第 5 章 抵抗板を設置した壁体の滑動抵抗力発生のメカニズム
5.3 後壁内面に作用する水平応力に関する実験・結果および考察
- 60 - これらの実験結果から以下の知見が得られた.
1)それぞれの抵抗板には水平力(受働土圧)が作用し, これらの水平力(受働土圧)
は Case3(中央)よりも Case2(後壁側)の方が,上段側よりも下段側の方が大きいことか ら,受働土圧は抵抗板の前面に作用する中詰材の土塊量とその 土被り圧に準じていること が明らかになった.
2)Case2(後壁側)は Case4 (後壁内面接触)よりも受働土圧が大きく,水平変位は小さか ったことから,抵抗板と後壁内面の間に介在する粒状材が受働土圧に影響を及ぼしている と考察される.
3)受働土圧が大きいほど水平変位差は小さく,滑動抵抗力が大きいことが確認された.
- 61 - 図-5.4 は Case1(な
し ) に お け る 実 験 開 始 から載荷期を経て載荷 重を 100%除荷したと きまでの内面水平応力 と水平変位差の結果で ある.この実験では,
最 終 載 荷 (3.6kN) に 達 したとき壁体が瞬時に 滑り出し,ストッパー に支えられて静止した ケースである.図-5.4 c)の下段ブロックの内 面水平応力は,ブロッ ク が 滑 り 出 す 直 前 の NO.1 の 22kPa が最大で,
次は NO2 であり,上位 の NO.4 と NO.5 は 5kPa 以 下 と 小 さ か っ た . NO.1 の 内 面 水 平 応 力 が 22kPa に達すると,
それまで 1.9mm 変位し ていたブロックは一瞬 に滑り,ストッパーに 支えられて静止した.
静止したときのブロッ ク の 水 平 変 位 差 は 3.7mm で あ っ た . 図 -5.4 b)の中段では NO2 の 14kPa が最大で,次 は NO.1 の 10kPa,NO.4 と NO.5 は 5kPa 以下と 小さかった.図-5.4 a) の 上 段 で も NO1 の 7.5kPa が最大で,次は NO.2,NO.4 と NO.5 は 2kPa 以下であった.
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
B(No.5)
B(No.4)
B(No.3)
B(No.2)
B(No.1)
T(No.5)
T(No.4)
T(No.3)
T(No.2)
T(No.1)
M(No.5)
M(No.4)
M(No.3)
M(No.2)
M(No.1)
上段ブロック
中段ブロック
下段ブロック
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
a)上段
b)中段
c)下段
図-5.4 ブロック後壁内面に働く水平応力σhと内面水平変位差 δh の関係(Case1(なし),図中の●はブロックが滑り
出した値を示す)
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
B(No.5)
B(No.4)
B(No.3)
B(No.2)
B(No.1)
T(No.5)
T(No.4)
T(No.3)
T(No.2)
T(No.1)
M(No.5)
M(No.4)
M(No.3)
M(No.2)
M(No.1)
上段ブロック
中段ブロック
下段ブロック
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
0 10 20 30
0 1 2 3 4
内面水平応力σh(kPa)
水平変位差δh(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
a)上段
b)中段
c)下段
- 62 -
つまり,Case1(なし)の内面水平応力は全ての段位でブロックの上・下境界面より も上側 の NO.1 と NO.2 が大きく,下側の NO.5 は極めて小さかった.また,ブロックが滑り出す直 前の水平変位差は 0.9mm であった.
図 -5.5 は こ の と き の 壁 体 に 作 用 し た 背 面 土 圧 合 力 と 水 平 変 位 差 で あ る . 最 終 載 荷 時 (3.6kN)における背面土圧合力は 0.14kN であった.ただし,ここでの背面土圧合力はブロ ックの背面の上から 1/3,下から 1/3 の位置に 2 か所,計 6 か所の土圧計で測定したもの である(参考までに,第 4 章での背面土圧合力は計 15 か所で測定している).
図-5.5 背面土圧合力 PAと水平変位差δh’の関係(Case1(なし),図中の●は ブロックが滑り出した値を示す)
図-5.6 は Case2(後壁側)に作用した内面水平応力と水平変位差の結果である.図-5.6 c) の下段ブロックにおいて,NO.1 の内面水平応力は実験開始時における 13.3kPa から最終載 荷時(3.6kN)には約 100kPa まで増加した.NO.2 は 75kPa から 50kPa に減少,NO.3 は 27kPa から 35kPa に増加し,上側の NO.4,NO.5 は 2kPa と極端に小さかった.このときのブロッ クの水平変位差は 0.8mm で Case1(なし)の半分以下であった.図-5.6 b)の中段ブロックの 内面水平応力は NO.2 の 26kPa が最も大きく,増分量では NO.3 よりも NO.1 が 2 倍以上大き かった.NO.5 は終始 0.3kPa 未満と極端に小さかった.このときの中段ブロック の水平変 位差は 0.56mm で Case1(なし)の半分以下であった.図-5.6a)の上段ブロックでも中段ブロ ックと同様な傾向であった.つまり,Case1(なし)と同様に内面水平応力は全ての段位に おいてブロックの上・下境界部の上側(NO.1,NO.2)で大きく,下側の NO.5 では極端に小さ かった.
