第 3 章 調査対象としての情報サービス産業・コンシューマゲーム産業
2. 産業内多角化の調査対象としてのコンシューマゲーム産業
2.1. コンシューマゲーム産業の概要
オンライン PCオンラインゲーム
モバイル
携帯電話 (フィーチャ ーフォン)
フィーチャーフォン (iモー ド、EZweb、Yahoo!ケータイ)
・アプリゲーム
・フィーチャーフォン 向 け ソ ー シ ャ ル ゲ ーム
モバイルゲーム スマートフ
ォン
・iPhone (Apple)
・Android端末(携帯各社) ・スマートフォン向け ソーシャルゲーム
・スマートフォンゲー ム
タブレット 端末
・iPad (Apple)
・Androidタブレット (Google)
・Kindle Fire (Amazon)他
アーケード アーケードゲーム
出所:みずほ銀行産業調査部(2014, p.112)より筆者作成
※太枠内が本研究の調査対象
コンシューマゲーム産業では、ハードウェア(以下、ハード)の販売台数・ゲームソフト の販売台数が伸び悩んでおり、2016年の販売本数はハード・ゲームソフト共に2008年の 約半数にまで落ち込んでいる(図3-3参照)。これは、ゲームソフトの開発費の高騰や技術 の高度化に伴う一作品当たりの製作にかかる時間の増加や、スマートフォン向けのゲーム 市場の拡大などが要因とされている。そのため、近年多くの企業ではマルチ・プラットフ ォーム戦略を採用している。マルチ・プラットフォーム戦略とは、企業が自社の製品を単 一のプラットフォームではなく、複数のプラットフォームで開発・販売を行うことを指 す。複数のプラットフォームに製品を提供することで、企業はプラットフォーム自体が消 失した時のリスクの分散や、顧客との接触の機会を増やすことによる販売機会の増加など の恩恵を得ることができるのである。実際に、プラットフォームに関する既存研究におい て、複数プラットフォームにまたがることの優位性を主張しているものも存在する(Hagiu
and Yoffie, 2009)。2000年以前まではコンシューマゲーム産業では、単一のプラットフォー
ムでゲームソフトを販売するのが主流であったが、図3-4にあるように、近年ではマル
チ・プラットフォームでの販売比率が徐々に増加しており、2016年には販売されたゲーム ソフトの4割以上がマルチ・プラットフォームで販売された作品となっている。
図3-3:コンシューマゲーム産業における新品ハード・ゲームソフト販売数の推移
出所:メディアクリエイト(2017)より筆者作成
図3-4:マルチプラットフォームタイトルの販売比率推移
出所:メディアクリエイト(2011, 2015, 2016)より筆者作成
※2011年のみデータが欠落しているため除外
ゲームソフトの開発に当たり、コンシューマゲーム産業では、3つの主要なプレイヤー が存在する。プラットフォームホルダー(ハードウェア会社)、パブリッシャー(販売会 社)12、デベロッパー(開発会社)13である。コンシューマゲーム産業において最も中心的な役 割を果たすプラットフォームホルダーは、上記の据え置き型ゲーム機や携帯型ゲーム機な どのハードウェアを製作している企業であり、コンシューマゲーム産業では主に、任天 堂、ソニー・コンピュータ・エンタテインメント・マイクロソフトの3社のことを指す。
これらのハードウェアを製作している企業とライセンス契約を結んでゲームを開発する企 業はサードパーティー14と呼ばれる。さらに、サードパーティーの中で販売・広告などを
12 パブリッシャー(販売会社)は、「ゲームのマーケティングや広告等の販売戦略を担当 し、在庫に対するリスクを負って責任を持って自社のブランドで販売する企業」と定義さ れる(みずほ銀行産業調査部, 2014)。
13 デベロッパー(開発会社)は、「他社からの開発委託に基づいて、開発を行う企業」と 定義される(半澤, 2016)。
14 「サードパーティー」とは、他社のOS や機器などに対応する製品を作っているメーカ
行う企業をパブリッシャーと呼び、ゲームソフトの企画・開発のみを行う企業をデベロッ パーと大別することができる。ただし、パブリッシャーはデベロッパーの機能も有してい る場合がほとんどであり、自社でのゲームソフトの開発・販売と同時に、外部のデベロッ パーが開発したゲームソフトの販売も行っている15。図3-5は、プラットフォームホルダ ー、パブリッシャー、デベロッパーを含むコンシューマゲーム産業におけるゲームソフト の一般的な流通の流れを表している。元々、パブリッシャーはプラットフォームホルダー に対してゲームソフトをカセットやCD形式などの生産依頼をかけて製造・販売を行って いたが、近年ではパブリッシャーが直接製品を小売店に卸す場合やインターネットを通じ てソフトをダウンロード販売するなど必ずしもプラットフォームホルダーを介在する必要 がなくなってきている。
このように、「製品・サービスをプラットフォーム事業者が提供し、それを前提とした 補完的な製品・サービスを提供する構造」(富士通総研経済研究所, 2013)は「基盤型プラッ トフォーム」と呼ばれ、ユーザーがプラットフォームと補完製品の取引をそれぞれ別々に 行うことが特徴である。
ーの総称。ゲーム業界におけるサードパーティーは、ゲームソフトの販売・開発を行って いるソフトウェア企業を指す。
15 観測期間中、55.8%のゲームソフトは外部デベロッパーが開発している。
図3-5:コンシューマゲーム産業におけるゲームソフト流通の流れ
出所:コンピュータエンターテインメント協会(2014)より筆者作成
※パブリッシャーがデベロッパーの機能を果たすことや、プラットフォームホルダーがパ ブリッシャーとデベロッパーの機能を果たすこともある16。