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 本研究は,Superのライフ・スパン理論(1990)による9次元を用 いた児童用キャリア発達測定尺度を作成し,その尺度を用いて,

キャリア発達の学年差・性差と体験活動がキャリア発達に及ぼす 影響について比較検討することを主な目的とした。

(1)児童用キャリア発達測定尺度の作成

 研究1では,Superの9次元のそれぞれの定義に照らし合わせ て尺度を作成し,その妥当性と信頼性を検討した。その結果r好 奇心・探究』,r自己統制・計画』, r重要な人物の存在』, r時間的 展望』,『自己概念』,r情報活用』,『興味・関心』という7因子か

ら構成される児童用キャリア発達測定尺度が作成された。Super の9次元構造におけるr好奇心』とr探究』,『自己統制』とr計 画』がそれぞれまとまって抽出されたものの,先行研究である CCDSでも,『好奇心・探究』が1因子として抽出されている。本 研究において,r好奇心・探究』, r自己統制・計画』のいずれとも 1つの因子としてまとまった理由は,それぞれの定義の類似が要因 ではないかと考えられる。また,予備調査では8因子解であった のに対して,本調査では7因子解の因子構造となり,本調査によ る因子構造の方がより,Superの9次元構造を反映しているもの の今後さらに検討を重ねることが必要であろう。信頼性に関して は,π係数および再検査係数ともに,全体的に満足できる水準に 達していた。妥当性に関しても,坂柳・竹内(1986)が作成した進路 成熟態度尺度(CMAS・4)との予測した下位概念おいて,相関による 併存的妥当性がある程度認められた。

(2)児童のキャリア発達における学年差について

 r自己統制・計画』およびr自己概念』において4年生と6年 生において有意な差が認められ,学年が上がるとともに得点が低 下していくことが示された。これは学年が上がるほど,子どもた       ・52一

ちは自分には「計画性」が発揮できなくなっていくという先行研 究(都築,2004)と一致する。また,「自己理解」の中でも長所と 短所に焦点を当てて研究を行った高綱(1998)は,児童の長所の記述 内容の変化から3,4年生に比べ5年生になると内面的に他者と自 己の区別をし始めると示している。このことから長所的側面から 捉えた自己充実的な項目内容で構成されていた本研究でのr自己 概念』得点についても,4年生では長所において外面的特徴のみ認 識し自己充実感があったものが,学年が上がり、自分の長所的な 側面から捉えたものを他者と自己を比べることで自己充実を感じ られなくなり、得点が低くなったと考えられる。このことは自己 を客観的に認知したことにもつながると考えられ,r自己概念』得 点が低いことは自己概念が進んだ結果とも考えられよう。

(3)児童のキャリア発達における性差について

 r自己統制・計画』,『重要な人物の存在』,r時間的展望』, r情 報活用』ともに,女子の方が有意に高かった。また,r興味・関心』

においても,10%水準であるが女子の得点の方が高い傾向が認め

られた。これは,Schultheiss et al.(2004),都築(2004)の研究と一

致したものとなった。このことから,男子よりも女子の方が,興 味・関心がやや強く,自己統制や計画性,情報の活用が優れてい ることが分かった。また,女子は男子に比べ自分にとって〈重要 な人物の存在〉を強く感じており,〈将来への希望〉をより強く感 じていることが示唆された。また,体験がキャリア発達に及ぼす 影響においても,男子は〈生活の体験〉とくお手伝いの体験〉か

ら影響が多く,それ以外の体験4領域からの影響が少ないのに対 し,女子は〈生活の体験〉を除く体験6領域から,ほぼ等しくキ ャリア発達に影響しているという性差が認められた。

 特に〈遊びの体験〉からの影響の違いが特徴的であり,男子は

「遊ぶこと」と「調べること」は相反するものとしているのに対 し,女子は「遊びこと」で「いろいろ知りたい,やりたいなどの 知的好奇心」につながっていることが示唆された。また,男子に

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おいて特徴的だったのはくお手伝いの体験〉からの影響であり,r自 己概念』とr自己統制・計画』,『情報活用』に対して影響がみら れた。男子は女子に比べてお手伝いの体験は少ないものの,その 中でお手伝いをしている児童は,体験を通してより「自分の役割」

を認識するのではないかと考えられる。一方,女子は〈メカ・メ ディアの体験〉からr情報活用』に正の影響を,10%水準ではあ るがr自己概念』に負の影響傾向を示した。メカ・メディアの2 つの側面を反映したものとなった。これは男子よりも女子の方が メカ・メディアに対して,体験が豊かであることが原因と推測さ

れる。

(4)児童のキャリア発達における体験活動の影響と学年による変化  小学校教育への提言

 本研究では,学校だけでなく地域社会や家庭という広い観点か ら取り上げた体験活動が,キャリア発達に与える影響について検 討した。体験活動6領域の中でも特に〈生活の体験〉がキャリア尋 発達に大きく影響を与えていることが分かった。児童が成長・発 達を遂げる過程において,生活が基礎基本であり,キャリア発達 に対しても土台となる部分であることが示されたと言える。しか し学年別にみると,生活の体験は高学年になるとキャリア発達に 直接的な影響は少なくなるようである。また、Superの9次元図

