• 検索結果がありません。

経皮的中隔心筋焼灼術

ドキュメント内 digest_sentensei_0218*.indd (ページ 46-49)

閉塞性肥大型心筋症(

hypertrophic obstructive cardio-myopathy; HOCM

)へのカテーテル治療である経皮的中 隔心筋焼灼術について,本ガイドラインは,

2007

年,

2012

年のわが国の「肥大型心筋症の診療に関するガイドライ

ン」464,465)を出発点にして,米国からの

2011 ACCF/AHA

Guideline for the Diagnosis and Treatment of Hypertrophic Cardiomyopathy: Executive Summary

の考え方,さらに最 新の

2014 ESC Guidelines on diagnosis and management of hypertrophic cardio myopathy

の考え方を加えて,

HOCM

への侵襲的治療の選択と経カテーテル治療としての

PTSMA

の位置づけと実施の推奨に関して示す2,466,467)

6.1.1.

はじめに

HOCM

に対するカテーテル治療である経皮的中隔心筋 焼灼術は

1994

年に

Sigwart

により開始され,

1990

年代 は合併症も多かったが468,469)

Faber

らや

Seggewiss

ら による超選択的心筋コントラストエコーをエタノール焼灼 域決定のガイドに用いて合併症が減少し治療成績が向上 し,

percutaneous transluminal septal myocardial ablation

PTSMA

)と呼ばれ欧州から世界に広がり470,471),わが国 でも次第に普及し徐々に広がりつつある472–474).最近の米 国および欧州のガイドラインでは外科的中隔心筋切除術 と経皮的中隔心筋焼灼術の両者は,

septal reduction therapy

SRT

:中隔縮小治療)と整理された466,470)

PTSMA

には 心筋壊死作成に伴う特異な合併症があり,熟練者による指 導と実績の蓄積が安全な治療の継続的実施への鍵となる.

6. 

心筋症

6.1.2

閉塞性肥大型心筋症の診断と治療における  基本的な指針

a.肥大型心筋症の基本病態と左室内閉塞 i.閉塞部位と肥大型心筋症の病型分類

「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(

2012

年改 訂版)」にて肥大型心筋症(

hypertrophic cardiomyopathy;

HCM

)の基本病態は

HOCM

,心室中部閉塞性心筋症,心 尖部肥大型心筋症,拡張相肥大型心筋症に分類される465). わが国の

HCM

の基本病態に関する概念はこれを踏襲す る.

ii.誘発性左室内閉塞の重要性

運動負荷エコーによる検討では,安静時に閉塞例は全体 の

37%

,安静時には圧較差が

30 mmHg

未満だが運動負荷 によりそれ以上となる例が

33%

にみられ,安静時・運動 時にも圧較差のない例は全体の

30%

のみとされる475).左 室内閉塞の有無を決める圧較差は

30 mmHg

と定義され,

SRT

の適応は,安静または負荷で圧較差

50 mmHg

以上を 示す場合である(表24)466,467).したがって安静時閉塞の ない例で症状があれば,正確な診断には運動などによる負 荷エコーが必要である.

b.肥大型心筋症の診療における重要事項

i.心臓突然死のリスク評価と植込み型除細動器の植込み 肥大型心筋症の長期予後は

2

つの要素,心臓突然死

sudden cardiac death; SCD

)と心不全により規定される.

SCD

は年に

1%

に起こるとされ,小児・若年期にやや高 く,高齢ではやや減少するとされ,植込み型除細動器

implantable cardioverter defibrillator; ICD

)がただ一つ

HCM

患者の生命予後延長に有効な治療法である475–477)

SCD

の危険因子の評価を必ず

HCM

患者には行わなけれ ばならない478)

左室流出路閉塞は高い

SCD

発生率に関与し479,480),外 科的中隔心筋切除術の実施は

SCD

発生率を上昇させる481). 近年,心臓

MRI

によるガドリニウム遅延造影像は,突然死・

心不全死を含む致命的イベント発生の指標となることが 示されている482–484)

ii.肥大型心筋症センターによる肥大型心筋症の診断治療

2011 ACCF/AHA

ガイドラインでは,

HCM

の診療は遺 伝子診断も含め,“肥大型心筋症センター”と称する組織 化した体制での専門的診療が望ましいと強く推奨されて

いる466,467,485).これは遺伝子レベルでのアプローチととも

に,専門的な画像診断,専門的治療技術としての

PTSMA

, 外科的中隔心筋切除術(

Morrow

手術),そして

ICD

植込 みと心房細動に対するアブレーション治療などのすべて が実施可能で,十分な経験を有する術者と治療実績をもつ

施設にて

HCM

患者は集約して診療を受けるように推奨 された.わが国でも同様に集約した診療体制の構築が重要 である.

