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研究 3 ネガティブ情動喚起刺激の不確実性と好奇心が情 動持続に与える影響

研究2では不確実性が重要性に比べてポジティブ情動の持続に及ぼす影響を検討したが、

ネガティブ情動についての検討は行わなかった。そこで研究3では、研究2と同様の実験 手続きを用い、不確実性が重要性に比べてネガティブ情動の持続に及ぼす影響を検討する。

また、研究 2 では不確実性が、AREAモデルの想定する形での持続(i.e.非低下型の持続)

を示すことはなかった。これは情報ギャップ理論から予測される通り、不確実性が好奇心 を喚起せず、その結果情動喚起刺激に対する注意が向かなかったためとも考えられる。そ こで本研究では情動喚起刺激に対する好奇心の程度について補足的に検討することを通じ て、情動喚起刺激に対する不確実性の効果と共に好奇心の効果も併せて検討する。さらに、

注意の媒介過程についても検討する。

本研究において、AREA モデルが支持されるならば不確実性は非低下型の効果を示すで あろうと考えられるため、不確実条件は非低下型を示すという仮説を立てる。ただし、研 究 2 でポジティブ情動について観察された結果と同様の結果が観察されるならば、非重要 条件に比べて初期効果型を示すであろう。そして重要性に関しては研究 2 と同様に初期効 果型が観察されるという仮説を立てる。また、好奇心が効果を持つのであれば、好奇心は 注意を媒介して情動持続を予測すると仮説を立てる。

方法

参加者

東京都内の大学に通う学生 94 名が実験に参加した(女性61 名、男性33名。平均年齢

18.55歳、SD=0.84)。参加者は個別に実験に参加した。また参加した学生には心理学の授

業内で成績加点が行われた。参加者は実験について説明を受けた後、同意して実験に参加 した。また、本研究は筆者の所属する大学の倫理審査委員会からの承認を受けている。

手続き

実験手続きは、参加者へのフィードバック内容を除いて全て研究 2 と同じ内容のもので あった。フィードバックの内容に関しては、研究 2 ではポジティブな能力検査結果がフィ ードバックされていたが、本研究ではネガティブな能力検査結果がフィードバックされた。

測定

測定は、操作チェック、情動、注意については研究2と同じものが用いられた。ただし、

本研究では以下の好奇心の測定が追加された。

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好奇心の測定として、「この能力検査の結果について、もっと詳しい情報を知りたいです か」の1項目について、どの程度知りたいと思うかを7件法で回答を求めた(1 = まった く当てはまらない、 7 = とても当てはまる)

結果

1名の参加者が注意に関する質問に回答していなかったため、注意に関する分析において のみ当該参加者を除く93名のデータで分析を行った。

操作チェック

重要性の操作および不確実性の操作の有効性を確かめるために、条件を独立変数、重要 性得点および不確実性得点を従属変数とする一元配置分散分析を行った。その結果、重要 性得点および不確実性得点において条件の効果が見られた(F(2, 91) = 23.33, p < .001, ηp2

= .339; F(2, 91) = 31.30, p < .001, ηp2 = .408)。多重比較の結果、重要性得点に関しては、

重要条件の参加者(M = 5.71, SD = 0.82)は不確実条件の参加者(M = 4.63, SD = 1.24)

よりも測定された能力を有意に重要なものであったと評定しており(p = .001)、不確実条 件の参加者は非重要条件の参加者(M = 3.65, SD = 1.43)よりも測定された能力を有意に 重要なものであったと評定していた(p = .004)。また、重要条件の参加者の重要性得点は 非重要条件の参加者のそれよりも有意に高かった(p < .001)。不確実性に関しては、不確 実条件の参加者(M = 5.09, SD = 1.40)は重要条件の参加者(M = 2.45, SD = 1.36)およ び非重要条件の参加者(M = 2.81, SD = 1.56)よりも、どの能力を測定されたかを理解し ていなかった(いずれもp < .001)。一方、重要条件と非重要条件の間には差が見られなか

った(p = .598)。以上の結果から、操作は成功していたと考えられる。

情動尺度の因子分析結果および情動と注意の信頼性

情動尺度について探索的因子分析の結果、測定 1においても測定2においてもポジティ ブ情動の3項目とネガティブ情動の 3項目が別の因子として抽出された。そこで本研究で はネガティブ情動の3項目を平均したネガティブ情動得点のみを扱うことにした。

ネガティブ情動得点の信頼性についてクロンバックのαを用いて検討したところ、測定1

においてα = .854、測定2においてα = .853であった。また注意の信頼性について相関係

数rを用いて検討したところ、測定された2項目の相関が有意(r = .616, p < .001)であっ たことから信頼性が確認された(see Table 6)。

52 Table 6. Descriptive statistics (Study 3)

Note. The Importance, Uncertainty, Curiosity and Attention scores could range from 1 to 7. Negative emotion scores at Times 1 and 2 could range from 0 to 100. ***p < .01

条件の違いが情動持続に与える影響

条件によって測定 1と測定 2のネガティブ情動の強さが異なるかを調べるために、条件

(参加者間:不確実条件 vs. 重要条件 vs. 非重要条件)×測定タイミング(参加者内:測

定1 vs. 測定2)の2要因分散分析を行った(see Figure 6)。その結果、条件の主効果と交

互作用効果は有意ではなかったが(それぞれF(2, 91) = 0.25, p =.779, ηp2 = .005; F(2, 91) = 0.12, p =.889, ηp2 = .003)、測定タイミングの主効果は有意であった(F(2, 91) = 79.70, p

< .001, ηp2 = .467)。条件の主効果および交互作用効果が有意でなかったことから、不確実

性と重要性について初期効果型および非低下型の情動持続は観察されなかった。

Figure 6. Negative emotion scores at Times 1 and 2 (Study 3)

Note. Scores could range from 0 to 100. The bars indicate the standard errors.

