一ト成功数は、L群のレイアップシュート成功 数よりも高値を示した。このことは、ゴールに 近い地域においてもレイアップシュートよりも ワンハンドシュートの方が有効的なシュートで ある6)とする加藤の結果を支持するものであ
る。
また、これらの結果は、レイアップシュート よりもワンハンドシュートが基本技術であると 考えるのが妥当であることを示している。
第4節 小 括
本章では、バスケットボールにおける種々あ るシュートの中から、レイアップシュートとワ ンハンドシュートのいずれがより基本シュート であるかを検討した。すなわち、レイアップシ ュー
gのみを練習するL群(10人)とワンハ
ンドシュートのみを練習する0群(10人)の 2群を設定し、それぞれに、6日間(15分/日)レイアップシュートとワンハンドシュートだけ
の練習を行わせた。また、7時間目にL群と0
群の対抗戦(6分2ピリオド制、5対5、計4
試合)を行わせ、ゲーム様相をVTRに撮影し、ゲーム内での使用頻度や成功数、出現数等を分
析した。
1)両三ともにシュート技術は運動経過に伴い 有意に向上し、6日間の練習で、晶群ともにシ ュー g成功率を約8割までに高め得ることが認
められた。
2)ゲームに出現するシュートの割合は、ワン ハンドシュートが66%、レイアップシュート が21%、ツーハンドシュートが13%を示した。
3)ゲームにおけるシュート成功数の割合は、
ワンハンドシュートが58%で最も高値を示し た(レイアップシュート:31%、ツーハンドシ ュー g:11%)。
4)シュート出現数、出現率は、両群ともにワ ンハンドシュートの方が高値を示し、0群:
22.5本(70%)、L群:12.8本(60%)であった。
一方、レイアップシュートの使用頻度は、0 群:5.5本(17%)、L群:5,8本(27%)であっ
た。
5)シュート成功数、成功数の割合は、両三と もにワンハンドシュートが最も高値を示した が、0群が有意に高いことが認められた(0群
5.3本(64%)、L君羊:2.3本(47%))。
一方、レイアップシュート成功数は、0群:
2本(24%)、L群:2本(42%)であった。
6)レイアップシュートは、制限区域内でしか 出現しなかったのに対し、ワンハンドシュート は、制限区域外においても用いられることが認
められた。
また、制限区域内のワンハンドシュート成功 率は、L群(23%)よりも0群が高値(28%)を示
した。
これらのことから、バスケットボールの基本 シュートは、レイアップシュートよりもワンハ ンドシュートであると考えられた。
注
注1)ピボットターン:左右両足を軸にしたフ ロントターンとリバースターンが可能で、ピボ ットターンは4種類となる。
注2)制限区域9):フリースローラインの両端
とエンドライン上の中央から3mの2点を結ぶ 台形の区域を指し、攻撃側プレーヤーが3秒以 上留まってはならないという、3秒ルールが適 用される区域。
注3)成功した全シュート数に対するそのシュ ート割合を示すものと、シュート数に対するシ ュー g成功数の割合を示すもの(制限区域のシ ュー g成功率)がある。
文 献
1)荒木豊・井芹武二郎(1980)バスケットボー ルの指導,学校体育研究同志三編,pp.49−55,
ベースボールマガジン社:東京.
2)後藤幸弘・梅野圭史・林修・野村俊文・長 尾精二(1989)教材の構造化観点の相違が児童の 態度と技能に及ぼす影響について一6年生バス ケットボールを例にして一,日本教科教育学会
誌,B(2):33−41.
3)後藤i幸弘・古賀秀和・松本靖(2006)「課題 ゲームを中心とするバスケットボールの特性に 触れる学習過程一高学年児童を対象として一,
兵庫教育大学研究紀要,28:137−151.
4)稲垣安二・石川武(1978)バスケットボー ルの指導体系,pp.44−57,梓出版社:松戸.
5)井上直郁・後藤幸弘・松下健二(2000)ピボ ットの未習熟はバスケットボールにおける技術 的つまずきの基底的要因か一ピボット動作の巧 拙とシュート・パス技能の関係から一,兵庫教 育大学実技教育研究,14:57−65.
6)加藤慎司(2002)バスケットボール競技にお ける有効的なショットに関する研究一中学生女 子の簡易ゲームを中心として一,兵庫教育大学 大学院学位論文,Pp.52.
