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総括

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 84-92)

年輪年代学は木質文化財の正確な絶対的年代測定法である.本来,木質文化財に対して 非破壊であることが理想であり,これまで非破壊年輪測定としては乾燥木材に対してマイ クロフォーカスCTが使われてきた.しかしながら,乾燥状態以外の保存状態の木材は適 しておらず年輪測定対象外であった.そこで本研究ではさまざまな保存状態(乾燥保存,

水浸保存,PEG含浸中,PEG含浸後)の出土木材を想定し,臨床用画像検査機器非破壊 年輪計測の適応範囲およびMRIによる高空間分解能撮像法について検討した.

乾燥保存の木材の撮像にはCTが適しており,PEG含浸中の木材はT1WI,水浸保存の 木材にはT2WIが適していることが明らかとなった.PEG含浸後の木材に関してはCTの みで描出されたが,研究では試料へのPEG含浸が不十分であった可能性がある.このた め,劣化の進んだ木材にPEG含浸処理を行った木材に対しては内部構造を描出できない 可能性が示唆された.

水浸木材に対し,高解像度で広範囲なスキャンが可能である臨床MRIを用いた年輪幅

測定法(uHR-T2WI)を開発,年輪曲線の作成と標準年輪曲線との照合をおこなった.

uHR-T2WI法は,試料全体を小さいFOVで複数回にわたって撮像,得られた高空間分解

能画像を合成することでOptical scannerに匹敵する年輪曲線を得られた.uHR-T2WIの至 適空間解像度は年輪曲線作成の精度と撮像時間の観点より0.05 mmであった.現生材の ヒノキとブナの年輪曲線はリファレンスと高い一致がみられ,年輪測定の方法としての uHR-T2WIの有効性が実証された.

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6.5 小括

PEG処理後木材に対してDBTを用い,年輪および木材の内部構造を非破壊的に可視化 が可能性であるか調査した.管電圧が高いとPEG処理後木材における

Earlywood-Latewood intensity ratioが低下するため,低管電圧を用いるDBTが適していることが明ら かとなった.DBTはコントラストの強調が可能で,かつ,3次元的な可視化が可能である ためPEG含浸後の木材の年輪の描出に優れており,非破壊的に詳細な内部構造の観察の 手法の一つとして有用である.

DBTの画像歪みの検討では,垂直方向においては歪みはわずかであり,厚み方向では 中心付近が最も少なかった.一方,管軸方向では実際よりもやや大きく描出された.この ため,木材は年輪の方向を垂直方向に平行となるように支持台に設置し,資料の中央のス ライスを選択することで,歪みの影響を少なく年輪測定が可能である.

現在のDBTの空間分解能は68~80 µmであり,年輪測定の精度の信頼性が必ずしも高 いとは言えないが,今後,高空間分解能の装置が出現すれば,DBTはPEG含浸後の木材 に対する年輪測定可能なツールとなるであろう.

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章 総括

年輪年代学は木質文化財の正確な絶対的年代測定法である.本来,木質文化財に対して 非破壊であることが理想であり,これまで非破壊年輪測定としては乾燥木材に対してマイ クロフォーカスCTが使われてきた.しかしながら,乾燥状態以外の保存状態の木材は適 しておらず年輪測定対象外であった.そこで本研究ではさまざまな保存状態(乾燥保存,

水浸保存,PEG含浸中,PEG含浸後)の出土木材を想定し,臨床用画像検査機器非破壊 年輪計測の適応範囲およびMRIによる高空間分解能撮像法について検討した.

乾燥保存の木材の撮像にはCTが適しており,PEG含浸中の木材はT1WI,水浸保存の 木材にはT2WIが適していることが明らかとなった.PEG含浸後の木材に関してはCTの みで描出されたが,研究では試料へのPEG含浸が不十分であった可能性がある.このた め,劣化の進んだ木材にPEG含浸処理を行った木材に対しては内部構造を描出できない 可能性が示唆された.

水浸木材に対し,高解像度で広範囲なスキャンが可能である臨床MRIを用いた年輪幅

測定法(uHR-T2WI)を開発,年輪曲線の作成と標準年輪曲線との照合をおこなった.

uHR-T2WI法は,試料全体を小さいFOVで複数回にわたって撮像,得られた高空間分解

能画像を合成することでOptical scannerに匹敵する年輪曲線を得られた.uHR-T2WIの至 適空間解像度は年輪曲線作成の精度と撮像時間の観点より0.05 mmであった.現生材の ヒノキとブナの年輪曲線はリファレンスと高い一致がみられ,年輪測定の方法としての uHR-T2WIの有効性が実証された.

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さらにPEG処理後木材に対してDBTを用い,年輪および木材の内部構造を非破壊的に 可視化が可能性であるか調査した.DBTは低管電圧を用いることで,コントラストの強 調が可能で,かつ,3次元的な可視化が可能であるためPEG含浸後の木材の年輪の描出 に優れており,非破壊的に詳細な内部構造の観察の手法の一つとして有用であった.現在 のDBTの空間分解能は68~80 µmであり,年輪測定の精度の信頼性が必ずしも高いとは 言えないが,今後,高空間分解能の装置が出現すれば,DBTはPEG含浸後の木材に対す る年輪測定可能なツールとなるであろう.

