• 検索結果がありません。

甲唄単位/記号によって

ドキュメント内 子どもの絵の記号学的考察 (ページ 72-97)

第3章 子どもの絵の記号学的考察

J. 甲唄単位/記号によって

       構成された「文」

テクスト/文によって構成された

      された「文章」など        「水!」と一つの「語」で

号/語」でも、また「統辞的単位/文」でも、さらにその複合体である

「テクスト/文章」においてもと、先の頁に示したような、三つの異る レベルで表わされるのである。

 そしてF記号の体系としてのr言語」を見ていると、そのコードの拘 束力は、 「記号(語)」のレベルから「統辞的単位(文)」、そして

「テクスト」と階層を昇っていくほど低くなる。(そして、それに比例 してく主体〉の営みの余地が拡がっていく。)』aという指摘には注目 すべきものがあろう。

[メッセージの統辞様式/線状性]

 それでは通常、メッセージの構成単位となる記号は、どのような早期 によって構成される「統辞の様式」を持っているのであろうか。

 こうした疑問に対しソシュールは「一般言語学講義」の中のく記号の 理論〉、その第二原理としてr記号表現の線状性(線条性)』という解 答を用意している。

 それは記号と記号の配列が、話したり聞いたりする場合でも、書いた り読んだりする場合でも、それらは常に一列に並べられ、時間の流れに 沿って行われている。

 言語のこうした性質をソシュールは「線状性」と名づけ、 r言語のす べての機構は、この原理に依存している』と述べている。

 このように「言語の統辞様式」は、「記号」が一列に並び、時間軸に 沿って意味内容が継起する「線状性」においてなされていると言えるの である。 そしてこの「線状性」は、それぞれの言語がもつ固右の「文 法」によって具体化され、メッセージに実現されているのである。

[言語のメッセージの特徴/恣意性]

 さてこれまで、言語の「記号学的構造」とその「統辞の様式」につい

7 1

て一通り見てきたが、さらにここで言語記号やそのメッセージの特徴に ついてまとめて確認しておくおくことは、後に絵の記号とそのメッセー ジとを比較検討することになる私達にとっては、ぜひ必要なものとなる

であろう。

 言語記号の体系がもつ最大の特徴は、ソシュールが「記号の理論」で 第一原理としてあげた「記号の恣意性」にある。このことについてはす でに第1章の「記号の分類」で多少ふれてあるが、それらを補足しなが

らもう一一度確認しておきたい。

 西欧ではよく「法」は「天秤」によって「象徴」され表わされるとい う。このとき「法」という「記号内容」は「天秤」という「記号表現」

によって「象徴」されている。この記号内容と記号表現の結びつきを考 えると、私たち日本人にも分りやすい目然な結びつきを持っている。

 つまり、 rその内容と表現の間には、自然的な絆の痕跡がある。法の 象徴である天秤に、何をもって代えてもかまわない、例えば馬車などで 代えてもよいというわけにはいくまい。』5というように、 「象徴」は 両者の結びつきが右縁的であるが、言語の場合はそれが無縁的であり

r記号表現は記号内容との関係において恣意的だということ、その二つ の間には、現実的には一切の自然的結びつきが存在しない』ということ

である。

 それは、日本語ならば「馬」という実体を[う/ま]という「音」の 連続で表わすが、英語では[ホ/一/ス]と表わす。また他に[エ/ク

/ウ/ス]と表わしたとしても、さらにはどのような「音」の連続で表 わしたとしてもても「馬」という実体には変りはない。このとき「馬」

という実体とそれぞれを表わす「音」の連続との間には、いかなる自然 的結びつきも見出せない。この意味でこそ言語は恣意的であると言われ

るのである。

 またこの恣意性は、個人が勝手に記号を用いたり、あるいは自由に創 り出すことを意味するものではない。記号の記号内容と記号表現の関係 が純粋に偶然的であるということであり、 rそれを使う言語共同体との 関係においては、逆に自由ではなく義務づけられている』制度として存 在しているのである。

 だからrかりに望んだにせよ、個人が、すでに選ばれたものを、どの ような点であれ変更することが不可能だというばかりか、大衆自身とい えども、たった一語の上にさえその最高権をふるうわけにはいかない。

大衆は、あるがままの言語に縛りつけられているのである。』6という ことになるのである。

[言語記号/学習による記号の体系]

 前述してきたように、言語記号の「恣意性」は、一切が学習されなく てはならない。子どもの認識発達を、記号という観点から研究したピァ ジェも、言語を「集団的記号」として、思考や認識・表現や伝達のため に社会で共通に使用されるものとし、学習によって獲得される記号の体 系であるとしたが、それもこの言語の恣意的な性格によるものなのであ

