第 2 部 音韻象徴と音声及び音韻体系
5. 有気音・無気音と明度の感覚間一致の日中対照
5.1. 実験 1 中国語話者の有気音・無気音と明度の感覚間一致
5.1.3. 結果
5.1.3.1. 分析前の処理
得られた全試行の反応時間のうち、弁別が誤っている試行(エラー試行)を分析 対象から除外した。エラー率は音声弁別課題全体で 3.72%、明度弁別課題全体で 2.36%であった。エラー率が非常に低かったため、分析対象としなかった。さらに、
弁別が正しく行われている場合でも、反応時間が平均反応時間より 2SD以上離れて いる試行については除外した。この操作によって除外された試行は音声弁別課題で
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参加者一人あたり平均 1.18 試行、明度弁別課題で平均 1.03 試行であった。これら の操作によって得られた反応時間を最終的な分析対象とした。また速さと正確さの トレードオフが起こったかどうかを調べるため、各課題の反応時間とエラー数の相 関係数を求めた。その結果、両課題で有意な相関は得られなかった(音声弁別課題:
r (32)= -.27, p = .13;明度弁別課題:r (32) = -.31, p = .08)。よって、両課題において 速さと正確さのトレードオフは起こっていなかったと言える。
5.1.3.2. 反応時間の分析 1(条件間の比較)
300 350 400 450 500 550 600
baseline positive negative orthgonal
reaction time(ms)
brightness consonant
Fig. 29. Mean reaction times between conditions in 5.1(Error bars indicate SE).
Fig.29 は両課題における各条件の反応時間を示している。両課題における条件間 の差を比較するため課題(2)×条件(4)の分散分析を行った結果、課題の効果(F(1/31)
= 70.57, p < .001),条件の効果(F(3/93) = 19.71, p < .001)及び交互作用(F(3/93) = 6.85, p < .001)が有意であった。条件の効果及び交互作用が有意であったことから、下位 検定(Ryan 法)を行った結果、音声弁別課題における単次元変化条件と positive ブロ ック、positive ブロックと negative ブロック、positive ブロックと直行変化条件、
negative ブロックと直行変化条件間において有意な差が見られた(p < .05)。直行変 化条件よりも positive ブロックの反応時間が有意に短いことから、音声弁別課題に おいて PC facilitation が見られることが明らかになった。
71 5.1.3.3. 反応時間の分析 2(一致効果)
300 350 400 450 500 550 600
baseline correlated orthogonal
reaction time(ms)
congruent incongruent
Fig. 30. Mean reaction times between congruent and incongruent trials in each conditions in 5.1(brightness discrimination; error bars indicate SE).
Fig. 30 は明度弁別課題の条件別反応時間を一致試行・不一致試行ごと示している。
条件(3)×一致性(2)の分散分析を行った結果、条件の効果(F(2/62) = 11.24, p < .001) が有意であった。一致性の効果(F(1/31) = 0.86, p = .36)及び交互作用(F(2/62) = 0.13, p = .88)は見られなかった。条件の効果が有意であったことから、下位検定(Ryan 法) を行った結果、単次元変化条件と直交変化条件および関連変化条件と直交変化条件 間に有意な差が見られた。これらの結果から、明度弁別課題においては positively correlated facilitation および negatively correlated interference は見られないことが わかった。
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Fig. 31. Mean reaction times between congruent and incongruent trials in each conditions in 5.1(consonant discrimination; error bars indicate SE).
Fig. 31 は音声弁別課題の条件別反応時間を一致試行・不一致試行ごと示している。
明度弁別課題と同様の分析を行った結果、条件の主効果(F(2/62)=22.39, p < .001)お よび一致性の主効果(F(1/31) = 10.28, p < .01)が有意であった。また交互作用(F(2/62)
= 2.59, p = .08)は有意傾向であった。条件の主効果が有意であったことから、下位 検定(Ryan 法)を行った結果、全ての条件間で有意な差が見られた(p < .05)。また、
一致性の主効果については、下位検定(Ryan 法)の結果、関連変化条件においてのみ 有意な差が認められた(p < .05)。関連変化条件では一致試行より不一致試行におい て有意に反応時間が長かったことから、音声弁別課題において一致効果が見られる ことがわかった。