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第 7 章 非共溶性混合媒体を用いた平行平板間狭あい流路内の強制流動沸騰熱伝達

7.5 第7章の結論

(1) 試験液体として非共溶性混合媒体FC72/waterを使用し、間隙幅2 mm, 1 mm, 0.5 mm の水平置きの平行平板間狭あい加熱流路を用いた強制流動沸騰実験を行 い、その実験結果を考察した。

(2) 底面からの加熱量の大部分は、高密度低沸点媒体に一旦伝わり、その飽和温度 近くまで混合液体の温度が上昇し、その後に高密度低沸点媒体の沸騰が開始す る。さらに低密度高沸点媒体も強制対流から沸騰に移行する。

(3) 低沸点液体から発生した扁平気泡は、熱伝達への核沸騰の寄与に加えて、増加 した液体流速およびこれらの気泡の発生による高沸点液体の流れの攪拌によ って、高沸点液体の強制対流熱伝達の促進に対して正の効果を有する。

(4) 高沸点媒体の核沸騰熱伝達では、低沸点媒体からの気泡発生は、伝熱面上に薄 い液膜を形成した状態で扁平気泡の拡大によって熱伝達を促進するが、熱流束 の増大に伴って、これらの扁平気泡の底部にドライパッチの拡大を伴うことか ら促進効果は減少してゆく。

(5) このような状況は、熱流束および間隙幅に依存しており、高沸点媒体の核沸騰 に対しては、低沸点媒体の存在は正負両方の効果を持つ。より狭い間隙幅の場 合には低沸点媒体の液体流量を減少させることによって、伝熱劣化を低減また は排除することができると考えられた。高い伝熱性能を得るために、各間隙幅 に依存する非共溶性混合媒体の最適な組み合わせも存在する。

(6) 単成分の低沸点媒体に固有の限界熱流束の低い値は、高沸点液体を少量追加す ることによって容易に増加するが、同じ熱流束条件において単成分の低沸点媒 体のデータから外挿される表面温度からの上昇は避けられない。

(7) 中熱流束では、高沸点媒体に低沸点媒体を追加することにより、表面温度を高 沸点媒体よりも低く保つことができる。また、熱流束と表面温度との関係は、

異なる組み合わせの非共溶性混合媒体を使用することによって変更可能であ る。したがって、限界熱流束および表面温度の各レベルを、冷却されるべき発 熱体に要求される条件に沿って非共溶性混合媒体の種類の選択によってバラ ンスさせることができる。

(8) 極端に小さい間隙幅の加熱流路では、扁平気泡の過度の成長によって引き起こ される伝熱劣化を抑制するために、より沸点の高い低沸点媒体や、より小さい 表面張力の低沸点媒体を使用することも必要である。

(9) 狭い間隙における非共溶性混合媒体の強制流動沸騰の熱伝達特性は、通常のサ イズの管内におけるそれよりも媒体の種類や流量の組み合わせに敏感である と言える。

7非共溶性混合媒体を用いた平行平板間狭あい流路内の強制流動沸騰熱伝達

(10) プール沸騰で確認され、単成分液体と比較したときの熱伝達特性、狭あい流路

内強制流動沸騰に対して以下の予測が可能である。

(i) 低沸点媒体からの気泡の過剰発生のために、高沸点媒体よりも大きい限界 熱流束の増大はほとんど不可能である。

(ii) 強制流動沸騰における液温についても高沸点媒体の飽和温度よりも低い

平衡温度となるので、内壁温度の低減が可能である。

(iii) 高沸点媒体の熱伝達の実質的な向上は、高熱流束の場合を除き、低沸点媒

体からの気泡の発生によって可能である。しかしながら、プール沸騰の場 合と同様に、伝熱面温度の低減による実質的な熱伝達促進効果は、高沸点 混合媒体の飽和温度よりも低い流体温度で定義される熱伝達係数の値に 容易に反映され得ない。

(iv) 液体の温度を高沸点媒体の飽和温度よりも低く保ちながら系圧力を大気

圧以上に保つことは可能である。

(11) 以上のように、プール沸騰で観察される非共溶性混合媒体の使用による複数の

利点は、強制流動沸騰にも認められる。