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第 4 章 変風量方式

4.4  安定性の改善

4.4.2  ファジィ推論部の検証

 ファジィ推論部の安定性を検証するため,センサー温度と居住域平均温度が等 しいとしたファジィモデルを用いた F M - P I D 制御を行う.後件部実数値が存在しな い温度はファジィ推論を行うことになるため,温度場の変化がほぼ線形な関係に あれば F M - P I D 制御は P I D 制御とほぼ等しくなるはずである.

 モード A ,温度センサー a における FM -PI D 制御と PI D 制御の制御シミュレーショ ン結果をそれぞれ図 4 - 6 ,4 - 7 に示す.図に示すように F M - P I D 制御におけるセン サー温度( T s n s ) と居住域平均温度推定値( T r ’) は一致し,吹出し風量,吹出し温 度,居住域平均温度の推移は P I D 制御と同じ結果を示す.

10 14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q

10 14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Q q 図 4 - 6  モード A ・温度センサー a におけるすべての位置の温度を

センサー温度と等しくした F M - P I D 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q)

図 4 - 7  モード A ・温度センサー a における P I D 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,吹出し風量 Q,人員密度 q)

10 14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q

10 14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Q q 図 4 - 8  モード A ・温度センサー w におけるすべての位置の温度を

センサー温度と等しくした F M - P I D 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q)

図 4 - 9  モード A ・温度センサー w における P I D 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,吹出し風量 Q,人員密度 q)

 次に,モード A ,温度センサー w における F M - P I D 制御と P I D 制御の制御シミュ レーション結果をそれぞれ図 4 - 8 ,4 - 9 に示す.前項で吹出し温度が不安定となっ たケースである.図に示すように本ケースにおいても F M - P I D 制御は安定した制御 が行われ,諸量の推移は P I D 制御と等しくなる.

 その他全9ケースとも同様な傾向を示し,F M - P I D 制御におけるセンサー温度と 居住域平均温度推定値の誤差はファジィモデルの入出力データの有効数字の1桁 目( 本計算では 1 / 1 0 0 0 ℃) のオーダーである.

 以上より離散的なデータを線形補間するファジィ推論部が不安定な制御の原因 ではないことが分かり,ファジィモデルの後件部実数値が線形,あるいは少なく ともスムーズな分布であることが制御の安定性に大きく寄与すると考えられる.

最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 モードA 21.1 22.0 23.1 2.0 21.0 22.0 23.1 2.1 21.0 22.0 23.1 2.1 モードB 18.2 22.0 23.2 5.0 18.2 22.0 23.3 5.1 16.0 18.7 19.8 3.8 モードC 21.4 22.1 22.6 1.2 21.3 22.0 22.6 1.3 21.3 22.0 22.6 1.3

温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw 最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 モードA 22.2 23.1 24.3 2.1 21.1 22.1 23.2 2.1 19.6 20.6 21.7 2.1 モードB 17.7 21.3 22.5 4.8 18.5 22.4 23.7 5.2 22.1 27.3 28.6 6.5 モードC 20.8 21.4 22.0 1.2 22.4 23.1 23.7 1.3 24.0 24.7 25.3 1.3

温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw 4 .4. 3 PID 制御における目標値の調整

 ファジィモデルは構造が単純で入出力関係が直感的に把握できることが特徴で あり,F M - P I D 制御において定常値に偏差が生じた場合,ファジィモデルの後件部 出力値を調整することが偏差の改善に有効と考えられる.そこで F M - P I D 制御より も安定性の高い P I D 制御を用いて,定常時の居住域平均温度と設定温度の差を設 定温度に加えた場合の制御シミュレーションを行う.設定温度を 2 2 ℃とした P I D 制御シミュレーション結果を表 4 - 6 に,表 4 - 6 の結果から設定温度を変更した P I D 制御シミュレーション結果を表 4 - 7 に示す.例えば,モード A ,温度センサー a で は表 4 - 6 より興業終了時の居住域平均温度が 2 3 . 1 ℃であることから,設定温度は 20.9℃(=2 2.0+ (22.0 -23. 1))となる.設定温度を変更した場合,居住域平均温度 は 8 ケースで快適制御範囲となる.設定温度を 2 2 ℃とした場合に快適制御条件を 満たすケースが2ケースのみであったことから,大幅に改善されたといえる.ま た,温度分布において快適範囲を満たすケースが 3 ケースから 6 ケースに増えて いるが,各ケースの温度差に関しては設定温度変更前後で差がないことから,こ ちらは居住域平均温度の改善によるものである.快適制御温度にならないモード B ,温度センサー w については,設定温度変更前の居住域平均温度とセンサー温度 の差が 5 . 3 ℃であったのに対し,設定温度変更後は 2 . 0 ℃となっており,温度分布

表 4 - 6  P I D 制御における興業終了時の居住域温度

表 4 - 7  設定室温を変更した P I D 制御における興業終了時の居住域温度

あるいは気流分布が大きく変わ ったことが原因と考えられる.

 以上より,偏差の大きいファジィモデルに対し後件部実数値の変更が有効であ ると示唆 される.

4 .4 .4  ファジィモデルの調整

 F M - P I D 制御の安定性改善と定常偏差縮小を目的にファジィモデルの調整を試み る.調整方法は以下の 通りである.

( 1 ) 安定性を欠く吹出し風量,吹出し温度の後件部実数値に隣接する値を比較し  て著しく増減している場合は,なめらかな値の並びとなるよう補正す る.

