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 前章において、バスケットボールの基本技術 のひとつにシュートが措定された。しかし、バ スケットボールに用いられるシュートは、図IV

−1に示すように多種多様である。しかし、こ れらのいずれのシュートが基本であるかについ ては、必ずしも一致した見解が得られていない

4川) 2)

B

 したがって、本章では、バスケットボールに おける基本シュートを実践的に明らかにしょう

とした。

 シュート動作の最終局面の形態に着目する と、手のひらがゴールネットを持ち上げている ような形でボールを下から支えているか(アン ダーハンド型シュート)、と手のひらを返して ボールを高い位置で支えているか(オーバーハ ンド型シュート)、に大別される。

 また、片手で投射しているか(ワンハンド)、

両手で投射しているか(ツーハンド)、とに細 分することができる。

 吉井13)は、バスケットボールのシュート技術 を①セットシュート、②ジャンプシュート、③ レイアップシュート、④ダンクシュート、⑤タ ーンシュート、⑥フックシュート、⑦タップシ ュートの7つでおさえており、これらのシュー ト技術は、図IV−1に示す「ワンハンド」「ツー ハンド」「レイアップ」のいずれかに分類する

ことができる。

アンダーハンド型シュート

一1

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睡ツーハンド比湿

      レイアップ       くツ ハンの

頻多ll多1多鋼拷簿讐1

図IV−1 シュートの分類

 また、これら7っのシュート以外にも、ステ ップ動作を含めると、インサイドジャンプシュ ートとアウトサイドジャンプシュートのように 分類するシュートもあるが、バスケットボール のすべてのシュートは、動作の最終局面の手の 様式に着目すると、上述した3つのいずれかの 形態に分類できる。換言すれば、「ワンハンド」

 「ツーハンド」「レイアップ」の3つのシュー ト動作様式が、様々なシュートへ分化・発展し ていくと考えられる。

 したがって、バスケットボールの基本となり 得るシュートは、アンダーハンド型のレイアッ プシュートとオーバーハンド型のワンハンドシ ュー g、ツーハンドシュートの3つのシュート の型に絞ることができると言えよう。

 しかし、基本技術は、「初心者が使う技能で あり、なおかつ、熟練者になっても使う技能」

と捉えるのが妥当であると考えられる。したが って、初心者がよく用いるが、熟練者がほとん ど使わないツーハンドシュートは、基本技術か ら除外して検討してよいと考えられた。

 すなわち、バスケットボールの基本シュート は、「アンダーハンド型のレイアップシュート」

と「オーバーハンド型のワンハンドシュート」

に絞ってよいと考えられた。

 レイアップシュートは、ノーマークでシュー トすることができる場合、確実性の高いシュー ト方法であり、ドリブルのスピードをそのまま 生かしながらシュートできる形式であるところ に特徴がある。

 一方、ワンハンドシュートは、ゴール下でシ ュートすることができる場合、ゴールに近い高 い位置で安定したシュートが打てる方法であ

り、ピボットやランニングステップを生かしな がらもシュートできる形式であるところに特徴

がある。

 ところで、ピボットは、バスケットボールに おいて不可欠な技術のため、前章において基礎 技術と措定された。事実、井上ら5)は、ピボッ ト動作の未習熟は、バスケットボール学習のつ まずきの要因になることを明らかにしている。

 また、ゴール下で縦パスを受けてシュートす

る場合、反転しなければシュートはできない。

すなわち、バスケットボールの攻撃の最小単位 は、縦パスからのピボットターンシュートであ る )2)と考えられる。また、このピボットター ンには4種類注1)あり、ディフェンスの動きに 応じて使い分けられる。その際、ディフェンス を背負っていれば、高い位置でシュートできる ワンハンドシュートにならざるを得ない。事実、

吉井14)は、ツーハンドシュートは、ディフェン スが接近しているときには困難になるという欠 点を指摘している。

 また、シュート技術を身につける初期の学習 段階として、ゴール下でのセットシュート、ポ ストプレーからのピボットターンシュートを取

り扱う実践報告3)7)蹴が多く見られる。

 これらのことから、バスケットボールの基本 シュートをドリブルからのレイアップシュート

とピボットターンからのワンハンドシュートと 捉えることは一応妥当であると考えられる。

 しかし、基本は少ない方が望ましい。また、

いずれのシュートから教えた方が技能が高まる かという指導の系統性の問題もある。

 そこで、本章では、ドリブルからのレイアッ プシュートのみを練習させる群とピボットター ンからのワンハンドシュートのみを練習させる 群を設定し、練習後のゲームでの使用頻度や成 功数、出現数等を分析し、いずれのシュートを 基本シュートであると考えるのが妥当であるか

を検討した。

表IV−1 被験者の身体特性とシュート技術の成     績

u

L2 Oi 02

人数(人)

身長(cm)

体重(kg)

シュート技術(本)

