第 3 章 調査対象としての情報サービス産業・コンシューマゲーム産業
2. 産業内多角化の調査対象としてのコンシューマゲーム産業
2.3. 産業内多角化の調査対象としてのコンシューマゲーム産業
このように、マルチ・プラットフォーム戦略の採用と外部デベロッパーや外部キャラク ターの活用という外部資源の積極的な活用がコンシューマゲーム産業の大きな特徴である と言える。
の開発を自社のみで行うことは困難であり、外部デベロッパーを活用している企業が大半 である。企業はそれぞれ得意な資源・能力が異なるため、それらを補完的に組み合わせる ことで、より価値を高めることができるとされている(Harrison, Hitt, Hoskisson, and Ireland,
2001)。そのため、企業は外部デベロッパーの利用に必要な価格を支払っても、それ以上の
価値を創造することができるのである(Conner, 1991; Lippman and Rumelt, 2003)。
第五章では、コンシューマゲーム産業のプラットフォームビジネスという産業特性と外 部デベロッパーという外部資源の活用に焦点を当て、組織外の資源が産業内多角化と業績 の関係性に与える影響を分析する。
最後に、第六章ではコンシューマゲーム産業において、組織内外の資源の産業内多角化 と業績への関係性に資源の利用経験が与える影響を分析する。
既存研究では、資源・能力はただ存在すればよいのではなく、それらを適切に活用でき ない場合には、価値を生み出すことができないとしており(Penrose, 1959)、資源を適切に運 用するための資源配分の重要性も主張している。資源は企業利益の源泉であり、能力は組 織の人材と資源を結びつける複雑なパターンを意味する(Grant, 1991)。また、多角化戦略に よる価値創造は、企業の特異な資源とそれをコントロールできる能力に左右されるとして
いる(Mackey et al, 2017)。何故なら、企業は資源を異なる環境に適応させる能力がなけれ
ば、範囲の経済の恩恵を享受することができないからである。そのため、資源と能力の適 切な組み合わせが重要なのである。
このような資源と能力の組み合わせの重要性は産業内多角化研究でも言及されている。
Wu(2013)の研究では、企業の能力をスケールフリーな能力(例えば、知識、ブランド、企業 の評判など)とノンスケールフリーな能力(例えば、効果的な製品開発チーム、経営管理能 力など)とに区別し、産業内多角化に与える影響について分析を行っている。スケールフリ ーな能力が複数の市場で同時に使用しても問題ないのに対し、ノンスケールフリーな能力 は同時に利用することができないため、市場の変化に応じて、組織内で配分する必要があ るとしている(Capron, 1999; Helfat and Eisenhardt, 2004)。特に、類似性の高い製品・分野へ の多角化である産業内多角化では、製品間での資源の配分の機会はより多くなるため (Jones and Hill, 1988)、資源配分が重要であると指摘している。
(3)に関して、これをコンシューマゲーム産業に当てはめた場合、内外企業の持つキャラ クターを資源、開発チームは資源を活用する能力であると言える。Wu(2013)の研究では、
あくまで企業の能力をスケールフリーとノンスケールフリーに分けて、それぞれの単独の
業績への効果についてしか言及されていないが、ゲームソフトを開発する際、キャラクタ ー資源と開発チームは当然、同時的に使用される。そのため、両社は相互に強く影響を与 えていると推測されるため、これらの相互作用の影響は無視できないものである。特にコ ンシューマゲーム産業はクリエイティブ産業であるため、価格よりも製品の質自体が業績 に大きく影響を与える。キャラクター資源を活用する際には、そのキャラクターに対する 深い理解・知識がない場合、顧客が求めるクオリティを提供できない可能性が高い。その ため、開発チームのキャラクター資源に対する理解・知識は業績に大きな影響を与えると 推測される。
第六章では産業内多角化と業績に内外の資源が与えるモデレート効果を分析するだけで なく、その資源の利用経験がモデレート効果に及ぼす影響を分析することで、産業内多角 化研究を推進する。