第 6 章 抵抗板を設置した空積みブロックの構造 および滑動抵抗力の算定法
6.5 抵抗板を設置した空積みブロックの滑動抵抗力の算定式 .1 はじめに
6.5.3 算定式から求めた滑動抵抗力の評価と算定式の検証
6.5.2 で,抵抗板を設置した壁体の滑動抵抗力 F の算定式を示すことができた.ここで は,上記の(6.19)の算定式より,第 4 章で実験した抵抗板を設置した Case2,3 と抵抗板 を設置しない Case1 の壁体の滑動抵抗力を算出し,算定式から得られた理論上の滑動抵抗 力の評価値と実験から得られた実験上の滑動抵抗力の評価値を比較して算定式の妥当性を 検証する.
算定計算に用いる数値は以下の通りである.
・壁体(模型ブロック)の単位体積重量:23kN/㎥(実測値),
・胴込材の単位体積重量γ:17.5kN/㎥(実測値).
・胴込材内部摩擦角φ:35°
・枠体底面の摩擦角φB:30°
・抵抗板の壁面摩擦角δ:12°(コンクリート擁壁の壁面摩擦角δ の慣習に習い,胴込 材の内部摩擦角φの 1/3 を採用).
・抵抗板前面からブロック前壁までの距離 L は Case2:160mm,Case3:70mm(実測値 ).
算定の結果を表 6.1 a), b),c)に示す.表の Case1,2,3 の評価は,Case1(なし)の各 段位における摩擦抵抗力 T の値を基準値 1.0 としたときの Case2 と Case3 の各段位での滑 動抵抗力 F の大きさの割合を示している. このときの抵抗板の受働土圧計数 Kp は 5.76 で あった.
表-6.1 算定式から求めた滑動抵抗力とその評価値 a) Case1(なし)
壁体 重量=W(枠)+W(胴) 摩擦抵抗力T Tの
評価 高さ 枠体 胴込 計 枠体 胴込 計
mm kN kN kN kN kN kN 基準値
上段 100 0.027 0.057 0.084 0.016 0.040 0.056 1.0
中段 200 0.054 0.113 0.167 0.031 0.079 0.110 1.0
下段 300 0.081 0.170 0.250 0.047 0.119 0.165 1.0
b) Case2(後壁側)
L=160 φ=35°
δ=12°
壁体 重量=W(枠)+W(胴) 摩擦抵抗力T 受働土 圧Pp
受働土 圧係数 kp
滑動抵
抗力F Fの
高さ 枠体 胴込 計 枠体 胴込 計 抵抗板 T+Pp 評価
mm kN kN kN kN kN kN kN - kN 基準値 上段 100 0.027 0.057 0.084 0.016 0.040 0.056 0.164 5.76 0.219 3.9 中段 200 0.054 0.113 0.167 0.031 0.079 0.110 0.315 5.76 0.426 3.8 下段 300 0.081 0.170 0.250 0.047 0.119 0.165 0.466 5.76 0.632 3.8
- 91 - c) Case3(中央)
L=70 φ=35°
δ=12°
壁体 重量=W(枠)+W(胴) 摩擦抵抗力T 受働土
圧Pp
受働土 圧係数 kp
滑動抵
抗力F Fの
高さ 枠体 胴込 計 枠体 T+Pp 計 抵抗板 T+Pp 評価
mm kN kN kN kN kN kN kN - kN 基準値 上段 100 0.027 0.057 0.084 0.016 0.040 0.056 0.087 5.76 0.139 2.5 中段 200 0.054 0.113 0.167 0.031 0.079 0.110 0.153 5.76 0.258 2.3 下段 300 0.081 0.170 0.250 0.047 0.119 0.165 0.219 5.76 0.376 2.3
図-6.8 は算定式から求めた表 6.1a),b),c)の滑動抵抗力(kN)とその評価値を示し ている.
縦軸は滑動抵抗力 kN,グラフ上の数値は Case1 の各段の滑動抵抗力をそれぞれ基準「1.0」
と評価したときの Case1 の各段の滑動抵抗力に対する Case2,Case3 の滑動抵抗力の大きさ の割合を示している.上・中・下段ともに滑動抵抗力とその評価値は Case2>Case.3>Case1 の順に大きい.
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
下段 中段 上段
Case2(後壁側)
Case3(中央)
Case1(なし)
1.0
1.0
1.0 3.8
2.3
2.3 3.8
3.9 2.5
滑動抵抗力F(kN)
図-6.8 算定式から求めた滑動抵抗力とその評価値
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表-6.2 は算定式から求めた滑動抵抗力の評価値と第 4 章の実験から得られた無次元滑動 抵抗力の評価値をケース別,段位別にまとめている.
表-6.2 実験と理論から求めた滑動抵抗力の評価値 Case1
(なし)
Case2 (後壁側)
Case3 (中央) 上
段
実験上 1.0 2.2 1.8 理論上 1.0 3.9 2.5 中
段
実験上 1.0 3.4 2.4 理論上 1.0 3.8 2.3 下
段
実験上 1.0 3.9 2.3 理論上 1.0 3.8 2.3
図-6.9 は,算定式から求めた評価値を縦軸に,実験から得られた評価値を横軸にプロッ トした図である.便宜上,クーロンの土圧論を用いた算定式から求めた評価値のことを「理 論上の評価値」,実験値から得られた無次元滑動抵抗力の評価値 を「実験上の評価値」と呼ぶ . それぞれの評価値が 45°の直線上にプロットさ れていると,理論と実験による評価値が一 致し,直線より下に乖離すると実験上の評価値が理論上の評価値より小さく,上に乖離す ると実験上の評価値が理論上の評価値より大きいことを示している.