7)木村典雄(2002)バスケットボールの授業で 大切にしたい5っのポイント,たのしい体育・
スポーツ,21(12):32−35.
8)牧田卓司(2003)中学校の球技を例に一バス ケットボールの実践,体育科教育,51(5):42−45.
9)水谷豊・中村敏雄(1987)制限区域,p.675,
岸野雄三編「最新スポーツ大事典」,大修館書 店:東京.
10)奥田直和(2000)バスケットボール実践への 提言,たのしい体育・スポーツ,19(10):16。19.
ll)StiehlerG.・Konzag.1.・D6bleLH.(唐木國彦 監訳)(1993)ボールゲーム指導事典,pp.168−175,
大修館書店:東京.
12)手嶋舜(1985)バスケット:ボールの教科指導 一小学校におけるバスケットボール指導一,
pp.87−92,不昧堂出版:東京.
13)吉井四郎(1977)バスケットボールのコーチ ング・基礎技術編,pp.234−235,大修館書店:
東京.
14)吉井四郎(1977)バスケットボールのコーチ ング・基礎技術編,pp.219−237,大修館書店:
東京.
第V章 バスケットボールの授業における絶対評価基準の設定 第1節 目 的
評価の目的は、学習成果を把握するとともに、
「学習者が自分自身の姿に気づき、自己認識で きる」「教師が学習者の実態を把握できる」「教 師が目標実現に向けた新たな手だてを考えるこ とができる」ところ等にある。すなわち、教師 にとっての評価の本質は、「よりよい授業の構 築」のためのものであると言える。しかし、「指 導と評価の一体化」「真正な評価」等が問題と して論じられている5)12)社会現象がある。この 背景には、教育内容が不明確なことが誘因・原 因として存在しているように考えられる。
絶対評価基準を設定するためには、教育内容 や基礎・基本を明確にする必要がある。そこで、
第三章において、バスケットボールの中核的教 育内容を措定した。
体育科の目標は、4つにまとめられ、文部科 学省も4つの評価観点16)を示している。本来な
らば、すべての観点において、絶対評価基準を 設定しなければならない。しかし、本章では、
第皿章で措定された保健体育科の中核的教育内 容である技能を中心に、信頼性、妥当性のある 客観的な絶対評価基準を設定しようとした。
体育の授業でも、技術を客観的に評価できる 方法が求められているが、緒言でも述べたよう に、文部科学省によって十分に示されていない のが現状である。また、運動技術とパフォーマ ンス注1)が混同され、評価されていることにも 大きな問題があると言える。
ボールーゲームにおける絶対評価基準設定の 先行研究を概観すると、本研究と同様の考えに 基づくものがいくつか報告4)6) 8)されている。し かし、中学校体育科のバスケットボールを対象
とした、妥当性のある絶対評価基準は著者の管 見の範囲では見当たらない。
本研究では、「規準」を「観点」、「基準」を
「レベル」とおさえ、研究を進める。すなわち、
「規準」は教育内容であり、「基礎・基本」は 教育内容の本質と捉えることができ、「基準」
を設定する上で、重要な観点となる。
また、絶対評価基準を設定する場合、何らか の拠り所が必要となる。体育科においては、技
能特性に触れた楽しさを味わわせることが望ま
れている2)7)。
したがって、本章では、第皿章で措定したバ スケットボールの教育内容と基礎・基本に基づ き、普遍的な価値と考えられる「技能的特性に 触れているか」「機能的特性に触れているか」
を拠り所とし、文部科学省の言う「十分満足で きる」「概ね満足できる」17)のレベルを設定す ることにした。すなわち、個人技能、集団技能、
ならびに戦術理解度等について、中学1年生と 中学3年生の男子を対象とした授業における実 態を測定し、ゲームを楽しむために必要なレベ ルを明らかにすることを通して、絶対評価基準
を設定しようとした。
第2節 方 法
1.評価基準の設定項目の選択
(1)個人技能について
第皿章で教育内容として措定されたシュート は、基本技術の中でも中核的な技術である。バ スケットボールにおいては、高い位置の水平な 小さなゴールにシュートすることが最終課題で あり、他のスポーツでは、パス・シュートは、
本質的に同じ動作で可能であるが、バスケット ボールでは、パスと異なる特殊性がある。した がって、シュート技術を身につけない限り、バ スケットボールの技能特性に触れたとは言えな
い。
