第 1 部 音韻象徴と文字及び発音
2.5. 実験 5 中国語話者を対象とした濁点・半濁点と明度の感覚間一致
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反応取得にはレスポンスパッド(Cedrus 社製 RB-410)を使用した。
2.5.2.3. 手続き
弁別対象である視覚刺激が異なる以外は試行・ブロック・課題の構成、休憩時間 などは全て 2.2.2.3.に準じた。なお、本実験においても文字弁別課題のみを行った。
2.5.3. 結果
2.5.3.1. 分析前の処理
得られた全試行の反応時間のうち、弁別が誤っている試行(エラー試行)を分析 対象から除外した。エラー率は課題全体で 2.95%であった。エラー率が非常に低か ったため、その後の分析対象としなかった。また、各条件の平均反応時間から 2SD 以上離れている反応時間に関しては外れ値と見なし、除外した。この操作で除外さ れた試行数は全体の 4.28%であった。
速さと正確さのトレードオフ(speed-accuracy tradeoff)が起こったかどうかを調 べるため、反応時間とエラー数の相関係数を求めた。その結果、有意な相関は得ら れなかった(r(24) = -.18, p = .41)。よって、本実験において速さと正確さのトレー ドオフは起こっていなかったといえる。
2.5.3.2. 反応時間の分析 1(条件間の比較)
Fig. 20 は実験 5 における反応時間を条件別に示したものである。positively correlated facilitation, negatively correlated interference を確認するため条件 (4)を 要因とした一要因分散分析を行った結果、条件の主効果(F(3/69) = 1.89, p = .14)では なかった。この結果から、本実験では positively correlated facilitation および negatively correlated interference は見られなかったことがわかった。
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Fig. 20. Mean reaction times between conditions in 2.5(Error bars indicate SE).
2.5.3.3. 反応時間の分析 2(一致効果)
Fig.21 は実験 5 における反応時間を一致・不一致試行ごとにまとめたグラフであ る。条件(3)×一致性(2)の分散分析を行った結果、条件の主効果(F (2/46) = 3.33, p
< .05)が有意であった。一致性の主効果(F (1/23)= 0.80, p = .78)および条件×一致性 の交互作用は有意ではなかった(F (2/46) = 0.19, p = .83)。条件の効果が有意であっ たため下位検定(Ryan 法)を行った結果、いずれの条件間においても有意な差は見 られなかった。これらの結果から、本実験では一致効果が見られないことがわかっ た。
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Fig. 21. Mean reaction times of each congruent and incongruent trials of 2.5(Error bars indicate SE).
2.5.4. 考察
本実験では、日本語の学習経験が無い中国語話者を対象に、2.2.と同様の課題を行 い、濁点・半濁点が持つ意味を知らない場合でも明るさとの感覚間一致が見られる のかどうかを検討した。その結果、明度との感覚間一致は見られなかった。この実 験の参加者は日本語の学習経験が無く、呈示された濁点・半濁点が発音を変化させ る符号であるという知識を持たなかったため、呈示された刺激を純粋に形態として 知覚していたと考えられる。その結果明度との感覚間一致がみられなかったという ことは、実験 4 の結果も含めると、明度との感覚間一致をもたらすには文字の持つ 形態情報のみでなく、文字より喚起される音声情報が必要であることがわかった。
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