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脂漏性疣贅等の皮膚小腫瘍,座瘡痕等陳旧性瘢 痕の顕在化による表面不整が挙げられる。皮膚 色の異常は,いわゆる「シミ」として一括され る色素過剰症,色素低下症または老人性白斑,
色調不均一,血管拡張症に分けられる。皮膚質 の低下により引き起こされる老化徴候には,主 に不規則な表皮構造が原因のつやのなさ,真皮 の菲薄化による張りのなさ,毛孔開大によるき めの粗さがある。シワ・タルミは適応を決定す る上でさらに表 のように分類するとよい。
前述の多岐に渡る老化徴候の中で,臨床で一 般的に遭遇するものは—患者が老化現象として 受け止めて「気にする」ものは—皮膚の形状変 化としてシワ・タルミ,皮膚色の異常としてシ ミおよび色の不均一,皮膚質の低下としてつや・
張りのなさである。したがって,皮膚老化外来 における診断は通常,表 に挙げる 8 の適応の 組み合わせとして記述することができる。
適応が決定すれば,治療法の選択肢は自ずか ら限られてくる。コジワは,トレチノインに代 表される外用剤,グリコール酸ピール),IPL やヤグレーザーの中空照射等,光線療法の適応 となる。シワはコラーゲンやヒアルロン酸によ る注入療法,レーザーピール),medium-depth
(中くらいの深さ)・深いケミカルピールで改善 される。表情ジワに真に有効であるのは Botox® 注射3)のみである。注入剤で一時的効果が得ら れても,表情筋を抑制しないと,すぐ再発した り,別のシワが隣りにできたりする。深いシワ に対しては,各種注入剤のほかに脂肪などの自 家組織の注入も行われる。
タルミの改善には,今のところフェースリフ トの効果のみが実証されているように思われて いるが,実際には鼻唇溝外側に位置する頬中央 部分の顕著なタルミは位置的に矯正できない 上,フェースリフトに最適の顎から首にかけて のタルミでも脂肪吸引・脂肪切除を組み合わせ て効果を増大することが推奨されている4)。さ
らに解剖学的な位置関係が乱されてしまうた め,フェースリフトも理想的な治療法とは言い がたい。RF5)・近赤外線・ヤグレーザーを用い たリフティングやスレッドリフトのように,特 定の方向に真皮深層・皮下組織を短縮させてリ フティング効果をもたらす原理の方が理にか なっているように思われる。効果についてまだ 不明な点が残っていることはさておき,新しい 治療法の登場により患者にとってのリスクが大 幅に減少したことは事実である。しかし,実際 の導入に当たっては,コストの問題が立ちはだ かっている。それに対して,注入剤や自家脂肪 の注入によるタルミの相対的軽減は,間接的な 効果にとどまるとしても,特に複数の適応に対 する有効性を考慮すれば,実用性の観点から選 択肢に加えることができる。
シミはグリコール酸やハイドロキノンの外用 剤,グリコール酸ピール,IPL および色素選択 性レーザー,レーザーピールの適応である。色 の不均一はもとの肌色が白ければ美白により改
種類 主な部位
コジワ fine.lines シワ lines 表情ジワ wrinkles 深いシワ folds タルミ sagging
下眼瞼 目・口の周り 額・眉間・目尻 鼻唇溝
頬・首・上眼瞼 表 1 シワ・タルミの種類と主にみられる部位
皮膚形状の変化 コジワ
シワ 表情ジワ 深いシワ タルミ
皮膚色の異常 「シミ」
色の不均一
皮膚質の低下 つや・張りのなさ
表 2 適応としての老化徴候
50 善されるものの,限局病変であるシミと異なり,
ハイドロキノンのような脱色剤の使用やレー ザーピールには適さない。つや・張りのなさも,
色の不均一と同様の治療法で改善される。一般 的にグリコール酸とトレチノインの外用により 皮膚の色と質の全体的改善が可能である。両剤 共皮膚の再構築をもたらす長期的効果に関して 実証済みであるが,トレチノインの方が炎症を 起こしやすい反面,コラーゲン合成促進作用も 強く,表皮再生の加速により効果発現が比較的 速い。また,両剤共脱色作用があるが,この点 ではグリコール酸の方が強力である(図 )。
表 3 は皮膚若返り治療における各適応に対す
コジワ シミ 色の.
