過去 6 年間に検出した腸管出血性大腸菌(EHEC)のPFGEパターン
4 結 果 4. 1 AOC の季節的変動
4 結 果
より優位に高値を示した。この時期,植物プランクト ンのAnabaena sp.が異常発生しアオコ形成が観察され た。このことは,上流におけるAOC上昇はアオコ形成 と関連すると考えられ,プランクトン発生により細菌 に同化されやすい有機炭素が増加した可能性が示唆 された。
以上のことから,AOCは環境水の検査にも応用が可 能であることが示されたが,試験法の簡便化と被検菌 の改良が必要と考えられた。
参 考 文 献
1 ) 佐々木久雄,小山孝昭,粟野健,三沢松子,阿部
郁子,大庭和彦:宮城県保健環境センター年報,22,
169,(2004).
2 ) 金子光美: 飲料水の微生物学 ,(1992),(技報 堂出版).
3 )Kooij D.van der, Veenendaal H. R.: Determination of the Concentration of Easily Assimilable Organic Carbon
(AOC)in Drinking water with Growth Measurements Using Pure Bacterial Cultures, THE AOC manual,
(1995),(KIWA).
4 ) 上水試験方法 解説編,p935(2001),(社団法人 日本水道協会).
1 は じ め に
生あん中のシアン化合物については,食品衛生法に おいて「シアン化合物の検出されるものであってはな らない」と定められている。また,その場合の検出法 として,穀類・豆類・果実等のシアン化合物試験法を 準用している。即ち,生あん中に含有するシアン及び シアン配糖体中のシアンを遊離シアン総量として測定 する方法で,本県ではそれに基づき標準作業書(SOP)
を作成し,生あんの検査を行っている。
今回,生あんの収去検査で,定性試験(ピクリン酸 紙法)で陽性を示したが,定量試験(硝酸銀滴定法)
で陰性となった事例があり,その原因調査を行った結 果,漂白剤として使用された次亜硫酸ナトリウムが,
二酸化硫黄として残存したことによる疑陽性であった ことを確認したので報告する。
2 方 法
2. 1 シアン化合物の検査法
シアン化合物の定性試験はピクリン酸紙法(図1 ) で,定量試験法は硝酸銀滴定法(図2 )で行った。
2. 2 二酸化硫黄の検査法
二酸化硫黄の検査は,滴定法と比色法1)があり,本 来はまず滴定法で測定し,滴定量0.1ml以下の物につ いては比色法を用いるようにしている。今回はどの程 度二酸化硫黄が含まれているか見当がつかず,また検 体量の残量が少なかったことから初めから比色法で行 うことにした。比色法は食品衛生検査指針をもとに作 成した標準作業書(SOP)に従い行った。この方法は,
二酸化硫黄として0.05〜2.0μg/mlの範囲で直線性があ り,定量下限値は0.5mg/kgである。
2. 3 二酸化硫黄の影響確認試験
シアン化合物,二酸化硫黄のいずれも検出されなかっ
た生あんに,シアン化合物定性試験で陽性を示した生 あんの製あん所で使用していた漂白剤(製品名ハイド ロサルファイト,次亜硫酸ナトリウム94%含有)及び 二酸化硫黄標準品を添加し,定性試験における影響を 検討した。
水と生あんをブランクとし,シアンの絶対量で0.2,
1.0,5.0,10.0,15.0μgを水に添加して標準対照とした。
添加確認試験は,今回シアン化合物定性試験法で陽性 を示した生あん中に残存していた二酸化硫黄の濃度が 0.024g/kg即ち24μg/mlであったこと,添加物使用基 準として定められている二酸化硫黄としての最大残存
生あん中のシアン定性試験で疑陽性反応を示した事例
A Case of False Positive for The Determination of Cyanide in Bean Paste Using Picric-acid Method
