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5.2 解析結果

5.2.2 変形破壊の様相

図5.5〜図5.9に各組成の原子配置変化を,各原子のポテンシャルエネルギーで色分

けして示す.純鉄の場合を見ると,図5.5(c)と(d)の間(第1応力ピーク前後)に発生 した帯状の分布が図5.5(d)と(e) の間(応力の下げ止まる点)にシミュレーションセル 全体に伝播している.帯状の分布の境目で相対的なすべり変形を生じており,特に図

5.5(e)では比較的高エネルギーを示す領域に原子配置のずれが見られる.酸化物を添

加した他の系の図5.5〜図5.9の(a)〜(g)を見ても,せん断帯の方向に違いがあるが,

εzz =0.01までの変化は大きく変わらない.しかし,その後の変形の進行と破壊の形態

は各組成で大きく異なるため,以下それぞれの系について記述する.

Pure-Fe

図5.5(f)を見ると帯状の分布の一部境界領域に高エネルギー箇所が生じており,そ

の後図5.5(g),さらに(h) にかけて系全体に高エネルギー箇所が現れ,帯状分布は不明

瞭となる.図5.5(f)と(h)を参照すると,高エネルギーとなっている部分は(f)の帯状 領域の境目ではなく,新たなすべりが生じていることが確認できる.新たなすべりが 系全体に伝播した図5.5(g)と(h) の間から応力が急増し,その変形が飽和した後,最

終的に図5.5(i)に示すように粒界でのへき開を生じた.

Fe-0.2wt%YO-0.2wt%TiO2

図5.6で同じ位置に点在する濃い青の原子はエネルギーが低い酸化物粒子である.図

5.2(a)と比べるとYO粒子であることが分かる.純鉄の場合と同様に,結晶内部での

変形が図5.6(h)で飽和した後,すべりと粒界が交差する高いエネルギー部分からへき

開を生じて破断した.

Fe-0.2wt%YO-0.4wt%TiO2

応力の第2ピークが最も低ひずみで生じ,その後の応力減少も段階的であった系で,

結晶での変形飽和後の図5.7(h)を見ると,粒内き裂による高エネルギー領域(赤い帯 状の領域)が下の結晶をほぼ縦断している.その形態は,粒界と結晶内部のすべり交差 部を接続したようなものとなっている.その後もε = 0の条件のため,このき裂が開 口するように変形が生じている(図5.7(i)).

Fe-0.6wt%YO-0.2wt%TiO2

この系も応力第2ピーク後,段階的に応力が減少していたが,やはり粒内き裂を生 じている(図5.8(h)).ただし,先述のFe-0.2wt%YO-0.4wt%TiO2とは異なり,粒界を 起点とせず,完全に粒内から発生している.図5.2(c)を見ると多数のYOクラスター が結晶粒内に存在しており,図5.8でも青い粒子として確認できるが,図5.8(g)の上 部で斜めの高エネルギー領域に複数のYO粒子が認められる.図5.8(h)のき裂を見る とそのYOを起点としていることが確認できる.

Fe-0.6wt%YO-0.4wt%TiO2

最も高い応力を示した系である.εzz =0.2の図5.9(i)で粒界近傍でのへき開が発生 し始めているが,粒内き裂も認められる.また,へき開はTiO2が偏析している粒界

そのものではなく,その周囲のFe原子部分で生じており,この系の界面の結合が強 いことが分かる.図5.3を再度確認すると,この系ではTiO2 が粒界面に均等に分布 していることが分かる.一方,同様にTiO2が粒界に多いFe-0.2wt%YO-0.4wt%TiO2 は第2ピークが最も低ひずみで粒内き裂と生じているが,図5.3(b)を見るとTiO2の 分布にむらがあり,図5.3(d)よりもTiO2同士が密接しているように見られる.これ が粒界-粒内交差すべり部へのき裂発生を促した可能性がある.粒界面上部の高エネル ギー領域が起点となってへき開が発生しているが,同時にFe-0.2wt%YO-0.4wt%TiO2

Fe-0.6wt%YO-0.4wt%TiO2 と同様なき裂と思われる高エネルギー領域も粒界の近くで

発生している.しかし,前項で示したように応力-ひずみ応答は粒界でへき開を起こし た純鉄と同様の挙動となっていることから粒界でのへき開が支配的な破壊モードと考 えられる.

(a) εzz= 0 (b)εzz= 0.025 (c) εzz= 0.050 (d)εzz= 0.075 (e)εzz= 0.100

(f)εzz= 0.125 (g) εzz= 0.150 (h)εzz= 0.175 (i) εzz= 0.200

z [001]

x y

-1.37

-1.56 [eV]

Fig.5.5 Snapshots colored by potential energy (pure iron).

(a) εzz= 0 (b)εzz= 0.025 (c) εzz= 0.050 (d)εzz= 0.075 (e)εzz= 0.100

(f)εzz= 0.125 (g) εzz= 0.150 (h)εzz= 0.175 (i) εzz= 0.200

z [001]

x y

-1.37

-1.56 [eV]

Fig.5.6 Snapshots colored by potential energy (Fe-0.2wt%YO-0.2wt%TiO2).

(a) εzz= 0 (b)εzz= 0.025 (c) εzz= 0.050 (d)εzz= 0.075 (e)εzz= 0.100

(f)εzz= 0.125 (g) εzz= 0.150 (h)εzz= 0.175 (i) εzz= 0.200

z [001]

x y

-1.37

-1.56 [eV]

Fig.5.7 Snapshots colored by potential energy (Fe-0.2wt%YO-0.4wt%TiO2).

(a) εzz= 0 (b)εzz= 0.025 (c) εzz= 0.050 (d)εzz= 0.075 (e)εzz= 0.100

(f)εzz= 0.125 (g) εzz= 0.150 (h)εzz= 0.175 (i) εzz= 0.200

z [001]

x y

-1.37

-1.56 [eV]

Fig.5.8 Snapshots colored by potential energy (Fe-0.6wt%YO-0.2wt%TiO2).

(a) εzz= 0 (b)εzz= 0.025 (c) εzz= 0.050 (d)εzz= 0.075 (e)εzz= 0.100

(f)εzz= 0.125 (g) εzz= 0.150 (h)εzz= 0.175 (i) εzz= 0.200

z [001]

x y

-1.37

-1.56 [eV]

Fig.5.9 Snapshots colored by potential energy (Fe-0.6wt%YO-0.4wt%TiO2).

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