• 検索結果がありません。

第4章 信用保証制度

1. 緊急保証制度

82

83 えたために起きた現象と考えられる。

(2) 申込への対応

緊急保証制度を申し込む際に、受けた対応で最も多かったものを尋ねた(表2-53)。

申込を行っていない企業も含めて比率を計算すると、申込額通り借りられた(29.9%)、申 込を拒絶・減額された(5.2%)、連絡待ち(3.8%)、増額セールスを受けた(3.6%)という 順番である。規模別に見ると、小さい企業規模の区分において、拒絶・減額、連絡待ちと いう厳しい対応だけでなく、金融機関から増額セールスを受ける企業の比率が高くなる傾 向にある。

申込を行っていない企業を除いた上で、2008 年調査における一般保証申込企業、2009 年における緊急保証申込企業、一般保証申込企業を比較すると、申込を拒絶・減額される 企業の比率が異なっている。最も拒絶・減額比率が高いのは、09 年緊急保証申込企業

(12.2%)であり、08年一般保証申込企業(9.4%)、09年一般保証申込企業(8.4%)が続 いている。緊急保証を申込む企業の信用リスクが他のグループの企業の信用リスクよりも 高いために、拒絶・減額が多く生じていると考えられる。実際に緊急保証制度を利用する 企業からは、通常よりも緩やかな審査基準を設定したためにモラルハザードが多発したと 指摘される特別信用保証制度(1998年~2001年度)に比べると、審査が厳しいとの指摘が されている。今回の結果は、そうした指摘とも整合的である。

表2-53 保証利用の際に受けた対応

回答件数

申し込みを 拒絶・減額さ

れた

申込み額ど おり借り入れ られた

増額セール

スを受けた 連絡待ち 申込みを行

っていない

一般保証 1991 102 870 108 - 911

2008 年調査

100.0 5.1 43.7 5.4 - 45.8

緊急保証 2837 147 847 101 109 1633

100.0 5.2 29.9 3.6 3.8 57.6

一般保証 2925 146 1417 113 62 1187

2009 年調査

100.0 5.0 48.4 3.9 2.1 40.6

注)上段:回答件数、下段:構成比(%)。

(3) 利用理由

緊急保証制度を利用(希望)する理由について尋ねたところ、現預金等の手元流動性を 手厚くするため(62.6%)、一般保証の利用枠が上限に達した(14.9%)、民間金融機関から のプロパー貸出が拒絶された(13.0%)、一般保証から乗り換え(9.8%)、プロパー貸出から の乗り換え(7.4%)という順に多くの企業が回答している(表2-54)。業種、企業規模 を問わず、最も多くの企業が手元流動性の確保を目的として緊急保証を利用(希望)して いる。もちろん、金融機関が貸してくれないために緊急保証を利用した、もしくは、プロ

84

パー貸出から何らかの理由で乗り換えて緊急保証を利用したとする企業も多い。規模が小 さい企業では、金融機関からのプロパー貸出が拒絶されて緊急保証制度を利用する企業が 多く、これまでプロパー貸出を受ける機会が多かったと考えられる規模が大きい企業では、

プロパー貸出からの乗り換えのために制度を利用する企業が多い。

これらを併せて考えると、今回の調査対象サンプルにおいては、資金繰りに支障が生じ ているために緊急保証を利用する企業も多数存在するが、1990 年代後半から2000年代前 半にかけて貸し渋り・貸しはがしが起きた経験を踏まえてか、将来の資金ショートの事態 に備えて資金確保に走る企業の方が多い。予備的な資金ニーズへの対応も含めて、現在の 緊急保証制度が活用されていると理解することができる。

また、一般保証から緊急保証に乗り換える例が小規模企業を中心に多く見られる。これ は、緊急保証の有利な条件を活用して債務の整理を行おうとする中小企業の自発的な動き の現れと解釈することもできる。

表2-54 利用(希望)する理由(複数回答可)

回答件数

民間金融機 関からプロ パー貸出(信

用保証のな い貸出)が拒 絶された

一般保証の 利用枠が上 限に達した

プロパー貸 出からの乗 り換え

一般保証か らの乗り換え

手元流動性

(現預金等)

を手厚くする ため

その他

1,290 168 192 96 126 807 171

全体

13.0 14.9 7.4 9.8 62.6 13.3

注)上段:回答件数、下段:構成比(%)。

売上高規模別

回答件数

民間金融機 関からプロ パー貸出(信

用保証のな い貸出)が拒 絶された

一般保証の 利用枠が上 限に達した

プロパー貸 出からの乗 り換え

一般保証か らの乗り換え

手元流動性

(現預金等)

