児童期のキャリア発達における学年差,性差の検討
〈目的〉
研究1で作成した小学校のキャリア発達測定尺度を用いてキャ リア発達における学年差,性差を検討する。
〈方法〉
(1)調査方法
兵庫県内の公立小学校2校4〜6年生15学級432名(男子215
名,女子217名)が調査対象であった。そのうち回答に著しい不備 のあるものを除外し,431名(男子214名,女子217名)を分析対象 とした(有効回答率99.8%)。分析対象者の内訳は,B小学校4年生 3学級(男子42名,女子41名),5年生3学級(男子44名,女子36 名),6年生3学級(男子53名,女子43名),D小学校4年生2学 級(男子33名∵女子39名),5年生2学級(男子23名,女子31名),
6年生2学級(男子19名,女子27名)である。内訳はTable2 3と
同様である。
(2)調査内容
研究1で作成した児童用キャリア発達測定尺度,r好奇心・探究』,
r自己統制・計画』,r重要な人物の存在』,『時間的展望』, r自己 概念』,r情報活用』, r興味・関心』の7因子からなる37項目を使 用した。「かなりあてはまる」(5点),「ややあてはまる」(4点),「ど
ちらでもない」(3点),「あまりあてはまらない」(2点)「ほとんど あてはまらない」(1点),の5件法により回答を求めた。
(3)調査時期および手続き
質問紙調査は,2007年10月初旬〜下旬(10月2日〜10月30日)
に学級担任によって学級ごとに一斉に実施した。調査用紙には,
調査の目的,学校の成績には関係がないこと,担任教師や友達に 回答内容が公開されることがないことを明示した。
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〈結果と考察>
7因子を構成する各項目の平均評定値を従属変数,学年と性別を 独立変数とする2要因分散分析を行った結果,いずれの下位尺度 得点においても交互作用は認められなかった。そこで,以下では 学年と性別による差異について検討した。
○学年による差異
第2因子『自己統制・計画』(夙2,416)=5.276,、ρ〈.01)と,第 5因子『自己概念』(夙2,418)=3.640,ρ〈.05)において,学年(4 年・5年・6年)の主効果が有意であった(Table3)。
多重比較の結果,第2因子r自己統制・計画』および第5因子 r自己概念』のいずれも,6年生より4年生の方が有意に得点が高 かった(p<.01)。4年生に比べて6年生の得点が低かった理由とし て,学年が進むにつれ現実を見据えた正しい自己評価ができるよ
うになり,自己認知が変化してくることが考えられる。
高綱(1998)が行った,小学生におけるキャリア発達課題の予備的 探索のための,特に「自己理解」に着目した研究では,小学生の 長所と短所に関する自己認知は,長所に関する内面的特徴につい て認識は3年生から4年生にかけて急激に増加するもののその後 はほぼ横ばいになっているのに対して,外面的特徴についての認 識は5年生でわずかに増加するものの,学年が上がるにつれて減 少する結果が示されている。この理由として他者と比較した自分 の長所をほとんど外面的特徴についてのみ認識していた3.4年生 に比べ,5年生頃になると内面的に他者と自己の区別し始めるため と考えられるとしている。このことから,勉強や遊びなどのルー ルやきまりを守るといった項目から構成された第2因子r自己統 制・計画』では,4年生までは自分自身が守っているかどうかだけ が基準だったものが,5年生頃になると他者と自己を区別し比べる ことで,自分はできていないと思うようになることで得点の減少 へとつながつたのではないかと考えられる。またこれは,都築
(2004)による時間的展望の研究における「計画性」得点が年齢が上 がればあがるほど減少し,子どもたちは学年が上がるにつれ自分
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には計画性が発揮できなくなっていくという直線的な発達的変化 傾向とも一致する。
第5因子『自己概念』は,「自分が好きだ,自分のいいところを 知っている」など,自分の長所的側面を捉えた自己充実的な項目
内容で構成されている。高橋(1998)の研究によれば,児童期では学 年が上昇するに従い,短所に関しても内面的な特徴において認識 が発達していくと示されている。また,都築(2004)の研究でも,「将 来の希望」得点もまた学年が上がるにつれ減少しており,認知的な 発達水準が上がり,周囲の状況や自分自身についてより現実的に 検討するようになった結果であると示されていることから,第5 因子『自己概念』得点は,学年が上がるにつれ自分を客観的に認 知することで得点が低くなったのではないかと考えられる。
