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②体験活動に関する質問紙

 深谷ら(1992)が「体験の持つ意味」を検討するために10種の体 験領域の中から取り出した6領域〈生活〉,〈遊び〉,〈お手伝い〉,

〈人間関係〉,〈自然〉,〈メカ・メディア〉と川崎ら(2004)の自然と

生活に関する実態調査を参考に,活動に関する項目を作成した

(Table4・2)。また,本研究では,小学校段階におけるキャリア教育 を,特化した新しい取り組みをすることではなく,今ある既存の 教育活動全般をキャリア教育として捉える(渡辺ら,2001)という観 点から,項目を作成する際には,小学校学習指導要領生活編(1999)

も参考にした。学習指導要領には,生活科における目標の背景と して「児童の生活圏としての学校,家庭,地域を学習の対象や場 とし,学習したことは,学校,家庭1}地域での児童の生活に生き ていくようにする。」とある。そのため∴本研究においては,学校 だけではなく家庭や地域社会で行う広い観点からの体験活動項目

を作成した。

 体験活動に関する6領域のうち,〈生活(6項目)〉,〈遊び(5項目)〉,

〈お手伝い(8項目)〉の3領域は家や学校での様子を尋ねるため,

「いつもしている」(4点),「時々している」(3点),「少ししてい る」(2点),「全然していない」(1点)の4件法で回答を求めた。

また,〈人間関係(8項目)〉,〈自然(7項目)〉,・<メカ・メディア(6項

目)〉の3領域は,今までの体験を尋ねるため「何度もある」(4点),

「時々ある」(3点),「少しある」(2点),「全然ない」(1点)の4 件法で回答を求めた(巻末資料参照)。

(3)調査時期および手続き

 質問紙調査は,2007年10月初旬〜下旬(10月2日〜10月30El)

に学級担任によって学級ごとに一斉に実施した。調査用紙には,

調査の目的,学校の成績には関係がないこと,担任教師や友達に 回答内容が公開されることがないことを明示した。

一35・

Table4−2体験活動質問項目.

