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1。研究H全体の目的

 研究Hでは,RDIに用いる記憶の鮮明度及び重要度の高低においてRDIの効果にどの ような影響があるかを検討することを目的とする。榊(200昏)は,自伝的記憶の記銘時にお けるポジティブ度・想起時のポジティブ度・重要度という要因を用いて感情制御を促進す る自伝的記憶の性質を検討している。その結果,実験協力者にとって,いかにポジティブ な記憶かというよりもむしろ,いかに重要な記憶かという点が出来事の想起による気分の 変化に有意な影響を示したことを報告している。この結果から,RDIに用いる記憶を選択 する際にも対象者にとってその記憶の重要度は,「 qDIの効果に関連すると考えられる。

 また,東郷(2006)は,高校生の自尊感情を高める目的でRDIを実施レ,その際に記憶の ポジティブ度・重要度・鮮明度といった要因による検討を行っている。その結果,RDIの 効果に影響のある要因として,記憶のポジティブ度及び記憶の重要度を挙げ,記憶の鮮明 度は影響しないことを明らかにしている。しかしながら,小泉(1997)が,スピーチ不安に 関してイメージの鮮明度が不安の喚起に影響を及ぼすと述べていることから,RDIに用い る記憶の鮮明度についても何らかの効果があることが予測される。そこで研究Hでは,記 憶の鮮明度及び重要度がRDIの効果にどのような影響を示すかを検討することを目的と

する。

2.仮説

 研究Hにおける仮説としては,以下の2点が考えられる。

1.実験協力者にとって重要度の高い記憶を用いたRDIの方が実験協力者にとって重要度 の低い記憶を用いたRDIと比較してより効果的である。

2.実験協力者にとって鮮明度の高い記憶を用いたRDIの方が実験協力者にとって鮮明度

の低い記憶を用いたRDIと比較してより効果的である。

3.方法

3。1。実験協力者

研究童に参加した実験協力者32名に対して実験を行った。

3.2.材料

研究1と同様の材料を使用した。

4.結果

4.1.RDIに用いた記憶の重要度に関する弁別

 本研究で得られた結果を分析する統計パッケージは,sPss(15.oJ fbr wind6ws, sPss 社)を用いて分析を行った。

 初めに,RDIに用いた記憶の重要度によって弁別が可能かどうかを確認した。各実験協 力者には,RDI実施時に想起してもらった記憶に対して,「貴方にとって今感じてもらっ た記憶はどの程度重要な記憶ですか?1が全く重要ではない,10が非常に重要であるとし たらどのくらいですか?」と教示した。その際の得点の平均値である7点を基準に重要度 高群と重要度低群に区分した。具体的な人数はTable.10に示す。

一39一

Table.10 RDIに用いた記憶の重要度による分類(準32)1

重要 円群(八』16) 重  度  君羊 (2>ヒ16)

男性 女性 男性 女性

 人数

平均得点

 総計

   9       7

8.67〈1.22)   920(0.95)

     8.93(1.12)

   9       7

5.20(1.30)   5.40(0.79)

     5.31(1.07)

()内は標準偏差を示す

 RDIに用いた記憶の重要度の高群と低群の間に得点の差があるかどうかを確認ナるた めに一元配置分散分析を実施した。その結果,双1,31)=86.7Q1,〆.001で重要度高群と重 要度低群の間に有意な差が示された。よって,本研究における重要度高群と重要度丁丁の 間には記憶の重要度において有意な差が存在し,重要度においての弁別ができたと考えら れる。ゆえに,今後の分析においでRDIに用いる記憶の重要度に関する検討を行う妥当性

が確認された。

4。2.RDIに用いた記憶の鮮明度に関する弁別

 RDIに用いた記憶の鮮明度によって弁別が可能かどうかを確認した。各実験協力者には RDI実施時に想起してもらった記憶に対して,「何が見えていますか?」,「どんな声や音 が聞こえますか?」,「どんなにおいがしますか?」,「空気の感じはどうですか?」,「肌で 感じる触覚的なものはありますか?」,「今,この経験を思い出してみて,どんな感情が湧 いてきますか?」,「その感情を体のどζで感じていますか?」の7項目を確認し,それら の鮮明度についてそれぞれ0を全く鮮明でないから,10を非常に鮮明であるとした際の得 点を確認した。鮮明度の合計得点の範囲は,0点から70点の間になる。その際の得点の平 均値である36点を基準にRDIに用いる記憶の鮮明度高群と鮮明度低群に区分した。具体 的な人数はTable.11に示すb

Table.ユ1RDIに用いた記憶の鮮明度に.よる分類(準32)

魚羊明度『』碧羊 (ハ1』17) 明度低群(ハβ15)

男性 女性 男性 女墜

  人数       7     10      11      4

平均得点  42.57(6.16) 46.20(6.61)  27.09(5.38)  29.50(2.46)

  総計       44。71(6.5{〕)      27.73(4.8ξB>

()内は標準偏差を示す

 鮮明度の高群と一群の間に得点の差があるかどうかを確認するために一元配置分散分析 を実施した。結果,双1,31)=68β97,」〆.001で鮮明度高群と鮮明丁丁群の間に有意な差が 示された。よって,本研究における鮮明度高群と鮮明度低群の間には記憶の鮮明度におい て有意な差が存在し,鮮明度の高低によって弁別ができたと考えられる。ゆえに,今後の 分析においてRDIに用いる記憶の鮮明度に関する検討を行う妥当性が確認された。

4.3.想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によるRDI後のVbRの変化の検討

 想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によってRDI実施前後のVoRの変化に影響が あるかどうかを検討するために,群(重要度の高低x鮮明度の高低)を独立変数とし,RDI 実施前後のVoRの得点を従属変数とした反復測定の分散分析を実施した。結果をTable.12

