本 稿
の目的
は, 委 託 者
が受 託 者 を検
査 に よっ て動 機 付 け る場 合
にお
い て, 受 託 者
が投 入
し た努 力 水 準
を自
己申 告
させ る こ との意 義 を
見いだす
こ と であ
っ た.
こ の 目的
を達 成 す
るた め に,
この
委 任 関 係 を ,
プ リン シパ ルと
エ イ ジェ ン トの 二 人 に よ るゲ ー
ム と し てモデ
ル 化 し た.
エ イジ
ェ ン ト但IIに参加 雑
と徽
責任条 件 , プ
リン シ パ ル側瞭 源 制 約 とCredible
C
。mmitment条 件
が課
さ れ た状 況
に お い て, 自
己申 告
手続 き
の導
入はプ リン シパ ル の期 待 効 用 を 改 善 す
る か否
か を 調べ た.
ま
ず ,
エ イ ジェ ン トの期 待 効
用 が偽 証 確
率 に対
し て無 差
別 とな
る要 因 (
これ
ら を α で の β 無差 別 条 件 と
v で の β無 差 別 条 件 と よ
んだ )
によ
っ て, 均 衡 が
二種
に大
別 でき
る ことを 確
か めた .
そ し て
、
v でのβ無 差 別 条 件 を含
む均
衡のな
か から , プ
リン シ パ ル に とっ て最も有
利な 均
衡を求 め ,
これ
が自
己申告
のな
い場 合
の最 適 解 と 一 致 す
ること を確
か め た.
この こと
から ,
v でのβ
無 差 別 条 件 を含 む 均 衡 を 導 く報 酬 体 系
によ
る限
り, 自
己申告
手続
きの特
別な 意 義 を
認 め るこ とが で き な かっ た.一
方,
プ リン シ パ ル が,
エ イ ジェ ン トに対
し て α で のβ無 差 別 条 件
を含
む均 衡
を導
く報 酬 体 系
を提
示す
る場 合
に は, 〈 1 ) 自
己申 告
のな
い場 合
に達
成可 能な 均 衡
に お け る期待 効 用 は
,
自 己 申 告 手 続 き を 導 入 す るこ とで (均衡
が な く な ら ない限
り) 凌 駕
さ れる こ と, (
2)自
己申 告 手 続 き
の導 入
が原 因
で均 衡
が存 在
しな く な
るケ ー
ス は, 検 査 技 術 と検 査 費 用
がと も
に相 当
に低
い場 合
に限 られ
ること ,
した
がっ て, 自
己申告 を 生
かす た
め に は一 定
レ ベ ル の検 査 技
術
が要 求
さ れ る場
合 が あ るこ と, (
3)
自 己申 告
の ない場 合
と は対 照 的
に,
プリ
ン シ パル が検
査資
源 制 約
に縛
ら れ るこ とな く , 検 査 確 率 を任 意
に小 さ く
して, 検 査
コ ストを節 約
でき
るこ と, (
4)
管 理 会 計 学 第
15巻 第
2号
し た がっ て
,
自己申告
のない場 合
と 対照 的
に,
検査
確率
が 小さ
い ほど期 待
効用が 大 き くな
ること
, ( 5 ) 自
己申告
がな
い場 合
に は.
ペ ナル テ ィと
し て,
エイ
ジェ ン トから
プリ
ン シ パ ルに対 す
る 多額
の支
払い を 要求
しな
け れば達 成
でき な
い よう
な期 待
効用
を,自
己申告
手続
き を導
入す
る こと
で,
ペ ナル ティ の最 低 基 準 値 を
正 に保
ちな
がら
達成
でき る
こと ,
な ど を 示 し た.
最
後
に今 後
の課
題 を述
べる .
モデ
ルを
よ り現 実感 覚
に 近づけ ること
で, 実
務へ の応 用
可能 性 を 高
め るべ き との観 点
か ら, 以
下の ようなモデ
ル 拡 張 を検 討 す
べ き と考 え
る. ( 1
)プ
レー
ヤー
はリス クに
中
立 でな く ,
これ を嫌 悪 す
る. (
2) 検 査 技 術
の水 準 な ど .
いく
つ かの環 境 情 報
は 共有
知識
ではな
い. ( 3
)検 査
の 執行者
は, プ
リン シ パ ルから
もエ イジ
ェ ン トか ら も独 立
し た, 第
三者 が 行 う . (
4) 検
査技 術
は検査 コ ス トの関 数
で あ る. (
5)
エ イ ジェ ン トの報 告
を見
たう え
でプ
リン シ パ ル が検 査
確率
を決 定 す
る、 ( 6 ) プ
レー
ヤー
の合
理性
は 限定 さ
れて い る.
謝辞
本 論
文作 成
にあ た り,
早稲
田 大学
佐藤紘 光 教 授
よ り懇切
な ご指 導
をいた だ き ま し た.