佐藤 由紀 千葉 美子 H岡 勝悦 川向 和雄*1
Yuki SATO,Yoshiko CHIBA,Syouetsu KUZUOKA Kazuo KAWAMUKAI
*1 現 食と暮らしの安全推進課
キーワード:生あん;疑陽性反応;ピクリン酸紙法
Keywords:bean past;false positive;picric-acid method
生あん(乾燥重量として10g)
│ ←クエン酸緩衝液(pH5.9)50ml ピクリン酸紙を吊るしたコルク栓で密栓
│ 25〜35℃ 3 時間放置
│ │ ←酒石酸 2g
再び密栓
│ 50〜60℃ 1 時間放置 ピクリン酸紙の色調を判定
(陰性:黄色 陽性:淡褐色から赤褐色)
図 1 定性試験(SOP № C022-2)
生あん(乾燥重量として 10g)
│ ←クエン酸緩衝液(pH5.9)200ml 密栓,混合
│ 25〜35℃ 3 時間放置 水蒸気蒸留
1%KOH 5ml でアルカリ捕集 溜液 150ml を採取
│ ← p-ジメチルアミノベンジリデンローダニン溶液 0.5ml 0.01N 硝酸銀溶液で滴定
図 2 定量試験(SOP № C022-1)
量が0.030g/kg即ち30μg/mlであることから,最大添 加量を30μg/mlとし,水と生あんにそれぞれ二酸化硫 黄を5,10,20,30μg/mlの濃度になるように添加し,
対照と比較することにより判定を行った。また,製あ ん所で使用していた漂白剤のハイドロサルファイト を,二酸化硫黄として5,10,20,30μg/mlの濃度に なるように添加し,同様に対照と比較することにより 判定を行った。
3 結 果
3. 1 シアン化合物の検査結果
定性試験は,食品衛生検査指針2)によりシアンの絶 対量が0.2μgで淡褐色,15μgで褐色,50μ-50gで赤褐 色へと色調が変化するのを肉眼で比較判定すると定め られていることから,定性の対照としてシアン絶対量 を0.2,15,50μgとした。その結果収去品の含有量は 0.2μgと15μgの間にあると判定した。その後実施し た定量試験(硝酸銀滴定法)で確認したところ定量下 限値未満であった。
3. 2 二酸化硫黄検査の検査結果
定性試験で陽性を示した生あんから,二酸化硫黄とし て0.024g/kgが検出された(図3 )。これは製あん所の漂 白剤の使用濃度から計算した値とほぼ一致していた。
3. 3 二酸化硫黄の影響確認試験結果
漂白剤を使用していない生あんに漂白剤及び二酸化 硫 黄 標 準 液 を 段 階 的 ( 二 酸 化 硫 黄 残 存 値 と し て 0.005g/kg〜0.030g/kg)に添加し,ピクリン酸紙によ る呈色状況を検討した。その結果,漂白剤,二酸化硫 黄 標 準 液 の い ず れ に お い て も , 二 酸 化 硫 黄 と し て
0.005g/kg以上残存すると呈色を示し陽性と判定され
る(疑陽性)ことが確認された。
4 ま と め
今回生あんの収去検査で,定性試験(ピクリン酸紙 法)で陽性を示したが,定量試験(硝酸銀滴定法)で 陰性となった事例があり調査を行った。この事例で,
生あんに漂白剤を使用している場合,シアン化合物のピ クリン酸紙法による定性試験で疑陽性を示すことが判明 した。このため,生あんのシアン化合物検査では,製 あん所における漂白剤の使用の有無を確認するととも に二酸化硫黄の検査も実施する必要性が示唆された。
5 謝 辞
本検査にあたり,試料採取及び情報収集にご協力頂き ました塩釜保健所食品薬事班の方々に深謝致します。
参 考 文 献
1 )日本食品衛生協会編: 食品衛生検査指針 食品添 加物編 ,p.108(2003),((社)日本食品衛生協会).
2 )日本食品衛生協会編: 食品衛生検査指針 理化 学編 ,p.326(1991),((社)日本食品衛生協会).
