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疾患別各論3

ドキュメント内 ”R„ûflÇ-Œ{ŁÒ-01 (ページ 45-51)

カテーテルアブレーションが不成功か,他の心臓手術 に附随して行う時に手術適応となる.術中に心室期外収 縮が発生しなければ手術はできない.術中の電気生理検 査としては,心室の心外膜マッピングを行い,心室期外 収縮の起源すなわち最早期興奮部位を同定し凍結する.

心室期外収縮の多くは右室流出路起源である.

4)心室頻拍

Fontaine ら379)やSpurrell ら380)は初めてマッピング法を 用いて心室頻拍に対する外科的治療を行った.その後

Hartzler381)により直流通電によるカテーテルアブレーシ

ョンが開始され,さらに Huang ら382)により高周波通電 によるカテーテルアブレーションが開発されたために,

手術適応はカテーテルアブレーション不成功例のみに限

疾患別各論 3

図 14 WPW 症候群における洞調律時の心室表面マッピング 

(心室を後中隔で切開した展開図) 

洞調律 

RV. ANT RV.

DIAPH

APEX PA LAD

LV. ANT OM

LV.

POST

図 15 右房下壁でペーシングした時の心室表面マッピング 

(心室を後中隔で切開した展開図) 

ペーシング  RV. ANT RV.

DIAPH

APEX

PA LAD LV. ANT

OM LV.

POST

定されるようになった.また,カテーテルアブレーショ ンの不成功例も含めて植込み型除細動器の適応が拡大し たために,外科的治療の適応となる症例は現在ではほと んど無い.しかし,不整脈の基質(心室瘤,瘢痕など)

に対する外科的切除術は根治的治療であり,薬物治療が 不要で生命予後も極めて良好なので,有用な治療法であ る.

電気生理検査としては心室頻拍を誘発して,図13な どのマッピング装置を用いて,心外膜マッピングを行う.

誘発された心室頻拍により血行動態が不安定になって も,開胸時には体外循環を用いればマッピングが可能で,

心室頻拍の起源の同定が可能である.また,心室頻拍の 起源は一般的に心内膜側に多いが,特発性心室頻拍の起 源は心外膜側にある場合がある.心内膜マッピングは手 技的に困難であり,手製のバルーン電極があるが入手困 難である.

マクロリエントリとマイクロリエントリではマッピン グ方法が異なる.図16の右の2個のマッピングは全く 同じような図になるが,機序は全く異なる.中央はマク ロリエントリであり,狭部の伝導を遮断すれば治療でき る.右はマイクロリエントリであり,左方向への一方向 性ブロックが存在する.従って,マイクロリエントリの 起源部位を破壊しなければならない.

5

)心室細動

三崎らは心室細動に対する外科治療をマッピングを用 いて行ったが,植込み型除細動器が開発されてからは,

心室細動に対する外科的治療の報告はない.

6

)心房期外収縮

理論的には心房性期外収縮のマッピングを行い,凍結 による外科治療は可能であるが,心房期外収縮は生命予 後に関わる不整脈ではないので,実際の報告例はない.

7)心房頻拍

手術適応はカテーテルアブレーションが不成功である 例または他の心臓手術に付随して行う場合である.外科 治療では,詳細な心内膜マッピングが可能であるので,

頻拍起源の同定が容易である.しかし,頻拍起源を治療 する毎に他の部位で再発することがあるので,状況によ っては周辺を大きく隔離する方法が推奨される.

8)心房粗動

心房粗動単独では,カテーテルアブレーションの成功 率が高いために,手術適応となる症例はほとんどない.

手術適応になるのは他の心臓手術に付随して行う場合の みである.心房粗動には通常型と非通常型とあり,通常 型は三尖弁−下大静脈間峡部を介するマクロリエントリ が多く,峡部である三尖弁輪と下大静脈の間を高周波通 電により焼灼するカテーテルアブレーションが普及して いる.当初は心房粗動に対してもmaze 手術が行なわれ たが,最近は外科的にもカテーテルアブレーションの経 験を応用して三尖弁−下大静脈間峡部に対する凍結また は高周波焼灼が行なわれている.

9)心房細動

Cox ら383)は,心房細動に対する,maze 手術を発表し た.小坂井ら384は日本で最初のmaze 手術を行った.そ 図 16 心室頻拍におけるリエントリー機序 

マイクロリエントリー  マイクロリエントリー  マイクロリエントリー  一方向性  ブロック 

の後maze 手術は種々の改良がなされた.現在,最も多 く行なわれている不整脈手術であり,これらについて詳 細に解説する.

