第5章 研究II
5 中学校発達障害通級のスタンダードモデルの作成
5−1 方法
研究1でおこなったクラスタ分析での項目分けを元にAMOS(IBM)によるパス 解析を実施した。共分散構造分析の手法を使っておこなった。
5−1−1 通級の役割と機能の項目の部分鯛整
前述のクラスタを元に通級の機能分類を整理した。実施率が低いが各クラス タを説明する上で重要であると思われる「生徒の現状から適切な検査を選択し、
実施する」を指導環境の充実に「特別なニーズのある生徒全般について、担任 に授業に関してのアドバイスする」をコンサルテーションに「開発・使用され た教具教材が、いつでも誰もが使えるように管理する」「通級教室が計画的に運 用できるように、基本方針を作成している」を教室の管理運営にそれぞれ位置 づけた。これを中学校の発達障害通級の役割と機能の項目と位置づけた(表5)。
表5 中学校の発達障害剛胆の役割と機能(モデル作成用)
項目 在籍校へ二級生徒に関する適切な情報提供を行う。
本人が現実に気づき、進路決定できるようなカを育成したり支援したりする。
二次障害の弊害を出さないように生徒指導や教育相談と連携を行う。
生徒のニーズに合わせた個別の指導計画を作成する。
指導環境
フ充実 個別の指導計画をもとに、指導内容の検討を定期的に行う 保護者のニーズを把握し、適切な情報提供を行う。
学校全体に通級教室への理解を広めている。
生徒の現状から適切な検査を選択し、実施する。
生徒が二次障害を起こさないような支援のあり方を学校に提案する。
通常学級での授業でグループや席の位置に配慮がなされるように助言する。
就学相談・教育相談に当たり特別支援コーディネーターのサポートを行う コンサル
eーション
f一一一一 ∴齠凬
Aコモ7一 黹Vョン
特別なニーズのある生徒全般について、担任に授業に関してのアドバイスをする。一 一 一 一 一 ■ 一 ■ 一 ■ 一 ■ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 _ _ _ _ _ _ _ _
カ徒に対して在籍校で学習に対して合理的配慮がなされるように担任等に助言する。
在籍校で実行可能なアコモデーションを意識して個別の指導計画に盛り込む。
家庭環境を含めた生徒の課題を正確に情報収集することができる(調査票や観察等)
指導の目標・結果・所見をまとめ、見立て・指導方針を検討する機会を持っている。
個別の指導計画等の個人情報を含む書類をプライバシーに気をつけ保管管理する。
教室の管
揄^営 生徒の発達課題や特徴に合わせた教材・教具を開発する。
開発・使用された教具教材が、いつでも誰もが使えるように管理する。
通級教室が計画的に運用できるように、基本方針を作成している。
自立活動(環境の把握)で生徒が効果的に学習できる工夫をする。
自立活動(身体の動き)で生徒が効果的に学習できる工夫をする。
自立活動(健康の保持)で生徒が効果的に学習できる工夫をする。
自立活動 自立活動(心理的安定)を生徒が効果的に学習できる工夫をする。
自立活動(人間関係の形成)で生徒が効果的に学習できる工夫をする。
自立活動(コミュニケーション)で生徒が効果的に学習できる工夫をする。
生徒の困り感(英語を聞く力の育成)のある教科補充指導を効果的に行う。
生徒の困り感(書く力)のある教科補充指導を効果的に行う。
教科の補
[
生徒の困り感(読む力)のある教科補充指導を効果的に行う。生徒の困り感(計算する力)のある教科補充指導を効果的に行う。
生徒の困り感(推論する力)のある教科補充指導を効果的に行う。
生徒の支援に必要な情報を医療機関と交換している 支援学校や福祉施設等と連携協力する。
生徒の支援に必要な情報を他の教育機関と交換している
関連機関
ニの連携 生徒たちの障害理解教育に協力する。
保護者のニーズを配慮した個別の教育支援計画を保護者と協力して作成している。
本人に現状を理解させるとともに、保護者と連携して進路決定に協力する。
一48一
5−1−2 スタンダードモデルの作成
上記の表5のデータを元に2因子モデル、3因子モデル、MIMICモデル1(ク ラスタ分析を元にした7領域モデル)とMIMICモデルll(7領域の内関連性が認 められたコンサルテーションとアコモデーションを合併させた6領域)につい ての検討を行った。適合度指標を指針にモデルの整理をおこなった。
5−2 結果
3つのモデルに関し、以下のような結果を得た。図中の数字はすべて標準化 した数字である。パス解析の推定値の詳細については資料7を参照
5−2−1 2因子モデルの結果
本研究での研究仮説で想定したものよりより通級の機能は因子数が少ないと 考えて2因子モデルを作成し、探索的な因子構造の分析をおこなった。図24の
ようなモデルが2因子モデルの中ではもっと適合度がいいモデルとして算出さ れた。しかし、推定変数間の相関が高いモデルとなった。また自立活動には両 論定値からパスが伸びており因子構造として整理が難しいモデルとなった。
.38
敏科の補充 ed
.62
.8B
Fl
.78
.61
アコEデーション ●7
一.15
.59
自立活動
.72
e3
F2
.90
.85
.76 .83
.78
指導環境の充実 01
.58
教室の管理運営 e2
.6S
関係機関との違携 e5
.60
コンサルテーション e6
