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僧帽弁閉鎖不全:成人

ドキュメント内 digest_sentensei_0218*.indd (ページ 36-39)

4.3.1

僧帽弁閉鎖不全の病態と心不全発症の基礎事項 僧帽弁閉鎖不全(

mitral regurgitation; MR

)は最も頻繁 に遭遇する弁膜症であり,弁構造異常,左室機能障害によ り僧帽弁の閉鎖が不完全となり,左室から収縮期に左房へ の血流逆流が生じる.慢性逆流は左房圧上昇と容量負荷・

表20 PTMCの実施施設と術者に関し推奨される事項

実施施設

1. 日本心血管インターベンション治療学会教育研修施設・研修 関連施設.

2. 心臓血管外科専門医基幹施設.

3. 僧帽弁疾患治療への内科医・外科医・心エコー診断医らによ るハートチームを構成した治療の実施.

4. 外科的僧帽弁置換術の日常での実施と緊急心血管手術の体制.

5. 心エコー診断医による経食道心エコー実施,年間100例以上.

6. PTMCの毎年の実施経験と計20例以上の実施成績.

7. 心房中隔穿刺術の日常診療における実施,年間10例以上.

実施術者

1. 日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医また は名誉専門医.

2. PTMCの経験が計20例以上,または最近5年間で10例以上.

3. 心房中隔穿刺術の経験が計20例以上または最近5年間で10 例以上.

4. 13を満たす術者を助手とした指導下で,1を満たす術者が 実施.

PTMC:経皮的経静脈的僧帽弁交連切開術

拡大を起こし,逆流量増加例では左室容量の増大が起こ り,収縮性を亢進し心拍出量を維持する.しかし重度の逆 流では次第に代償機能が破綻し,左室拡大の進行,心筋伸 展から収縮性が低下し,肺うっ血と心拍出量低下が生じ,

心不全発症となる.

急激に乳頭筋断裂などで起こる急性

MR

は,急激な肺水 腫やショック状態に陥り致死的となり,緊急の外科的治療 を要する.一方,変性,小腱索の病変による弁尖逸脱,リ ウマチ性病変,さらに心内膜炎既往による弁変形が慢性

MR

の成因となる.逆流が増悪し心筋疲弊に伴う左室拡大 が進行すると左心不全となり,高度閉鎖不全例は

10

年間 に約

90%

が外科手術の適応となるか死亡するとされ,突 然死のリスクも高い.

一方,僧帽弁複合体の構造に異常がなくても,拡張型心 筋症や虚血性心筋症では高度な左室機能障害により二次 的に

MR

となり,左室拡大により乳頭筋と僧帽弁輪の距離 が 延 長 し, 収 縮 期 に 僧 帽 弁 尖 が 弁 輪 部 ま で 戻 れ ず

tethering

),間隙から左房への逆流が生じる.この病態を 機能性逆流と呼ぶ.左室拡大例における中等度以上の

MR

は患者の予後を左右する.

4.3.2

僧帽弁閉鎖不全の治療

治療の原則は薬物療法であり,逆流の進行した患者では 外科手術が適応となる.薬物療法には,近年,左室拡大と 左室リモデリング抑制を目的に

ACE

阻害薬,アンジオテ ンシン

II

受容体遮断薬(

ARB

)が用いられ,収縮応答性 の維持改善にβ遮断薬が有効であり,うっ血症状に対し利 尿剤や抗アルドステロン剤などが用いられる.一般に

MR

に対する原因治療は外科手術が原則であり,僧帽弁形成術 または僧帽弁置換術により逆流に対し根治が可能で,人工 心肺下開胸手術が行われる.外科手術の治療指針は,「弁 膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(

2012

年改訂 版)26)」にて示されている.手術に関する適否は,

MR

グレー ド,心不全症状,

LVEF

,および左室収縮末期径からの判断 が推奨されている(図6)26).しかし左室機能の低下を示 す患者では手術リスクが高く,遠隔期生存率は必ずしも良 好でない.術後の後負荷増大による低心拍出量から人工心 肺離脱困難や循環補助装置併用を要し,手術死亡が多い.

