度
( CO2センサー濃度 Csns,居住域最低 CO2濃度 Crmin,居住域最高 CO2濃度 Crmax)
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
時間 [min]
CO2濃度 [ppm]
Csns Crmin Crmax
図 5 - 9 モード B ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した FM-PID 制御の CO2濃度
( CO2センサー濃度 Csns,居住域最低 CO
2濃度 Crmin,居住域最高 CO
2濃度 Crmax)
た後は人員が減少するまで一定の濃度となっている.人員数,吹出し風量が一定 である( 図 5 - 4 参照) ことから定常に達したといえる.定常時,居住域最高 C O2濃 度の最大値は 1 , 0 0 0 をわずかに超えている.本制御対象における吹出し風量は換 気量確保の観点から一人当たり 2 5 m3/ h としており,これは通常の設計値である.
このとき,瞬時一様拡散(完全混合)を仮定した定常状態での濃度は約 9 0 0 p p m と なることから,空間の C O2濃度分布が不均一なことが 1 , 0 0 0 p p m を超えた原因であ る.居住域に限定した場合,空間的な濃度差は約 2 0 0 p p m となっている.
モード C(図 5-10)は,モード A とモード C の中間的な性状を示し,CO2濃度は 190 から 2 0 0 m i n で最大となる.最大 C O2濃度は 1 , 0 0 0 p p m 以下である.
表 5 - 6 に各ケースにおける C O2濃度最大時の,C O2センサー濃度,C O2最小・最 大値を示す.表に示すとおり,温度センサー位置による差はほとんどない.また,
居住域の濃度分布差はモード A とモード C が 1 0 0p p m ,モード B が 2 0 0p p m となって おり,居住域が大きいほど濃度分布差 が大となる傾向を示す.
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
時間 [min]
CO2濃度 [ppm]
Csns Crmin Crmax
図 5 - 1 0 モード C ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した FM-PID 制御の CO2濃度
( CO2センサー濃度 Csns,居住域最低 CO2濃度 Crmin,居住域最高 CO2濃度 Crmax)
表 5 - 6 各ケースにおける C O2濃度最大時の C O2センサー濃度、C O2最小・最大濃度
RA 最小 最大 RA 最小 最大 RA 最小 最大
モードA 877 909 1,004 881 909 1,010 881 910 1,011
モードB 920 805 1,031 920 812 1,033 924 809 1,034
モードC 891 891 987 894 894 990 890 890 987 温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw
(a)0.5min(空調開始) (b)60min(予熱中)
(c)120min(予熱終了、開場) (d)150min(開演)
(e)210min(興業中) (f)270min(興業終了)
(g)300min(人員減終了) (f)360min(人員 33%)
CO2濃度 [ppm]
1,200
1,000
800
600
400
図 5 - 1 1 モード A ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した F M - P I D 制御の温度分布・風速ベクトル
次に 各モードにおける温度センサー a での時間別断面 C O 2 濃度分布をそれぞ れ図 5 -1 1 ~ 5 -1 3 に示す.
モード A ( 図 5 - 1 1 ) において,開演時の C O2濃度は 5 0 0 p p m 程度であり,その後は C O2 濃度上昇と外気の導入により,室内全体で均一な分布となっている.
(a)0.5min(空調開始) (b)60min(予熱中)
(c)120min(予熱終了、開場) (d)150min(開演)
(e)210min(興業中) (f)270min(興業終了)
(g)300min(人員減終了) (f)360min(人員 33%)
CO2濃度 [ppm]
1,200
1,000
800
600
400
図 5 - 1 2 モード B ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した F M - P I D 制御の温度分布・風速ベクトル
モード B ( 図 5 - 1 2 ) では,開演時の C O2濃度は 6 0 0 p p m 超であり,興業中はスタン ド部で濃度が低く,アリーナ部で高い分布となる.これは新鮮外気が吹出し口か ら供給され,冷房であるために下降気流となって直接スタンドへ到達しているた めで ある .
