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アブレーションを前提とした電気生理検査の目的2

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異常自動能や局所リエントリ(focal reentry)に基づ く頻拍においては,同心円状に拡がる興奮の中心にある 最早期興奮部位が起源部位である.最も簡便でよく行わ れる同定法は,1 本のカテーテルでマッピングを行う single-catheter 法で,心電図フィルターを介した先端電 極の単極誘導電位記録を併用する方法であり,最早期興 奮部位ではQS 型電位を呈する.2本のマッピングカテ ーテルを交互に動かしながら最早期興奮部位に迫る double-catheter 法も使用される.心室期外収縮・頻拍の 場合は,ペースマッピッングによる同定も可能である.

器質的心疾患に合併する心室頻拍や心房切開後心房頻 拍(incisional atrial tachycardia)などのマクロリエント リ頻拍の場合,発生起源部位としてリエントリ回路,と くにその緩徐伝導峡部(slow conduction isthmus)あるい は共通路(central common pathway)の同定が必要であ り,エントレインマッピング法により可能となる515).即 ち,頻拍時に 1)拡張中期電位(isolated mid-diastolic potential)が記録できる,2)同部において頻拍より短い

電気生理検査の適応 2

表 32 心臓ペースメーカ植え込みに際しての電気生理検査の適応 クラスⅠ

1.ペースメーカの機種選択やペーシングモード設定のた めに必要な場合

2.徐脈性不整脈と同時に電気生理検査が診断もしくは治 療上有用である頻脈性不整脈を合併している場合 3.徐脈,神経調節性失神,閉塞性肥大型心筋症に対する

ペーシング治療の有効性を一時的ペーシングにより評 価する必要がある場合

クラスⅡa

1.めまい,眼前暗黒感,失神などの症状があり,それが 徐脈による症状であることが強く疑われるものの,確 証がない場合

2.将来ペースメーカ植え込みが必要となる可能性が高い 進行性の疾患を有するが,現在は明らかな徐脈性不整 脈を認めない症例

クラスⅢ

1.消退が予想され,再発しないと考えられる徐脈性不整 脈

2.明らかにペースメーカ植え込み適応のない徐脈性不整 脈

3.徐脈性不整脈を認めるが,めまい,眼前暗黒感,失神 などの症状が他の疾患によることが明らかで,ペース メーカの植え込み適応のない場合

4.ペースメーカ植え込み適応となる所見が認められてお り,診断が明らかな場合における,単なる診断を目的 とした電気生理検査

アブレーションに際しての 電気生理検査

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1 はじめに

アブレーションを前提とした電気生理検査の目的

2

周期でペーシングを行うと,頻拍心電図波形・頻拍時心 内興奮順序に変化がなく頻拍周期はペーシング周期に短 縮される,3)ペーシングを停止すると,局所の復元周 期は頻拍周期に一致して頻拍が再開する.これらの concealed entrainment の所見が認められれば,緩徐伝導 峡部が同定されたことになる.

マクロリエントリ頻拍である心房切開後心房頻拍など では,興奮旋回路はdual-loop リエントリといった複雑 な興奮旋回路を呈することが一般的で,CARTO システ ムによる electro-anatomic マッピングが有用である516). 頻拍時興奮順序が赤→黄→緑→青→紫→赤のカラーグラ デイションで示され,興奮旋回路の全貌およびアブレー ションの標的部位となる緩徐伝導峡部を,心腔立体画像 上に示すことができる.

CARTO システムは陳旧性心筋梗塞に合併した,血行 動態が不安定で頻拍時のマッピングが困難な持続性心室 頻拍の起源部位同定に不可欠なデバイスである517518. 洞調律時に行うsubstrate mapping(基質マッピング)に より,低電位領域と洞調律時遅延電位記録部位を同定す る.低電位領域内の遅延電位記録部位においてペースマ ッピングを行い,頻拍心電図と一致を認めれば,興奮旋 回路の緩徐伝導峡部として同定される.

3

)アブレーション後の効果判定

頻拍発生回路の基質である異常伝導路の消失,異常興 奮発生部位の消失や隔離が確認できれば,アブレーショ ン有効と判定できる.また,誘発時に用いた時と同様の,

薬物負荷,プログラム刺激を行っても頻拍が誘発されな くなれば,原則としてアブレーション有効と判定できる.

房室結節リエントリ頻拍では,単発の房室結節エコーの 誘発はエンドポイントとしてよい.CARTO システムを 用いた場合,アブレーションのエンドポイントである,

緩徐伝導峡部上のブロックラインの形成が証明できれ ば,アブレーションが有効と判定できる.

