第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -41-
図3-2 入手できた物件の分布会社やヒァリング回答者の属社の内訳
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -42-
表3-7 説明変数のVIF値
3.3.2モデルの推定結果
上述したモデル1と2の作成には統計分析ソフトのSPSSを使用し、ステップワイズ法 により t値の有意水準が 95%として変数選択を行った。そこで、モデルに採択された変 数と価格回帰式の推定結果は、表3-8の通りである。対象地1のモデル1で採択された変 数は築年数、所在階、総戸数、空地率、緑地の管理状況、緑地率の6項目で、自由度調整 済R2は0.848 である。対象地2のモデル1で採択された変数は築年数、バス時間、エレ ベーター、空地率、緑地の管理状況、緑地率の 6 項目であり、自由度調整済 R2は 0.854 である。一方、対象地1のモデル2で採択された変数は築年数、駐車場、空地率、緑地の 管理状況、住棟緑地率、公共緑地率の6項目で、自由度調整済R2は0.850である。対象 地2のモデル2で採択された変数は築年数、駐車場、空地率、敷地面積、緑地の管理状況 の5項目で、自由度調整済R2は0.852である。
対象地1の推定したt値をみるとモデル1とモデル2の両方で築年数が-5未満、空地 率が-4 未満の値を示し、築年数と空地率が価格に負の影響をおよぼしていることがわか る。つまり、築年数や空地率が増すほど価格が低い傾向にある。逆に,両モデルで緑地の 管理状況が2を超え、価格に対して正の影響があることを示し、緑地の管理状況が良いほ ど価格が高い傾向にある。さらにモデル1 では総戸数が-2未満で負の影響を示唆してい るが、モデル2では変数として採択されなかった。対象地2の推定したt値をみるモデル 1とモデル2の両方で築年数が説明変数として採択され-3.95、-4.96であり、空地率が
-1.93、-2.78である。築年数と空地率が価格に負の影響をおよぼしていることがわかる。
さらに,両モデルで緑地の管理状況のt値が最も大き、価格に対して正の影響があること を示し、緑地の管理状況が良いほど価格が高い傾向が認める。なお、モデル1では駅時間
(バス時間)のt値が-2.65であり、バス乗り場への時間が価格に負の影響を示している。
対象地1 対象地2 対象地1 対象地2 専用面積 1.47 1.11 1.34 1.32 築年数 4.20 1.72 3.95 1.64 駅(バス)時間 2.24 2.25 1.80 2.45 エレベーター 2.10 2.21 2.01 2.21 駐車場 2.23 2.96 2.55 3.69 所在層 1.28 1.23 1.21 1.61 総戸数 4.09 1.47 3.70 1.87 主要採用光方位 1.21 1.43 1.16 1.60 内装仕様 1.32 1.35 1.29 1.53 敷地面積 4.34 3.91 3.92 5.01 空地率 2.92 1.48 2.54 1.67 緑地管理状況 3.84 1.70 2.99 3.24
緑地率 ― 2.07 2.20 ―
住棟緑地率 4.37 ― ― 3.15 公共緑地率 4.78 ― ― 5.75 施設緑地率 2.85 ― ― 2.57 道路緑地率 2.42 ― ― 3.98
項目 説明変数
モデル2 モデル1
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -43-
エレベーターのt値が1.44であり正の影響を示している。ただし、モデル2では、バス 時間とエレベーターがモデル2では変数として採択されなかった。モデル2では駐車場の t値が2.78であり、正の影響を示唆しているがモデル1では変数として採択されなかっ た。また、モデル2では敷地面積のt値が-2.79であり、負の影響を示しているがモデル 1では説明変数として採択されてなかった。
表3-8 モデルの推定結果
一方、対象地1では緑地率のt値は、モデル1において3.99であり、価格に対して 正の影響が認められる。モデル 2 において採択されたのは住棟緑地率と公共緑地率の 2 種類であり、価格に対して正の影響が認められる。しかし、施設緑地率と道路緑地率は採 択されず、価格に対する影響は認められなかった。対象地2では緑地率のt値は、モデル 1において2.16であり、価格に対して正の影響が認められる。モデル2において4種類 の緑地率はいずれも変数として採択されず、価格に対する影響は認められない。
3.3.3緑地率が価格におよぼす影響
モデル1で推定された価格に対する緑地率の影響の程度を定量的に把握するため、得ら れた偏回帰係数を使用して価格の増加金額を以下のように算出した。
価格の増加金額(元/㎡)= 偏回帰係数 × 緑地率の増加分
(2015年8月の換算レート:1元 = 20円)
緑地率と価格の増加金額との関係は図3-3のとおりである。緑地率が5%増加すると、
偏回帰系数 t値 偏回帰系数 t値
X₁ 築年数 -0.496 -5.97 X₁ 築年数 -0.295 -3.95 X₂ 所在階 0.890 1.94 X₂ 駅(バス)時間 -0.226 -2.65 X₃ 総戸数 -1.610 -2.04 X₃ エレベーター 0.122 1.44
X₄ 空地率 -2.670 -4.02 X₄ 空地率 -0.133 -1.93
X₅ 緑地管理状況 0.244 3.39 X₅ 緑地管理状況 0.684 9.22
X₆ 緑地率 0.244 3.99 X₆ 緑地率 0.177 2.16
5.257 7.17 4.919 4.21
偏回帰系数 t値 偏回帰系数 t値
X₁ 築年数 -0.474 -5.58 X₁ 築年数 -0.363 -4.96
