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第3章 信用保証制度の実態

3. 信用保証貸付の特徴

前節でみた信用保証貸付を利用している企業の特徴を踏まえて、以下では、信用保証貸 付の契約面での特徴についてみていこう。

○ 信用保証貸付は主に長期借入において用いられている。

まず融資期間については、信用保証貸付の場合、融資期間が 1 年を超える長期貸付の比 率が相対的に高いのが特徴である。信用保証貸付を利用している企業 1,449 社のうち、短 期借入を行っている企業が255社あるのに対して、長期借入を行っている企業は1,342 社 であり、長期借入の比率が圧倒的に高くなっている(重複回答のため、両者の合計は全体 を上回っている)。なお、長期借入の比重が高い点は、直接貸付、制度融資といった他の政 策金融手段においても同様に観察される。

これに対して、信用保証貸付以外の貸付(民間金融機関単独の貸付)も含む「借入額 1 位の金融機関からの借入」における長短比率をみると、短期借入を行っている企業が1,826 社、長期借入を行っている企業が 1,428 社と、短期借入を行っている企業の割合が相対的 に高くなっている。

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なお、信用保証付き短期貸付の平均借入期間は8か月(中央値:6か月)、同長期貸付の 平均借入期間は75か月(中央値:60か月)である。

○ 信用保証貸付は固定金利契約が多い。

長期借入、短期借入ともに、固定金利での借入の比重が高いのも信用保証貸付の特徴で ある。具体的には、信用保証貸付を利用している企業のうち、長期借入では 66.7%、短期

借入では74.4%の企業が、固定金利で借入を行っていると回答している6

よりサンプル数の多い長期借入について、固定金利の利用割合を業種別にみると(表1

-65)、小売業(71.8%)、不動産業(70.0%)が相対的に高くなっている。売上高規模別 には、50億円超100億円以下(71.1%)、100億円超(82.8%)の大規模企業で、固定金利 の利用割合が高い。また約定金利については、金融機関が金利リスクを負っている分だけ、

固定金利借入の金利水準が変動金利借入よりも高くなると考えられるが、実際には、平均 値、中央値ともにむしろ低くなっている(表1-66)。このことは、相対的に信用力が高 く交渉力の強い企業が、固定金利での借入を選好していることを示唆している。これらの 企業にとっては、長期資金を固定金利で借り入れできることが、信用保証貸付の利点とし て認識されている可能性があるといえよう。

6 大手民間銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉 りそな)の長期貸出の固定比率は36.3%である(2008年3月期各行ディスクロージャー資料よ り算出)。

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表1-65 信用保証貸付における固定金利・変動金利の割合(長期借入、業種別・売上高規模

別 )

注)上段:回答者数、下段:構成比(%)。長期借入を行っている企業が対象。

65.8 125

34.2

71.1 13

28.9

82.8 5

17.2 101

34.9 270

67.2 132

32.8 412

33.3 57

67.1 28

32.9

100.0 100.0 100.0

66.7 65.1

826 188 240 32 24

100.0

10億円超 50億円以下

50億円超

100億円以下 100億円超

365 45 29

100.0 100.0 100.0

1,238 85 289 402

全体 1億円以下 1億円超

3億円以下

3億円超 10億円以下

61 58.7 43

41.3 2

28.6 5

71.4

飲食業 その他

7 100.0

104 100.0 71.8

33 28.2

不動産業

100.0 30 21

70.0 9

30.0 小売業

117 100.0 84 60.6

13 39.4

卸売業

232 100.0 158

68.1 74

31.9 運輸業

33 100.0 20 66.4

109 33.6

情報通信 30

100.0 18

60.0 12

40.0 製造業

324 100.0 215 66.7

412 33.3

建設業

351 100.0 241

68.7 110

31.3 全体

1,238 100.0 826

全回答 固定 変動 全回答

固定 変動

表1-66 信用保証貸付における約定金利(固定・変動別)

全回答(社) 平均値 中央値 最大値 最小値 標準偏差

固定金利 137 2.480 2.400 5.200 0.850 0.816

変動金利 45 2.823 2.750 4.500 1.700 0.727

固定金利 655 2.156 2.000 14.600 0.150 0.885

変動金利 340 2.755 2.638 6.000 0.500 0.795

注)単位:%

短期借入

長期借入

○ 信用保証貸付の金利は相対的に高く、担保・保証条件は緩い。ただし、同一の借入企業に対 する信用保証貸付とプロパー貸付の差は平均的には生じていない。

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最後に、借入額第1位の金融機関からの借入条件が、信用保証を利用している企業と利 用していない企業とでどのように異なるかを比較し、信用保証貸付の特徴をみてみよう(表 1-67)。

表1-67 信用保証利用有無別にみた借入金額、約定金利、担保・保証条件

[短期借入]

