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知識の導出

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 98-101)

第 8 章 仮説モデルの検証と考察

8.3. 知識の導出

知識共創のマネジメント機能として、事例1(MUSE)、事例2、3(コンサルタント)、

事例4(テクノロジーインテリジェンス活動)において、異なる知識を持つアクター間 での知識の導出には、三つのメカニズムがあることがわかった。第一に異なる知識を持 つアクター間で、「抽象化知識」を活用したマネジメントである(表 8-2 ①)。これを

「気づき」のマネジメントと呼ぶ。第二に異なる知識を持つアクター間での知識共有の マネジメントである(表 8-2 ②)。また、異なる知識を持つアクター間に限られてい ないが、知識の導出という観点では、言いにくいことを共有しやすいようにするといっ た、表出化(他のアクターと共有するという意味)のマネジメントが行われていたこと もわかった(表 8-2 ③)。これらをまとめると、表 8-2のようになる。以降では、ア クター間の異なる知識に着目し、異なる知識の間の「気づき」のマネジメントと知識共 有のマネジメントについ述べる。

表 8-2 知識マネジメントのメカニズム

(1) 異なる知識の間の「気づき」のマネジメント

ITソリューションサービスの受益者(顧客)には、解決したい課題を持っている企 業実務者が、その課題、すなわち目的価値を示すことができないケースが増えている。

例えば、「AIを活用して何かやりたいんだけど」とか、「IoTを活用して何かやりたい んだけど」というように,何が解決したい課題なのかが示されない。ITコンサルティ

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ングにおいてその価値を向上するには、顧客である企業実務者が目的価値を正しく認識 する必要がある。従って、コンサルタントは企業実務者の真の課題やその解決方法など を顧客から引き出していくことが重要になってくる。すなわち、企業実務者がその知識 空間に暗黙的に持つ「知識」や「気付き」を引き出していくことでITソリューション を見いだすという方法が重要なのである。これを進めようとした時、コンサルタントは

「抽象化知識」を活用して明示的になっていない知識を、企業実務者から引き出してい く。この時、コンサルタントと企業実務者は、異なる知識空間を有している。従って、

コンサルタントは、企業実務者に気付きを与えるためには、両者の共通の知識空間にあ る知識を企業実務者に与える必要がでてくる。そのためには、自身の有している知識を 抽象化することで、共有の知識空間にある知識として創出し、企業実務者に与えるので ある。このように、共通の知識空間の知識とするために、保有する知識を抽象化してい ることから、本論文では、この抽象化された知識を「抽象化知識」と呼んでいる。そし て、それがきっかけとなって、企業実務者は「抽象化知識」を自身の知識空間にあては めることで、気付いていない知識を表出化したり、新たな知識を創造しているのである。

事例2~事例4では、具体的に「抽象化知識」を活用した事例が示されていたことは、

既に述べた。事例1でも、同等なメカニズムが存在していることをインタビューの中か らみいだすことができる。(表 8-2 「①異なる知識の間の「気づき」のマネジメント」

の事例1の項目参照)

以上のように、異なるアクター間で新しい知識を共創するために、ITソリューショ ンサービスの提供者(例:コンサルタント)は、異なる知識領域を持つアクター間で共 有できる知識空間にある知識として「抽象化知識」を創出し、それがきっかけとなって、

ITソリューションサービスの受益者(例:企業実務者)が新しい知識として課題や解 決策を創出しているのである。このメカニズムを『「気づき」のマネジメントモデル』

として、図 8-2のようにモデル化した。

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図 8-2 抽象化知識を活用した「気付き」のマネジメントモデル

このモデルは、[a]ITソリューションサービス提供者(例:コンサルタント)の持つ知 識を抽象化する(「抽象化知識」の創造)、[b]それをITソリューションサービスの受益 者(例:企業実務者)が取り込み、[c] ITソリューションサービスの受益者が既に保有 している知識と結合させることで課題や解決策が形式知化される(気づく)。[d] ITソ リューションサービスの受益者が形式知化した知識は、ITソリューションサービスの 提供者の知識として取り込まれる。というプロセスである。

(2)異なる知識の間の知識共有のマネジメント

ここで示す異なる知識の間の知識共有のマネジメントは、これまでも行われてきてい るものであると考えられる。すなわち、異なる知識を持つアクター間で知識共有をする ためには、一方の知識からもう一方の知識へと、誰かが翻訳をして伝えることである。

本論では、事例1の中でのみ確認できた事項であるが、バリューオーガナイザーである 設計事務所が、システムの開発会社に対して、IT化構想フェーズで検討した顧客の考 えや思いを、顧客業務の言葉ではなく、IT開発会社のわかる言葉に翻訳して、伝える といったことを行っている。この場合、バリューオーガナイザーが両方の知識を知って いることによって、これを行うことができるものであり、バリューオーガナイザー自身 が異なる知識を持つアクターの共有知識空間となっていると考えられる。

以上示したように、事例2、3ではコンサルタントが、事例4では技術企画スタッフ がそれぞれの場をファシリテートし、「抽象化知識」創造し、それをきっかけとしてコ ンサルタントと企業実務者の共有の知識空間から目的価値/機能価値もしくはそれに 至るまでの中間的な知識を抽出/創造している。同様に事例1ではバリューオーガナイ

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ザーのファシリテーションによって、バリューオーガナイザー、企業実務者、IT企業 の共有の知識空間から目的価値/機能価値を抽出/創造しているのである。

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