に示す。

Table.i2想起する記憶の重要度と鮮明度の異なるRDIによるVoRの変化に関する分散分析表

要因

認  伽(下面

     Pre{PQst

    誤差(Pfe−Post)

     重要度高低

   重要度高低×Pre−Post      鮮明度高低

  鮮明度高低×Pre−Post   鮮明度高低×重要度高低  誤差(鮮明度高低×重要度高低)

重要度高低×鮮明度高低×Pre−Post

55.042 11、290 1.164 3.766  ,338  .026 3β45 66。750  。436

1

28

1 1 1 1 1

28

1

55.042  .403

1.164 3.766

 338

 .026 3.645 2.3S4  .436

136.512 牢**

.488 9.合41 **

.14盆

.065 1.529

1.081

***マく・001**ρくρ1

一4レ

分散分析の結果,重要度の高低・鮮朋度の高低及びRDI実施の時期による2次の交互作

用は有意ではなかった双1,28)=1.081,,ρ〉.10)。

 また,重要度の高低とRDI実施前後の時期の交互作用が有意であった(∫〈1,28)=9.341,

1〆.01)。具体的には,重要度高群が重要度低群と比較してRDI実施後のVoRの増加が有 意に高いことが示された。この交互作用の様相をFigure.8に示す。

 さらに,鮮明度とRDI実施前後の時期の有意な交互作用は認められなかった

(夙1,28)=.065,p>.10)。また, RDI実施前後の時期の主効果が有意であった

(1べ1,28)==136.512,∫)<.001)。

:1

51

4

3

図一

,偶〒

一重要度高群i

一層一一重要度低群1

_一国

2

1

0

Pre VoR      Post VoR

Figure.8想起する記憶の重要度の高低によるVoRの変化

4.4.想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によるRDI後のSUDsの変化の検討

 想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によってRDI実施前後のSUDsの変化に影響 があるかどうかを検討するために,群(重要度の高低×鮮明度の高低)を独立変数とし,RDI

実施前後のSUDsの得点を従属変数とした反復測定の分散分析を実施した。結果を

Table.13に示す。

Table,13想起する記憶の重要度と鮮明度の異なるRDIによるSUDsの変化に関する分散分析

要因

     Pre−Post

    誤差(Pre−Post)

     重要度高低

  重:要度高低×Pre−Post      鮮明度高低

  鮮明度高低×Pre−Post   鮮明度高低×重要度高低  誤差(鮮明度高低x重要度高低〉

重要度高低×鮮明度高低XPre−Posも

124.021 11.049  ,635

15。328  .145  .005  .397 76.430  。666

1

28

1 1 1 1 1

28

1

誌面,

124.021  .395  .635 15β28  .145  .005

 397

 2.730  ;666

1評,

314.300  ***

 .2,39 38.844  ***

 。819  .012  .146

1.688 榊ρく.001

 その結果,重要度の高低・鮮明度の高低及びRDI実施の時期による2次の交互作用は有

意ではなかった(双1,♀8)=1.688,p>.10)。

 また,重要度の高低とRDI実施前後の時期の交互作用が有意であった(双享,28)霜8.844,

〆.001)。具体的には,重要度高群が重要度低群と比較して:RDI実施後のSUDsの低下が 有意に大きいことが示された。この交互作用の様相をFigure.9に示す。

 さらに,鮮明度とRDI実施前後の時期の有意な交互作用は認められなかった

(双1,28)=.012,一ρ〉.10)。また,RDI実施前後の時期の主効果が有意であった

(1て1,28)=314.300,1γく.001)o

43一

lG 9 8 7 6 5 4 3 2 1

0

塵一、、

、一

一+一重要度低群

Pre SUDs       Pd$t SUDs

Figure.9想起する記憶の重要度の高低によるSUDsの変化

4.5.想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によるRDI後のPANAS・Pの変化

想起した記憶の重要度及び鮮明度の高低によってRDI実施:前後のPANAS・Pの変化に影 響があるかどうかを検討するために,群(重要度の高低×鮮明度の高低)を独立変数とし,

RDI実施前後のPANAS・Pの得点を従属変数とした反復測定の分散分析を実施した。結果 をTable.14に示す。

Table.14想起する記憶の重要度と鮮明度の異なるRDIによるPANAS−Pの変化に関する分散分

要因

卵 誰  泌鯉

     Pre−Post

、   誤差(Pre−Post)

     重要度高低

  重要度高低×P艶一Post      鮮明度高低

  鮮明度高低×Pre−Post   鮮明度高低×重要度高低  誤差(鮮明度高低×重要度高低)

重要度高低×鮮明度高低×Pre−P(賊

858.411 152.989  39.174

185.253  92.290  7.192  8.314 1673。013   .003

1

28

1 1 1 1 1

28

1

858.411  5.464

39.174 185.253 92.290  7,192  8。314 59.750  .003

157.106 ***

 .656

33.905  ***

1,545 1.316  .139

0.001

***マく.001

分散分析の結果,重要度の高低・鮮明度の高低及びRDI実施の時期による2次の交互作

用は有意ではなかった(夙1,28>=.001,p>.10)。

また,重要度の高低とRDI実施前後の時期の交互作用が有意であった(∫〈1,28)=33.905,

〆.001)。具体的には,重要産高群が重要度低群と比較してRDI実施後のPANAS・Pの増 加が有意に高いことが示された。ζの交互作用の様相をFigure.10に示す。

 さらに,鮮明度とRDI実施前後の時期の有意な交互作用は認められなかった

(∫〈1,28)=1.316.ρ〉.10)。さらに,RDI実施前後の時期の主効果が有意であった

(汐〈1,28>=157.106,p<.001)o

一45一

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