( 2 ) 2 7 0 m i n 時点での吹出し風量,吹出し温度のファジィモデル後件部実数値を  偏差がゼロになるように変更する .変更方法は前項と同様とする.

( 3 ) さらに後件部実数値がない場合は線形補間した時に偏差がゼロになるように  隣接する後件部 実数値を変更する .

( 4 ) 以上の調整を制御が安定し,定常偏差が快適制御範囲内になるまで繰り返す.

 変更したファジィモデルを表 4 - 8 ~ 4 - 1 0 に示す.それぞれモード A ,モード B , モード C の場合である.すべての変更は2回の調整で終了した.

表4-8モードAのファジィモデル後件部実数値(訂正部分が調整した値) -5.000.8312.50 -7.55-0.3714.01

表4-9モードBのファジィモデル後件部実数値(訂正部分が調整した値) 0.40 1.40 0.85

-26.800.90

表4-10モードCのファジィモデル後件部実数値(訂正部分が調整した値) -14.202.50 -13.002.20 -10.202.70

4 . 5  制御シミュレーション結果

4 .5. 1 制御性の傾向

 モード A での制御シミュレーション結果にて制御性の傾向を示す.

 温度センサー a でのファジィモデル調整後の制御シミュレーション結果を図 4 -1 0 に示す.温度センサー a ではモデル変更前も安定した制御が行われていたが,

温度センサー c での後件部実数値を調整した影響で,居住域平均温度推定値と居 住域平均温度に差を生じている.なお,モデル変更前の制御シミュレーション結 果は図 4 - 4 を参照されたい.

 温度センサー c でのファジィモデル変更前の制御シミュレーション結果を図 4 -1 -1 に,変更後を図 4 - -1 2 に示す.温度センサー c ではセンサー温度と居住域平均 温度がほぼ等しいにもかかわらず,ファジィモデル変更前は高めの居住域温度推 定値を出力しているため居住域平均温度が設計温度より低くなっている.それに 対し,ファジィモデル調整後は,センサー温度,居住域平均温度推定値,居住域 平均温度がほぼ等しく良好 な制御が行われている.

 温度センサー w でのファジィモデル調整後の制御シミュレーション結果を図 4 -1 3 に示す.ファジィモデル調整前は図 4 - 5 に示すように -1 5 0 m i n 前後と 2 3 0 m i n 前

図 4 - 1 0  モード A ・温度センサー a におけるファジィモデル調整後の FM-P ID 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q) 10

14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q

10 14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q 図 4 - 1 1  モード A ・温度センサー c におけるファジィモデル調整前の

FM-P ID 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q) 10

14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q

図 4 - 1 2  モード A ・温度センサー c におけるファジィモデル調整後の FM-P ID 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q)

後で吹出し温度に著しい振動が見られ,さらに居住域平均温度も設定温度付近と はならず興業終了時( 2 7 0 m i n ) で 1 9 . 1 ℃であった.ファジィモデル調整後は吹出し 温度の振動がなくなり,興業終了時の居住域平均温度が設定温度付近となってい る.居住域平均温度推定値をファジィモデル変更前と比べると,開場後の P I D 制 御から F M - P I D 制御に切り替わる直後の居住域平均温度推定値の上昇幅が抑えら れ,居住域平均温度とほぼ等 しくなっている.

 また,全ケースを通してやや不安定であるのはモード B とモード C における温 度センサー w の2ケースであるが,両ケースとも吹出し温度の振動には改善が見 られず居住域平均温度に関してのみ改善している.振動は吹出し温度が大きく変

4 . 5 . 2  居住域温度定常値

 興業時において室温が最も安定する 2 7 0 m i n での居住域平均温度,居住域での最 小・最大温度に関して,ファジィモデル調整後の F M - P I D 制御結果を表 4 - 1 1 に示 す.なお,P I D 制御結果は表 4 - 6 を参照されたい.居住域平均温度はいずれも快 適制御温度となり,居住域の温度分布はモード B 以外で快適域となっている.P I D 制御と比較すると快適制御の観点からは7ケース,快適域の観点からは 3 ケース で改善が見られる.また,設定温度を変更した P I D 制御と比較すると,快適制御,

快適域とも範囲外であったモード B ,温度センサー w 以外はほぼ同じ傾向を示し てい る.

図 4 - 1 3  モード A ・温度センサー w におけるファジィモデル調整後の FM-P ID 制御結果

( 吹出し温度 T0,センサー温度 Tsns,居住域平均温度 Tr,

居住域平均温度推定値 Tr’,吹出し風量 Q,人員密度 q) 10

14 18 22 26 30 34

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360

時間 [min]

[]

0 1 2 3 4

[人/m2 ]、[x100%]

T0 Tsns Tr Tr' Q q

表 4 - 1 1  ファジィモデル調整後の F M - P I D 制御における 興業終 了時の 居住 域温度

化する時間帯のみであるため,実用上大きな問題とはならないと思われるが,改 善にはさらなるファジィモデ ルの調整が必要となろう.

最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 最小 平均 最大 差 モードA 21.4 22.4 23.5 2.1 21.0 22.0 23.1 2.1 21.0 22.0 23.1 2.1 モードB 18.1 21.9 23.2 5.0 18.0 21.8 23.0 5.0 18.2 22.0 23.3 5.1 モードC 20.9 21.6 22.1 1.2 21.1 21.8 22.3 1.2 21.1 21.8 22.4 1.3

温度センサーa 温度センサーc 温度センサーw

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