第 4 章 給液方法を改善した冷却ジャケットのデータサーバを用いた性能試験
4.4 実験結果および考察
4.4.5 冷却ジャケットの内部構造および姿勢に関する検証
4.4.5.1 主流路間隙幅
主流路間隙幅 1mm(流路の間隙幅以外の構造はこれまでと同一)で実験を行い、間 隙幅2mmと比較した。
以下の実験条件で実験を行った。
間隙幅 s 1 mm, 2 mm
伝熱面寸法 30 mm×30 mm
溝付伝熱面表面形状 V字溝(頂角90 deg, ピッチ1 mm)
主流路入口開口幅 w 1 mm テストセクションの姿勢 水平配置 テストセクション入口圧力 Pin 0.15 MPa
試験液体 FC72 (Tsat=67.9 C) 入口液体体積流量
(除熱部入口液体断面平均流速)
0.6 l/min, 0.8 l/min, 1.0 l/min
(0.167 m/s, 0.222 m/s, 0.278 m/s)
入口液体サブクール度 Tsub 33 K
0 1 2 3 4
[105] 103
104
W/m2 K
qw W/m2 FC72
Horizontal 30mmW30mmL TTS,in= 35C
PTS,in 0.1MPa V = 0.6l/min V = 0.8l/min V = 1.0l/min PTS,in 0.15MPa
V = 0.6l/min V = 0.8l/min V = 1.0l/min
(b) 熱伝達係数 (a) 伝熱面表面温度
Fig. 4.9 試験圧力の影響
0 1 2 3 4
[105] 50
55 60 65 70 75 80 85 90
Tw C
qw W/m2
FC72 Horizontal 30mmW30mmL TTS,in= 35C
PTS,in 0.1MPa uin = 0.167m/s uin = 0.222m/s uin = 0.278m/s uin = 0.333m/s PTS,in 0.15MPa
uin = 0.167m/s uin = 0.222m/s uin = 0.278m/s uin = 0.333m/s
Fig. 4.10に実験結果を示す。Fig. 4.10(a)は体積流量と限界熱流束の関係である。同一 流量での比較において限界熱流束は流路間隙幅2 mmよりも1 mmの場合の方が低い。
これは流路間隙幅が小さくなることで蒸気泡がより扁平化され、また流路が狭く気泡の 合体が促進されたことによって、気泡底部のドライパッチが大きく拡大したことによる ものと考えられる。ドライアウトが誘起されたからと考えられる。Fig. 4.10(b)は伝熱面 表面熱流束と伝熱面表面温度の関係、Fig. 4.10(c)は伝熱面表面熱流束と熱伝達係数の関 係である。流路間隙幅2 mmと比較して1 mmの方が、僅かではあるが熱伝達係数は高 くなり、それに伴い伝熱面表面温度が低くなっている。この理由としては、気泡がより 扁平化されたことで気泡底部の薄液膜領域が拡大して熱伝達が促進されたことと、さら に間隙幅2 mmと比較して1 mmの方が同一液体流量下で液体流速が増大し、単相強制 対流熱伝達域(非沸騰域)での熱伝達係数が高いことによるものである。また、間隙幅
1 mmの条件で限界熱流束近傍において熱伝達係数が大きく減少しているのは、伝熱面
表面温度を評価している伝熱面中央付近にドライパッチが拡大したことによるものと 考えられる。Fig. 4.10(d)に伝熱面表面熱流束と圧力損失の関係を示す。ほとんどの条件 において流路間隙幅2 mmと比較して1 mmの方が大きくなり、流量が大きくなるほど その差が拡大する。これは、流路断面積が小さいことで同流量における流速が増大し、
摩擦損失が増大するためである。
流路間隙幅を狭くすることで気泡の扁平化による限界熱流束の減少と熱伝達係数の 向上という熱伝達特性の劣化と向上の両傾向が見られる。間隙幅は目標とする除熱量、
伝熱面温度および冷媒の特性等を考慮して決定されるが、ここでは、間隙幅は2 mmを 採用し、以降の実験を行うこととする。
第4章 給液方法を改善した冷却ジャケットのデータサーバを用いた性能試験
0.42 0.6 0.8 1 1.2
3 [105]4
qCHF W/m2
V l/min
300W
200W FC72
Horizontal 30mmW30mmL w = 1mm A = 60mm22
Tsub = 33K P 0.15MPa
Channel gap size s = 2mm s = 1mm
0 1 2 3 4
[105] 45
50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105
Tw C
qw W/m2
FC72 Horizontal 30mmW30mmL w = 1mm A = 60mm22
Tsub = 33K P 0.15MPa
Channel gap size s = 2mm V = 0.6 l/min V = 0.8 l/min V = 1.0 l/min s = 1mm V = 0.6 l/min V = 0.8 l/min V = 1.0 l/min
0 1 2 3 4 5
[105] 0
0.02 0.04 0.06 0.08
P MPa
qw W/m2
FC72 Horizontal 30mmW30mmL w = 1mm A = 60mm22
Tsub = 33K P 0.15MPa
Channel gap size s = 2mm V = 0.6 l/min V = 0.8 l/min V = 1.0 l/min s = 1mm V = 0.6 l/min V = 0.8 l/min V = 1.0 l/min
0 1 2 3 4
[105] 0
2000 4000 6000 8000 10000
W/m2 K
qw W/m2
Channel gap size s = 2mm
V = 0.6l/min V = 0.8l/min V = 1.0l/min FC72
Horizontal 30mmW30mmL w = 1mm A = 60mm22
Tsub = 33K P 0.15MPa
s = 1mm V = 0.6l/min V = 0.8l/min V = 1.0l/min
(a) 限界熱流束 (b) 伝熱面表面温度
(c) 熱伝達係数 (d) 圧力損失
Fig. 4.10 流路間隙幅の影響