ま た,
レフェ リ
ー
の先 生 方
から
は 論 文改 善
のた
めの有 益 な ご 助
言 をいた だき ま
し た.
と も に, 心 よ
り御
礼申
し上 げ
ます .
注
1
融資先
企業
の資
金返済
能 力( 経 営 状
態,
返済状
況,
回収可能 性
など)
を判 断
し, 債 権
を正常 先, 要
注 意 先,
要 管 理 先,
破 綻 懸 念 先 な どの 区分に分 類 するこ と.
2 鳥 羽
[
101は,
監 査の主 題が言 明であ る場 合の監 査 を 表 現の監 査 (あ るいは情 報 監 査 ),
監葦
の 主題が人
間
の行 為である場 合
の監 査 を行 為の監
査(
あるいは実
態 監 査)
と定義
したう
えで, 前 者
は後 者の f発 展 型」 であ り、
よ り強 固 な 認 識の枠 組 を 有 してい るた めに,
前 者によれ ば,
監 査 人は その役 割 を よ り確 実に 遂 行 で き る とし て いる.
こ こ で, 前
者 を自
己 申 告のあ る検 査 機 構,
後 者 を自
己 甲 告のない検 査機
構 と考
え れば,
本 稿は,
鳥羽【
10]
の結論 を, 経 済
モ デル の分
析とい う手 法 に よっ て裏
付け よ う と す る も の と み る こと もでき る
.
3 こ れ は
,
正直 (benevolent)
なスー
パ バ イザ ー
を 雇っ た と考
え るこ とと 同じ であ る.
4 エ イジェ ン トは
,
プリンシパ ル に対し て嫉 妬
しな
いという仮 定
で あ ると もいえる.
s 会 計 清 報シ ステムを 用い る ことで
.
利 得z の代理変 数である業 績シグナル (す な わ ち 利 益 )y の値 を 当期 に知ることが でき る場 合 につ い ては,
鈴 木[ 8 ]
が,
情 報シ ステムのノイズの程 度 との関 連 に おいてエ イ ジェ ン トの動 機 付 けの有 効 性 を調べ ている.
6 エ イジェ ン トの資 金が十 分でない こ
と
を 考 慮 す る というこ とは,
エ イジェ ン トの有 限 責 任 制 約 を 明 示的
にモデ
ル 化 す る とい うこ と であ
り, Sappington [
4}
お よびStrausz[ 5 }
な どにおい ても,
こ の条 件
がモデ
ル に組 み 込 ま れている
.
7怠 惰を 告 白する場 合に は
,
エ イ ジェ ン トは検査 される現 場を 「あ た かも努力 し た かの ように1 あ えて粉 飾しよ う と はしないた め
,
プ リン シ パ ル はき わ めて容易
に努
力の 不在 を確か め る こ とができる,
とい う考
え方をモ デル化し たもの である.
な お.
ここまでの設 定で,
ゲー
ムに お け るエ イジェ ン トの戦 略は(
α, β)
,
プ リン シ パ ル の戦 略はu とい える.
8鈴 木圈 において は
,
θ=
1 とい う特 殊ケー
スに関
す舜均 衡の性質
が 詳 細に調べ られている.
9 ゲ
ー
ムの ルー
ルすべ て が必 ず しも 共有
知 識 で ない場合
につ いては,
プ リン シ パ ル のθ.
が 共 有 知 識でなく
,
こ れ をエ イジェ ン トが 過 小 評価あ るいは 過大 評 価 する 場合の均衡の性 質を鈴 木[
7]
が調べ てい る.
10 本 補 題 を はじめ とし て,
すべ て の補
題 お よ び 命 題の証 明は鈴
木[91に示 されて い る.
lt た と え ば
,
検 査 対 象 と なるエ イ ジェ
ン トが10,
000 ユ ニ ッ ト存
在 する の に対し て,
プ リンシ パ ル が持ち合
わせ てい る検査 資
源( 検査
員 など
) が2,
000ユ ニ ッ トしかない (と解 釈でき る) よ うな 状 況 を イメー
ジし て もよい だろう
.
The Japanese Association of Management Accounting
The Japanese Assooiation of Management Aooounting
動 機 付 け
におけ
る自己申告の意 義
12
駐
辺が最 右 辺より も 小 さv・・と は識
一纛 一
、1
.,圃覊 講
、.
剛 .。 から わか る
.
131 のよ うに
,
エ イ ジェ ン トお よび プ リン シ パル の双方にモラ ルハ ザー
ドが隼じる状
況 は,
ダゾル モ ラルハ ザth ド (detible mora1 hazard)と よ ば れ る
.
14 具
体
的に は,
(22)式は検
査資
源制
約がない場合
であり, (
23) 式
は検 査 資
源制 約
がξ
R ≦ξ
の場合
で あ る.
15 後 者 に おい て
β
は不 定 と な る,
す な わ ち,
β∈[O,
1}であ れ ば どの よ うな 値でも か ま わ ない.