(Figure1)の底部である『好奇心や探究心』を育むには,様々な人 と出逢い〈人間関係の体験〉,遊んだり〈遊びの体験〉,自然の中 で遊んだりする〈自然の体験〉ことが重要であることが示唆され た。川崎・園田(2004)は,自然体験を通してふだんの生活では得に くい機会をもち,様々な事物を見聞きし,触れ,感動したり,驚 いたりしながら,試行錯誤をくり返し,「自然の姿とは」,「自分の 生活の在り方とは」,「社会の在り方とは」等を学ぶと考えている。

このことは,本研究で〈自然の体験〉が4年半では第6因子『情 報活用』に,5年生では第1因子r好奇心・探究』に加え,第5 因子『自己概念』へと影響を及ぼしていたことにより,裏付ける

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ことができると考えられる。

 一方,第5年頃おいて〈自然の体験〉がr自己統制・計画』に 負の影響を及ぼしていた点からは,児童の時間的な余裕のなさが あると推測される。すなわち〈自然の体験〉をするためには,長 期的な時間や余裕が必要であり,それを優先すれば勉強や遊びな どの短期的で細やかな時間を考慮する『自己統制・計画』に関し てはルーズになってしまうことが考えられる。では,児童にとっ て時間が十分にあれば,自然の体験もしつつ時下を守って遊んだ

り,勉強をしたりすることが可能であるのだろうか。ゴ川崎・園田

(2004)は,子どもの余暇の過ごし方の調査において「勉強したり,

塾や習い事に行く」が調査対象者の3割以上みられることから余 暇においても拘束されている子どもの姿が伺えるとしている。こ のことから,勉強や習い事に追われている子どもたちにとって十 分な時間をとること自体が難しいのかもしれない。あるいは,長 期的な計画をたてることが難しい児童期の子どもにと6ては勉強 もしつつ,自然体験もするという自分の時間をマネジメントする こと事態がまだ難しい課題なのかもしれない。

 また、〈人間関係の体験〉の大切さも見出された。Supe妖1990)

が述べているように児童にとってモデルとなる人物は重要であり,

国立教育政策研究生徒指導研究センターによる調査研究報告書

(2002)でも,『夢や希望を描き自分はこんな人間になりたいという 自己イメージを獲得すること』が小学校段階の主な発達課題とし て示されている。〈人間関係の体験〉,すなわち様々な人間に出会 うことで,あこがれやお手本になるような人,尊敬する人に出会 い,その人たちを通して,子どもたちは自分の将来や夢に希望を いだくという事を本研究でも示唆されたといえよう。また,〈人間 関係の体験〉は学年によって,キャリア発達に及ぼす影響が異な っていた。4年生では「何をしている時が楽しいか分かる」(『興味・

関心』)にとどまっていたものが,5年生では「自分の模範となる 役割や面白い人がいることを認識すること」(r重要な人物の存 在』)につながり、6年生になると模範となる尊敬人を通して,「自        ・55一

分の将来や現在について考えること」(『時間的展望』)の促進へと 広がっていくことが推測された。厳密ではないものの,Superの9 次元図(Figure1)における底部概念から上部概念へと,〈人間関係の 体験〉が及ぼす影響が学年とともに変化していることが示された

と言えよう。

 〈メカ・メディアの体験〉に関してはポジディブな側面がある 一方で,キャリア発達に対する負の影響もあるのでなないかと考 えられた。特に小学校5年生では10%水準であるものの負の影響 傾向が見られたが,そのような期間を経て,6年生になるとパソコ ンなどの機械の操作にも慣れはじめ,r情報活用』へと結び付ける ことができはじめるようである。このことから,一見,負の影響 に見える体験でも,試行錯誤や探索をくり返す中で,正の影響へ と転換することもあり得るのではないかと解釈した。

 また,キャリア発達において,「役割」は大切な要素を担う。〈お 手伝いの体験〉では4年生ではr自己統制・計画』へ影響してい たのが,6年生ではそれに加え,『自己概念』にも影響を及ぼして いた。Super(1990)の9次元の定義とともに考えると,4年生の時 は,お手伝いをすることは「ルールや決まりを守る」という他律 的な側面が強かったものが6年生では自律的な側面も見られるよ うになったと考えた。4年生では「やらされている」感があるもの のそれを継続することで6年生になったとき,それが自分の役割 だと認識し,係やお手伝いなどの仕事を通して自分についての理 解を深めること,つまり役割や仕事を通して自己を確立していζ

ことが考えられる。

 このように学年よって体験活動がキャリア発達に及ぼす影響が 異なっていることは興味深い。体験項目ごとに見ていくと中学年 ではSuperの9次元における底部に位置する下位概念(『好奇心・

探究』,r情報活用』, r重要な人物の存在』など)へと体験が影響 している傾向があるのに対し,高学年になるにつれSuperのモデ ル図(Figure1)の中でも,上部に位置する概念(『重要な人物の存在』

r自己概念』,r時間的展望』など)へと影響を与えているという       ・56・

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