を手厚くする ため

その他

58 10 6 1 9 31 11

1 億円以下

17.2 10.3 1.7 15.5 53.4 19.0

260 33 46 15 30 136 42

1 億円超 3 億円以下

12.7 17.7 5.8 11.5 52.3 16.2

429 65 66 42 48 265 54

3 億円超 10 億円以下

15.2 15.4 9.8 11.2 61.8 12.6

407 43 54 27 26 284 48

10 億円超 50 億円以下

10.6 13.3 6.6 6.4 69.8 11.8

68 9 10 5 4 46 9

50 億円超 100 億円以下

13.2 14.7 7.4 5.9 67.6 13.2

48 3 6 4 6 35 7

100 億円超

6.3 12.5 8.3 12.5 72.9 14.6

注)上段:回答件数、下段:構成比(%)。

85

(4) 借入契約の内容

次に、緊急保証制度の貸出を行っている金融機関と貸出条件について尋ねた(表2-5 5および表2-56)。貸出を行った金融機関は、借入額1位金融機関(71.8%)が大多数 を占め、借入額 2 位金融機関(17.3%)、その他金融機関(10.9%)がこれに続いている。

企業規模別に見ると、規模が大きくなるにつれて、その他金融機関による緊急保証制度を 用いた貸出が多く行われている。

表2-55 貸出を行った金融機関

回答件数

借入額 1 位 金融機関

借入額 2 位 金融機関

その他金融 機関

873 627 151 95

100.0 71.8 17.3 10.9 注)上段:回答件数、下段:構成比(%)。

借入金額については、1 千万円超 3 千万円以下を借り入れているとする企業の比率

(32.0%)が最も高く、5千万円超1億円以下(27.0%)、3千万円超5千万円以下(23.4%)

がこれに続いている。次節で述べる一般保証制度に基づく借入金額の分布と比較すると、

借入期間が長いためか、緊急保証制度による1社当たりの借入金額は大きいと考えられる。

約定金利については、1.5%超2%以下の金利と回答した企業の比率(40.0%)が最も高く、

2%超2.5%以下(22.0%)、1%超1.5%以下(18.0%)がこれに続いている。企業規模によっ

て金利の分布は大きく異なっており、売上高1億円以下の企業では3%超の金利を払ってい る企業の比率が2割を超えている。

緊急保証制度の保証期間の上限が10年に設定されていることを反映して、借入期間はか なり長い。3年超5年以下(30.6%)、5年超7年以下(29.8%)、7年超10年以下(30.0%)

を合計すると 9 割に達している。長期の保証付き借入を提供することで、企業が既存の信 用保証債務の整理を行い、毎月の金利支払いを少なくできるとの金融機関からの指摘もあ り、保証期間を延ばして利用企業の負担を減らしたいという趣旨は達成されていると考え られる。

保証料率は、0.75%超1%以下(36.0%)との回答が最も多く、次いで0.5%超0.75%以 下(29.6%)、0.5%以下(19.3%)となっている。保証料率が1%超と答えた企業の比率は、

後述する一般保証制度では計37%であるのに対して、緊急保証制度では15%に過ぎず、保 証料率が低いことが、一般保証から緊急保証への乗り換えの一因となっていると推測され る。

担保、保証人の提供については、本人保証(75.4%)が多くの企業によって提供されてい る一方で、担保(8.0%)、第三者保証(6.5%)は一部の企業が提供するにとどまっている。

また、無担保・無保証と回答する企業の比率は 2 割近くに達している。担保は企業規模に

86

比例して提供比率が高まる一方で、本人保証と第三者保証は企業規模が大きくなるにつれ て提供する比率が低下する。また、無担保・無保証と回答する企業の比率は、企業規模が 大きくなるにつれて高くなる傾向にある。

表2-56 貸出条件

a.借入金額 回答件数

1 千万円以

1 千万円超 3 千万円以

3 千万超 5 千万円以

5 千万超 1 億円以下

1 億円超

3 億円以下 3 億円超

866 105 277 203 234 29 18

100.0 12.1 32.0 23.4 27.0 3.3 2.1

b.約定金利 回答件数

1%以下 1%超 1.5%

以下

1.5%超 2%

以下

2%超 2.5%

以下

2.5%超 3%

以下 3%超

826 11 149 330 182 81 73

100.0 1.3 18.0 40.0 22.0 9.8 8.8

c.借入期間 回答件数

1 年以下 1 年超 3 年以

3 年超 5 年以

5 年超 7 年以

7 年超 10 年

以下 10 年超

842 46 28 258 251 253 6

100.0 5.5 3.3 30.6 29.8 30.0 0.7

d.固定・変動 回答件数

固定 変動

840 586 254 100.0 69.8 30.2 e.保証料率

回答件数

0.5%以下 0.5%超

0.75%以下

0.75%超 1%以下

1%超 1.5%以下

1.5%超

2%以下 2%超

658 127 195 237 36 21 42

100.0 19.3 29.6 36.0 5.5 3.2 6.4

f.提供したもの(複数回答可)

回答件数

担保 本人保証 第三者保証 無担保無保

851 68 642 55 168

8.0 75.4 6.5 19.7

注)上段:回答件数、下段:構成比(%)。