臨床用画像検査機器にはさまざまな種類があるが,それぞれの特徴を知り,木質文化財 材の保存状態に適したモダリティを選ぶことで年輪考古学の調査対象となる資料の適応範 囲が大きく広がる.本検討においては年輪曲線と標準年輪曲線との照合には至らなかった が,これは木質文化財と標準年輪曲線に使用された木材の生育地が違う可能性が考えられ る.今後,多くの木質文化財を用いて年輪曲線を作成することで,これまで標準年輪曲線 が作成された木材の生育地とは異なる生育地の標準年輪曲線が新たに作成できる可能性が あり,木材の流通ルートの解明など,今後の年輪年代学のさらなる応用が期待される.

また,今後の展望として各装置の限界を知り,性能を最大限引き出すことで医学におい ても新たな可能性を見出すことが可能であると筆者は確信している.

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引用文献

1) Fritts HC: Tree Rings and Climate, The Blackburn Press, USA. 2-4, 1976.

2)Bräker UO: Measuring and data processing in tree-ring research - a methodological introduction, Dendrochronologia 20/1-2 (2002) : 203-216, 2002.

3)Okochi T: A nondestructive dendrochronological study on Japanese wooden shinto art sculptures using micro-focus X-ray Computed Tomography (CT) Reviewing two methods for scanning objects of different sizes. Dendrochronologia 38: 1–10. 2016.

4)Křivánková S, Nasswettrová A, Šmíra P: Comparison of image quality between a medical and an industrial CT scanner for use in non-destructive testing of tree-ring widths in an oak (Quercus robur) historical sculpture of Madonna. Wood Research 63, 1: 155–165. 2018.

5)Bill J, Daly A, Johnsen Ø, Dalen KS: Dendro CT – Dendrochronology without damage.

Dendrochronologia 30, 3: 223–230. 2012.

6)Baillie MGL, Pilcher JR.: A simple cross-dating program for tree ring research. Tree-Ring Bulletin 33: 7–14. 1973.

7)Tanaka M, Mitsutani T, Sato T, et al.: Dendrochronology in Japan. Research Report of the Nara National Cultural Properties Research Institute No. 48, NARA: 18–23. 1990.

8)Douglass AE: Tree rings and Telescopes ; The American Historical Review, Volume 89: 534, 1984

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さらにPEG処理後木材に対してDBTを用い,年輪および木材の内部構造を非破壊的に 可視化が可能性であるか調査した.DBTは低管電圧を用いることで,コントラストの強 調が可能で,かつ,3次元的な可視化が可能であるためPEG含浸後の木材の年輪の描出 に優れており,非破壊的に詳細な内部構造の観察の手法の一つとして有用であった.現在 のDBTの空間分解能は68~80 µmであり,年輪測定の精度の信頼性が必ずしも高いとは 言えないが,今後,高空間分解能の装置が出現すれば,DBTはPEG含浸後の木材に対す る年輪測定可能なツールとなるであろう.

臨床用画像検査機器にはさまざまな種類があるが,それぞれの特徴を知り,木質文化財 材の保存状態に適したモダリティを選ぶことで年輪考古学の調査対象となる資料の適応範 囲が大きく広がる.本検討においては年輪曲線と標準年輪曲線との照合には至らなかった が,これは木質文化財と標準年輪曲線に使用された木材の生育地が違う可能性が考えられ る.今後,多くの木質文化財を用いて年輪曲線を作成することで,これまで標準年輪曲線 が作成された木材の生育地とは異なる生育地の標準年輪曲線が新たに作成できる可能性が あり,木材の流通ルートの解明など,今後の年輪年代学のさらなる応用が期待される.

また,今後の展望として各装置の限界を知り,性能を最大限引き出すことで医学におい ても新たな可能性を見出すことが可能であると筆者は確信している.

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引用文献

1) Fritts HC: Tree Rings and Climate, The Blackburn Press, USA. 2-4, 1976.

2)Bräker UO: Measuring and data processing in tree-ring research - a methodological introduction, Dendrochronologia 20/1-2 (2002) : 203-216, 2002.

3)Okochi T: A nondestructive dendrochronological study on Japanese wooden shinto art sculptures using micro-focus X-ray Computed Tomography (CT) Reviewing two methods for scanning objects of different sizes. Dendrochronologia 38: 1–10. 2016.

4)Křivánková S, Nasswettrová A, Šmíra P: Comparison of image quality between a medical and an industrial CT scanner for use in non-destructive testing of tree-ring widths in an oak (Quercus robur) historical sculpture of Madonna. Wood Research 63, 1: 155–165. 2018.

5)Bill J, Daly A, Johnsen Ø, Dalen KS: Dendro CT – Dendrochronology without damage.

Dendrochronologia 30, 3: 223–230. 2012.

6)Baillie MGL, Pilcher JR.: A simple cross-dating program for tree ring research. Tree-Ring Bulletin 33: 7–14. 1973.

7)Tanaka M, Mitsutani T, Sato T, et al.: Dendrochronology in Japan. Research Report of the Nara National Cultural Properties Research Institute No. 48, NARA: 18–23. 1990.

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9)Briffa KR, Bartholin TS., Eckstein D, et al.: 400-year tree-ring record of summer temperatures in Fennoscandia, Nature volume 346: 434–439, 1990.

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11)山澤金五郎: 飛騨に於ける寛永五年以來樹木の成長に就いて, 気象集誌 第2輯/7 巻 (1929) 6 号: 186-190, 1929

12)光谷拓実: 法隆寺五重塔心柱の年輪年代, 奈良文化財研究所紀要2001: 32-33, 2001.

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インターナショナル,東京,2006.

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ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 84-92)

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