 5     5     5     5

165.3±6.0 163.3±=4.7 164.4±6.8 170.5±7.3 57.0±6.8  53.5±9.7  5tO±5.5  63.5±2.8

2.8±1.9   6.0±1.9   3β±1.5   3.4±0.8

第2節 方 法

1.対象

 静岡県下のG中学校に在籍する3年生男子

20名を対象とし、レイアップシュートのみを 練習する「レイアップシュート群(以下、L群 と略す)」とワンハンドシュートのみを練習す る「ワンハンドシュート群(以下、0群と略す)」

の2群(5人/4チーム)の設定をした。

 群分け、チーム編成は、著者の主観ではある が、チーム内異質・チーム間等質になるように

編成した。

 なお、表IV−1に被験者の身体特性と単元前 のシュート技術(L群はレイアップシュート、0 群はワンハンドシュートの10本中の成功数)

の成績を群別に示した。

2.測定方法

 L群にはドリブルからのレイアップシュート を、0群にはゴール下のピボットターンシュー

トを、6目間(15分/日)練習させた。

 レイアップシュートは、ゴールに対して、右

45度(直線距離10m)からのドリブルシュー

トを練習させた。また、ワンハンドシュートは、

制限区域旧注2)で、ゴールに背を向け、ボール をトスアップしてキャッチした後、両足で着地 し、ピボットで反転してのシュートを練習させ

た。

 また、毎時間の練習後、ノーマークの状態か ら、L群はレイアップシュートを、0群はワン ハンドシュートを、それぞれの練習方法と同様 の形式で10本行わせ、その際のシュート成功 数を記録した。

 また、7時問目にL群と0群の対抗で、計 4試合(6分2ピリオド制、5対5)を行わせ た。その際、ゲーム様相をVTRに撮影し、下

記の観点から分析した。

a.シュート出現数・出現率 b.シュート成功数・成功率注3)

c.シュートゾーン

 シュート地点は、「制限区域内」「制限区域 外」「スリーポイントライン外」の3つのゾー

ンに分けて分析した。

d.使用シュート技術

第3節 結果ならびに考察

1.シュート技術の練習による伸び

 図IV−2は、両群のシュート成功数を時間ご とに示したものである。

 両群ともに第1時から第2時にかけて有意に 向上した。その後、L群は停滞を示したが、単

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図IV−2 練習による両群のシュート成功数なら     びに変動係数の変化

元後半には再び有意に向上した。一方、0群は 時間経過とともに有意に向上する傾向が認めら

れた。

 すなわち、両群のシュート技術は、練習経過 とともに向上し、6日間の練習で、両群ともに シュート成功率を平均で約8割に高め得ること が認められた。

 また、両三の成績は、5目目で有意水準が 0.1%にまで高まるとともに、変動係数も20近

く小さくなっている。このことは、シュート技 術を確実に習得し、技能を向上させていること を示唆している。

 なお、後述する絶対評価基準で中学3年生の シュート技術は、レイアップシュートもワンハ ンドシュートも5本以上が「概ね満足できる」

レベルである。このレベルに達するために必要 な練習日数は、平均値、有意水準、ならびに変 動係数等を考慮すると、5日間であることが示 唆された。また、6日間の練習で、すべての生 徒が「概ね満足できる」レベルを達成できてい た。さらに60%の生徒が「十分満足できる」

レベルをクリアーできていることが認められ

た。

が、両三のワンハンドシュート出現数には、有 意な差が認められた。

 すなわち、0群のワンハンドシュートの使用 頻度は22.5本、出現率は70%で、L群のそれ は12.8本、出現率は60%であった。

 一方、レイアップシュートの使用頻度は、0 群では55本、出現率は17%、L群では5.8本、

出現率は27%で、両群間に差は認められなか

った。

 (B)のレイアップシュート成功数は、両群 ともに同値(2本)を示したが、L群の総シュー

ト数が0群よりも少ないため、その割合は、

レイアップシュートを練習したL群の方が

20%弱高かった。

 一方、ワンハンドシュートの成功数は、L群

(2.3本)よりもO群(5.3本)が有意に高値を示 した。また、ワンハンドシュートの割合も、0

群(64%)がし群(47%)よりも高かった。

 すなわち、ゲームにおけるシュートは、ワン ハンドシュートの方が、レイアップシュートよ

本/12分 30

       コ       (A)l

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60%

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0群  *P〈α1

2.ゲームにおけるシュート出現数ならびに成 功数とそれらの割合

 図IV−3(A)は、ゲームにおけるシュート斗 出現数とその割合、同(B)は、シュート別成 功数とその割合を示したものである。

 (A)のシュート出現数、出現率は、両群と もにワンハンドシュートが最も高値を示した

・離iト

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図IV−3

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4796

1196

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64%

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O群  *P<α1

ゲームにおけるシュート別出現数・成 功数とそれらの割合

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