高温クリープ強度などODS鋼における優れた特性は,微細に分散した酸化物ナノ クラスターによると考えられている.酸化物分散形態を原子レベルから検討するため,
本章ではモンテカルロシミュレーションによりODS鋼中の酸化物の分散形態を検討し た.以下に得られた結果を示す.
(1) バルクのFe-YO-TiO2モンテカルロシミュレーションを様々な組成,温度条件で
行った.YO粒子は組成,温度に関わらず粒子数個程度のクラスターを形成し,
シミュレーションセル内に均等に分布した.TiO2粒子は比較的大きなクラスター を形成し,その寸法はYO粒子の組成および温度条件によって変化した.
(2) 温度1000[K]と1400[K]でのTiO2粒子の析出物寸法を比較すると,やはり1400[K]
の方が粗大化する傾向が認められた.ただし,YO粒子の組成が比較的高い Fe-0.6wt%YO-0.2wt%TiO2の組成では,1400[K]でもTiO2粒子の粗大化が抑制さ
れていた.
(3) Fe-YO-TiO2-Al系のシミュレーションにより,Al原子の添加はもともと小さく 分散するYO粒子をより凝集しにくくすることがわかった.また,YO粒子はAl 原子近傍に位置していた.
(4) 原子空孔を導入したFe-YO-TiO2系のLMCシミュレーションにより,原子空孔 はYO粒子の周囲に集中することがわかった.その理由は,Feのbcc格子におい て,最近接距離でのYO-YO結合の強い反力を原子空孔が緩和するためである.
(5) Σ5傾角対称粒界近傍についての検討では,結晶粒界から離れた領域ではバルク
での検討と同じ分散形態が得られる一方,結晶粒界面から第1近接面に結晶粒界 を挟んで対を成すようにTiO2粒子と原子空孔の偏析がみられた.TiO2粒子が特 に顕著に粒界に偏析するが,YO粒子にはそのような傾向は認められなかった.
第 4 章 単結晶のせん断変形シミュ レーション
4.1 解析条件
図 4.1にシミュレーション手順を示す.まず,bcc構造を対象とした圧力0[Pa]の NPTアンサンブル格子モンテカルロ法(NPT-LMC法)により,1500[K]から600[K]ま で20[K]刻みで温度を下げる焼鈍し法(Simulated Annealing: SA)で初期構造を作成し た.図4.2に得られた構造の例(粒子数241,920)を示す.(¯1¯12)面をすべり面とし,[111]
方向へのせん断を行うために,x,y,z軸をそれぞれbccの[111],[¯110],[¯1¯12]としてい る.NPT-LMC法で作成した分散形態は,前章のNVTアンサンブルで作成した物と ほぼ同じである.その後,分子動力学法により600[K]で20[ps]の緩和計算を行った.
さらに,10[K]で20[ps],応力が0となるようにセル寸法を制御しながら緩和計算を行 い,せん断シミュレーションの初期状態とした.ここで,10[K]の極低温としたのは転 位に関する先行研究(44)(45)と同じく温度の影響と外力のそれを切り分けるためである.
zx成分のせん断は,毎ステップひずみ増分∆εzx= 5.0×10−7 を与えることで行っ た.温度は10[K]とし,せん断シミュレーション中はせん断方向(zx方向)を除いた応力 成分(σxx, σyy, σzz,σxy,σyz)を0[GPa]に制御した.YO粒子の組成は0.2,0.6wt%,TiO2
粒子の組成を0.2,0.4wt% の4通りとし,酸化物を添加しないFe完全結晶の場合も解 析した.いずれも,全方向周期境界条件でバルクとしている.
by Simulated Annealing with NPT-LMC from 1500[K] to 600[K]
Structual Search
by Molecular Dynamics at 600[K] for 20[ps]
Structual Relaxation 1
by Molecular Dynamics at 10[K] for 20[ps]
Structual Relaxation 2
by Molecular Dynamics at 10[K]
strain rate zx 5.0x10 [1/fs]
Shear Deformation
ε -7
Fig.4.1 Simulation procedure for shear de-formation.
11.2[nm]
19.7 [nm]
13.0[nm]
y [110]
z [112]- -x [111]
-Fig.4.2 Example of simulation cell for shear deformation.