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生物防除の今後

ドキュメント内 バイオコントロール原稿 (ページ 53-60)

ブラジルの大豆面積は 2 千万ヘクタール。ウイルス製剤は最大その10%まで 使われたが、現在は 5%の面積で使用されている。30 トンの冷凍昆虫を利用。

6. 生物防除の今後

社会は環境に優しい病害虫防除を要求している。

Society claims for ecologically sound management tools.

世界の天敵生物はまだ十分に研究、開発されていない。

Diversity of Natural enemies was not fully explointed yet.

保全的生物防除:まだ幼児期にある。研究領域は広い。

農薬は今後も使われるが、削減の傾向は続く。

散布回数、投与量。代替方法の模索も続くであろう。

化学農薬も含めた全体的な植物保護システムの統合を図る必要がある。

生物防除に関わる研究者、教育者、学生、生産者の増加が必要。

生物防除に関する法律、規制などは、これまでの化学農薬の規制と同じではなく むしろ進めていく方向に政府は転換するべき。

生物防除資材の品質管理は必要。

協力:筑波大学、東京農工大学 その他関係研究機関など。

2010

年春来日。

(翻訳および文責 和田哲夫 ジャパンアイピーエムシステム)

天敵利用研究家 和田哲夫

日本における天敵昆虫の登録要件については、1990年代初頭より、明確なガイドラ インがなく、民間より化学農薬のガイドラインを参考にガイドライン案などを自主的に提 出してきた。

農水省の研究者と日本植物防疫協会の専門家などと、相談しながら、それぞれの天敵種に ついての使用方法などについて、協議を重ねたのは記憶に新しい。

当時はオランダ産の天敵昆虫で日本にとっては、外来種(exotic insect)であるオンシ ツコナジラミとチリカブリダニ、コレマンアブラバチ、ククメリスカブリダニが登録対象 であった。オランダ産と言っても、チリカブリダニは地中海沿岸が原産地であり、他の天 敵にしてもかならずしもオランダ原産というわけでもなかった。

オンシツコナジラミは九州大学の梶田先生、チリカブリダニは森鷗外の孫としても知ら れていた森ハンス教授らの研究と導入の蓄積があり、日本においては、登録なしで各地の 試験場や農家で使用されていたのである。静岡県の試験場では、チリカブリダニが、三重 県の旧野菜茶業試験場では、オンシツツヤコバチが増殖されていたのを見たことがある。

これらは、農水省の補助金などで行われきたため、特例として、登録なしで利用できたの である。鹿児島県でのチャハマキ防除用のハマキ天敵が登録なくして地元農協で増殖され、

広い面積で使用されてきたのと同様である。

天敵昆虫の登録要件のなかでもっとも障害となったのは、生物効果試験の実施であった。

化学農薬と同様に作物毎、対象害虫ごとに6例づつ試験をする必要があった。現在のコ ストは1試験33万円程度で、化学農薬の試験のコストより高い。各国政府が生物農薬の 普及を促進するため、登録コストを下げるようにしているのとは対照的である。

コストもさることながら、当時は天敵昆虫の試験をしてくれる試験場の研究者の数が圧 倒的に少なく、また経験もない方も多く、試験の実施が困難であり、とても2年間で有効 例6データを積み上げることはできなかった。このため有効な生物効果データ6例を得る までに3-4年もかかってしまった。実際にこれらの試験場で実施した試験が、現場の農 家のハウスでも再現が可能であったかといえば、ハウスの大きさ、温度条件などにより、

再現性は極めてひくかったのである。

在来種天敵の農薬としての登録は不必要

現場での指導はまた別物であり、技術情報はもっぱらオランダからのノウハウであっ た。またこれらの天敵を触ったことのある県の技術者たちの助言もきわめて有効であった。

現場では、成功例より失敗例が多く、これは初期の天敵類の使い勝手の悪さに起因する ものが多かった。環境条件をととのえ、放飼タイミングがベストであったとしても、また 別の理由により効果のでないこともしばしばであったのである。このため、この時期に天 敵利用を見限った農家も多かったのである。しかし中には、研究熱心な農家、研究者、普 及員、流通の方々の努力により、成功例もだんだんと増加してきた。

効果試験に年数がかかりすぎて、防除のタイミングを失うという悲喜劇もあった。

ハモグリバエの天敵ハモグリコマユバチ、イサエアヒメコバチでの例がそうである。

開発試験をしている間は、トマトなどでのハモグリに被害は甚大であった、4年程度経過 して、いざ登録がおりた時点では、すでにハモグリバエの被害はなくなっていたのである。

たぶん国産天敵の捕食、寄生により、ハモグリの密度が激減したのだった。

このように、天敵利用においては、問題害虫に対するスピーディな対応がもとめられる。

日本産の在来種天敵とは、日本原産で生息する在来種の天敵類のことであるが、外来種 が定着した種はとりあえず除外する。

在来種天敵で以前から利用が期待されていた種はたとえば、フツウカブリダニ、ケナガ カブリダニ(茶)、ニセラーゴカブリダニ(果樹)、多くのツヤコバチ、サシガメ(鱗翅目 捕食者)ヒメオオメカメムシ(捕食者)など多くの種が天敵昆虫として期待されていた。