副伝導路アブレーション後や肺静脈隔離アブレーショ ン後の確認にイソプロテレノール投与下に 20〜30 mg のアデノシン-3-リン酸(ATP)の急速静注を行い,潜 在性伝導(dormant conduction)の賦活化による再伝導 の誘発試験が行われる.不完全なアブレーションによる 伝導の再発を未然に防止するのに有用である.

以下にアブレーションの適応となる,各頻拍について 電気生理検査のポイントを述べる.

A.WPW 症候群

アブレーションを前提とした電気生理検査では,複数

副伝導路の鑑別,Mahaim 束のうちの atriofascicular

Mahaim 束の鑑別および副伝導路の位置の決定が重要で

ある.複数副伝導路の鑑別は,12誘導心電図のモニタ ー下にペーシング周期を徐々に短縮し,QRS 波形の変 化を観察する.Atrio- fascicular Mahaim 束は,順行性に 減衰伝導を有し逆行性伝導を伴わない,頻拍時右室心尖 部が最早期心室内興奮部位である,などの特徴から鑑別 が可能である.Mahaim 束アブレーションの標的部位は,

最大のMahaim 電位が記録される三尖弁輪上である.通

常のケント束の最終的な位置決めはアブレーションカテ ーテルの双極および単極誘導電位によるが,左側であれ ば冠静脈洞内に 10極多極電極を留置し,右側であれば 三尖弁輪周囲に多極電極を留置し,順伝導時ならびに逆 伝導時のフィルターを介さない単極誘導電位の記録が,

ピンポイントでの副伝導路の位置決めに役立つ.

アブレーション後の効果の判定には,減弱した副伝導 路伝導を顕在化するために心房―心室順次ないしは同時 基本ペーシング下に可能なかぎり長い連結期の心室期外 刺激を加え,逆行性副伝導路伝導の有無を検討する必要 がある.さらに心室ペーシングおよび心房ペーシング下 にイソプロテレノール点滴静注を行いながらATP 20〜

30mg を急速静注して,順行および逆行性副伝導路伝導

の顕在化を行うことも必要である.

B.房室結節リエントリ頻拍(AVNRT)

持続する頻拍を誘発すること,slow/fast 型通常型

(房室伝導をslow pathway,室房伝導をfast pathway とし て旋回する)か有意な下部共通路を伴う非通常型かの鑑 別,fast/slow 型非通常型AVNRT と緩徐伝導後中隔副 伝 導 路 を 介 す る 房 室 リ エ ン ト リ 頻 拍 (p e r m a n e n t junctional reentry tachycardia, PJRT)との鑑別,および

Koch3角起源の ATP 感受性心房頻拍などとの鑑別,な

どが電気生理検査の目的となる.

誘発が容易でない症例があるが,アブレーションの効 果判定のためにも,持続する頻拍の誘発は必須である.

誘発困難な場合,高用量のイソプロテレノール点滴静注 下,さらにはアトロピン 0.5mg 静注を加え,2連心房 早 期 刺 激 , 心 房 ・ 心 室 頻 回 刺 激 を 行 う 必 要 が あ る . Slow/slow 型非通常型AVNRT は,一見通常型AVNRT 様所見を呈し pseudo- common AVNRT とも云われる.

ただし,逆行性 slow pathway の最早期心房興奮は右房 後中隔冠静脈洞入口部において記録されることから,通 常型の逆行性 fast pathway と鑑別される.非通常型 AVNRT では下部共通路(lower common pathway)が証 明されることが多いが,心室ペーシング時のV−A 間隔

が頻拍時のH−A 間隔より,少なくとも20ms 長いこと に よ り そ の 存 在 が 示 さ れ る .Fast/slow 型 非 通 常 型

AVNRT とPJRT との鑑別は,頻拍中ヒス束興奮直後に

加えられた心室刺激による心房リセットの有無によりな さ れ , リ セ ッ ト 陽 性 で あ れ ば PJRT と 診 断 さ れ る .

AVNRT と心房頻拍とは,頻拍中の心室からのエントレ

インの有無により鑑別される.AVNRT は心室からのエ ントレインが可能であるが,心房頻拍では室房解離がみ られる.

アブレーションの標的は,原則として通常型であれば

順行性 slow pathway,非通常型であれば逆行性 slow

pathway で あ る が , エ ン ド ポ イ ン ト と し て は slow

pathway 伝導の完全消失は必要ではない.イソプロテレ

ノール投与下に誘発試験を行うと,殆どの例において slow pathway 伝導が検出され,単発の房室結節エコーが 誘発されてもエンドポイントとしてよい.