図24 2因子モデルパス図
5−2−2 3因子モデルの結果
本研究で研究仮説として採用したモデルである3因子モデルにおいては、探索 的な因子構造の分析をおこなったところ図25のようなモデルが3因子モデルの 中ではもっと適合度がいいモデルとして算出された。3つの推定変数間の相関 が強いモデルとなった。
1.01 1.00
.gs
搬指導
教窒運
.31
教科嫡腕
.55
.75
一se
自立活勉
e7
eS
.86
.74
指導環境の充実 04
,77
.59
喜憂の管理運営 e5
一ag
アコモデーション e2
遷携協力
夕殆
.61
コンサルテーション ●璽
.es
.es
関係二三との連携 e3
図25 3因子モデルパス図
5−2−3 MIMIC 1モデルの結果
本研究で研究仮説として採用したモデルである3因子モデルをベースに生徒 への直接的な支援なのかそれとも指導に付随する要因なのかを推定値等のデー タから読み取って、「自立活動」「教科の補充」「指導環境の充実」という直接生 徒の指導に関わる項目と間接的な支援に関わる部分に分けて複数の指標やケー スを想定するMIMICモデルを作成し、クラスタ分析が示すと思われる7領域に
一49一
対して分析をおこなったのが図26である。アコモデーションの重相関係数の平 方が0.48であること以外はほぼ当てはまりが良い推定値になった。
指導環境の充実
.6t
コンサルテーション el
.64
.56
.78 .48
ア3Eデーション e2
.69
A9 自立活勤 35 個別指導の充実
.83
e4
.42 .13
.S8
蟹係機関との遼 es
.76
教移の繍充
.58
教室の管理運営 05
図26MIMIC Iモデルパス図
5−2−4 MIMIC11モデルの結果
5−2−3で作成したMIMICIモデルで重相関係数の平方と項目数が2項目 しかないという偏りがあるアコモデーションを内容的に近いコンサルテーショ ンと統合して分析したのがMIMIC llモデルであった。コンサルテーションへのパ ス係数、重相関係数の平方ともに増加が見られた。
.S4
.49
指導毅境の充実 ]ンサルテーション el
.64
.56
.8
.36 個別指導の充実
.BO
自立活動
.S9
.es
関係機闘との連携 es
.42 .i2
麟
.77
.59
教Kの補充 教蜜の管理運営 e5
図27MIMIC llモデルパス図
5−2−5 代表的なモデル適合度指数
適切なモデルを探索するために4つのモデルに関しての代表的なモデル適合 度指標の算出を行った。 (表6)
表6 代表的モデル適合度指標
モデル名 CMIN 確率 CMIN/DF GFI AGF I NFI RMSEA 二因子モデル 7,906 0,792 0,659 0,973 0,936 1,000 0,000
三因子モデル 20,044 0,045 1,822 0,922 0,802 1,000 0,104 MIMICモデル1 10,235 0,509 0,930 0,961 0,902 1,000 0,000 MIMICモデル1 3,719 0,715 0,620 0,984 0,944 1,000 0,000
一51一
5−3 考察
5−3−1 適切なモデルの検討
二つの因子構造モデルを作成したがどちらのモデルも潜在変数の値が高く、
潜在変数自体の独立性が確保されていないと思われる。また、代表的モデル適 合度指標を見る限りにおいては、二因子モデルの方が適合性が高いことがわか る。これらのことから発展段階である中学校発達通級では各領域が機能分化し て意識されていない可能性が高い。
二つのMIMICモデルを作成した。当然のことながら原因となる三つの観測変 数間の相関係数及びパス係数は同じ値となるが飽和モデルとしては適当な値で あるといえる。適合度指標から見るとどの値をみてもモデルHの方が優れてい る。項目から見てもたとえば「通常学級での授業でグループや席の位置に配慮 がなされるように助言する」のようにコンサルテーションに含まれているがア コモデーションの一部とも考えられる項目があり、どちらもがその違いを明確 に意識して使い分けているわけではないことが読み取れた。そこでコンサルテ ーションとアコモデーションを一つの観測変数と考えるモデルの方が現状の通 級の機能をよく表していると考えた。
研究仮説として7因子からなる因子構造を想定していたが、調査結果からみ ると多様な環境因子が複雑に関係するモデルとなっていると思われる。実際の データから考えると多様な指標と多様なケースを想定するMIMICモデルが通級 の機能モデルとしては適切だと考えられた。
適合度指標などの総合的な判断としてMIMIC IIモデルが中学校発達障害通級 のスタンダードモデルだと考えるのが適当であると思われる。
5−3−2 スタンダードモデルに関する考察
原因となる観測係数は「指導環境の充実」「教科の補充」「自立活動」の3項 目であり、直接生徒に対しての支援を充実するための指導内容であることがわ かる。このことからこの潜在変数には「個別指導の充実」という名前をつけた。
観測変数間の相関関係は0.42から0.64とある一定の関連を持ちながら成立し ていることが読み取れる。指導環境の充実との関連を見ると、自立活動との方 が教科の補充より強い相関を示している。このことから指導環境の充実は自立