したがって,左室機能低下例に伴う高度

MR

患者は外科的 治療の適応としないのが現状である.さらに慢性閉塞性肺 疾患などの心臓以外の全身麻酔が困難な例では,手術を実

図6 高度僧帽弁逆流に対する治療の指針

MR:僧帽弁逆流,EF:駆出率,Ds:左室収縮末期径

(「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)26」より)

高度MR

EF0.60 Dsand40 mm

EF0.60 and/or Ds40 mm

EF0.30 and/or Ds55 mm

EF0.30 and/or Ds55 mm

新たな心房細動 肺高血圧症

弁形成術 または 弁置換術

弁形成術

6か月ごとに 臨床評価 弁形成術の可能性

クラスIIa

クラスI

クラスIIa クラスI

クラスIIa

症状

施できない.

4.3.3

Edge-to-Edge法による僧帽弁逆流の治療

MR

に対する外科的形成術として,前尖・後尖の中央に 糸をかけて

8

の字状に縫合する外科手術法の一つである

edge-to-edge

法が行われる.これを経カテーテル的に可能 とする治療デバイスが,“

MitraClip

®システム”である(図 7)363).治療は全身麻酔下で管理し,

MitraClip

®システム と患者は固定した位置関係となり治療手技が実施される.

経大腿静脈的に心房中隔穿刺術を行ったのち,留置された ワイヤを通じて左心房までシステムを到達させる.

4.3.4

Edge-to-Edge 法(MitraClip®)の欧米での  位置づけとわが国の現状

欧米では,開心術による

MR

の治療が困難な重症心不全 患者を対象に

edge-to-edge

治療(

MitraClip

®)の有用性 とその限界が示され,臨床の現場に適用されつつある363). これらの結果をもとに,弁膜症あるいは心不全の治療のガ イドラインに盛り込まれてきた.

欧州 で は, 欧 州 心 臓 病 学 会(

European Society of Cardiology; ESC

)が,関連する学会と共同して「急性

/

慢性心不全の診断および治療のガイドライン

2012

」を策定 し経皮的治療について言及し364),さらに

ESC/

欧州心臓外 科学会(

European Association for Cardio-Thoracic Surgery;

EACTS

)共同策定の「心臓弁膜症に対する治療のガイドラ

イン

2012

年改訂版」では,“

Percutaneous Mitral Edge-to-Edge Repair

”として本治療法を示し,一次性

MR

もしくは 二次性

MR

を有し,かつ外科手術の選択が困難な患者に対 し,推奨度は低いが実施しうる治療法として新たに加えた

Class II, Evidence Level B

327).本治療法の実施にあたり,

循環器内科,心臓外科を含めた関連する複数の専門医によ り構成されたハートチームが必要とされている.

米国では,

2013

年末に外科的治療がハイリスクで困難 とされる変性性弁逸脱による

MR

に対し

MitraClip

®シス テムの臨床使用を

FDA

が承認した.続いて

2014 AHA/

ACC Valvular Heart Disease Guideline

に本治療法を取り 上げ,経カテーテル治療による僧帽弁形成術は,

NYHA

心 機能分類

III

IV

度の重症心不全を有する一次性

MR

で,

併存条件のため手術が禁忌・危険であり,本治療法で妥当 な生命予後が期待される患者を対象に

Class IIb

Evidence Level B

での推奨を示した365).侵襲度は外科的治療より低 く,外科的形成術の代替となるとしたが,米国での臨床使 用は現場に拡大しつつある.一方,機能性

MR

を有する重 症心不全例の予後に及ぼす有効性はまだ未解決が多く,適 応に承認は得られておらず臨床試験が進行中である.

4.3.5

わが国での導入に向けての取り組みと位置づけ 経カテーテル的

edge-to-edge

法を行う

MitraClip

®シス テムは,厚生労働省が主管する「医療ニーズの高い医療機 器等の早期導入に関する検討会」において,早期導入が期 待される医療ニーズの高い医療機器として

2011

11

2

日に選定され,準備が続いている.これを受けて,日本 循環器学会が中心となり,関連

6

学会が厚生労働省の指示 のもとに「

MitraClip

」に関する治療機器の使用要件等基 準策定委員会が構成され,本治療法の導入前であるが,臨 床試験などの導入に向けての一定の基準が,すでに

2013

年に策定された.ここには,適応基準策定の考え方,対象 疾患,選択基準,除外基準,施設実施基準,実施医基準が 示されているが,今後の改訂を見越しての作成であり,本 ダイジェスト版には盛り込まない.

図7 MitraClip®システム

MitraClip®システムの挿入からクリップの固定方法を示す.

Feldman, et al. 2011363より)

4.4

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