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経静脈性コントラストエコー法B

化したときにはマイクロバブルが存在したところだけが 明確に表示できるというのがセカンドハーモニック法で ある403)

5)パワードプラ法

コントラスト剤が心筋に入るとその反射は増大し,位 相が変化する.さらにバブルの崩壊により第1波と最終 波の信号が著しく異なることからパワードプラ法の認識 しやすい状態となる.このとき,血流の途絶した部位や 低下した部位の染影は低下する.このような表示の方法

はB モード法とは若干異なった印象とはなるが,感度

が高いことから心筋染影法の新しい技術として注目され ている404

6)その他のハーモニック法

セカンドハーモニック法は第2高調波の音響信号を検出 する方法であるが,第2高調波においては組織からの信 号を完全に除去することができない.この点を改善し,

受信周波数をバブルからの反射波の特徴に合わせ最適化 した方法がウルトラハーモニック法と1.5ハーモニック 法である.それぞれ受信周波数を第3高調波,1.5高調 波付近にすることで,組織からの信号がほぼなくなり,

バブルからの信号のみを検出することが可能になった.

また,リアルタイム法を目的としたハーモニック法には パルスインバージョンドプラ法やコヘレントイメージフ ォーメーション法,パワーモデュレーション法などがあ る.これらの方法と第2世代以上の超音波造影剤を併用 することで,壁運動の評価と同時に心筋微小循環の評価 が可能である401402

1)灌流領域の同定

冠動脈注入法による心筋コントラストエコー法は,カ テーテルを用いて左右の冠動脈にそれぞれコントラスト 剤を注入して灌流状況を観察する.心筋梗塞を起こした 責任冠動脈が完全閉塞し,その灌流領域の心筋が線維化 しているとコントラストによる染影を認めない.責任冠 動脈が開通している場合,その灌流領域の心筋が完全な 線維化に置き代わっていなければコントラストによる染 影を認める.しかし,このような不完全な染影の分析は

解析法として基準化が難しく,現在も論議がある.それ でも心筋に異常がなく責任冠動脈が閉塞していない場合 に限り,心筋はよく染影される.

心筋コントラストエコー法を用いれば,左冠動脈と右 冠動脈の支配領域が明瞭に可視化できる.しかし,左前 下行枝と回旋枝の灌流領域を分離するためには造影用の カテーテルを超選択的にそれぞれ左前下行枝と回旋枝に 挿入してコントラストエコー法をしなければならない.

肥大型心筋症に対する経皮的中隔心筋焼灼術の目標冠動 脈決定のための超選択的心筋染影には特殊なカテーテル を用いて少量の造影剤を注入する方法が推奨されてい る405)

2)狭窄冠動脈の灌流程度の評価

心筋コントラストエコー法で狭窄冠動脈領域の灌流が どのように評価できるか研究されている.狭窄冠動脈領 域であっても安静時の血流は正常冠動脈に比しそれほど 減少していないので,心筋コントラストエコー法の安静 時血流には差が出にくい.ドブタミンやATP などを負 荷して,灌流程度の差を評価する試みがある.また,同 じ部位の心筋でも心内膜側の心筋の方が虚血がおこりや すいため,頻拍負荷時に狭窄冠動脈にコントラスト剤を 注入すると,心内膜側の灌流が減少するとの報告があ る406)

3)側副血行の同定

従来の冠動脈造影法でも側副血行路の確認は比較的容 易である.しかし,冠動脈造影法だけでは側副血行の機 能や灌流領域の評価は充分ではない.側副血行路のドナ ー(供給)冠動脈からコントラスト剤を注入して,心筋 コントラストエコー法を行うとコントラスト剤は側副血 行路を介してレシピエント(受け取り側の)冠動脈の灌 流領域を染影する407.心筋コントラストエコー法を用い ると,レシピエント冠動脈が完全閉塞していても,側副 血行路のドナー冠動脈がどれほど灌流しているのかを知 ることができる.また,高度の狭窄があるレシピエント 冠動脈に血行再建術をした後では,多くの症例では側副 血行路が消失又は減少する.この時,血行再建術を施行 した冠動脈の灌流が増加している事も心筋コントラスト エコー法を用いると容易に確認できる.さらに,重要な ことは心筋梗塞や血行再建術中に本来の冠動脈の灌流領 域が他の冠動脈から側副血行路等を介してどれほど守ら れているかもリアルタイムに観察できる.このような情 報は,次の治療戦略を考慮する上で重要である.

慢性虚血性心疾患の診断における 心筋コントラストエコー法の意義 3 3

冠動脈注入法

4)急性心筋梗塞再灌流療法後の心筋救済効果の判定

急性心筋梗塞の治療として経皮的冠動脈インターベン ションによる再灌流療法は有力な治療法となっている.

