3.2.1目的変数の設定
集合住宅の緑地が中古の住宅価格に及ぼす影響について、各物件の価格を目的変数とし て重回帰分析を行った。不動産情報サイト掲載の価格について、物件を取り扱う不動産会 社に問い合わせたところ、売り主の希望価格そのものではなく、建設費や立地環境等に応 じて不動産会社が判断する相場感が加味された価格であり、購入者の好みや取引状況の活 性度に応じて成約時の価格とは異なる場合もあるとのことであった。しかし、石塚・平田 の先行研究3-1)では、同様の問題に対して、物件個々の価格の絶対値を検証するのではな く、一時点における物件の価格差を検証することに主眼があるため、不動産情報サイトの 価格は成約価格より高めに表示される可能性があるものの、価格形成要因の分析結果には 影響しないとの考えが示されている。本章も先行研究の考えにならい、不動産情報サイト の価格を分析に使用した。対象地1、2共に2014年4月~6月の不動産情報サイト3-2)に おける販売価格を目的変数とした。価格の入手できた集合住宅は、第1章で対象としたも のうち、対象地1で45区中の33区、対象地2で24区中の19区である(図3-1)。また、
価格の入手できた中古物件の住戸数及び 1 集合住宅あたりのサンプル数の平均は表 3-1 のとおりである。
表3-1 価格の入手できた集合住宅数及び住戸数
各項目 対象地
第1章の対象集合住宅 (区)
価格の入手できた集合住宅
(区) 住戸数(戸) 1集合住宅あたり平均戸数 (戸)
1 45 33 88 2.7
2 24 19 45 2.3
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -38-
図3-1 価格を入手できた集合住宅の分布
1 2
3 4
5 6 7 8
9
0
0 200m
1000m 200m
N 対象地 1
対象地 2
第 1 章の対象集合住宅 価格を入手できた対象集合住宅 集合住宅番号 公園 川
1 ~ 45
地下鉄 凡例
1000m
10 11 12
13
14 15
16 17
30
29 21 37
18
19
D
D
23 22 24 26
27 28 42
45 20
44 43
40 39
41
38
36 35 34 32 33 31
1
2 3
4 5
競馬場
6
8 9 10
7
11
12 14
17 13
15 16
18 20
19
21 22
23
24
N
D
34
25
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -39-
3.2.2説明変数の設定
17項目を価格の説明変数として設定した(表3-2)。これらの多くは石塚・平田の先行 研究3-1)において価格への影響が想定され用いられた項目である。数値ではないものは以 下のようにダミー変数とした。
エレベーターと駐車場は無、有について0、1の整数とした。主要採光方位については、
南、南東、東、北東、北、北西、西、南西の順に1から8までの整数値をあてはめて変数 とした。内装仕様については、対象地1の場合では物件に対して都市の一般的に用いられ る評価基準にもとづき、「高級な仕様」、「普通の仕様」、「簡素な仕様」3-3)の3つの仕様に 分類されているためそれぞれ1、2、3の整数とした。対象地2では中古不動産の評価基準
3-4)により物件の内装が「高級な仕様」、「普通の仕様」、「簡素な仕様」、「仕様が無」の 4 つに分類されているが対象地1と同様するため、「高級な仕様」を1、「普通の仕様」を2、
「簡素な仕様」と「仕様が無」共に3の整数とした。緑地の管理状況については、対象地 1では「北京の集合住宅管理について基準」3-5)により1級、2級、3級の管理レベル(表 3-3)が設定されているため、それぞれ4、3、2の整数値をあてはめ、いずれのレベルに も合格していない物件については1とした。対象地2では集合住宅の緑地について管理す る基本的な標準規範が無いが、園林局の「2014 年の呼和浩特市の集合住宅内の緑地管理 についての評価」3-6)による「とても良い管理」、「良い管理」、「少し良い管理」、「良くな い管理」の4級階評価にもとづきそれぞれ4、3、2、1の整数値とした。駅(バス)時間 では、対象地1では集合住宅エントランスから地下鉄駅との歩行時間、対象地2では集合 住宅のエンドランスから最寄りバス乗り場との歩行時間とした。また、実測による、所在 階、空地率、緑地率、住棟緑地率、公共緑地率、施設緑地率、道路緑地率を逆正弦変換し た。
表3-2 使用した説明変数と記述統計量報
(注:変数:17、D:ダミー変数、変換値:実測による比率を逆正弦変換したもの)
対象地1 対象地2 対象地1 対象地2 対象地1 対象地2 対象地1 対象地2
1 専有面積 販売専用面積 ㎡ 44 79 234 300 111 133 40 39
