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第 6 章 実験 24

6.4 考察

6.4.4 綺麗なジャグリングの支援

次に,実験後アンケートにて「システムの使用前後で,あなたの中で何か変わった点 があればお答えください」という自由記述で得られた回答を次に挙げる.

システムの使用前後で自身の中で変わった点:

ディアのきせきが汚い技を,きれいにできるように心がけようと思った.

(被験者A)

技の軌道を気にするようになった (被験者B)

普段の練習でディアの軌道について深く考えることはあまりなく,技の成功につ いて考えていた.今回の実験にてより「きれい」な技への練習意欲がわいた

(被験者G)

これらは道具の軌道のことについて記述されており,明らかに本システムを使用した 影響で軌道を綺麗にすることを意識したという旨のものである.また,実験の結果から 被験者たちが本システムを使って技を綺麗にしようとし,それに成功したこともわかる.

このことから,本システムの軌道描画フィードバックによって,綺麗なジャグリングが 支援できたと言える.

一方で,技の成功のための支援については当初は想定していなかった.しかし実際に は,軌道の描画によって抱えていた問題点を見つけ出し,技の成功率向上に向けて改善 をおこなった被験者がいた.このことから,軌道の視覚的なフィードバックは綺麗なジャ グリングのみならず,単純なジャグリングの技術向上に貢献できる可能性が示唆された.

このような結果が得られたことから,軌道の役割について考察をおこなう.

佐藤らは舞踏教育でモーションキャプチャによるCGやグラフから学習者が気付きを 得た理由を,情報が削られて特徴化したことによるものであると述べた[13].しかし今回 は練習動画に直接軌道を書き加えているため,特徴化は為されているが,情報が削られ ているとは考えづらい.もし,練習動画ではなく別画面に軌道のみを出力した場合,何 の練習をしているかがわかりづらくなってしまうことが危惧される.

気付きが得られたということは,学習者の中で運動イメージと実際の動きの比較が正 しく行われたということであり,これは軌道の描画をしたことで得られた結果である.こ のことから,今回題材としたディアボロを操作する際,学習者の中にある運動イメージ は,体の使い方とその結果である道具の軌道が混在したものなのではないかと考えられ る.実際の動きの映像と軌道を組み合わせることで学習者の中にあった運動イメージと 近しい映像が出来上がり,その差異を正しく判断することができたことで,学習者に気 付きが生まれる.

そこから「汚い(理想通りでない)軌道を綺麗に(理想通りに)修正したい」というモ チベーションが働くことで,綺麗な軌道を意識させることができるのではないだろうか.

一方,「出来ない技を出来るようにしたい」というモチベーションが勝った場合は,技の 成功率向上を意識させることになると考えられる.

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