再灌流療法の進歩は当然ながら,その灌流領域の心筋バ イアビリティに関心を向けさせた.しかし,冠動脈の再 疎通に成功しても,梗塞領域の心筋救済が行われてない 症例が存在する.そのような症例では責任冠動脈を再疎 通しても,造影剤が充分に末梢まで満たされない現象が みられ,no reflow 現象と呼ばれる.責任冠動脈の再疎 通直後に心筋コントラストエコー法を用いると,20−30

% の症例には成功の指標である梗塞領域でのコントラ スト剤による輝度上昇が認められないことがわかった.

さらに,このような症例では,輝度上昇を認めた例に比 べ慢性期の心機能の回復や予後が不良であると報告され ている408).このような現象は責任冠動脈の支配領域の組 織に微小循環障害が生じているためと理解されている.

心筋コントラストエコー法を用いるとno reflow 現象を 簡便かつリアルタイムに評価できる.しかし心筋コント ラストエコー法による心筋染影をno reflow とreflow に 完全に分けることは難しく,中間的な所見として淡く染 影されたり,まだらに染影されたりする低染影領域もあ り,現在この取り扱いについて議論されている409,410)

5)急性心筋梗塞再灌流療法後の治療指針の決定

再灌流療法後にno reflow 現象を示した症例をどう治 療するかは重要な課題である.最近,白血球による末梢 塞栓や血小板の活性化を抑制することができれば,no reflow 領域の梗塞巣を減少させられる可能性が報告され ている.ある種の血管拡張薬が経皮的冠動脈血栓溶解療 法(PTCR)や経皮的冠動脈形成術(PTCA)に併用され,

その有効性が検討されている411).このような薬剤投与後 に心筋コントラストエコー法を用いると no reflow 領域 がどのように変化したかも合わせて検討可能である.

経静脈性の超音波造影剤を用いたコントラストエコー 法の臨床応用には,心筋コントラストエコー法に加え,

ドプラ信号増強効果と心腔コントラストエコー法がある ため,後2者についても簡単に述べる.

1)ドプラ信号増強効果

大動脈弁狭窄の圧推定や左冠動脈前下行枝遠位部の血 流速度計測は,最近の心エコー装置を用いれば比較的高 率に測定可能である.ドプラ血流速波形記録が計測に十

分でない場合に経静脈性コントラスト剤を用いるとほぼ 全例でドプラ血流速波形のエンベロープを明瞭に得るこ とができる412,413).さらに最近では右冠動脈血流や左回 旋枝の血流速度計測に際して経静脈性コントラスト剤に よりドプラ信号を増強させることで,その測定成功率が 高まりつつある414,415)

2)心腔コントラストエコー法

心エコー法では胸郭の形状や体形の問題から十分な画 質が得られない場合がある.心腔コントラストエコー法 はそのような場合,簡便に心内膜の描出を改善する416). 心尖部アプローチでは近距離音場にある心尖部は観察し にくいが,心腔コントラストエコー法を用いることで心 尖部の描出が鮮明となる.このことを応用して左室機能 低下患者,前壁中隔梗塞患者で生じる心尖部の壁在血栓 や心尖部肥大型心筋症の心尖部の観察などができる.ま た狭心症の診断を目的とする負荷エコー法は短時間で左 室の心内膜面の同定が重要である.負荷エコー法に心腔 コントラストエコー法を併用することで心内膜同定が容 易となり壁運動異常の診断率が改善される.

心エコー法は左室機能や容量測定に使用されることが 多いが,再現性のある測定には熟練を要し,また容量測 定においては画質の影響による過小評価の問題があっ た.心腔コントラストエコー法における心内膜の描出は これらの測定にも影響を与え,再現性が向上し容量測定 における過小評価も是正されることが報告されてい る417).心エコー図では各種の自動計測ソフトを用いるこ とで客観的に心機能や局所壁運動を評価することが可能 であったが,これらのソフトを使用するにあたっては通 常の検査よりもさらに良好な心内膜の同定が必要とされ るため,十分に利用されているとは言い難い.近年,心 腔コントラストエコー法を併用することで自動計測ソフ トがより多くの症例で適応可能となり,かつ正確な測定 値を得ることができるようになった418,419)

3)心筋コントラストエコー法

経静脈性心筋コントラストエコー法は経静脈性心筋コ ントラスト剤ならびにハーモニックイメージを基礎とし た様々なイメージング法を使用することにより,経胸壁 から心筋微小循環を評価し様々な病態診断を目的にした 方法である.現在本邦では臨床で使用できる超音波造影 剤は心筋梗塞急性期は適応外とされている.そのため適 応は主に慢性期心筋梗塞の心筋灌流の観察や狭心症での 虚血部位の同定に限られる.慢性期心筋梗塞患者におい て心筋灌流を観察することで血行再建術の適応の判断

経静脈性コントラストエコー法

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