- 63 -
0 20 40 60 80 100
0 0.5 1 1.5 2
内面水平応力(kPa)
水平変位差(mm)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1 0
10 20 30
0 0.5 1 1.5 2
内面水平応力(kPa)
No-5 No-4 No-3 No-2
水平変位差(mm)
0 10 20 30
0 0.5 1 1.5 2
内面水平応力(kPa)
No-5 No-4 No-3 No-2 No-1
水平変位差(mm)
B(No.5)
B(No.4)
B(No.3)
B(No.2)
B(No.1)
T(No.5)
T(No.4)
T(No.3)
T(No.2)
T(No.1)
M(No.5)
M(No.4)
M(No.3)
M(No.2)
M(No.1)
抵抗板
抵抗板
抵抗板
図-5.6 ブロック後壁内面に働く内面水平応力σh と水平変 位差δhの関係(Case2(後壁側))
a)上段
b)中段
c)下段
- 64 -
図-5.7 はこのときの壁体に作用した背面土圧合力と水平変位差の結果である.最終載荷時 (3.6kN)における背面土圧合力は 0.3kN で Case1(なし)の約 2 倍であった.
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
0 1 2 3 4
背面土圧合力PA(KN)
上段 上段+中段 上段+中段+下段
図-5.7 背面土圧合力 PAと水平変位差δh’の関係(Case2(後壁側),
図中の●は最終載荷時の値を示す)
これらの実験結果より,以下の知見が得られた.
1)Case1(なし)の各段の内面水平応力σhの最大値は下段 22kPa,中段 14kPa,上段 7.5kPa で,上段の 7.5kPa を 1 とすると,その比率は 2.9 対 1.9 対 1 の関係にある(図-5.8).
一方,各段のブロック底面における粒状材の垂直応力 σVは下段 5.25kPa,中段 3.5kPa,
上段 1.75kPa でこの比率は中詰材の土被り圧の比率である 3 対 2 対 1 の関係にあって(図 -5.9),各段の内面水平応力σhの最大値とブロック滑り面上の垂直応力 σVの関係はほぼ 同じ比率にある.また,最大せん断応力はτf=σVtanφpeakであることから,内面水平応力 σhとブロック滑り面のせん断応力τは相関関係にあることが確認された.
2)内面水平応力が大きいほど水平変位差は小さく,背面土圧合力が大きいことから内 面水平応力とブロックの滑動抵抗力は相関関係にあることが確認された.
3)上記の 1)と 2)より,内面水平応力σh,せん断応力τおよび滑動抵抗力 F には相関 関係にあることが確認された.
- 65 -
4)内面水平応力は,Case2(後壁側),Case1(なし)ともに全ての段位で上・下境界面 より上側が大きく,下側は極端に小さかった.これに関して,ブロックの変位によって上・
下境界面より上側の土粒子がせん断されてせん断変形が生じる.この せん断変形が生じた 土粒子がブロックの変位に伴って移動するためには ,他の土粒子の上に滑り上がる必要が ある 5.2).この土粒子のすべり上がりによって 土粒子の体積が膨張したためと考えられる
(ダイレイタンシー ).反対にせん断応力が増加しないすべり面より下側に位置する土粒子 は,土粒子の移動で他の土粒子の上を滑り上がる必要がないためと考えられる.
5)Case1(なし)よりも Case2(後壁側)の内面水平応力が大きくなる理由は,ブロック の上下境界部のすべり面と直交して抵抗板が垂直に設置されたことにより,抵抗板の前面 からブロック前壁までのブロック境界面が潜在的なすべり面とはならないため,ブロック のすべり面の面積(せん断面)は小さくなる.そして,この潜在的すべり面の面積(せん 断面)が小さくなった分,せん断応力が増加する.これに加えて,抵抗板の前面にはブロ ックが変位する方向と反対方向からの水平力が作用するため,後部拘束層内では土塊 の拘
22.0
14.0
7.5
0 5 10 15 20 25
下段 中段 上段
内面水平応力σh(kPa)
1 1.9
2.9
ブロック ブロック ブロック
5.25
3.5
1.75
0 1 2 3 4 5 6
下段底部 中段底部 上段底部 垂直応力σV(kPa)
1 壁高:(H)
粒状材の単位体積重量:(γ )=17.5kN/m3
2 3
H = 0.1m H = 0.2m
H = 0.3m
図-5.8 Case1(なし)の最終荷重時に おける各段の内面水平応力σh の 最大値
図-5.9 各段ブロックの底部に働く 垂直応力σV
- 66 -
束圧が増大し,後部拘束層底面の潜在的すべり面においてせん断応力が増加する.こうし たせん断応力と拘束圧の増加とが相まって土粒子のせん断ひずみが増加し,このせん断ひ ずみで体積が膨張した (ダイレイタンシー)5.3)ためと考察される.
6)非接触型(後壁側)の方が接触型(後壁内面接触)よりも受働土圧大きいのは,抵 抗板と後壁内面との間に介在する土粒子のせん断ひずみによるダイレイタンシー により,
抵抗板の背面を押す水平力が増加したためと考察される.