また、第IV章で基本シュートは、ワンハンド シュートであることを明確にしたが、レイアッ プシュートもワンハンドシュートの次に多用さ れることから、評価項目として選択した。すな わち、シュート技術においては、ワンハンドシ ュー gとレイアップシュートの2つの項目を選
択した。
バスケットボールのドリブルは、最も信頼で きる「床を介した自分へのパスの連続」と捉え ることができ、ボールを持って走れないバスケ ットボールにおいては、必須の技術である。し たがって、ドリブルを評価項目として位置づけ
た。
すなわち、バスケット特有の基本技術と位置
スキ
ル
I i体 l Iカ
ドリル 隙
体
ンユ胴・も
1三
幅資
全体は 運動成果
(パフォーマンス)
図V−1パフォーマンスに対する体力とスキル の影響度(後藤)
づけられる、シュートとドリブルを個人技能の 評価項目として選択した。
ところで、後藤5)は、運動成果を構成する2 大要因を「技術」と「体力」とおさえ、これら の関係式から技術を客観的に評価する方法を提 案している。すなわち、【技術=運動成果(記 録)÷身体資源(体力)】との関係式に、それぞ れの運動に必要な中核的な身体資源を設定する
ことによって、技術が評価できるとしている。
本研究においても,基本的にはこの考え方に 依拠して技術を評価することにした。すなわち、
図V−1に示す、「パフォーマンスに対する体力 とスキルの影響度」に照らし、シュートとドリ ブルについて技術の評価法を検討した。
バスケットボールのシュート動作は、出力系 の身体資源(体力)よりも、巧緻性、正確性が重 要視される。また、技術は,運動課題解決のた めの合理的な身体操作の系列(組織化されたも の)であるので、シュート動作は、巧緻性(動 きをまとめる力)であり、スキルそのものであ るとも捉えられる。
すなわち、バスケットボールのシュート技術 には、エネルギー系の身体資源よりも制御系の 身体資源の関与度が高く、シュートの正確性は、
技術そのものを見ていると言うことができる。
したがって、シュート技術については、成功 回数で評価することにした。
一方ドリブルは、スキル以外にも体力要素(走 力:ここではエネルギー系の体力)も関係する ため、上記の関係式を用いて、8の字走得点(身 体資源)とドリブル得点(パフォーマンス)の 関係から技術を評価することも試みた。
(2)集団技能について
絶え間なく状況が変化するバスケットボール において、ゲームを楽しむためには、ゲームを 通して、戦術に関わる集団技能を高めることが 必要であると言える。
最終目標であるシュートまでいくことができ たかどうかは、自チームの作戦が成功したかど
うかの指標になると考えられる。すなわち、ボ ール獲得数(攻撃権)に対するシュート数の割 合を示す攻撃完了率Io)は、作戦成功の指標とな
る評価項目であると言える。
また、いくらシュート数が多くても、シュー トが入らなければ、バスケットボールの技能特 性に触れたとは言えない。シュートは、バスケ
ットボールの中核的技術である。すなわち、シ ュート成功率は、シュート技術を高めていく上 での重要な指標であると言える。
防御が整っていないときの縦パスからの速攻 は、戦術の基礎と言える。したがって、速攻創 出率を評価項目と設定した。
仲間とのかかわりや連携プレーは、ゲームに おける楽しさの中核と考えられる。また、連携 プレーは、チームカを大きくすることにもつな がる。すなわち、ボール獲得数に対するパスを 使ったシュート数の割合を示す連携シュート率 は、攻撃完了率以上に、連携プレーができてい るかのひとつの指標になるので、評価項目とし て選択した。
バスケットボールの戦術課題は、「ズレを創 出して突くパスを入れる」である。したがって、
攻撃の基本戦術は、「ゴールとボールを結ぶ線 上にディフェンスを置かない」となる。この戦 術課題解決には、「縦パスからのピボットター ンシュート」が最小単位D3)となる。すなわち、
コンビネーションによって、最重要空間(ゴー ル下)に「突くパス」を入れ、突くパスの極致 であるシュートをしょうとするのである。
したがって、最重要空間での連携シュートと して、ゴール下連携シュート率、ゴール下連i携 シュート成功率を重視した。
すなわち、バスケットボールの戦術課題、基 本戦術、中核的技術から派生する指標と考えら れる、①攻撃完了率、②シュート成功率、③速 攻創出率注2)、④連携シュート率、⑤ゴール下 連携シュート率、⑥ゴール下連携シュート率2、