<借入金額>

全回答 3千万円以下 3千万円超

5千万円以下

5千万円超 1億円以下

1億円超 3億円以下

3億円超

5億円以下 5億円超

244 154 43 18 15 3 11

100.0 63.1 17.6 7.4 6.1 1.2 4.5

1,063 389 205 173 173 56 67

100.0 36.6 19.3 16.3 16.3 5.3 6.3

<約定金利>

全回答 1%以下 1%超

1.5%以下

1.5%超 2%以下

2%超 2.5%以下

2.5%超

3%以下 3%超

217 8 15 53 44 49 48

100.0 3.7 6.9 24.4 20.3 22.6 22.1

1,005 57 181 270 238 126 133

100.0 5.7 18.0 26.9 23.7 12.5 13.2

<担保・保証条件(複数回答)>

全回答 担保 本人保証 第三者保証

255 43 123 11

16.9 48.2 4.3

1,093 392 844 78

35.9 77.2 7.1

注)上段:回答者数、下段:構成比(%)。借入額1位の金融機関からの最近1年間の借入内容。

[長期借入]

<借入金額>

全回答 3千万円以下 3千万円超

5千万円以下

5千万円超 1億円以下

1億円超 3億円以下

3億円超

5億円以下 5億円超

362 206 70 62 19 4 1

100.0 56.9 19.3 17.1 5.2 1.1 0.3

816 206 172 181 163 37 57

100.0 25.2 21.1 22.2 20.0 4.5 7.0

<約定金利>

全回答 1.5%以下 1.5%超

2%以下

2%超 2.5%以下

2.5%超 3%以下

3%超

3.5%以下 3.5%超

331 39 77 81 54 42 38

100.0 11.8 23.3 24.5 16.3 12.7 11.5

762 115 233 222 113 54 25

100.0 15.1 30.6 29.1 14.8 7.1 3.3

<担保・保証条件(複数回答)>

全回答 担保 本人保証 第三者保証

375 57 188 26

15.2 50.1 6.9

825 331 639 51

40.1 77.5 6.2

注)上段:回答者数、下段:構成比(%)。借入額1位の金融機関からの最近1年間の借入内容。

信用保証利用あり 信用保証利用なし

信用保証利用あり 信用保証利用なし

信用保証利用あり 信用保証利用なし

信用保証利用あり 信用保証利用なし

信用保証利用あり 信用保証利用なし

信用保証利用あり 信用保証利用なし

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借入金額については、信用保証利用企業の規模が小さいことを反映して、借入額 3 千万 円以下の企業の比率が、長期借入では5割超、短期借入では6割超と、いずれも高くなっ ている(信用保証を利用していない企業の同比率は2~3割程度)。

また、約定金利の分布をみると、信用保証貸付を利用している企業の場合、金利が2.5%

超の企業の割合が長期借入・短期借入ともに 40%以上と、信用保証を利用していない企業

の同 25%前後と比べて高くなっている。これは、信用保証貸付を利用している企業の信用

リスクが相対的に高いためと考えられる。

最後に、担保・保証条件についてみると、担保、本人保証、第三者保証のいずれも、信 用保証を利用している企業は、利用していない企業に比べて、提供している企業の比率が 低くなっている。2003年に金融庁が「リレーションシップバンキングの機能強化に向けた アクションプログラム」を発表して以降、政策的にも「担保や保証に過度に依存しない」

中小企業金融のあり方が求められてきた。本アンケート調査でも、こうした政策的な要請 を背景に、信用保証貸付において担保・保証要件が緩和されていることが確認されたとい えよう。

なお、信用保証貸付の金利については、理論的には、信用リスクを公的部門が負担して いる分だけ通常の民間金融機関による貸付(プロパー貸付)よりも金利が低くなると考え られる。そこで、この点について検証するため、信用保証を利用している企業が、信用保 証貸付において支払っている金利と、借入額第1位の金融機関から最近 1 年間に行った借 入において支払っている約定金利との差をみたのが表1-68である7。長期借入の場合、

両者の差は平均値で▲0.211%、中央値で▲0.113%と、信用保証貸付の金利の方が若干低く なっている。ただし、両者の差の標準偏差は 0.826 と相対的に大きく、統計的に有意な差 とはいえない。短期借入の場合、両者の差はほとんどなく、平均値で▲0.028%、中央値で

0%、標準偏差は0.498である。

表1-68 信用保証貸付金利と借入額 1 位の金融機関からの借入金利との差

全回答(社) 平均値 中央値 最大値 最小値 標準偏差

短期借入 100 -0.028 0.000 2.472 -1.625 0.498

長期借入 406 -0.211 -0.113 4.300 -2.800 0.826

注)単位:%。「直近の決算期末における残高がもっとも大きな信用保証貸付の約定金利」-「借入額1位の金融 機関からの最近1年間における借入の約定金利」

7 借入額第1位の金融機関に対して最近1年間に行った借入が信用保証貸付の場合、両者が同一 の借入を指す可能性がある。この場合、両者の差はゼロである。

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