第 7 章
4. 冷却時に最初に現れたマルテンサイト相は, 加熱時においては, 最後に消滅し, それぞれの自己調 整構造は同じような熱ヒステリシスを有している. また, 同一視野において, 複数回の冷却・加熱観 察を行ったが, 組織再現性は見られなかった.
5. HPV同士の接合面におけるKC条件の解析と同様に, 2HPVCと6HPVCはそれぞれ, 生成と成 長において最も好ましい形態である.
6. 環状BSE検出器や冷却ステージを備えたFE-SEM観察およびEBSD解析による動的観察手法 を確立し, 熱弾性マルテンサイト変態における組織形成挙動の解明に対して, 本手法が非常に有 望な手法であることを示した.
また, 時効処理を行い, Ti3Ni4を整合析出させた試料を用いて等温変態を調査した.
7. 平均約110 nmの直径を持つレンズ状Ti3Ni4を時効処理により析出させたNi過剰Ti-Ni合金に おいて, 電気抵抗測定および SEM内その場観察により, B2→R および R→B19’マルテンサイト変 態の時間依存性を確認した.
8. SEM 内その場観察により, R→B19’変態における時間依存性が, 明瞭に示された. 等温 B19’相 は, 粒内および粒界の両方より生成する.
合金組成, 熱サイクル, 母相粒径の 3 つのパラメーターを変化させ, 自己調整構造の形成を調査し た.
9. Ti-50.00 at%Niでは, 形成する自己調整構造のほとんどが2HPVCであったが, Ni過剰組成にな
るにつれ, 3HPVCの割合が増え, Ti-50.75 at%Ni以上になると6HPVCが多く形成するようになる.
また, Ni 過剰組成になるにつれ, HPV のサイズは小さくなり, 自己調整構造の数密度は増加する.
これは, Ni 過剰組成になるにつれ, 固溶強化により合金強度が上昇することと, KC 条件を満たす HPV同士の界面を形成するためのHPV回転量θが減少することに起因しており, 塑性変形が生 じにくくなるためである.
10. 熱サイクルを与えると, 6HPVCの形成は飛躍的に増加する. また, 熱サイクルを与えると, 転位が導 入され, 一種の加工硬化が生じていた. 従って, 合金強度の上昇により, 塑性変形が生じにくくなっ たため, 6HPVCの形成が増加した.
11. 数百μm以上の粒径を持つ粗大粒においては, 巨大な2HPVCの形成が顕著であり, 6HPVCは ほとんど形成しないが, 粒径が小さくなるにつれ, 2HPVCの大きさは小さくなり, また6HPVCの形成 は増加する. これは, 6HPVCに変化する前の2HPVCの成長を, 結晶粒界が拘束するためである.
また, 数十μmの結晶粒に比べ, 数百μmの結晶粒では粒内の強度が低く, 塑性変形が生じや すいことが示唆された. さらに, 数十 μm 程度の粒径の結晶粒であっても, ミスオリエンテーションの 小さい小角粒界の割合が高い領域においては, 粗大粒と同様に, 巨大な 2HPVC が形成するの に対し, ミスオリエンテーションが大きい大角粒界の割合が高い領域においては, 6HPVCが顕著に 形成する. 小角粒界では, 2HPVCの成長を十分に拘束出来ないことを意味している.
12. Ti-Ni 合金の B2→B19’マルテンサイト変態時において, 少なくとも, 組成, 熱サイクル, および母相 粒径(粒界)の3因子が自己調整構造の形成に影響を与えることが明らかとなった.