近年では、クロヒョウタンおよびタバコカスミカメ(温室)やキイカブリダニ、ミドリ カスミカメ、カタグロミドリカスミカメ(飛来天敵:水稲)など重要で、もし使えるよう になれば、日本作物保護が大きくかわる可能性のある天敵昆虫が目白押しである。

海外では原則、EUでも米国でも天敵昆虫に登録は必要がない。日本の昆虫学者はせっ かくの研究成果を実現できない状況である。また日本が生物防除をリードする国としても、

日本の在来種天敵については、すくなくとも生物効果試験の除外を早急に実施すべきと考 えます。

天敵増殖会社が困難な増殖に注力することができるようになるように、また小さな会社で

も天敵防除に参加できるようにするためにはどうしても必要な改善でありましょう。

ヴィレム・ラーフェンスベルグ

Ph.D.

Koppert Biological Systems

はじめに

病害虫防除に影響をあたえるファクターはさまざまであるが、生物防除、

IPM

に おいては法令、環境および食品安全性についての懸念などがあげられる。各国の政策 が直接、間接に植物保護に影響を与えている。

生物防除を阻害するファクター

政策

既存の化学農薬が微生物農薬より価格が安いかぎり、植物保護において化学農薬が マジョリティを占め続けるであろう。しかしながらよく知られているように化学合成 農薬には、隠れた環境コストが存在しているのである。

微生物農薬には化学農薬のような環境コストは存在しない。政府による微生物農薬 利用を促進するような政策がうちだされなければ、いつまでもこの状況は変わらない であろう。

生物多様性条約における発展途上国と先進国間での資源利益配分ルールは生物防 除への阻害要因となりうる。

2010

10

月の名古屋議定書が批准されれば、関係国の 間での契約が必要となってくる。政府間の現実的な取り組みがなければ持続可能な病 害虫防除を継続することが困難になるであろう。

社会および市場からのネガティブファクター

天敵昆虫や微生物農薬が広汎に使用されると、昆虫およびカビという一般大衆から は否定的に受け取られていることによるリスクが生ずる可能性がある。情報を十分に 社会に流すことでこのような嫌悪感を払しょくすることが可能であろう。

化学農薬というひとつの方向からだけの技術に頼るのではなく、生物農薬を

IPM

のなかでの中心素材として組み入れるべきである。それらは化学農薬の代用としてで はなく、また化学農薬と競合するものとして期待されるものではないのである。

生産者も防除パターンを変えるべきであり、総合的に防除を考えるべきなのである。

生産者が生物防除に切り替えるためには、コストのカバーと技術力の蓄積が必要であ

潮流は生物農薬の利用の方向に向かっているか?

る。このためには、消費者は生物防除を支援するためのコストを相応に負担しなけれ ばならない。持続的農業を希望するならば。

侵入病害虫

気候変動と貿易の増加により病害虫が世界的に伝播しつつある。このために化学農 薬を多用することが生物防除、IPM を阻害している。

生物防除を促進するファクター

社会、市場からのポジティブファクター

環境保護グループや消費者団体は生鮮食品における化学農薬の残留量を減らすよ うスーパーマーケットや生産グループに強く要望しつづけている。結果として、多く のスーパーマーケットは各国政府が規定する水準以下に残留量を減らすようガイド ラインを設定している。また使用される化学農薬の原体数(種類数)自体を減少する べく指導している。

G-GAP グローバルギャップというスーパーマーケットと出荷グループによって

構成された世界的な機関は、IPM の利用を含めた多くの「義務」を設定している。

このスーパーマーケットによる運動は化学農薬を減らす重要なドライビングフォー ス(牽引力)となっている。生物防除はこのギャップを埋めることができる。

科学技術的ファクター

近年既知の微生物殺虫剤について新たな利用方法が提唱されてきている。例えば、

植物病原菌に対するアンタゴニスト、センチュウ防除、害虫に対するエンドファイト、

植物成長促進などへの用途としてである。

いくつかの病害防除用の微生物剤は植食性昆虫に対する植物の防御システムのト リッガーとなることも知られてきている。

数種類の微生物殺虫剤のハイブリダイゼイションにより、対象害虫の拡大が可能と なる。

メタリジウム・アニソプリエ菌では、土壌害虫防除の効果をあげる

microsclerotia

を生産するストレインの増殖方法が発見されている。また

BT

剤のシネルギスト(効 果を上げる物質)としてある種のタンパクが発見されておりスペクトラムの拡大に貢 献する可能性がある。

遺伝子工学も重要な分野であるが、本稿では省略する。

各国政府の環境の変化

微生物農薬の登録のハードルはいまだに高いといわざるを得ない。これは化学農薬

ドキュメント内 バイオコントロール原稿 (ページ 53-60)