X₂ 駐車場 0.196 3.17 X₂ 駐車場 0.306 2.78 X₃ 空地率 -0.297 -4.20 X₃ 空地率 -0.206 -2.78 X₄ 緑地管理状況 0.294 2.39 X₄ 敷地面積 -0.358 2.79 X₅ 住棟緑地率 0.409 4.25 X₅ 緑地管理状況 0.801 7.77
X₆ 公共緑地率 0.402 3.28 6.838 7.09
5.878 7.06 モデル1
モデル2
変数 変数
定数項
定数項
対象地1 対象地2
変数 変数
定数項 定数項
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -44-
対象地1では、価格が122元/㎡(2,440円/ ㎡)高くなる。これは、対象物件の平均単 価42,596元/㎡の約0.3%に相当する。また、対象地2では、価格が9.01元/㎡(180.2 円/ ㎡)高くなる。これは対象物件の平均単価6,788元/㎡の約0.13%に相当する(表3-9)
また、物件の平均専有面積(対象地1の111㎡、対象地2:132.5㎡)を乗じるとそれ ぞれ13,542元(270,840円)、1,172.6元(23,452円)の上昇となる(表3-9)。
図3-3 緑地と価格との関係
図3-4 住棟緑地、公共緑地と価格との関係(対象地1)
対象地1のモデル2で推定された住棟緑地率、公共緑地率の影響の程度も同様に算出す ると、図3-4のグラフが得られた。住棟緑地率が5%増加すると単価が205元(4,100 円、
0. 5%)上昇し、公共緑地率が5%増加すると単価が201元(4,020円、0.5%)上昇する。
つまり、4種類の緑地のうち、住宅価格に対する影響が統計上認められるのは、居室に近 い住棟緑地や屋外活動の場としての公共緑地である。それに対して、道路やサービス施設 に付帯する緑地の影響は認められない。一方、対象地2では、4種類緑地の影響が認めら れない。
0 100 200 300 400 500
0 2 4 6 8 10 12
増加金額(元/㎡)
緑地分の 増加率(%)
対象地1
0 100 200 300 400 500 600
0 2 4 6 8 10 12
増加金額(元/㎡)
住棟緑地率の 増加分(%)
0 100 200 300 400 500 600
0 2 4 6 8 10 12
増加金額(元/㎡)
公共緑地率の 増加分(%)
0 10 20 30 40 50
0 2 4 6 8 10 12
増加金額(元/㎡)
緑地分の 増加率(%) 対象地2
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -45-
表3-9 緑地率が5%増加すると上昇する金額
3.3.4住棟緑地と公共緑地の価格への影響の関連性
住棟緑地と公共緑地の価格におよぼす影響をさらに検証するために、緑地に占める住棟 緑地および公共緑地の面積割合を、物件の存在する集合住宅ごとに求め、物件の特性値と してX軸にとり、物件の単価をY軸にとって各物件をプロットした(図3-5)。
図3-5では、緑地に占める住棟緑地の面積の割合が高い物件にも低価格帯のものがある。
一方、割合の低い物件にも高価格帯のものがあるなど、住棟緑地の割合と価格との間に特 定の傾向は認められない。公共緑地の割合についても同様のことが言える。
図3-5 緑地に占める住棟、公共緑地の面積の割合と単価との関系(対象地1)
3.3.5緑地の管理が価格におよぼす影響
前述したように、緑地の管理状況が価格に正の影響をおよぼすことが両モデルで示され たことから、さらに検証を行った。モデル1によって算出される予測価格と、実際の価格 との差を標準化した数値(標準化残差)をY軸とし、緑地の管理レベルの区分をX軸とし て各物件をプロットした(図3-6)。図3-6によると、対象地1、2共に、緑地の管理レベ ルの最高の物件で標準化残差が正の値となるものの割合が多い(対象地 1:19 物件中 15 件、対象地2:7件の5件)。次のレベルの物件でも正の方がやや多い(対象地1:34件中 18件、対象地2:10件中6件)。しかし、それ以外の管理レベルでは、正負の差が見られ ないが負の方が多い。
つまり、緑地の管理状況がよい物件は、モデルの予測よりも実際の価格が高いものが多 い。この分析結果の背景として以下のことが考えられる。北京市では質の高い住宅を普及 させるため「文明住宅」の名を物件に冠する政策3-5)が行われているが、緑地の管理レベ ルが1級ないし2級を満たすことが、その指定を受ける条件の1つとなっている。呼和浩
単位(元/㎡) 単位(元/物件) 単位(円/㎡) 単位(円/物件)
1 122 13,542 2,440 270,840
2 9 1,173 180 23,850
1 205 22,755 4,100 455,100
2 ー ー ー ー
1 201 22,311 4,020 446,220
2 ー ー ー ー
緑地率 住棟緑地率 公共緑地率
中国元 日本円
項目 対象地
2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6
0% 20% 40% 60% 80% 100%
(万元/m²)
住棟緑地の割合
2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6
0% 20% 40% 60% 80% 100%
(万元/m²)
公共緑地の割合
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -46-
特市では、「園林住宅」の名を物件に冠する規定 3-6)において、緑地管理の良い評価以上 であることは一つの項目になっている。
図3-6 管理状況と標準化残差の関系