図より,Case2(後壁側)の下段と Case3 の下段・中段では実験上の評価値と理論上の評 価値はほぼ一致ししているが,Case2(後壁側)の中段と上段と Case3(中央)の上段にお いて下に乖離している.詳細には,Case2(後壁側)の下段における理論上の評価値は 3.8,
実験上の評価値は 3.9 で僅か 0.1 実験値の方が大きいがこの差は無いと見なせる.Case3
(中央)の下段においても,理論上も実験上の評価値も 2.3 で一致している.一方,Case2
(後壁側)の中段と上段,Csae3(中央)の上段においては実験上の評価値が小さくなって いる.しかしながら,第 4 章の考察で述べているように,壁体の回転で水平変位差が過大 に見積もられたことや,載荷重の大きさが背面土のくさび土塊の重量と比べあまりにも大 きく,現実離れしている等,これらの原因は明らかにされており,実験上の評価値と 理論 上の評価値は各段とも一致したと判断される.
以上のことから,実験による試験体の滑動抵抗力は適正に評価されていた.そして抵抗 板を設置した壁体の滑動抵抗力 F はブロック底部の摩擦抵抗力 T と抵抗板に作用する受働
土圧 Pp の和であり,受働土圧はクーロンの土圧論で求められることが 明らかになった.
また,抵抗板に作用する受働土圧はクーロンの土圧論で求められることから,滑動抵抗 力は以下の方策により強化されることが期待される .
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1)抵抗板の前面に作用する土塊とこの土塊に上載する土塊をより多く確保すること.
そのためには抵抗板の高さを高くし,ブロックの前壁と後壁の距離LをL≧h/tanωを満足 すること,満足しない場合(L<h/tanω)にはブロックの後壁側に設置してできるだけ L を 稼ぐこと.
2)充填材と抵抗板との摩擦抵抗角δを大きすること,また抵抗板の仮想すべり面の角度 ωを小さくすること.そのためには,基礎材・胴込材には内部摩擦角が大きい栗石等を用い,
抵抗板前面を粗面形状にすること.
3)受働土圧係数を大きくすること.そのためには,抵抗板をブロック後壁に接触させ るよりも後壁側に設置して抵抗板と後壁との間に介在する土粒子のダイレイタンシーによ り抵抗板の背面を押し出す力を発 揮する後部拘束層を形成すること.但し,抵抗板のすべ り面は直線のすべり面を仮定しているため受働土圧を過大評価する傾向にあることから,
抵抗板の壁面摩擦角δ については注意を要する.
図-6.9 実験値とクーロンの土圧論から算定した評価値
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6.6 まとめ
1)抵抗板を設置した空積みブロックの概念図より,抵抗板はブロックの後壁側に設置 してブロックの後壁と抵抗板の間に後部拘束層を形成 し,ブロックの後壁の高さを抵抗板 の高さの 1/2 以下とする本構造の概要と特徴を述べた.
2)施工手順を示し て,簡単・迅速な抵抗板の据付けや胴込材と裏込め材の一括充填・
転圧により施工を短縮してコストを削減する合理的な施工法を説明した.
3)算定式をから求めた滑動抵抗力の評価値と実験から得られた評価値を比較した結果,
両者の評価値がほぼ一致したことから,抵抗板を設置した壁体の滑動抵抗力 F はブロック 底部の摩擦抵抗力 T と抵抗板に作用する受働土圧 Pp の和であり,この受働土圧はクーロン の土圧論から求められることが確認された.このことにより,抵抗板を設置した壁体の滑 動抵抗力の算定式を示すことができた.
4)算定式より,壁体の滑動抵抗力を強化するための方策として以下の知見 が得られた.
抗板の前面に作用する土塊とこの土塊に上載する土塊をより多くに確保 すること.その ためには,ブロックの前壁と後壁の距離LをL ≧h/tanωを満足することが最善であるが,
満足しない場合(L<h/tanω)にはできるだけブロックの後壁側に設置すること.
抵抗板の壁面抵抗角δを大きくすること.そのためには,粒径の大きい 栗石や単粒砕石 を用い,抵抗板の壁面を摩擦係数が大きい凹凸面にすること. 抵抗板のすべり面は直線の すべり面を仮定して計算されているため,受働土圧を過大評価する傾向にあることから,
抵抗板の壁面摩擦角δ については注意を要する.
壁体の勾配が急勾配になるほど受働土圧が増加して滑動抵抗力が強化されるが ,背面土 圧合力がブロック底面のミドルサードに収まることが 絶対条件である.
【参考文献】
6.1)社団法人日本道路協会:道路土工擁壁工指針,pp.74-75,1999.
6.2)松岡元:土質力学,森北出版,pp.182-183,1999 6.3)松岡元:土質力学,森北出版,pp.129,1999 6.4)松岡元:土質力学,森北出版,pp.189-190,1999
6.5)安川郁夫,今西清志,立石義孝:絵とき土質力学,オーム社, pp.148-153,2000.
6.6)安川郁夫,今西清志,立石義孝:絵とき土質力学,オーム社, pp.152,2000.
6.7)松岡元:土質力学,森北出版,pp.186,1999.
6.8)安川郁夫,今西清志,立石義孝:絵とき土質力学,オーム社, pp.152,2000.
6.9)近畿高校土木会:土質力学,オーム社,pp.102,1999
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