2.6 実験結果および考察
2.6.1 硫酸ナトリウム溶液中における不働態化挙動
2.6.1.2 pH の影響
40
図 2-12 に定電位分極時の電気量と濃度の関係を示す。電気量 は図の電流値よ り、式(7)を用いて算出した。ここで は電流、 は時間を示す。
Q = i t・・・・・・・・・(7)
大気開放下における電気量は、硫酸イオン濃度の増加にともない大きくなる ことがわかる。これは、硫酸イオン濃度の増加にともなう溶存酸素量の減少に よるものであると考えられる。脱気溶液ではすべての溶液でほぼ同様の値を示 した。また、算出した電気量すべてが不働態皮膜の生成に費やされているとは 限らない。
41
図2-14 Crの電位-pH図 (Pourbaix Diagram)13)
図2-13 硫酸ナトリウム溶液中における分極曲線 (大気開放)
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106
pH2 pH4 pH6 pH8 pH10
Potential, E/V vs. Ag/AgCl/KCl sat.
Current density ,i /µA·cm-2
42
図2-15にpHを5種 (pH2~10) に調整後、脱気した0.5M硫酸ナトリウム溶 液中おける分極曲線測定結果を示す。pH2のカソード電流の挙動が他の曲線と 異なる挙動を示した。大気開放下で測定した結果と同様に、pHが低い環境では 水素イオンが多く反応性が高いため、水素発生反応が活発になりカソード電流 が大きくなったと考えられる。pH6~10のカソード電流は同様の挙動を示した。
また、pH2の溶液では大気開放下で測定した結果と同様に1.0V付近で過不働態 溶解が確認できる。
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106
pH2 pH4 pH6 pH8 pH10
Potential, E/V vs. Ag/AgCl/KCl sat.
Current density ,i /µA·cm-2
図2-15 硫酸ナトリウム溶液中における分極曲線 (脱気溶液)
43
0 2 4 6 8 10 12
-1.0 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0
0.5M Na
2SO
4
Deaerated 0.5M Na
2SO
4
Immersion potential, E/V vs. Ag/AgCl/KCl sat.
pH
図 2-16 に pH と浸漬電位の関係を示す。大気開放において、浸漬電位の差は 観測されなかった。脱気溶液では、pH6~10の浸漬電位が卑化したが、これは溶 存酸素が極めて少ないためである。pH2~4 においては水素発生が容易に生じる
ため、pH6~10に比べ浸漬電位が貴化し大気開放の測定結果と同様の値を示した
と考えられる。
図2-17に分極曲線模式図を示す。pH2, 4では溶液中に水素イオンが多量に存 在するため、カソード反応が上昇し、浸漬電位が貴化したと考えられる。水素 発生反応は式(8)のようになる。
(8)
2H++2e-→H2
i
E3 E4 E
カソード反応
アノード反応
図2-17 分極曲線模式図
図2-16 pHと浸漬電位の関係
44
図2-18にpHと臨界不働態化電流密度の関係を示す。臨界不働態化電流密度は 図2-19の模式図に示すピークの値を分極曲線結果から読み取った。図2-18より、
pH2の臨界不働態化電流密度が最も高い値を示していることがわかる。pH2で は皮膜の生成が水素イオンにより抑制されるため、高い値を示したと考えられ る。臨界不働態化電流密度の値が低くなるほど不働態化しやすいということか ら、pH2で最も不働態化しにくいと考えられる。
図2-20にpHと不働態保持電流密度の関係を示す。大気開放、脱気溶液とも にほぼ同様の値を示した。酸性領域においてはpHの増加にともない不働態保持
0 2 4 6 8 10 12
0 10 20 30 40 50
Deaerated 0.5M Na
2SO
4
pH Current density ,i crit /µA·cm-2
図2-18 pHと臨界不働態化電流密度の関係 (脱気溶液)
図2-19 臨界不働態化電流密度の模式図
45
電流密度が低い値を示し、pH6で最も低い値を示した。このことより、中性環 境で最も安定な皮膜が生成したと考えられる。pHが低い環境下では皮膜の生成 が水素イオンにより抑制されるため、不働態保持電流密度が高くなると考えら れる。
0 2 4 6 8 10 12
0 5 10 15 20
0.5M Na2SO4
Deaerated 0.5M Na2SO4
pH Current density ,i pass /µA·cm-2
0V
図2-20 pHと不働態保持電流密度の関係
46