①術中電気生理検査

Cox ら383)の方法によるMaze 手術は成功率が高いため に,急速に普及した.しかし,新田ら385)はさらに多点

(電極数253点)でのマッピングガイドによる maze 手 術を推奨している.しかし,現実的には心房細動のマッ ピ ン グ が 可 能 な 装 置 を 有 す る 施 設 は ほ と ん ど 無 い .

Maze 手術の成否は,術直後に心房細動誘発試験を行い

心房細動が誘発されなければ成功と判断する.しかし術 後遠隔期に心房細動が再発することがあるので,判断基 準としては信憑性に乏しい.

②心房細動に対する適応 A.孤立性心房細動に対して

Bourke ら386)の報告では,孤立性心房細動に対するカ テーテルアブレーションの成功率は,発作性心房細動に

対しては73%,持続性心房細動に対しては45% である.

現在では,発作性,持続性いずれの場合もカテーテルア ブレーションは第一選択と考えられているので,カテー テルアブレーションの不成功例が手術適応になる.手術 的治療では開心術を行うので,孤立性心房細動は必ず治 療させることが要求される.従って,左房maze 手術や 外科的肺静脈隔離ではなくて,完璧なmaze 手術を行な うべきである.

B.僧帽弁膜症の心房細動に対して

弁膜症に対する手術が主であり,maze 手術は付随手 術として適応は拡大されるが,結果的に心房細動が治ら なければ無意味な処置になるので,適応は慎重に決定す べきである.左房があまり大きくない(左房径< 70

mm)場合は,全例がmaze 手術適応である.左房がさ

らに大きくても(80mm >左房径≧70mm),心機能が 良い場合はmaze 手術の適応である.しかし,低心機能 例や強度の癒着がある場合は,簡易な外科的肺静脈隔離 術も選択肢の一つである.左房が巨大な場合(左房径≧

80mm)は成功例がほとんど無いので,手術適応にはな

らない.

C.その他の心臓病に合併する心房細動に対して これらの左房は一般的に小さいので,maze 手術の成功 率は高くほとんどの症例が適応と考えられる.侵襲を少 なくしたい時は,外科的肺静脈隔離術も選択肢の一つで

ある.

③手術手技について A.Cox-maze 手術

Cox らは術式の改良を行い現在 Cox-mazeⅢが広く行

われている387).孤立性心房細動を主な対象とした成績で は98.8% の成功率であった388).また,最近では低侵襲 手術によるmaze 手術を報告している389).しかし,2000 年に行なった日本のアンケート調査390では,洞調律を 復元した率は,孤立性心房細動では55%,僧帽弁膜症 の心房細動では76% ,先天性心疾患の心房細動では91

% ,その他の心房細動では73% であった.

B.小坂井−maze 手術

1994年に小坂井ら384)は僧帽弁膜症に合併する慢性心 房細動に対してもmaze 手術が有効であることを報告し た.さらに合併手術が多かったので,4つの改良を行っ た391).改良点は,①洞機能温存のため洞結節動脈を切断 しない凍結法の多用,②心房利尿ホルモンの分泌維持の ため右心耳の完全温存と左心耳の一部温存,③僧帽弁膜 症と同時手術の場合には,拡張した左房の縮小化,④僧 帽弁の視野改善の目的で上大静脈の切断,などである.

小坂井−maze 手術では,孤立性心房細動の95%,僧帽 弁膜症の心房細動の 80%,先天性心疾患の心房細動の

92%,その他の心房細動の91% が洞調律に復した.

C.左房-maze 手術

1996年にSueda ら392)は僧帽弁膜症に合併する心房細 動に対しては,左房のみ迷路状に切開する簡便法を報告 した.成功率は86% であったが,三尖弁閉鎖不全を合 併する症例では成功率は低下した.

D.Compartment 手術

1996年に Lin ら393)が開発した術式で心房を右房,左 房,心房中隔の3つcompartment に分割する手術である.

Shyu ら394)は22例中14例(86%)において成功している.

E.Radial 手術

1999年に新田ら395)は迷路状に切開するのは非生理的 と考え,洞結節を中心に心房を放射状(radial)に切開

するradial 手術を開発した.さらに左房後壁の収縮を得

るため,個々の肺静脈を隔離し左房後壁は隔離しない.

しかし,Pappone ら396)は,心房細動の起源として肺静脈 内のみならず左房後壁も関与していると述べている点が 今後の問題である.最近の成功率は88% である.