条件の違いが好奇心と注意に与える影響

条件により能力検査結果に対する好奇心と注意の程度が異なるかを調べた。条件を独立

M SD M SD M SD M SD Reliability

Importance score 4.63 1.24 5.71 0.82 3.65 1.43 4.66 1.45

Uncertainty score 5.09 1.40 2.45 1.36 2.81 1.56 3.47 1.85

Time1 negative emotion score 42.69 25.70 40.52 21.28 38.22 21.43 40.50 22.75 .854 (α) Time2 negative emotion score 21.73 17.43 20.96 16.68 19.86 20.64 20.86 18.14 .853 (α)

Curiosity score 5.59 1.29 5.68 0.79 5.16 1.37 5.48 1.19

Attention score 5.36 1.89 4.95 2.00 4.74 2.01 5.02 1.96 .616*** (r)

Uncertain condition

Important condition

Unimportant

condition Overall

n = 32 n = 31 n = 31 n=94

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変数、好奇心得点を従属変数とした一元配置分散分析を行ったところ、条件間に有意な差 は見られなかった(F(2, 91) = 1.71, p = .186, ηp2 = .036)。また、条件を独立変数、注意得 点を従属変数とした一元配置分散分析を行ったが、条件間に有意な差は見られなかった

(F(2, 90) = 0.81, p = .450, ηp2 = .018)。

好奇心と注意が非低下型の情動持続に与える影響

次に好奇心と注意が非低下型の情動持続をもたらすかを検討した。条件によって好奇心 の高さに差が見られなかったことから、以降の分析では条件間の違いを検討せず、全ての 条件の参加者を同時に分析対象とした。好奇心得点を独立変数、測定 1 のネガティブ情動 得点を統制した測定 2 のネガティブ情動得点を従属変数とした単回帰分析を行った。その 結果、有意な効果は観察されなかった(β = -.066, p = .525)。同様に注意得点を独立変数と した単回帰分析を行ったところ、有意な効果が観察された(β = .308, p = .003)。

好奇心が注意に与える影響

次に好奇心が注意に与える影響を検討した。好奇心得点を独立変数、注意得点を従属変 数とした単回帰分析を行ったところ、有意傾向の効果が観察された(β = .186, p = .075)。

好奇心が非低下型の情動持続に与える影響における好奇心の媒介効果

好奇心が注意に影響を与え、注意が非低下型の情動持続に影響を与える可能性が示され たため、注意の媒介性を検討した。分析には “process” (Hayes, 2013)を使用した。その結 果 、 間 接 効 果 は .052,SE = .038,95%信 頼区 間 は [-.011, .143]、90%信 頼 区 間 は [-.001, .126]であり、有意ではなかった。

考察

本研究ではネガティブ情動の持続の予測要因についての検討を行った。その際、先行研 究と同様の手続きを用いることで、ポジティブ情動の持続プロセスとネガティブ情動の持 続プロセスの比較が可能になるように配慮した。また、不確実性の効果のほかに好奇心の 効果を検討するべく、情動喚起刺激に対する好奇心の程度を測定した。その結果研究 2 と は異なり、不確実性が情動持続に及ぼす効果は確認されなかった。研究 2 では不確実性は 非重要条件に対して初期効果型の情動持続を示したが、本研究では初期効果型の情動持続 も非低下型の情動持続も示さなかった。

一方、明確に支持されたわけではないが、好奇心は情動持続を促進する可能性を示した。

具体的には、好奇心が高いと注意が高まり、その結果情動が持続する。ただし好奇心が直 接情動持続を予測することは無く、また注意の媒介性を検討した間接効果の分析でも媒介 効果が示されなかったなど、好奇心が情動を持続させるか否かについては今後も検討を続 けることが必要となる。また本研究では好奇心を単項目で測定したため、測定の信頼性や

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内的妥当性が欠けていた可能性もあり、今後はより妥当な測定が求められると考えられる。

研究 1~3 のまとめ

上記の結果、および研究1、2の結果を併せて考えると、WilsonとGilbert (2008)が主張 するような、説明の欠如が情動を持続させるという効果は疑わしい。少なくとも当初想定 されていた非低下型の情動持続を予測すると結論づけることは難しいであろう。一方、本 研究における好奇心の検討結果より、好奇心が注意を持続させること、注意が情動を持続 させることは確認されている。したがって、研究 4 では好奇心の効果に焦点を当て、ネガ ティブな経験の後に情動が持続するか否かを検討することとする。さらに研究 5 では不確 実性と好奇心双方が、ポジティブ情動およびネガティブ情動の持続にどのように関与して いるかについて、より詳細な検討を行うこととする。

謝辞

本研究は平成28年度井上円了記念研究助成を受けて実施された。