1 自分から、あいさつをすること 2 朝、食事をとること

3 朝、顔を洗ったり、歯をみがくこと

生活の体験

4 生き物(動物や植物)の世話をすること 5 自分のものは自分で片付けること 6 読書をすること

1 おもちゃやゲームで遊ぶこと 2 テレビやマンガを見て遊ぶこと

遊びの体験

3 絵(まんがやイラストなど)を書いて遊ぶこと 4 スポーツをすること

5 おにごっこやかくれんぼなど、外で遊ぶこと

1 掃除機やぞうきんなどでそうじをすること 2 料理を作るのを手伝うこと

3 お風呂の掃除やお風呂の湯を入れること

お手伝いの体験

4 新闘を取ってくること 5 洗濯物を取りこむこと 6 玄関のそうじをすること 7 ゴミ捨てに行くこと 8 お使いに行くこと

1 近所の人にあいさっをしたこと 2 小さい子の遊び相手をしたこと 3 友だちと本などを貸し借りしたこと 4 友だちと口げんかをしたこと

人間関係の体験

5 とっくみあいのケンカをしたこと

6 おばあさん、おじいさんに遊びを教えてもらったこと 7 地域の行事(子ども会活動など)に参加したこと 8 年の違う子と遊ぶこと

1 海や川で遊んだこと 2 山のぼりをしたこと

3 カブトムシやカエルなど生き物をつかまえること

自然の体験

4 木のぼりをしたこと

5 草や花・木の実などで遊んだこと 6 太陽が昇るところや沈むところを見たこと 7 どろんこ遊びをすること

1 ビデオやDVDで再生や録画をすること 2 携帯電話を使うこと

 メ

@カ@o

フメアデ

@イ@ア

@の

3 パソコンで文章を打っこと 4 コピー機でコピーをとること 5 インターネットを使うこと 6 デジタルカメラで写真をとること

〈結果と考察〉

 体験活動に関する6領域〈生活の体験〉,〈遊びの体験〉,〈お手 伝いの体.験〉,〈人間関係の体験〉,〈自然の体験〉,<メカ・メディ

アの体験〉が,キャリア発達における7つの側面r好奇心・探究

心』,r自己統制・計画』, r重要な人物の存在』, r時間的展望』,『情 報活用』,r興味・関心』へどのような影響を与えているのかにつ いて,体験活動の6領域ごとの平均体験量を説明変数,キャリア 発達の7側面を目標変数とする重回帰分析を用いて検討した。な お,体験領域間の相関はTable4・3に,学年・性別ごとの体験活動 量の平均値と標準偏差はTable4・4に示した通りである。

 重回帰分析の結果,全ての目標変数において,重決定係数は有 意であった(Figure3−1)。目標変数であるキャリア発達の7つの側 面ごとに体験量の影響を見ると,まず第1因子『好奇心・探究』

に対しては,〈生活の体験〉(β=.293,,ρ<.001)と〈人間関係の体 験〉(β=.224,p<.001),〈遊びの体験〉(β=.100, p<.05)が影響

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を及ぼしていた。〈自然の体験〉(β=.107,.ρ<.1)からは影響傾向 が認められた。第2因子『自己統制・計画』に対しては,〈生活の

体験〉(β=。522,.ρ〈.001)とくお手伝いの体験〉(β=.284,p<.001)

が正の影響を,〈人間関係の体験〉(β=一.140,.ρ<.05)とく自然の 体験〉(β=一.110,p〈.05)が負の影響を及ぼしていた。

 第3因子r重要な人物の存在』に対しては,〈生活の体験〉(β

=.197,.ρ<.01)とくお手伝いの体験〉(β=.117,,ρ<.05)が影響を 及ぼしていた。

 第4因子『時間的展望』に対してもく生活の体験〉(β=.240,

.ρ<.001),〈お手伝いの体験〉(β=.181,.ρ<.01)が影響を及ぼして いた。第5因子r自己概念』では,〈生活の体験〉(β=.217,.ρ<.01)

とくお手伝いの体験〉(β=.237,.ρ<.01),〈自然の体験〉(β=.121,

、ρ<.05)が影響を及ぼし,〈メカ・メディアの体験〉(β=一.120,

.ρ<.05)では負の影響を及ぼしていた。第6因子『情報活用』では,

〈生活の体験〉(β=.463,,ρ<.001)とくメカ・メディアの体験〉(β

=.156,.ρ<.01),〈お手伝いの体験〉(β=.143,.ρ<.05)が,第7因

子r興味・関心』には,〈遊びの体験〉(β=.130,p<.05),〈人間

関係の体験〉(β=.170,p<.05),〈メカ・メディアの体験〉(β=.121,

.ρ<.05)がそれぞれ影響を及ぼしていた。また,第7因子『興味・

関心』においては,有意ではないがくお手伝いの体験〉(β=.132,

一ρ<.01)からの影響も見られた(Figure4・1)。

 以上の結果から,〈生活の体験〉から第7因子r興味・関心』を 除いて,いずれのキャリア発達における下位概念にも大きく影響

していることが分かった。以下は,「生活の体験」以外でキャリア 発達のそれぞれの下位概念ごとに,どのような体験が影響してい るのかを考察していく。

 第1因子『好奇心・探究』は,「知りたがり行動を引き起こす欲 求と,その好奇心を満たす活動」であり,体験領域の〈遊びの体 験〉とく人間関係の体験〉からの正の影響が認められた。つまり 遊ぶことを通して,「やってみたい」「知りたい」という好奇心や 探究心が育まれていることが考えられる。近所の人や地域の人た