16検
査資
源 制約のない場合 は, 検
査資 源 制 約のあ る場 合のξ→ 1 な る特 殊ケー
ス と考え ること ができる.
17
旌
式蠏
は w ・一β‘θ
一
ξ(’+kE )響 驪 一
鰍一
β晒 という
形を と るヅ リンシパ ル に は,
w 酬
ω ・と決 定
変
数β
の間に存在
す るこ の関 係の なか か ら,
自己 に最 も 有 利 な 組 み 合わ せを 選 択 す る余 地が残 され てい るが.
両 者の期 待 効 用はWl からもβか ら も影 響を受けない こ とが 示され るため,
どのような組 み合わせ を
実
現さ せ る か はプリ ン シパル に とって の関心事と は な ら な い.
し た がっ て,
こ こで はβ ; ・
O(
32)と仮定 し た
.
IS
利
得譱は,
少な
くともTdi >k を 満 た すほ ど に (十 分 ) 大 きい と仮定
す る.
19 (28 )式 は 弱 意の不 等 式であ る か ら
,
よ り厳 密 に 表現
するな らば 「(弱い意
味で)凌
駕 され る」 と な ろ う.
さて.
図1と図5か らわ かるように,
s < k の場 合に は。
+黄顧 、 〈厨
涜
σ 、 とな るか ら,
検 査 技 術の 水準が低く。
+苔≒
面2 〈 θ〈臨
と な る状 況に おい て は,
自己申 告が ない場 合の 均 衡は存在
する が,
α で の β
無差
別条 件
に よる均衡
は存 在
しない.
なお,
こ の命
題は,
混合戦
略均衡
を前
提と し て い る が, 仮
に純 粋 戦 略 均 衡 を 前 提とするな ら ば
,
こ こ で結 論 されてい る自己申告の意 義 が認 め ら れ ない こ とが,
鈴 木[
9]
に 示 さ れ てい る.
自 己 申告 手 続きの有
無と動機
付 けの パ フ ォー
マ ン ス の関係は,
純 粋 戦 略空間で はプレ
ー
ヤー
の選択 肢
が制
限 されす ぎ
てその全貌
を捉
え ることができず , 戦 略空 間
を混合 拡
大し て は じ め て こ れ を捉 えることができる ほ どに,
繊 細 (subtle >で 注意を 要する ものであると 考 えるこ と ができ よ う.
20 具 体 的には,
(1)か ら (5) までの条件
にα=
1なる制 約 を 追 加 する と、
均 衡 を 与 える連立方 程 式の解
が存
在しない.
すな
わち、 方
程 式は不 能 と な る.
参 考 文 献
[1】Kaplow
,
L.
and S.
ShaveU,
; Optimal Law Enfbrcement with SeHf−
Report血g ofBehavior,
Journal o/
Pot
#icalEconomy
,(1994 ),583−
606.
[2]
Malik
,A .
:Self −
Reporting and the Design of Policiesfor
Regula七ingStochas
七icPo
菫lution, Journal o∫刃7しvironmental Economics and Management,
(1993 ),241−
257.
[
3亅
Milgrom , P.
and J.
Roberts,
;Economics,
Orpanization
and Management,
Prentice H誠 ,ユ
992, (
奥野 正寛,
伊 藤秀 史 ,
今井 晴
雄,
西村理,
八木 甫
訳 :組織の経 済学,NTT 出 版
,1997 ) .
[ 41SappingtoI1 ,
D .
:Limited
Liab
避tyContra
(元sbetween
Principal
andAgent,
Journal
o/
1≡7α )π07几乞c コrソLeOT Ψ,
(1983 ),
1−
21.
[5】Strausz, R
.
:Delegat10n
Qf MQnitoring iロ aPrincipal−Agent
Relationship,Review
ofEco−
nomic
Studies
,( 1997)
,337−357.
[
6} 鈴
木孝
則 : モ ニ タ リン グ に よ る 動機
付 け,管
理 会 計学 , 第 8 巻 , 第
1・
2号 ,
(2000
),139−
156.
{ 7]
鈴木 孝 則
:動
機付
け に お け るモ ニ タ リング 技術の意 義 ,
管理会 計 学 , 第 9 巻 , 第 1 号 ,
(2000),
61
−
89,
管
理会 計 学 第
15巻 第
2号
[
8
}鈴
木孝
則 :業績シ グ ナル に よ るエ イ ジェ ン トの動機
付 け,H 本 経 営
シス テム学 会 誌 , 第 19 巻 ,
第
1号
,(2002 ),33−39.
[ 9] 鈴 木 孝 則
:動 機 付 け に お け る 自
己申告
の意 義
,早 稲
田大 学 審 査 学 位 論 文 ( 博
士)
,2006,
[ 10】 鳥 羽 至 英
:財 務 諸 表 監 査
の基 礎
理論 , 国
元書 房 ,
2000.
ドキュメント内
The Japanese Association of Management Accounting NII-Electronic Library Service
(ページ 73-77)