第 4 章 ステンレス鋼の腐食挙動に及ぼす pH の影響
4.3 結果および考察
4.3.1 SUS304 の局部腐食挙動
4.3.1.1. pH8.4の溶液中における影響
pH8.4に調整した基準液に0.05M、0.5M、5M NaClを添加した溶液および基準
液中におけるSUS304の分極曲線測定結果を図4-2に示す。いずれの濃度であっ ても不働態領域を確認することができ、不働態保持電流密度が10-3~10-2mA/cm2 付近で一定の電流値を示している。したがって、不働態保持電流密度にNaClの 濃度の違いは影響を及ぼさないと考えられる。また、NaClの濃度が高くなるに つれて孔食電位は卑化していることがわかる。これは、Cl-の濃度の増加に伴い 孔食萌芽、孔食発生サイトが増加し、局部腐食が容易に発生するためであると 考えられる。
図4-2 pH8.4の溶液中におけるSUS304の分極曲線
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
NaCl無し 0.05M NaCl 0.5M NaCl 5M NaCl
Current density, i / mA
-2 cm・
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
SUS304 ほう酸緩衝溶液 pH8.40
96
4.3.1.2. pH4.0の溶液中における影響
pH4.0に調整した基準液に0.05M、0.5M、5M NaClを添加した溶液中における
SUS304の分極曲線測定結果を図4-3に示す。図4-2と同様にいずれの濃度であ
っても不働態領域を確認することができ、不働態保持電流密度は
10-3~10-2mA/cm2付近で一定値を示している。したがって、不働態保持電流密度
にNaClの濃度の違いは影響を及ぼさないと考えられる。また、孔食電位も濃度 の増加に伴い卑化していることがわかる。よってNaClの濃度が増加すると孔食 が発生しやすくなると考えられる。
図4-3 pH4.0の溶液中におけるSUS304の分極曲線
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
Current density, i / mA
・
cm-2
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
0.05M NaCl 0.5M NaCl 5M NaCl
SUS304 ほう酸緩衝溶液 pH4.00
97
4.3.1.3. pH2.0の溶液中における影響
pH2.0に調整した基準液に0.05M、0.5M、5M NaClを添加した溶液中における
SUS304の分極曲線測定結果を図4-4に示す。図4-2、図4-3と同様にいずれの濃
度であっても不働態領域を確認することができ、不働態保持電流密度は
10-2mA/cm2付近で同程度の値を示している。したがって、不働態保持電流密度
にNaClの濃度の違いは影響を及ぼさないと考えられる。また、濃度の増加に伴 い孔食電位が卑化していることがわかる。孔食電位も濃度の増加に伴い卑化し ていることがわかる。よってNaClの濃度が増加すると孔食が発生しやすくなる と考えられる。
図4-4 pH2.0の溶液中におけるSUS304の分極曲線
4.3.1.4. pHを変化させたときのSUS304の局部腐食挙動
図4-5に基準液にNaCl 0.05Mを添加し、pH8.4、pH4.0、pH2.0に調整した溶 液および基準液におけるSUS304の分極曲線を示す。基準液にNaCl 0.05Mを添 加してpH調整をした溶液と基準液を比較すると、孔食電位は卑化していること がわかる。NaClの添加によって溶液中のCl-の増加によるものであると考えられ る。また、NaClを添加してpH8.4、pH4.0、pH2.0に調整したいずれの溶液も孔 食電位の変化は小さいことがわかる。よってSUS304に及ぼすpHの影響は小さ いと考えられる。
図4-6に基準液にNaCl 0.5Mを添加し、pH8.4、pH4.0、pH2.0に調整した溶液 および基準液におけるSUS304の分極曲線を示す。図4-5同様に基準液にNaCl
0.05Mを添加してpH調整をした溶液と基準液を比較すると、孔食電位は卑化し
ていることがわかる。NaClの添加によって溶液中のCl-の増加によるものである
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
Current density, i / mA
・
cm-2
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
0.05M NaCl 0.5M NaCl 5M NaCl SUS304 ほう酸緩衝溶液 pH2.00
98
と考えられる。図4-5と比較すると孔食電位は卑化している。これは、NaClの 濃度が0.5Mになったことによって、溶液中のCl-が増加したことによるもので あると考えられる。また、NaClを添加してpH8.4、pH4.0、pH2.0に調整したい ずれの溶液も孔食電位の変化は小さいことがわかる。よってSUS304に及ぼす pHの影響は小さいと考えられる。
図4-5 基準液にNaCl 0.05Mを添加してpH調整した溶液中および 基準液中でのSUS304の分極曲線
図4-6 基準液にNaCl 0.5Mを添加してpH調整した溶液中および
基準液中でのSUS304の分極曲線 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
基準液 pH8.4 0.05M NaCl pH8.4 0.05M NaCl pH4.0 0.05M NaCl pH2.0
Current density, i / mA
・
cm-2
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
基準液 pH8.4 0.5M NaCl pH8.4 0.5M NaCl pH4.0 0.5M NaCl pH2.0
Current density, i / mA
-2 cm・
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
99
図4-7に基準液にNaCl 5Mを添加し、pH8.4、pH4.0、pH2.0に調整した溶液お よび基準液におけるSUS304の分極曲線を示す。図4-5同様に基準液にNaCl 5M を添加してpH調整をした溶液と基準液を比較すると、孔食電位は卑化している ことがわかる。NaClの添加によって溶液中のCl-の増加によるものであると考え られる。図4-5、図4-6と比較すると孔食電位は卑化している。これは、NaCl の濃度が5Mになったことによって、溶液中のCl-が増加したことによるもので あると考えられる。また、NaClを添加してpH8.4、pH4.0、pH2.0に調整したい ずれの溶液も孔食電位の変化は小さいことがわかる。よってSUS304に及ぼす pHの影響は小さいと考えられる。
図4-7 基準液にNaCl 5Mを添加してpH調整した溶液中および 基準液中でのSUS304の分極曲線
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 10-7
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104
基準液 pH8.4 5M NaCl pH8.4 5M NaCl pH4.0 5M NaCl pH2.0
Current density, i / mA
-2 cm・
Potential, E / V vs. Ag / AgCl / KCl sat.
SUS304 ほう酸緩衝溶液 pH8.40
100