図 3 二酸化硫黄の検査結果
1 は じ め に
宮城県内産海産物の食の安全を確保するため,漁場 に流入する河川の微生物学的リスクアセスメントを調 査し,この結果を魚介類による食中毒防止対策等に役 立てることを目的に,プロジェクト研究「微生物汚染 と環境」が開始された1)。その一環として,鳴瀬川水 系の河川水について一年間,一般細菌数,大腸菌群等 の細菌学的調査,大腸菌群については簡易検査法であ るコリラート法を用いて行ったので報告する。
2 調 査 方 法 2. 1 調査地点
鳴瀬川水系の上流(漆沢ダム),中流(三本木橋付 近),下流(河口)の3地点を定点とし,月一回採水,
これを検体とした。また,漆沢ダムに流入する唐府沢 川および鳴瀬川の2地点では,大腸菌群および大腸菌 について検査を行った。採水地点を図1に示した。
2. 2 調査期間
上流,唐府沢川,鳴瀬川;
平成16年5月から平成16年12月まで 中流,下流;平成16年4月から平成17年3月まで 2. 3 一般細菌数の検査法
検水1mlを普通寒天平板培地に混釈,25℃および 37℃で1週間培養し,それぞれについて7日目までの 発育菌数を測定した。25℃培養で発育した菌を25℃発 育菌,37℃培養で発育した菌を37℃発育菌とした。
2. 4 大腸菌群および大腸菌数の簡易測定法 大腸菌群および大腸菌数を市販の酵素基質培地法
(コリラート法;アスカ純薬)2)3)4)を用いて同時に測 定した。即ち,検水100mlにコリラート試薬(コリラー ト「アスカ」)を加え混和後,QTトレイに封入,37℃
で24時間培養後,黄色に変化したセル数から大腸菌群
MPN値/100mlを求めた。なお,河口水には海水用試
薬(コリラート18「アスカ」)を用い,37℃18時間培 養 後 に 判 定 し た 。 大 腸 菌 群 計 測 後 の ト レ イ に 波 長 365nmの紫外線を照射し,蛍光を呈するセルを大腸菌 陽性とし,大腸菌MPN値/100mlを求めた。
3 結 果 と 考 察 3. 1 一般細菌数
3. 1. 1 25℃発育菌
各定点における25℃発育菌数の月別変化を図2に示 した。上流水の菌数は年間を通して,1,000cfu/ml前後 であったが,7月は10,000cfu/mlと高い菌数を示した。
中流水および河口水では月別菌数変化には差異が認
鳴瀬川水系における一般細菌数および大腸菌群数の通年変動
The Change of Numbers of Heterotrophic Bacteria and Escherichia coli in Naruse River
山田 わか 齋藤 紀行 渡邉 節 小林 妙子 川野 みち 阿部 郁子 佐々木 久雄 菅原 直子 畠山 敬
Waka YAMADA,Noriyuki SAITO,Setsu WATANABE Taeko KOBAYASHI,Michi KAWANO,Ikuko ABE
Hisao SASAKI,Naoko SUGAWARA,Takashi HATAKEYAMA キーワード:鳴瀬川水系;一般細菌数;大腸菌;コリラート法
Keywords:Naruse River;number of heterotrophic bacteria;Escherichia coli;Colilert Quanti-tray
図 1 調査地点
められなかったが,4月が最も少なく,5月以降は 10,000cfu/ml前後の菌数を示している。特に6月と8 月は50,000cfu/mlを超えている。
3. 1. 2 37℃発育菌
各定点における37℃発育菌数の月別変化を図3に示 した。各地点の菌数を比較すると,6月を除き4月から 12月まで,河口水,中流水,上流水の順に高い菌数を 示している。河口水の最大菌数は8月の32,000cfu/ml,
中流水は6月の18,200cfu/mlであった。上流水では,6月 から9月が100〜1,000cfu/mlで,それ以外は100cfu/ml 以下であった。
3. 2 大腸菌群および大腸菌数
各地点における大腸菌群および大腸菌の月別変化を 図4から図8に示した。
3. 2. 1 大腸菌群
上流水の大腸菌群MPN値は,6月に最高値を示し,6 月から11月までは生活環境項目基準値(50MPN/100ml以
下)を超えていた。また,唐府沢川および鳴瀬川は,
8月に最高値を示し,それぞれ5月から11月及び6月 から11月は基準値(50MPN/100ml以下)を超えていた。
中流水・河口水は,ともに6月に最高値を示した。
中流水は5月から2月まで基準値(1,000MPN/100ml 以下)を超え,また,河口水は6月から11月まで基準 値(5,000MPN/100ml以下)を超えて検出された。
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図 5 大腸菌群と大腸菌の変化(中流水)
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図 2 25℃発育菌の月別変化
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図 3 37℃発育菌の月別変化
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図 6 大腸菌群と大腸菌の変化(河口水)
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図 4 大腸菌群と大腸菌の変化(上流水)
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図 8 大腸菌群と大腸菌の変化(唐府沢川)
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図 7 大腸菌群と大腸菌の変化(鳴瀬川)