2 築年数 竣工からの経過年数 年 5 5 24 14 11 7 4 3
3 駅(バス)時間 最寄り駅また、バス停までの徒歩時間 分 0 0 45 22 15 10 11 3
4 エレベーターD エレベーターの有無 5 駐車場D 駐車場の有無
6 所在階 物件の所在階数/総階数 (変換値) 2 10 90 90 35 37 25 19
7 総戸数 物件の存在する集合住宅の総戸数 戸 241 228 4,857 1,173 1,832 736 1,233 226 8 主要採光方位D 居室の開口部が最大の方位 1~8(整数値)
9 内装仕様D 内装の仕様グレード 1~3(整数値)
10 敷地面積 物件の存在する集合住宅の敷地面積 ㎡ 5,334 41,933 985,075 427,461 191,042 84,214 213,937 132,204 11 空地率 物件の存在する集合住宅の非建築坪面積/敷地面積 (変換値) 21 25 30 28 26 20 2 4 12 緑地管理状況D 物件の存在する集合住宅の緑地の管理のレベル 1~4(整数値)
13 緑地率 物件の存在する集合住宅の緑地面積/敷地面積 (変換値) 17 17 27 26 20 20 2 2 14住棟緑地率 物件の存在する集合住宅の住棟緑地面積/敷地面積 (変換値) 0 2 15 69 8 32 3 18 15公共緑地率 物件の存在する集合住宅の公共緑地面積/敷地面積 (変換値) 4 4 18 74 9 30 4 20 16施設緑地率 物件の存在する集合住宅の施設緑地面積/敷地面積 (変換値) 0 0 5 5 1 1 1 1 17道路緑地率 物件の存在する集合住宅の道路緑地面積/敷地面積 (変換値) 0 0 2 2 1 0 1 1
無=0、有=1 無=0、有=1
南=1、南東=2、東=3、北東=4、北=5、北西=6、西=7、南西=8
「高級な仕様」=1、「普通の仕様」=2、「簡素な仕様また仕様無」=3
1級(とても良い)=4、2級(良い)=3、3級(少し良い)=2、其の他(良くない)=1
変数名 内容 単位 最小值 最大值 平均数 標準偏差
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -40-
一方、17 の説明変数では、専用面積、築年数、エレベーター、駐車場、所在階、総戸 数、主要採光方位、内装仕様の8項目は不動産会社情報から入手した。敷地面積、緑地管 理状況、緑地率は集合住宅の管理会社から入手した。駅(バス)時間、空地率、住棟緑地 率、公共緑地率、施設緑地率、道路緑地率は実際に測定したものである。
表3-3 集合住宅における緑地管理について(対象地1)
3.2.3モデルの作成方法
既往研究3-1)によれば、住宅価格に関する分析では線形の関数型が多く採用されている。
したがって、本研究においても価格関数は以下の式のような線形とした。
価格Y=αX1 +βX2 +γX3 + …… + b X = 説明変数 Y = 目的変数
α、β、γ … = 偏回帰係数 b = 定数項
モデルでは、目的変数である価格Yに各説明変数(X1、X2、X3 …)がどの程度影響して いるかが各係数(α、β、γ …)で表され、住宅価格に影響をおよぼす要因とその程度 を定量的に検証することが可能となる。なお、緑地率の影響を検証することに加えて、緑 地の種別の影響も検証するために、表2-3のうち14~17を除く13項目を説明変数とす る場合(以下、モデル1)と、13を除く16項目を説明変数とする場合(以下、モデル2)
とで別々に作成した。モデルの作成には統計分析ソフトSPSSを使用した。
3.2.4不動産会社へのヒアリング調査
物件の価格設定の際に緑地の量や管理状況をどの程度考慮するのか把握するため、中古 の不動情報を取り扱う不動産会社のホームページ 3-2)3-3)により対象地における不動産会 社4社の15人販売者の連絡欄に載せられた電話で、表3-4によりヒアリング調査を行っ た。
入手できた物件の分布不動産会や回答者の属社の内訳は図3-2に示す。
表3-4 ヒアリング調査内容
緑地管理状況のレベル
項目 1級 2級 3級 其の他
樹木の枯れた率(%) 2%以内 5%以内 6%以内 枯葉、黄色葉、虫葉の率 5%以内 10%以内 20%以内
ゴミについて 無し 無し 植物以外のゴミがない
1~3級のレベルに 合格してない緑地 管理レベル
住宅価格設定する際に その集合住宅の緑地について 緑地量が多いほど価格を 住棟緑地量が多いほど価格を 公共緑地量が多いほど価格を 施設緑地量が多いほど価格を 道路緑地量が多いほど価格を 緑地管理がよいほど価格を
上げる 変えない 下げる 分からない
第3章 緑地が住宅価格に及ぼす影響 -41-
図3-2 入手できた物件の分布会社やヒァリング回答者の属社の内訳