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第 7 章 非共溶性混合媒体を用いた平行平板間狭あい流路内の強制流動沸騰熱伝達

7.2 実験装置と実験方法

非共溶性混合媒体を試験液体として、矩形狭あい流路の強制流動沸騰実験を行うため

Fig. 7.1(a)に示すような構造のテストセクションを製作した。Fig. 7.1(b)にはその写真

を示している。テストセクションは、2つの平らなプレートに挟まれた狭あい流路から 構成されており、一方は加熱面、もう一方は観察のためのガラスプレートである。流路

は、幅30 mmの矩形断面を有し、その間隙幅は、2 mm, 1 mm, 0.5 mm として変更でき

る。テストセクションは、ステンレスフランジと O リングを使用して組み立てられて いる。伝熱面は、アルミ(A6061-T651)製で、76 mm303 mmの形状に対して幅30 mm, 流れ方向長さ175 mmの加熱領域を有している。加熱領域以外の部分は、厚さ1 mmの 薄板で、伝熱部分は、伝熱面の底部に伝熱ブロックが一体で加工されており、流れ方向 に向かう熱の流れを防止するために、上面の薄い部分を除いて、アルミニウムブロック の間に6つのスリットが設けられていて、個々のブロックは、ほぼ熱的に独立となる。

また、この形状により、各セグメント加熱部外周からの優先的な気泡生成を抑制してい る。各ブロックには、局所熱伝達係数を評価するために、伝熱面から深さ1.5, 8.5, 15.5 mmの位置にシース熱電対を挿入している。局所的な表面温度および熱流束は、測定さ れた温度勾配を用いて評価される。温度勾配を外挿することによって得られる表面温度 の誤差は、熱流束5104 W/m2および5105 W/m2で、それぞれ、±0.07 Kおよび±0.75 K と見積もられる。カートリッジヒーターは、アルミニウムブロックの各底部に取り付け られる銅ブロックに挿入される。銅ブロックの過度の温度上昇を防ぎ、ヒーターを保護 するために、アルミ製の伝熱ブロックと銅製の加熱ブロックとの間にカーボン製の極薄 の伝熱シートを挟み、ネジでしっかりと固定している。この加熱部分を分割した構造は、

より高い熱流束での実験で、下流でドライアウトが生じる場合、下流に位置するセグメ ントへの電力入力をオフにすることによって加熱された長さを変更することができ、実 験を継続することができる。テストセクションは、伝熱面が上向き水平となるように試 験ループに配管される。試験ループは、円管の強制流動沸騰実験で用いた試験ループと 同じ装置(Fig. 6.1)を使用する。温度と圧力のデータは、データロガー(KEITHLEY, 3706)

により計測した。テストセクションの流動様相は、流路の上部にあるガラス板を介して、

高速ビデオカメラ(IDT, MotionXtra N3, 最大フレームレート:1000 fps)を使用して記 録した。

試験液体は、FC72/waterの非共溶性混合媒体を使用する。両方の液体とそれらの蒸気 が共存する条件下では、全圧は各媒体の分圧の合計である。(Fig. 5.3の蒸気圧曲線を参 照)一方の液体は、他方の媒体の蒸気圧によって圧縮されて過冷却される。とくに低密 度高沸点媒体の液体は、高密度高沸点媒体の高い蒸気圧によって大きく圧縮される。両 媒体の飽和温度と平衡温度および物性値は、表5.1に示している。尚、異なる間隙幅に

おいてFC72/waterの入口液体流速が等しくなるように、各液体の流量を設定している。

このときの質量速度は次式で与えられる。実験条件は表7.1に示している通りである。

A m Gave mFC  water

72 (7.1)

表7.1 実験条件

試験混合媒体 FC72/water 加熱流路幅 30 mm

加熱長 175 mm

テストセクションの姿勢 水平 入口圧力 Pin 0.1 MPa 入口温度 Tin 43-44 C

間隙幅 H 2 mm, 1 mm, 0.5 mm

総流量 Vtotal 0.5L/min, 0.25 L/min, 0.13 L/min

平均質量速度 Gave 137.1 – 449.9 kg/m2s

7非共溶性混合媒体を用いた平行平板間狭あい流路内の強制流動沸騰熱伝達

(b) 外観

Fig. 7.1 テストセクション

(a) 構造概略図