第 2 部 音韻象徴と音声及び音韻体系
4.2. 実験 1 日本語話者の有声子音・無声子音と明度の感覚間一致
4.1.3. 結果
4.1.3.1. 分析前の処理
得られた全試行の反応時間のうち、弁別が誤っている試行(エラー試行)を分析 対象から除外した。エラー率は音声弁別課題全体で 2.39%、明度弁別課題全体で 1.19%であった。エラー率は低かったため、エラー数は分析対象としなかった。ま た、各条件の平均反応時間より 2SD以上離れた試行に関しては外れ値として除去し た。除去された試行は音声弁別課題で 4.6%、明度弁別課題で 4.5%であった。これ らの操作によって得られた反応時間を最終的な分析対象とした。
速さと正確さのトレードオフ(speed-accuracy tradeoff)が起こったかどうかを調 べるため、各課題の反応時間とエラー数の相関係数を求めた。その結果、両課題で 有意な相関は得られなかった(音声弁別課題:r (32)= -.12, p = .51;明度弁別課題:
r (32)= -.05, p = .81)。よって、両課題において速さと正確さのトレードオフは起こ
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4.1.3.2. 反応時間の分析 1(条件間の比較)
Fig. 23 は実験 1 の文字弁別課題・明度弁別課題における反応時間を条件別に示し ている。Positively correlated facilitation 及び negatively correlated interference を 確認するために課題 (2) × 条件 (4) の被験者内分散分析を行った結果、課題の主 効果(F (1/31) = 114.42, p < .001)、条件の主効果(F(3/93) = 8.75, p < .001)、課題×条 件の相互作用(F(3/93) = 3.89, p < .05)が有意であった。
各主効果及び交互作用が有意であったため Ryan 法による下位検定を行った結果、
全ての条件において明度弁別課題の方が音声弁別課題よりも反応時間が有意に短か った。また、音声弁別課題の単次元変化条件と PC block、PC block と直交変化条件、
NC block と直交変化条件間に有意な差が見られた。
Fig. 23. Mean reaction times of brightness and consonant discrimination task in 4.1.
(Error bars indicate SE).
課題の主効果が有意であったことから、明度弁別は音声弁別と比べて総じて反応 時間が短いということがわかった。また、音声弁別課題の単次元変化条件よりも PC block の方が反応時間が有意に短かったことから、positively correlated facilitation が起こったことがわかった。
4.1.3.3. 反応時間の分析 2(一致効果)
一致効果が見られるかどうかの分析を行うにあたり、PC block、NC block をまと め、関連変化条件とした。そして、単次元変化条件・関連変化条件・直交変化条件
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の各条件内で、イメージが一致すると想定したペア(有声子音・黒色、無声子音・
白色)とイメージが不一致であると想定したペア(有声子音・白色、無声子音・黒 色)ごとに反応時間をまとめ、比較した。
Fig.24 及び Fig.25 は明度弁別・音声弁別課題における反応時間を一致・不一致試 行ごとに示している。
Fig. 24. Mean reaction times of each congruent and incongruent trials of 4.1 (brightness discrimination task; error bars indicate SE).
明度弁別課題の反応時間に対して条件(3)×一致性(2)の分散分析を行った結果、条 件の主効果(F(2/62) = 3.94, p < .05)が有意であった。また、一致性の主効果(F (1/31)=
3.93, p = .06)は有意傾向、条件×一致性の交互作用(F(2/62)= 0.09, p = .91)は有意で はなかった。条件の主効果が有意だったため下位検定(Ryan 法)を行った結果、単 次元変化条件と直交変化条件間に有意な差が見られた。また、全ての条件において 一致・不一致試行間の差は有意ではなかった。これらの結果から、明度弁別課題で は一致効果は見られないことがわかった。
音声弁別課題に対して同様の分析を行った結果、条件の主効果(F(2/62) = 11.44, p
< .001)、一致性の主効果(F (1/31) = 15.80, p < .001)、条件×一致性の交互作用(F (2/46) = 3.82, p < .05)がそれぞれ有意であった。
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Fig. 25. Mean reaction times of each congruent and incongruent trial of 4.1 (voice discrimination task; error bars indicate SE).
条件の主効果が有意だったため、下位検定(Ryan 法)を行った結果、単次元変化 条件と関連変化条件、関連変化条件と直交変化条件間の差が有意であった。一致性 の主効果も有意であったため、下位検定(Ryan 法)を行った結果、関連変化条件及 び直交変化条件においてイメージが一致した場合よりも不一致であった場合の方が 有意に反応時間が短かった。以上の分析結果から、音声弁別課題では関連変化条件 及び直交変化条件においてイメージが一致している方が、不一致であるときよりも 反応時間が短いという一致効果が見られたといえる。