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第3章 信用保証制度の実態

4. 信用保証制度改革の影響

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47 表1-69 最近 3 年間における信用保証貸付の変化

全回答

残高減少/

金利・保証料率上昇/

貸出態度が厳しくなった

変わらない

残高増加/

金利・保証料率低下/

貸出態度が緩やかになった

1,662 925 381 356

100.0 55.7 22.9 21.4

1,651 757 765 129

100.0 45.9 46.3 7.8

1,621 497 960 164

100.0 30.7 59.2 10.1

1,651 325 1,009 317

100.0 19.7 61.1 19.2

注)上段:回答者数、下段:構成比(%)。現在、信用保証貸付を利用している企業が感じる最近3年間での変化。

金融機関の貸出態度 残高

金利

保証料率

以上をまとめると、最近 3 年間に、信用保証貸付を利用している企業の半分程度が金利 の上昇や残高の減少を経験しているものの、総じて金融機関の貸出態度に大きな変化はな く、信用保証残高の減少は、主に利用者である中小企業の信用保証貸付への需要が低下し たためと推測される。ただし、一部の業種や、とりわけ小規模企業では、金融機関ないし は信用保証協会の貸出態度が厳しくなっている可能性がある。

そこで、こうした最近 3 年間における信用保証貸付の変化に対する制度改革の影響をみ るため、上記結果を、企業が信用保証貸付を利用した時期別にみてみよう。具体的には、

①06 年3月以前、②可変保証料率制度が導入された06 年4月から責任共有制度が導入さ れるまでの07年9月以前、③責任共有制度が導入された07年10月以後、に分けてみる(表 1-70)。

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表1-70 最近 3 年間における信用保証貸付の変化(利用時期別)

<残高>

全回答 減少 変わらず 増加

568 416 87 65

100.0 73.2 15.3 11.4

548 248 154 146

100.0 45.3 28.1 26.6

457 172 130 155

100.0 37.6 28.4 33.9

<金利>

全回答 上昇 変わらず 低下

558 241 287 30

100.0 43.2 51.4 5.4

553 264 240 49

100.0 47.7 43.4 8.9

453 239 170 44

100.0 52.8 37.5 9.7

<保証料率>

全回答 上昇 変わらず 低下

551 140 366 45

100.0 25.4 66.4 8.2

542 186 295 61

100.0 34.3 54.4 11.3

449 174 214 61

100.0 38.8 47.7 13.6

<金融機関の貸出態度>

全回答 厳しくなった 変わらない 緩やかになった

556 108 351 97

100.0 19.4 63.1 17.4

555 109 336 110

100.0 19.6 60.5 19.8

459 107 263 89

100.0 23.3 57.3 19.4

注)上段:回答者数、下段:構成比(%)。現在、信用保証貸付を利用している企業が感じる最近3年間での変化。

②06年4月~07年9月

②06年4月~07年9月

③07年10月以降

①06年3月以前

②06年4月~07年9月

③07年10月以降

①06年3月以前

③07年10月以降

③07年10月以降

①06年3月以前

②06年4月~07年9月

①06年3月以前

保証料率についてみると、可変保証料率制導入後の②、③の時期に信用保証貸付を利用 した企業の場合、保証料率が「上昇」したとの回答比率が、①の時期の信用保証利用企業 よりも高くなっている。一方で、保証料率が「低下」したと答えた企業の比率も、②、③ の時期において相対的にやや高く、可変保証料率制度の導入によって、企業の経営状況に 応じて保証料率の二極化が緩やかに進展している様子が窺える。ただし、②、③の時期に おいても、「変わらない」と答えた企業が半数程度と最も多く、制度変更による実際の保証 料率への影響は、これまでのところあまり大きくないといえる。

また、金融機関の貸出態度については、責任共有制度の導入後(③の時期)に信用保証 貸付を利用した企業の場合、「厳しくなった」と回答した企業の比率がやや高いものの、過 半数の企業は「変わらない」と回答しており、やはり制度変更の影響はあまり大きくない

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以上を踏まえると、少なくとも本調査が行われた2008年2月時点では、信用保証制度改 革が信用保証貸付の実際の利用に及ぼす影響はあまり大きくなかったと思われる。8

5. おわりに

本節で、日本の信用保証制度の実態として浮かび上がったのは以下の点である。

○ 信用保証貸付の利用率は小規模企業ほど高い。

○ 信用保証貸付は主に長期借入において用いられている。

○ 信用保証貸付は固定金利契約が多い。

○ 信用保証貸付の金利は相対的に高く、担保・保証条件は緩い。ただし、同一の借入企業に対 する信用保証貸付とプロパー貸付の差は平均的には生じていない。

○ 信用保証貸付における金融機関の貸出態度は、最近3年間で大きな変化はない。可変保証 料率制、責任共有制度の導入の影響もあまり大きくない。

信用保証貸付が中小企業金融において果たしている役割を解明するためには、企業や金 融機関は信用保証にどのような役割を期待し、その結果として信用保証貸付の契約条件が どのように決まっているのか、近年の制度改革によって信用保証貸付の利用にどのような 変化が生じたのかを、さらに厳密に分析する必要があろう。

8 責任共有制度導入の影響については、2009 年 2 月調査で、制度の適用対象か否かを区別して、

保証利用申込への対応を調べたところ、制度の適用対象企業で拒絶・減額との対応を受ける比率 がより高い(表2-60)。制度の適用対象企業に限定すると、企業の資金調達環境は厳しくな ったと考えるのが妥当であろう。

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第Ⅱ部 金融危機下における企業・金融機関との関係