(a)0.5min(空調開始) (b)60min(予熱中)
(c)120min(予熱終了、開場) (d)150min(開演)
(e)210min(興業中) (f)270min(興業終了)
(g)300min(人員減終了) (f)360min(人員 33%)
CO2濃度 [ppm]
1,200
1,000
800
600
400
図 5 - 1 3 モード C ・温度センサー a における C O2濃度制御を考慮した F M - P I D 制御の温度分布・風速ベクトル
モード C ( 図 5 - 1 3 ) での開演時の C O2濃度は 6 0 0 p p m 弱であり,興業中はモード B と同様にスタンド部で濃度が低くアリーナ部で高くなっているが,C O2 発生量が モード B よりも少ないため,濃度差はモード B ほど大きくはない.しかし,モー ド C の居住域はアリーナ部のみであるため,興業時の居住域 C O2 濃度としてはほ ぼ均一で ある.
冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計 モードA 2 553 555 3 548 551 0 525 525 モードB 14 592 606 11 577 588 3 549 552 モードC 4 581 585 2 577 579 2 571 573
温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw
冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計 モードA 0 590 590 0 586 586 0 587 587 モードB 0 605 605 0 605 605 0 608 608 モードC 0 595 595 0 589 589 0 578 578
温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw
冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計 冷房 暖房 合計
モードA 0 1,516 1,516 0 1,511 1,511 0 1,512 1,512
モードB 0 1,207 1,207 0 1,206 1,206 0 1,211 1,211
モードC 0 1,423 1,423 0 1,414 1,414 0 1,401 1,401
温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw 5 .4 .5 空調エネルギー
V A V 方式で C O2濃度制御を行う F M - P I D 制御シミュレーションによって得られた 空調機コイル負荷を表 5 - 7 に示す.また,C A V 方式で C O2濃度制御を行う F M - P I D 制御における空調機コイル負荷を表 5 - 8 に示す.ただし,C A V 方式で C O2濃度制御 と F M - P I D 制御を連成させた C F D 解析は行っておらず,人員総数に対する必要換気 量( 2 5 m3/ ( h ・ 人) ) から外気負荷を算出し,空調機コイル負荷を求めている.また,
C A V 方式で全外気方式とした F M - P I D 制御における空調機コイル負荷を表 5 - 9 に示 す.表中,青字が冷房負荷,赤字が暖房負荷である.特徴としては V A V 方式では 僅かに冷房負荷が発生しているが,C A V 方式ではすべてのケースで暖房負荷のみ である.室内負荷の観点では,ほとんどのケースが興業時に冷房を行っていたが,
外気導入による冷却効果で空調機コイル負荷としての冷房負荷はほとんどないこ とが分かる.各表より,冷暖房に必要な熱量は C O2濃度制御を行った場合,V A V 方
表 5 - 7 V A V 方式 CO2濃度制御+ F M -P I D 制御時における空調機コイル負荷 [ M J ]
表 5 - 8 C A V 方式 CO2濃度制御+ F M -P I D 制御時における空調機コイル負荷 [ M J ]
表 5 - 9 C A V 方式全外気+ F M - P I D 制御時における空調機コイル負荷 [ M J ]
温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw
モードA 13 11 10
モードB 47 45 44
モードC 21 20 19
式と C A V 方式に大きな差が無いことが分かる.また,C O2濃度制御は全外気方式に 比べ 1 / 3 ~ 1 / 2 の熱量で冷暖房が可能であり,C O2濃度制御の省エネルギー性が確 認できる.なお表中では C O2濃度制御を行った場合,V A V 方式が C A V 方式よりも 0
~ 1 0 % 省エネルギーになっているが,前述したとおり C A V 方式でのコイル負荷は 概算値であるため誤差 の範囲として扱った.
次に V A V 方式で省エネルギーが期待されるファン動力に関して,ファン動力定 格比を表 5 - 1 0 に示す.表に示すように V A V 方式において,モード A では 9 0 %弱,
モード B では 5 0 % 強,モード C では 8 0 % のファン動力を削減できることが分かる.
特に,競技観戦を主目的とする多目的大空間はモード A が主用途であり,V A V 方 式採用による省エネルギ ー効果は高いといえる.
表 5-10 ファン動力定格比 [%]