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研 究 Ⅰ

ドキュメント内 方   法 (ページ 50-53)

方 法

調査対象者 1995〜1997年に某国立大学附属小学校 6年に在籍した3つのコホート群の児童合計441名(男 子219名,女子222名)に対し,同付属中学校進学後2 年在籍時(1997〜1999年),高校在学時(2000〜2002年),

大学在学時(2003〜2005年)の3時点で追跡調査を実 施し,それぞれ児童後期,青年前期,中期,後期の測定

2)児童後期から青年前期にかけて相互独立性の平均値が低下してい ることは,この解釈と一見矛盾する。しかし,高田ほか(1996)

の尺度は相互独立性・相互協調性とも二つの下位領域から構成さ れているが,前者のうち,他者に配慮を払うことなく自分の判断 に基づいて行動する傾向を示す「独断性」は低下していない(高田,

2000)。児童後期に比べ有意に低下しているのは,他者とは異なっ た自分を認識する傾向を示す「個の認識・主張」である。したがっ て,後者に比べ前者が相対的に低下していないことは,この時期 が第二反抗期であることの一つの現れと理解することは可能であ ろう。

Figure 1 相互独立性・相互協調性の発達的変化(横断資料は高田,2000による)

3)児童生徒用尺度の5段階評定値は,横断資料(高田,1999)で妥 当性が確認された7段階評定値への変換を行ない,「あてはまる」

7,「ややあてはまる」を5.5,「どちらともいえない」を4,「や やあてはまらない」を2.5,「あてはまらない」を1とした。また,

文化的自己観尺度以外の尺度も実施したが,それについては本報 告では触れない。

4)青年中・後期の郵送調査への回答率は,それぞれ38.3%,40.1%

であり,分析対象者は非対象者と比べ偏りがある可能性がある。

しかし,分析した対象者とそれ以外の者との間に,児童後期,青 年前期,青年中期の相互独立性・相互協調性に差があるか否かを 検討したところ,性別との交互作用を含め回答の有無に関わる効 果は見られなかった。

とした。小・中学校在学時は教室で一斉に実施し,高校・

大学在学時は郵送調査によった。郵送調査では,高校在 学時は中学校卒業生の全員,大学在学時は高校在学時の 調査で回答があった者に質問紙を送付した。このうち4 回の調査時点の全てで有効な回答をした対象者68名(男 26名,女42名)を本報告での分析対象とした(平均年 齢:児童後期12.0歳,青年前期13.7歳,青年中期16.3歳,

青年後期19.8歳)。

質問紙 青年中・後期の調査では相互独立的・相互協 調的自己観尺度(高田ほか,1996),児童後期・青年前 期の調査では,児童・生徒用尺度(高田,2000)を実施 した。いずれも相互独立性・相互協調性各10項目,合 計20項目からなる。基本的に7段階評定(1:全くあて はまらない〜4:どちらでもない〜7:ぴったりあてはま る)を求めるが,児童生徒用尺度では5段階評定(1:

あてはまらない〜3:どちらでもない〜5:あてはまる)

である3)結 果

平均値の変化 相互独立性と相互協調性に含まれる項 目の評定値の平均をそれぞれの尺度得点とした。各々 のα係数は,児童後期は.70,.70,青年前期は.77,.75,

青年中期は.77,.75,青年後期は.85,.82であり,概ね 満足すべき水準にある。

各時期の相互独立性と相互協調性の平均値をTable 1

のa.とFigure 1に示す。測定時期(4:対象者内要因)

×性別(2:対象者間要因)の分散分析を相互独立性と 相互協調性に対して実施したところ,相互独立性につい ては,測定時期の主効果(F(3, 198)=0.42),性別の主 効果(F(1, 66)=1.12),測定時期×性別の交互作用(F

(3, 198)=1.19)のいずれも有意ではなかった。相互協

調性については,測定時期の主効果が有意であり(F(3, 198)=11.79,p <.0001),多重比較(Tukey法)によれば,

児童後期と青年中期の間,および青年中期と青年後期の 間を除き,測定時期間の差は全て有意(p <.05)である。

性別(F(1, 66)=1.16)の主効果と性別×測定時期の相

互作用(F(3, 198)=0.62)は有意ではない。これらの結 果を要するに,相互独立性は児童後期から青年後期まで 変化していないが,相互協調性は児童後期から青年前期 にかけて低下し,青年中・後期に上昇している。即ち,

相互独立性については横断資料で示された傾向と異なる が,相互協調性の変化はそれと一致している4)

相互独立性・相互協調性の関連 児童後期から青年後 期への相互独立性・相互協調性のそれぞれが,各時期か ら次の時期に対してどのような影響を及ぼしているかを 見るため,その連関構造を構造方程式モデルによって検 討した。モデルの構成に当たっては,(1)相互独立性・

