第 7 章 系統誤差の評価
7.4 結果
したがって、ビーム強度による反射率への影響は無視できる程小さいことがわかった。
Beam intensity (CCD counts)
3600 3800 4000 4200 4400 4600 4800 5000 5200
Counts
0 5 10 15 20 25 30
Beam intensity
図7.6: CCDでカウントされたビーム強度のヒストグラム
7.3.2.3 ビーム面の真円度
図7.5は、§7.3.2.2で求めたビーム強度の平均値4361の半値2180以上の強度のみをプロット したイメージである。この図からエッジにおけるビーム強度の落ち方がほぼ一様であり、確かに 1ピクセルの精度でビーム断面が円であることがわかる。1ピクセルの大きさは23.6µmである。
したがって、直径500µmに対して23.6µm程度、すなわち23.6/500=4.6%以内の精度で円である ことがわかった。
この結果からピンホールは最大で24µm程度に真円から歪んでいる可能性がある。その歪みが 反射率に及ぼす影響は、β回転によって反射位置が24µm変化することに近似できる。したがっ て24µm程度の歪みが反射率へ及ぼす影響は、§7.2の図7.1,7.2で原点から24µmはなれたときの 反射率の影響の最大値で近似できるはずである。図7.2のZ=-24µmのとき最も反射率への影響 は大きく、このとき1%である。1%の変化は無視できない程に大きいので、ピンホールの真円度 の精度が低ければ反射率測定の精度に影響を与えてしまう可能性があることがわかった。
Dark current (CCD counts)
65940 65960 65980 66000 66020 66040
Counts
0 5 10 15 20 25 30 35
Dark current
図7.7: CCDの暗電流の強度のヒストグラム
第 8 章 まとめ
将来のX線偏光観測における、硬X 線反射望遠鏡の応用についての基礎実験をSPring-8でお こなった。その結果、多層膜反射鏡の反射率は±0.8%の精度で「偏光面と反射面の角度」によら ないことを初めて評価した。これは反射鏡での反射が0.8%という小さな精度で偏光度に影響を与 えないことを評価したことと同値である。さらに取得したプロファイルの形状や解析などから、
反射率の変化0.8%は実験の系統誤差であると考えられるので、偏光度による真の影響は0.8%以 下であると推定される。
実際の観測で使用が予定されているのは多層膜スーパーミラーであり、今回実験に使用した多 層膜反射鏡とは異なる反射鏡である。しかしスーパーミラーは多層膜の重ね合わせの構造を持っ たものなので、多層膜の反射において反射光の偏光度が不変ならばスーパーミラーでも同様のこ とがいえるはずである。
以上の議論により、硬X 線反射望遠鏡での反射が偏光度に与える影響は0.8%以下と考えられ るので、硬X 線望遠鏡をX線偏光観測に応用する見込みがたったと結論できる。