6.1.3

侵襲的治療における中隔縮小治療の位置づけ 薬物治療にて十分に症状の改善しない患者に対する非 薬物治療として,

2011 ACCF/AHA

ガイドラインでは“

septal reduction therapy

”として外科的中隔心筋切除術(

Morrow

手 術 ) と ア ル コ ー ル 中 隔 心 筋 焼 灼 術(

alcohol septal ablation; ASA

)を包括し,

2014 ESC

ガイドラインも同様 に提唱する466,467).本治療法の呼称については治療の黎明 期からの欧州での呼称を引き継ぎ,本ガイドラインでも

PTSMA

と呼ぶが,今後の世界的な流れで

ASA

へと移行

する可能性はある.

6.1.4

PTSMAの患者選択と手技

薬物抵抗性の

HOCM

は従来から外科的治療の対象とさ れ,中隔心筋切開切除術(

Morrow

手術)が中隔基部の肥 厚心筋の切除により左室流出路の閉塞を解除する方法と して実施されてきた486–488).欧米での手術成績は実施施設 の経験の差に関連し,多数例の実施施設の成績は非常によ

489–491).しかしわが国では多数例での治療成績の報告は

きわめてかぎられ,最近の日本胸部外科学会による全国規 模年次集計にても,中隔心筋切開切除術は年間

50

60

例 であり,かつ

8

割が大動脈弁または僧帽弁置換術に対し追 加実施した例である.とくに早期に適応として外科的治療 を進めたい中隔肥厚の著明な思春期,青年期

HOCM

に対 する純粋な中隔心筋切除術はきわめて少ない492)

SRT

としての

PTSMA

に関する最近の米国ガイドライ

ンに準拠したわが国での推奨を表25に示した.近年,心 室中隔切除術と同じコンセプトをもつ

PTSMA

1995

年 に最初に報告され,治療法の改良により合併症が減少 し,欧米では臨床現場にて多数例に実施されるように なった493).とくに術中の心筋コントラストエコーの導入 以来,房室ブロック発生の減少,閉塞責任心筋への正確な アルコール焼灼などにより治療成績は向上し,合併症が減

少した494–498).焼灼後早期の心筋は浮腫状となり,治療後

表24 左室のDynamic Obstructionの定義

閉塞状態 条件 圧較差

閉塞性 安静時 30 mmHg

非閉塞性 安静時 生理的誘発

30 mmHg

30 mmHg 誘発性閉塞 安静時

生理的誘発

30 mmHg

30 mmHg 安静時または誘発性閉塞により50 mmHg以上の圧較差が生じる 場合がseptal reduction therapy(中隔縮小治療)の基準となる.

早期の

3

7

日間はいったん減少した圧較差が増大するが,

収縮は消失し労作による圧較差上昇はなく,患者の症状は 軽快する.

1

年,

2

年と徐々に壊死部は縮小し壁厚減少,左 室内への突出なく,症状消失が得られる499–501)

中隔縮小治療における治療法選択のポイント

SRT

への適応は,薬物治療に抵抗性の心不全(

NYHA

心機能分類

IIm

IV

度),狭心症状または失神があり,か つ安静時の左室内圧較差が

30 mmHg

以上あること,また 安静時の圧較差が低値でも有意な症状があり負荷により

50 mmHg

を超える場合は適応となる.以下に治療法選択

のポイントを示す.

<HOCMへの中隔心筋切除術の選択>

1. 外科治療を要する左室流出路または僧帽弁腱索複合 体の構造的異常.

2. 外科治療を要する器質的大動脈弁または僧帽弁疾患 の合併.

3. 上記1,2を除くHOCMでとくに若年・青壮年の患 者.

4. 閉塞を生じる心室中隔局所の壁厚が30 mm以上の HOCM.

5. PTSMAによる中隔縮小効果が不十分な患者.

<HOCM治療としてのPTSMAの選択>

薬剤抵抗性の心不全症状,狭心症状または失神があり,

かつ安静時の左室内圧較差

50 mmHg

以上が基礎条件にあ ることは前述した.以下は

PTSMA

の実施を考慮できる.

1. 外科的治療を選択すべき左室流出路または僧帽弁腱 索複合体構造的異常のないこと.