相互協調性の双方とも,ある時期の水準が以後の全ての

Table 1 相互独立性・相互協調性の平均値

a.研究Ⅰ b.研究Ⅱ

児童後期 青年前期 青年中期 青年後期 青年後期 若年成人期 相互独立性 男子 4.65 4.65 4.53 4.56 4.34 4.34

(0.82) (0.72) (0.63) (0.73) (0.91) (0.84) 女子 4.26 4.46 4.44 4.53 4.41 4.36

(0.94) (0.78) (0.91) (0.96) (0.86) (0.72) 全体 4.41 4.53 4.47 4.54 4.36 4.35

(0.91) (0.76) (0.81) (0.87) (0.89) (0.81) 相互協調性 男子 4.32 4.12 4.69 4.79 5.10 4.88

(0.88) (0.88) (0.77) (0.74) (0.90) (0.70) 女子 4.67 4.26 4.72 4.93 5.11 4.85

(0.96) (0.88) (0.84) (0.76) (0.73) (0.74) 全体 4.53 4.20 4.71 4.88 5.10 4.87

(0.94) (0.88) (0.81) (0.75) (0.85) (0.70)

注. ( )内は標準偏差。

時期に影響する,(2)相互独立性と相互協調性の双方と も,ある時期の水準が次の時期のそれに相互に影響する,

(3)同一時期の相互独立性と相互協調性について,原点 となる児童後期は相関関係,青年前期は前述した反抗期 の観点から相互独立性が相互協調性に影響し,青年中・

後期は相互協調性が直接形成される1次的反映過程に よって、相互協調性が相互独立性を規定する,という構 造を仮定し,Amos 5を用い最尤法によって推定した5)

その結果,適合度指標はχ(2 8)=6.95(ns),GFI=.972, AGFI=.915,RMR=.025,RMSEA=.001で あ り, モ デ ルは適合性をもつと判断された。有意な標準化係数が得 られたパスのみを示したのがFigure 2のa.である。こ こから以下の因果関係が推断される。(1)相互協調性で は,児童後期から青年後期まで前時期の水準が高いほど 次時期のそれも高いが,時期を超えての影響はない,(2) 相互独立性では,児童後期から青年中期まで,前時期で の水準が高いと次時期の水準も高いが,青年中期の水準 の青年後期への影響はない一方,青年前期の水準は青年 後期のそれに影響する,(3)相互独立性と相互協調性の 双方とも,一方のある時期の水準が他方の次時期に影響 することはない,(4)青年前期には相互独立性が高いと 相互協調性が低い一方,青年中・後期では相互協調性が 高いと相互独立性が低い。

考 察

児童後期から青年後期にかけての相互独立性と相互 協調性の平均値の変化を見ると,後者については横断資 料(高田,1999)と一致する傾向が確認されたが,相互 独立性については変化が認められなかった。その背景の 一つに,今回縦断的に追跡した対象者と横断資料対象者 との差があると考えられる。そこで,各時期の相互独立 性と相互協調性について,横断資料との差を検討したと ころ,児童後期の相互独立性(t(67)=2.26,p <.05)と 相互協調性(t(67)=4.01,p <.001),青年前期の相互協

調性(t(67)=3.04,p <.01)は,それぞれ横断資料の平 均値よりも有意に低かった。それ以外の平均値には横断 資料との間に有意な差は認められなかった(t(67)=0.68

〜1.72)。

今回の分析対象者のこのような偏奇の原因は未詳であ るが,児童後期の相互独立性の低さによる床効果のため に,横断資料のような青年前期の低下が見られないこと が考えられる。他方,相互協調性については床効果は現 れず,横断資料より一層低い水準に低下している。した がって,今回の対象者の一つの特徴は,児童後期の相互 独立性・相互協調性はともに低いにもかかわらず,青年 前期に相互協調性は低下するが相互独立性は低下せず相 対的に高い水準を保っている,換言すれば青年前期での 反抗期的特徴が優勢である,という偏奇をもつ点にある と考えられる6)

各時期の相互独立性と相互協調性の関連については,

ある時期から次時期への相互の影響は全く見られない一 方,青年前期では相互独立性の高さが相互協調性の低さ をもたらし,青年中期と青年後期では相互協調性の高さ が相互独立性の低さに影響している。その上で,相互協 調性は,児童後期から青年後期へと順次,次時期へ影響 を及ぼしているが,時期を超えた影響は見られない。他 方,相互独立性に関しては,児童後期から青年中期まで は相互協調性と同様に前時期の水準が次時期の水準を規 定しているが,青年後期の相互独立性の水準に青年中期 のそれは影響せず,青年前期の水準が影響している。

相互独立性と相互協調性の各時期の水準の変化と,こ

Figure 2 各時期の相互独立性・相互協調性の連関構造(誤差項は記載を省略し,有意なパスと係数のみを表示)

5)同一時期の相互独立性と相互協調性の因果関係について,これ以 外の方向を想定したモデルの適合性は,いずれもこのモデルより 低く,本モデルが最も測定値に適合していると認められる。

6)横断資料では見られない,相互独立性の水準が相互協調性のそれ を上回るという,横断資料には見れらない反抗期の特徴と理解し 得る傾向が示されている。

ドキュメント内 方   法 (ページ 50-53)

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