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抵抗板による滑動抵抗力発生のメカニズム

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 72-78)

第 5 章 抵抗板を設置した壁体の滑動抵抗力発生のメカニズム

5.6 抵抗板による滑動抵抗力発生のメカニズム

本節では,5.2 節の抵抗板前面に作用する水平力,5.3 節の後壁内面に作用する水平応 力,5.4 節の抵抗板の背面に作用する水平応力,そして 5.6 節の後部拘束層内の応力に 関する考察を体系的に整理して, 抵抗板を設置した壁体の滑動抵抗力発生のメカニズムを 明らかにする.

図-5.13 は壁体に働く力の釣合い図である.そして,図-5.14 が滑動抵抗力発生のメカ ニズムの解説図である.図-5.13 と図-5.14 を用いて,壁体に作用する背面土圧合力ΣPA, ブロック底部に作用する摩擦抵抗力T,後部拘束層内に生じて抵抗板の背面 とブロック後 壁内面に作用する水平応力,抵抗板の前面に作用する受働土圧 Pp について解説する.解説 図には,壁体に作用する背面土圧合力ΣPA,ブロック底部に作用する摩擦抵抗力 T,抵抗 板の前面に作用する受働土圧 Pp に関する力の釣合いの連力図を載せている 5.5), 5.6)

図-5.13 には,壁体の背面土圧,抵抗板前面の受働土圧,抵抗板背面と後壁内面に作用 する水平力 PA,ブロックの潜在すべり面における摩擦抵抗力 T を図示している.図中のブ ロック③では,背面土圧 PA3に対して受働土圧 Pp3と摩擦抵抗力 T3が,ブロック②では背 面土圧合力 PA3+ PA2に対して受働土圧 Pp2と摩擦抵抗力 T2が,ブロック①では背面土圧合 力 PA3+ PA2+ PA1に対して受働土圧 Pp1と摩擦抵抗力 T1が抵抗している.そしてブロックの すべり面より上側の後部拘束層には抵抗板背面と後壁内面を押す水平 方向の応力σh が作 用している.こうした力が連動しながら壁体と背面土圧合力が釣り合っている.

図-5.13 壁体に働く力の釣り合い図 抵 抗 板 前 面 の 土 塊 の

すべり面

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図-5.14 において,段積みされたブロックに背面土圧が作用するとブロックの 潜在すべ り面上の土粒子に摩擦抵抗力 T が発生してブロック変位する.この摩擦抵抗力 T は抵抗板 を設置しない場合にはブロックの底面全体が潜在 的すべり面となるが(図-5.15),抵抗板 を設置した場合には,抵抗板の前面からブロック前壁にまでのブロック底部境界面 は潜在 的なすべり面とはならない.(図-5.16),従って,その分だけ潜在的すべり面の面積(せん 断面)が減少し,せん断応力が増加することになる.これに加えて,抵抗板の前面にはブ ロックの変位の方向とは反対方向の水平力が作用 しているため,この水平力により後部拘 束層内において土粒子間の主応力が増加し.抵抗板がない場合よりも せん断応力が更に増 加することになる.こうしたせん断応力と主応力の増加が相まって後部拘束層内の土粒子 の塑性せん断ひずみが増加し,体積が膨張(ダイレイタンシー)する 5.7).第 5 章において,

図-5.4 と図-5.6 で示した抵抗板を設置しない壁体と後壁側に設置した壁体の後壁内面に 作用した内面水平応力の違いは,まさにこのことである.

こうした後部拘束層内の体積膨張 により,抵抗板背面の上半部とブロック後壁内面の下 半部において水平方向の応力が増加し,これらの水平応力により抵抗板が前方の土塊に押 し込まれて抵抗板の前面に水平力,即ち受働土圧 Pp が発生する 5.8).抵抗板に作用する土 塊重量が同一であると仮定すると,これらの抵抗板に作用する受働土圧 Pp の大きさは受働 土圧係数 Kp に比例するため,抵抗板の背面に作用する水平力が大きいほど受働土圧が大き くなることが理解される.5.2 節において,後壁側に設置した非接触型抵抗板と後壁に接 触させた接触型抵抗板では抵抗板に作用する土塊重量が小さい非接触型(後壁側)の方が 接触させた接触型(後壁内面接触)より受働土圧は大きかったことはまさにこのことで,

後部拘束層のダイレイタンシーによるものである.

ここで,これらの知見を体系的に整理して ,抵抗板による滑動抵抗力発生のメカニズム を示すと以下のようである.背面土圧により壁体が変位すると,各段のブロック底部の潜 在すべり面に摩擦抵抗力 T が発生し,ブロック後壁内面の下半部と抵抗板背面の上半部に 水平応力が集中する.その結果,抵抗板が前方に変位して抵抗板の前面に受働土圧が作用 する.と同時にこの受働土圧は後部拘束層の粒状材を介してブロックの後壁内面に伝播さ れ,ブロック底部の摩擦抵抗力 T と抵抗板前面の受働土圧が連動して背面土圧に抵抗する . これが滑動抵抗力発生のメカニズムである (図-5.14).