F.肺静脈隔離手術

Jais ら397)は心房細動の起源は肺静脈内にあり,4本の 肺静脈を個別に隔離するだけで心房細動の70% が治る と報告した.Sueda ら398)は手術時に4本の肺静脈を左房 後壁を含めて隔離するだけで成功率は70% であった.

心房細動の機序を理解し忠実にmaze 手術を行なえば,

その成功率は手技の如何にかかわらずほぼ同様である.

したがって手術成績は手技による差より,マイクロリエ ントリの有無や自動能の亢進の有無などが成績への影響 因子であり,対象患者による差が大きいと考えられる.

小児の電気生理検査も基本的には成人と大差はないが,

先天性心疾患や先天性心疾患術後例が多く,また体格が 小さいことなどでカテーテルの数や太さが制限される.

小児における各不整脈についての電気生理検査,原因 不明の失神,心肺蘇生後の患者,薬物治療効果判定,外 科治療,ペースメーカ植え込み,アブレーションについ ての適応は成人における電気生理検査の適応に準ずる.

小児特有の不整脈としては,先天性完全房室ブロック,

接合部頻拍(junctional ectopic tachycardia),先天性心疾 患術後の不整脈などがある.

先天性完全房室ブロックは,ブロック部位の診断等を 目的として電気生理検査が行われるが,成人の房室ブロ ックと適応は同一である.

接合部頻拍は難治性で,高周波カテーテルアブレーシ ョンが可能な他の上室頻拍との鑑別が困難な場合には電 気生理検査の適応となる.

先 天 性 心 疾 患 に 対 す る Mastard 術 ,Senning 術 , Fontan 術などの手術後で,種々の心房頻拍を合併する場

136,151,399,400,401,402,403)や,Fallot 四徴症術後などで心室

頻拍を合併する場合に,予後の判定404,405,406,407,408,409,410), 不整脈の機序および回路を同定することにより,高周波 カテーテルアブレーションを行う目的411−427)で電気生理 検査を行う.

心腔内心電図記録,プログラム刺激による,不整脈の 誘発,房室ブロックの部位診断,洞結節機能,房室伝導 能などの評価方法は成人の場合と同じである.ただし,

5歳未満の小児では,同一静脈に合計で12F を越えるカ テーテルを挿入したり,動脈に 7F 以上のカテーテルを 挿入すると,血管閉塞の可能性が高くなるため,可及的 細いカテーテルを選択する.成人例と異なり乳幼児では 卵円孔開存の可能性があり,静脈側から左心へのアプロ ーチが容易に行えることもある.

また小児では,成人とは正常値が異なる.小児の電気 生理検査における正常値を表に示す(表30)428429.修 正洞結節回復時間は小児では275 ms 以上は異常値であ る.洞房伝導時間(Narula 法および Strauss 法)は小児

では200ms 以上は異常値である.

小児における電気生理検査の臨床的意義は,1)頻拍 性不整脈のカテーテルアブレーション治療のため頻拍を 誘発し,起源を同定する,2)失神,心停止例で心室細 動,心室頻拍などの頻脈性不整脈と失神の因果関係を推 定する,3)失神を伴う房室ブロック,洞機能不全例で 失神と徐脈性不整脈の因果関係を推定する,などである.

成人例と比較して異なる点は,心停止蘇生例で虚血性心 疾患に伴うものが非常に稀であり,心筋症,心筋炎,不 整脈に伴う例が多いこと,先天性房室ブロックでは下位 自動能が比較的しっかりしている場合があること,心房 細動が非常にまれであることなどである.

接合部頻拍の定義は,narrow QRS と房室解離を伴う 持続性頻拍であり,心室拍数は 140 〜370/分(平均 230/分)を示す.小児に多く,His 束から発生するfocal junctional tachycardia(junctional ectopic tachycardia)9)と 房 室 結 節 か ら 発 生 す る nonparoxysmal junctional tachycardia が あ る .Focal junctional tachycardia

(junctional ectopic tachycardia)には先天性のものと術後 に一過性に発生するものがあり,頻拍中に房室解離を伴 うか,稀に1:1室房伝導を認める.頻拍の機序は自動能 もしくは撃発活動であり,H 波の先行するnarrow QRS 頻拍で,電気生理検査によって,誘発停止ができない,

overdrive suppression が認められる,などの所見があれ ば確定的である9,430).一方,nonparoxysmal junctional

tachycardia はジゴキシンなどの薬剤,低カリウム血症な

4 まとめ

小児の不整脈に対する 電気生理検査

19 19

1 はじめに

電気生理検査の適応 2

3 方 法

臨床的意義 4

5 判断基準

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