C.心房頻拍

心房頻拍に対する電気生理検査の目的は,異所性心房 頻拍,洞房リエントリ心房頻拍(SART)やKoch3角起

源ATP 感受性リエントリ心房頻拍などの局所起源心房

頻拍か,通常型心房粗動かその他のマクロリエントリ心 房頻拍かの鑑別を行い,先ず起源部位同定のための戦略 を決定することである.それに基づいて,局所起源心房 頻拍では最早期興奮部位の同定,通常型心房粗動では下 大静脈―三尖弁輪間峡部におけるconcealed entrainment 成立の確認,その他のマクロリエントリ心房頻拍では興 奮旋回路の緩徐伝導峡部の同定を行うことである.

異所性心房頻拍と局所リエントリ性心房頻拍とは,以 下の点から鑑別される.前者は持続性または反復性に出 現し,プログラム刺激では誘発されず,ATP 5〜10mg の急速静注により一過性に抑制されるのみである.いっ ぽう,局所リエントリ性心房頻拍は発作性に出現し,プ ログラム刺激により誘発が可能で,ATP 1〜5mg の急速 静注により停止が可能である135)

通常型心房粗動を除くマクロリエントリ心房頻拍にお い て は , 前 述 し た よ う に CARTO シ ス テ ム に よ る electroanatomical mapping が有用である516).開心術に伴 う心房切開線や心房カニュレーション部の瘢痕,病的な プロセスで形成された瘢痕,および解剖学的障害などの 伝導ブロック領域間に形成された緩徐伝導峡部の同定が 可能となる.リエントリ回路の緩徐伝導峡部の確認は,

拡張中期 fractionated electrogram の記録および同部での concealed entrainment の成立により可能である.

D.心房細動

肺静脈あるいは上大静脈起源トリガーによる心房細動 に対する,トリガー隔離アブレーションの有効性につい ては,既に確立されている.したがって,心房細動に対 する電気生理検査の目的は,トリガーの起源部位の同定 である.肺静脈起源が大部分であることから,3本の肺

静脈内に Lasso 型10極電極カテーテル,上大静脈内に

多極電極カテーテルを留置し電位モニター下に,息ごら え(バルサルバ手技),ATP 30mg 急速静注を行う.さ らにイソプロテレノール点滴静注下に同様のATP 急速 静注を行う.最終的には可能な限り短い周期で心房頻回 刺激を行い持続性の心房細動を誘発する.数分間持続後 電 気 的 除 細 動 を 実 施 し , 直 後 の 心 房 細 動 再 発

(immediate recurrence of atrial fibrillation,IRAF)を促し,

トリガーの起源を同定する.

E.心室頻拍

流出路起源心室頻拍およびベラパミル感受性左室起源 特発性心室頻拍(ILVT)などの特発性心室頻拍におい ては,メカニズムの解明やアプローチ法の検討が進み,

アブレーションの有効性の向上に伴い,その適応は増加 している.心筋梗塞,心筋症,心サルコイドーシス,不 整脈性右室心筋症(ARVC)などの器質的心疾患を基礎 とする心室頻拍においても,electroanatomical mapping の導入により,アブレーションの適応は拡大している.

流出路起源心室頻拍は左脚ブロック型QRS 波形と下 方軸変位を特徴とするが,12誘導心電図所見上,I 誘導 のS 波・V1〜V2間の移行帯・V1/V2の幅広いr 波は,

左冠尖アプローチを必要とし,さらにI 誘導のS 波が深

くなりV1/V2がRs 型を呈するようになれば冠尖直下の

左室流出路アプローチが必要になる.ペースマッピング,

QS 型単極誘導電位を呈する最早期興奮の記録,および 冠尖アプローチ例ではスパイク状の先行電位の記録など から,起源部位が決定される.

ベラパミル感受性左室起源特発性心室頻拍ではリエン トリ回路内緩徐伝導部位を反映する拡張期電位が左室後 中隔基部から中間部方向で記録され,同部位がアブレー ション至適部位となる.アブレーション至適部位の決定 には心室頻拍の誘発は欠かせない.イソプロテレノール 投与下の複数心室早期刺激が誘発に有用である519)

器質的心疾患を基礎とする心室頻拍のアブレーション においては,リエントリ回路の共通路となる緩徐伝導峡 部を同定する,エントレインマッピング法が行われる515). 前述したように,頻拍時に拡張中期電位(isolated mid-diastolic potential)記録部においてペーシングを行うと

ドキュメント内 ”R„ûflÇ-Œ{ŁÒ-01 (ページ 52-56)

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