る。

 このことを日本語にみるならば、日本語を形成する言語音には「あ・

い・う・え・お」など46の清音と、「が・ぎ・ぐ・げ・ご」など20 の濁音、また5つの半濁音「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぼ」、さらには「きゃ・

きゆ・きょ」など50の拗音を加えた合計121の言語音(音素/記号

素)が存在する。

 単独では意味をもたないこれらの言語音も、組み合せ寒しだいで意味 をもつ。日本に生れた子どもたちは、121の音声形態とそれらの連続

73

音をその聴覚で聞き分け、弁別できるように訓練されながらその意味を 学習し、また自らも意味のある約束された連続音が発音できるように訓 練するのである。

 そして、この意味のある決められた連続音である「語」は、日本語の 体系がもつ「辞書」として存在しており、またそれらは日本語固右の

「文法」によって規則的に、また「線状的」に配列され、メッセージと なることが出来るのである。

 日本語を使用するためには、こうした「辞書」と「文法」という日本 語のコードを所右しなければならないのである。

 以上のように、言語記号やそのメッセージの特徴は「言語の恣意性」

という性質から、 「集団的記号」の諸コードとして学習によって修得さ れるものなのである。

 またその言語共同体が、共通した「辞書」と「文法」というコードを もっていることから、きわめて安定した意味作用をもつことができると 言えるのである。

2 絵のメッセージ 一記号学的構造一

 ここでは、子どもたちの絵によるメッセージの構造を、その記号学的 単位とともに「子どもの絵」の中に見出そうと試みるわけであるが、ま ずその対象となる「子どもの絵」というものについて、それをどのよう に捉えるかという問題がある。 r絵は、人間がみずからの感性でとらえ た対象を、明暗・遠近など、さまざまな造形感覚をもとに、二次元の世 界に表現したものである。絵を描くということは、写真とは異り、人間 の視知覚の法則をくぐらせ、それに思考・美意識・想像力などのはたら きが加わり、さらには手の運動機能の要因などがからみあって完成する 非常に人間的な表現活動である。』7と、佐々太は「子どもの絵Sにつ いて説明する。 そして絵は、言葉や数のように論理的・抽象的にまと め上げられた伝達手段ではなく、形象を通して伝えるゆえに、見る場合 でも、描く場合であっても具体的であり感性的であるとして、絵がもつ 二つの側面に注意しなければならないと、次のように述べる。

 r絵は、形象性と具体性をもつゆえに、言語発達の未熟な子どもにも わかりやすいという場合の絵と、もう一つはことばではとうてい表現で きぬゆえに絵にするといった場合の芸術作品としての絵画がある。もち ろん、この二つの側面は、複雑にからみあい明確に区別できるわけでは

ない。』

 こうした「二つの側面」は、絵の表現形式それ自体がもっている特質 であり不可分で分かちがたいものであるが、ここで「子どもの絵」を対 象とする私たちにとっては、主として前者の絵の概念が中心となること はやむをえないことであろう。

 また、具体的な資料として検討することになる「子どもの絵」も、幼

75

児から小学生(低学年)までを対象にしたものであること、をあらかじ め明らかにしておきたい。

 さて、池上がr記号現象一般についての体系的な研究に対して、理論 的な基礎を提供するものとして期待される』とした「言語についての理 論」は、 「実質」を異にする絵の記号体系に、具体的にはどのように適 用されるものであろうか。それをムーナンは次のように示唆している。

 r絵などがメッセージをなしているとすれば、そのメッセージを構成 する単位というものがあるのか、それはいかなる単位か、それがいかな

る規剣によリメッセージを構成するかを探求すべきであろう。』

 こうした指摘にしたがい、先に明らかにしたところの「言語の記号学 的構造」を一つの分析モデルとして、比較検討していくことになるだろ

うが、それにしても 「絵」という表現の形式が、言語のような「音

(記号素)」、 「語(記号)」、 「文(統辞的単位)」、さらに「文章

(テクスト)」といった分節的構造を持つものであろうか。

 絵における「表意単位」としての「記号」とは、一体何であるのだろ うか。また、「音」にあたる「弁別単位」としての「記号素」は存在す るのか。さらに「統辞的単位」としての「文」や、文によって複合的に 構成される「文章」としての「テクスト」は、どのように区別され抽出

されうるであろうか… ・。

 しかし、私たちはこうした一つ一つの問題を具体的に探究していく中 からしか、 「絵のメッセージを構成する単位」や、その「統辞の様式」

さらには「絵の記号によるメッセージの特徴」を解明することができな いのである。

ドキュメント内 子どもの絵の記号学的考察 (ページ 72-97)

関連したドキュメント