不均一 つや・張
りのなさ シワ 表情ジワ 深いシワ タルミ
外用剤注1 4 4 4 4
グリコール酸ピール 4 4 4 4
caustic.agent による
ケミカルピール 4 4
注入剤注 4 (4) 4
脂肪・その他の.
自家組織の注入 4 4
Botox®注射 4
IPL(=intense..
pulsed.light) 4 4 4 4
非手術用,非色素.
選択性レーザー 4 4
非手術用,色素.
選択性レーザー 4 4
手術用レーザー
(レーザーピール) 4 4
リフティング用.
電気・光学機器 4注 3
フェースリフト・.
スレッドリフト 4
注1:トレチノイン,グリコール酸他。
注2:コラーゲン,ヒアルロン酸他。
注 3:RF,近赤外線機器,Nd:YAG レーザーが含まれる。
表 3 皮膚若返り治療における適応と治療法
図 1 グリコール酸外用の若返り効果
る治療法をまとめたものである。なお,上眼瞼 のタルミに関しては,余剰皮膚切除術が通常第 一選択となり,ケミカルピールとレーザーピー ルも選択肢に含まれるが,いずれにしろ美容外 科の範疇に入り,他の適応と性質を異にする問 題であるので,表からは割愛した。
美容としての皮膚若返り治療
美容の観点からは,皮膚若返り治療の相談か ら治療に至るまでの過程を通じて,サービスを 受ける消費者としての患者が主体となる。医師 は治療の希望に対して,方法選択の段階でサー ビス提供者として関わりを持つことになる。方 法の選択には,患者側と医師側の両方の要因が 関与してくる。
患者側の要因としては,時間的,金銭的余裕 の問題,流行・宣伝広告・メディアでの取り上 げ方など社会的要因,これまでの自分の経験や 人に聞いた話など心理的要因に大きく左右され ることがあり,医学的判断と不一致な治療を希 望する患者が多い。したがって,誤った方法の 選択によるトラブルを未然に防ぐには,標的患 者層を絞る,トレンドを上手に利用する,患者 の予備知識に注意するといった点に留意すると よい。また,美容医療において消費者としての 患者は,ときとして最小限のコストで最大限の 利益を得ようとすることもある。それゆえ,患 者に負けない,利用されない,だまされないと いう心構えも必要である。
治療方法の選択における医師側の要因は設備 とノウハウの有無に尽きる。しかしながら,日 進月歩の美容医療テクノロジーの世界で,設備 の改善とノウハウの向上は決して生易しいもの ではない。
技術導入のポイント
私見になってしまうが,新しい技術を導入す る際のポイント—導入する技術の選択方法—を
述べて,本稿を終らせることにしたい。
実用的なアドバイスとしては,表 3 に既に導 入している技術を記入してみて,すべての適応 に対して十分な治療を提供できるか確認し,弱 点の強化を図るとよい。例えば,皮膚若返り治 療をこれから始める者にとって,Botox®注射 は他の方法で代替できないため,習得すること が必須と言える。しかし,鼻唇溝の脂肪注入が できなくても注入剤を導入すれば通常は事が足 りる。外用剤・グリコール酸ピール・IPL の適 応範囲は類似しているので,最初は施術を望む 患者のために外用剤と二つの技術のいずれかを 導入するとよい。一度にいろいろな技術を導入 しても上達しないので,限った方がよい。しか し,既に使用している技術で物足りなくなると
(必ず効果が不十分な症例が出てくるため),ど の技術の導入が望ましいか自ずとはっきりして くる。つまり,皮膚若返り治療では,適応の網 羅を選択肢の多様性に優先すべきと言えよう。
若返り治療を含めて一般に美容医療では,従 来存在しなかった全く新しい技術をどの時点で 導入するかという問題に頻繁に遭遇する。この 意味での技術導入のポイントを表 4 に示した。
近年,本来の医療においても実証医学の限界は ますます明らかになってきている。この傾向は 美容医療でさらに顕著である。美容医学は論理 を操り,経験に学んで,発達させていくしかない。
統計では測り知れず,数字では割り切れない。
First comes logic, then experience, last and least evidence.
表 4 技術導入のポイント
5 参考文献
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