先述したSuperのライフ・スパン理論(1990)に基づいて児童期 のキャリア発達の尺度作成をおこなったSchultheiss et aL(2004)
の,CCDS(childhood career development scale)では,
rinformation』得点において学年間の有意差が大きく,4学年に 比べ5〜6年生は高得点を示したとあり,学年が上昇するのに伴い,
仕事に関する情報使用量の増加あるいは重要性に気づくためだと 解釈されている。しかし,本研究におけるキャリア発達測定尺度 の第6因子『情報活用』では,学年間に有意な差は見られなかっ た。CCDSにおいてrinformation』は「職業に関係ある情報の重 要性や利用することと,どのように人がこのような情報を得る(身 につける)のか知ること」と定義してあり,職業的な情報という意 味合いが強く,本研究で定義「情報の重要性,利用価値やその入 手方法を知る」というように職業に関わらない情報であるという 違いが大きな理由のひとつではないかと考えられる。
○性別による差異
性別の主効果は,第2因子r自己統制・計画』(、久1,416)=44.314,
。ρ〈.01),第3因子r重要な人物の存在』(∬(1,412)=22,581,p
〈.001),第4因子『時間的展望』(夙1,423)=7.304,.ρ〈.01),
第6因子『情報活用』(夙1,419)=4.642,p〈.05)において有意で 一31一
あった。また,第7因子『興味・関心』(∬(1,417)=3.204,.ρ〈.1)
においては,傾向差が認められた(Table3)。
第2因子『自己統制・計画』,第3因子r重要な人物の存在』,
第4因子r時間的展望』,第6因子『情報活用』ともに,女子の方 が有意に高かった。また,第7因子『興味・関心』においても,
得点の平均値は女子の方が高かった。都築の研究(2004)においても
「将来の希望」得点と「計画性」得点において,女子は男子よりも得 点が高く,女子は男子に比べ,将来への希望を強く感じているこ とや,計画性が優れていることが分かっており,本研究のおける 第2因子r自己統制・計画』と第4因子r時間的展望』と一致す
る。Schultheiss et al.(2004)では,女子は男子に比べ,興味や関 心(awareness of interests)を伝えたり,社会的援助(social support)の提供者として「重要な他者」をより認知することが報告
されている。このことから,第3因子『重要な人物の存在』,第7 因子r興味・関心』において女子の方が得点が高かったのではな いかと考えられる。第6因子『情報活用』については,研究H・2 体験活動量の影響と合わせて考察することとする。
また,CCDSでは『curiosity/exploration』得点において女子 の方が男子に比べ,より好奇心の強い考えや行動をすることが示 されている。しかし,本研究結果において第1因子『好奇心・探 求』において平均得点は,女子3.98,男子3.93で女子の方が高い が有意な差は認められなかった。
・32一
Table3キャリア発達測定尺度の学年,性別にみた差異
下位尺度名 学年による差異 性別による差異
平均値 標準偏差 有意差 平均値標準偏差 有意差
1好奇心・探究 4年(N=146)
5年(N=129)
6年(N=133)
4,02 3.92 3,93
,795
.840
.759
男(N=198) 3,93 女(N=210) 3.98
.823
.773
2自己統制・計画 4年(N=150)
5年(N=132)
6年(N=140)
3。76 3.56 3.45
1iiコ綜髪織::1: ,831
.746
3重要な人物の存土4年(N=151)
5年(N=130)
6年(Nニ!37)
4.12 4.18 4.15
.893
.800
,817
男(N=206) 3.96 女(N=212) 4,33
:;llコ…
4 日寺間白勺展望 4年(N;154)
5年(N=133)
6年(N=142)
4.17 3.94 3.94
.889 1.095 1.097
:男(N=213) 3.89
女(N;216) 4.16
聯コ料
5自己概念 4年(N;154)
5年(N=!31)
6年(Nニ139)
3.98 3.78 3.76
1i!に・婁1剛餓
.798.792
6情報活用 4年(N=150)
5年(N;133)
6年(N=142)
3.40 3.35 3.28
,959
.899
.845
男(N=210) 3、25 女(N=215) 3,44
:罵]・
7興味・関心 4年(N=152)
5年(N;132)
6年(N=139)
4,51 4.60 4.49
.579
,544
.633、
男(N=211) 4.48 女(N=212) 4.58
.577
.594
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・33・