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図-5.14 滑動抵抗力発生のメカニズムの解説図

- 74 - G L

PA

ブロックすべり面

ブロックすべり面(A) PA

前壁

ブロック 前壁

断面図

平面図 T

図-5.15 抵抗板がない場合のブロックすべり面

G L

抵抗板すべり面 ブロックすべり面 抵抗板

PA

抵抗板

ブロックすべり面(A-A') 断面図

平面図

PA

T

前壁

A'

図-5.16 抵抗板がある場合のブロックすべり面 PP

PP

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5.7 まとめ

本章において得られた知見は以下の通りである.

1)5.2 節の抵抗板の前面に作用する水平力に関する実験結果より,

抵抗板に作用した水平力(受働土圧)は Case3(中央)よりも Case2(後壁側)の方が 大きく,かつ上段よりも下段の方が大きいことから,受働土圧は抵抗板の前面に作用する 土塊重量とその土被り圧に準じていることが確認された.

Case2(後壁側)の方が Case4 (後壁内面接触)よりも受働土圧は大きく,水平変位は小 さかったことから,抵抗板と後壁内面の間に介在する 土粒子が受働土圧に影響を及ぼして いると考察された.

受働土圧が大きいほど水平変位差は小さく,滑動抵抗力が大きいことが確認された.

2)5.3 節の壁体の後壁内面に作用する水平応力に関する実験結果より,

Case1 (なし)の各段の内面水平応力 σh の最大値と各段のブロック のすべり面の垂直応 力 σVの関係はほぼ同じ比率にあることから,各段ブロックに作用する内面水平応力とブ ロックすべり面のせん断応力は相関関係にあることが確認された.

内面水平応力が大きいほど水平変位差は小さく,背面土圧合力が大きいことから ,内面 水平応力とブロックの滑動抵抗力は相関関係にあることが確認された.

内面水平応力は、Case2(後壁側),Case1(なし)ともに全ての段位で上・下境界面より 上側のが大きく,下側は極端に小さかった.これはブロックの変位によって上・下境界面よ り上側の土粒子がせん断され,せん断変形を生じた土粒子が他の土粒子の上にすべり上が ることにより,土粒子の体積が膨張したためと考えられた(ダイレイタンシー ).

Case1(なし)よりも Case2(後壁側)の方が内面水平応力が大きくなる理由は以下の通 りである.抵抗板の前面からブロック前壁までのブロック底部の境界面は潜在的なすべり 面とはならないため(図-5.14),潜在的すべり面の面積が小さくなった分せん断応力が増加 する.これに加え,抵抗板の前面にはブロックが変位する方向と反対方向の水平力が作用 するため,後部拘束層内の土塊では拘束圧が増大し,後部拘束層底部の潜在的すべり面に おいてせん断応力が増加する.こうしたせん断応力と拘束圧の増加とが相まって 土粒子の せん断ひずみが増加し,このひずみにより体積が膨張した (ダイレイタンシー)5.2)ためと 考察される.

3)5.4 節の抵抗板の背面に作用する水平応力に関する実験結果 より,

抵抗板を前方に押す水平応力は抵抗板背面 の中心から上側に作用し,下側にはほとんど 作用していないことが分かった.

後部 拘束 層が 形成 され ない 最下 段の 抵抗 板背 面 の下 半部 には 主働 方向 の水 平力 が作用 していることが確認された.

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4)5.5 節の後部拘束層内の抵抗板背面 および後壁内面の水平応力の分布から,

上・下ブロックの境界部に設置された抵抗板の背面に作用する水平応力は上半部に作用 し,下半部にはほとんど作用していないことが明らかになった.

5)5.6 節ではこれまでに得られた知見を体系的に整理して,

背面土圧により壁体が変位すると,各段のブロック底部の潜在 すべり面に摩擦抵抗力 T が発生し,後壁内面の下半部と抵抗板背面の上半部に水平応力が集中する.その結果,抵 抗板が前方向に変位して抵抗板の前面に受働土圧が作用する .と同時にこの受働土圧は後 部拘束層の粒状材を介してブロックの後壁内面に伝播され ,ブロック底部の摩擦抵抗力 T と抵抗板前面の受働土圧が連動して背面土圧に抵抗する という,滑動抵抗力発生のメカニ ズムを示した(図-5.14 参照).

【参考文献】

5.1)菊池拓志,国府田誠, 田村昌仁,和田昇三,佐藤秀人:地表面に等分布荷重を載荷し た場合の擁壁の構造性能に関す る実験的研究―1:0.3 もたれ式擁壁の土圧性状につ いて,,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),pp.647-648,2002.

5.2)地盤工学入門,社団法人地盤工学会,pp.82-86,2000.

5.3)松岡元:土質力学,森北出版,pp.182-183,1999.

5.4)松岡元:土質力学,森北出版,pp.181-183,1999.

5.5)安川郁夫,今西清志,立石義孝:絵とき土質力学,オーム社, pp.152-155,2000.

5.6)松岡元:土質力学,森北出版,pp.189-191,1999.

5.7)地盤工学入門,社団法人地盤工学会,pp.82-83,2000.

5.8)松岡元:土質力学,森北出版,pp.204,1999.

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 72-78)