2. 全身麻酔による開心術のリスクが高い併存疾患のあ る場合.

3. SRTの条件を満たす中高年齢層の患者.

4. 外科手術の選択が優先する条件だが,以下をすべて 満たす場合.

i. 外科治療の実績が不十分でかつセンター施設へ の紹介が困難.

ii. ガイドラインを含む十分な説明にも患者が外科

的治療を拒否し,PTSMAを選択する.

iii. PTSMA実施に関し実績のある施設・術者のもと

で実施する.

5. 中隔心筋切除術既往例に残存する症候性の左室内閉 塞を示す患者.

6. 大動脈弁置換術または僧帽弁形成術の後の症候性の 左室内閉塞を示す患者.

治療法の選択にあたり,全身麻酔による開心術が不適な

表25 HCMに対する侵襲的治療の推奨

 クラスI

1. 中隔縮小治療は経験の豊富な術者のもとで,包括的HCM ログラムを有する施設で行われるべきである.患者は薬剤抵 抗性の症状と有意な左室流出路閉塞を有する. レベルC a. 術者は10例以上の治療経験,施設が20例以上の治療実績.

b. 臨床症状は,重症呼吸困難または胸痛,または失神発作.

家庭内の静かな生活で症状が起こるNYHA III度またはIV 度.

c. 安 静 時 ま た は 生 理 的 誘 発 で, 左 室 流 出 路 圧 較 差 ≧50 mmHg

[補足]・中隔縮小治療は,外科的には中隔心筋切除術,経カテー テル治療としてPTSMAを示す.

   ・ aの条件を満たさない術者は,単独実施を規定の症例数 を超えるまで経験豊富な(≧20例)術者の指導下に治 療を行う.

 クラスIIa

1. 左室流出路閉塞のある薬剤抵抗性HCMへの治療について,

外科的中隔心筋切除術とPTSMAの両者を実施する実績ある センターに相談する. レベルC

2. 左室流出路閉塞のある薬剤抵抗性HCM患者に対して,外科 的中隔心筋切除術を,まず第一に検討する. レベルC 3. 症候性のHCMの小児で,標準の薬物治療にても安静時に50

mmHg以上の閉塞がある場合は,外科的中隔心筋切除術を行 う. レベルC

4. 提唱される複数の薬物治療にても比較的温和な日常活動・家 庭内の作業などが,症状の出現により制限される(NYHA II m 度)患者における中隔縮小治療の実施. レベルC

5. 重大な併存症のある患者や,高齢で開心術が禁忌か危険が 大きいと考えられる薬剤抵抗性の症状があるHCM患者への PTSMAの実施. レベルC

 クラスIIb

1. 実績あるセンターにおける患者からの要望に応じたPTSMA の実施. レベルC

2. 中隔壁厚がきわめて厚い(>30 mm)患者へのPTSMAの実施.

レベルC

3. 薬剤抵抗性HCMNYHA IImIII度)で,他の治療が困難な 左室中流部閉塞を有する患者へのPTSMAの実施. レベルC  クラスIII

1. 薬物治療でコントロールされ,無症状で正常な運動耐容量の HCM患者に実施する中隔縮小治療. レベルC

2. HCMの長期的かつ多面的ケアプログラムのない施設で実施さ

れる中隔縮小治療. レベルC

3. 中隔縮小治療を実施できる患者の左室流出路閉塞の解除の目 的で実施する僧帽弁置換術. レベルC

4. 開心術の適応となる他の弁膜症,冠動脈疾患などを併存する 患者へのPTSMAの実施. レベルC

5. 外科的治療非適応を除く20歳未満の患者へのPTSMAの実 施,ならびに40歳未満の患者への積極的なPTSMAの実施.

レベルC

HCM:肥大型心筋症,NYHA: New York Heart Association,

PTSMA:経皮的中隔心筋焼灼術

抗性の症状と有意な左室流出路閉塞を有する.

センターに相談する.

的中隔心筋切除術を,まず第一に検討する.

う.

度)患者における中隔縮小治療の実施.

PTSMAの実施.

の実施.

左室中流部閉塞を有する患者へのPTSMAの実施.

HCM患者に実施する中隔縮小治療.

れる中隔縮小治療.

的で実施する僧帽弁置換術.

患者へのPTSMAの実施.

クラスI

クラスIIa

クラスIIb

クラスIII

ドキュメント内 digest_sentensei_0218*.indd (ページ 46-49)

関連したドキュメント