・37一

ちなど身近な人と触れ合うことや,友だち・年の違う子など他者 と遊ぶことで,例えば,○○君のようにサッカーがうまくなりた いなど「こうなりたい」という「あこがれの気持ち」を友達や他 者にいだきやすくなり,そうなろうとする探求活動を起こしやす くなると考えられる。また10%水準であるが,体験領域.〈自然の 体験〉からも正の影響傾向がみられた。〈自然の体験〉は様々な事 象に出合うことで,知的好奇心や探究心が高まることが示唆され ていると考えられる。

 第2因子r自己統制・計画』は,〈お手伝いの体験〉からは正の 影響を,〈人間関係の体験〉とく自然の体験〉からは負の影響が認

められた。本研究ではr自己統制・計画』は「規則やきまりを守 るなど,目標を立てることとそれに従い行動することができる感 覚」である。そのため,自分でどのようなお手伝いをするのか決 めて,実行することで,自己統制力や計画性を育むことが考えら れる。〈人間関係の体験〉が負の影響を与えたことに関しては,体 験項目内容の中に含まれた「友達と口げんかをする」・「とっくみあ

いのけんかをする」という項目の影響ではないかと考えられる。

友人とケンカをすることは,子どもの成長過程において重要な体 験である反面,自分の感情をコントロールする自己統制能力がま だ十分に育っていないことを示すものでもあると考えられる。ま た,『計画性』の定義を明確化する際,小学校段階では,計画の大 切さについてはまだ未成熟であり,自主的にはほとんどできてい ないのではないかと予測していた。大人や近所の人たちと触れ合 う体験が多いことで,子どもが自分自身で考え決める前に,大人 に注意を受け,自分自身で決めて計画・行動している実感を持ち にくいということも考えられる。これらのことからく人間関係の 体験〉はr自己統制・計画』に対して負の影響を示したのではな

いか。

 次に体験領域の〈自然の体験〉が負の影響を与えた理由として は,r自己統制・計画』の項目内容には「時間を守る」「時間が来 たらやめる」など時間にシビアな項目内容や,『計画性』に関して        ・38・

も尺度作成の際,小学校の児童にとって長期的な計画をたてるの は難しいという見解から,勉強や遊びに関する短期的な時間スパ ンでの計画を想定して作成した。〈自然の体験〉の項目内容である 山登りなどをするためには,長期的な時間や余裕が必要であり,

それを優先すれば勉強や遊びなどの短期的な細やかな時間に関し「

てはルーズになってしまうことが起こりうることから負の影響が 示されたのではないかと考える。

 第3因子r重要な人物の存在』が体験領域〈人間関係の体験〉

から正の影響を与えていることから;様々な人々と接することは,

子どもにとって「模範となったり,興味を引き出してくれたり,

あるいは手助けしてくれる人物の存在」を認識しやすくなること

が分かる。

 第4因子r時間的展望』もく人間関係の体験〉から正の影響を 与えていることが分かった。r時間的展望』は「過去と現在,未来

についての見通し」である。また時間的展望の項目内容には,「将 来への希望,それに向かって今がんばっている」など将来展望的 要素が強い。このことから,様々な他者と接することで「尊敬:す る人」や「あこがれる人」ができ,その人を通して自分の将来や 夢を具体的に描きやすくなるのではないかと考えられる。また,

同時に「夢に向かってがんばろう」という思いも育むことにつな がる事が考えられる。

 第5因子r自己概念』では,〈お手伝いの体験〉とく自然の体験〉

からは正の影響が,〈メカ・メディアの体験〉からは負の影響が示 された。r自己概念』は,「自分自身に関する複数の役割や立場の 認識,それらが場面によって様々に組み合わされていることへの 気付き」である。くお手伝いの体験〉は自分自身に関する役割の自 覚を促進する体験と捉えることができ,お手伝いをすることによ って,自分の役割を認識することにつながると考えられる。また

〈自然の体験〉からの正の影響であるが,r自己概念』の定義を明 確化・具体化する際,小学生段階では,自分の性格や行動パター ンを知ることや,自分の興味があるものを通して自分の新たな側       一39一

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