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2.6.6 毒性試験の概要文

2.6.6.6 生殖発生毒性試験

2.6.6.6 生殖発生毒性試験

サキサグリプチンについて標準的な一連の生殖毒性試験を実施した。それらには,雌雄のラッ トにおける受胎能及び初期胚発生経口投与試験,ラット及びウサギにおける胚・胎児発生経口投与 試験,ラットにおける出生前後発生経口投与試験が含まれる。

2.6.6.6.1 ラット受胎能及び初期胚発生に関する試験(GLP適用)

(概要表2.6.7.12.1,報告書番号019467) サキサグリプチンフリー体を酸性水に溶解し,雄は100,200,400 mg/kg/日の用量で,雌は125, 300,750 mg/kgの用量で,各群25匹ずつのCrl:SDラットに強制経口投与した。雌雄各25匹から なる対照群には,水を5 mL/kg(雄)又は10 mL/kg(雌)投与した。2週間の投与後,投与した雌 は無処置の雄と交配させ,雌の投与は妊娠7日(GD 7)まで継続した。雌はGD 15に帝王切開し た。雄の投与は無処置の雌と同居させる 2週間前から開始し,計画屠殺の前日まで継続した(29 日~32日間)。雌雄について,生存,臨床観察,体重,摂餌量,交配及び受胎能,剖検について 評価を実施した。雌については性周期,GD 15における胚の数及び生命状態を含む母動物の子宮 内内容物の評価を実施した。10日間の投与後におけるサキサグリプチン及びBMS-510849の血漿 中濃度データは別のトキシコキネティクス試験(第2.6.6.6.3.1項)で得た。

サキサグリプチン及び BMS-510849の全身暴露はすべての用量において,その用量に比例して 増加した(第2.6.6.6.3.1項)。AUC値の比較において,雌雄ともBMS-510849の暴露はサキサグ リプチンの暴露より低かった(0.14倍~0.32倍)。

サキサグリプチンは雌雄すべての群において用量依存的変化をもたらした。雄においては,臨 床症状として100 mg/kg/日以上で口周囲及び/又は鼻周囲の汚れ,400 mg/kg/日では尿による被毛の 汚れ,活動性低下,虚脱,死亡(初回投与の2時間以内に2匹)がみられた。100 mg/kg/日以上で は,体重の減少が投与第1週に,200及び400 mg/kg/日では投与第2週に体重増加の抑制がみられ た。更に雄において,200及び400 mg/kg/日では低頻度ではあったが肉眼的に脾臓の大型化が,400

mg/kg/日では摂餌量の減少もみられた。

100及び200 mg/kg/日の雄において,生殖器官の重量及び生殖機能(交配,受胎能,初期胚発生)

にサキサグリプチンの影響はみられなかった。雄でみられた生殖能への影響は,明らかな毒性及 び死亡がみられた400 mg/kg/日での受胎率低下のみであった。

雌においては,臨床症状としてすべての用量群で口周囲及び/又は鼻周囲の汚れ,125 mg/kg/日 以上で尿による被毛の汚れ,300及び750 mg/kg/日で糞量の減少,750 mg/kg/日で眼周囲の汚れ,

身づくろいされない被毛,及び死亡(5日~32日間の投与後に12匹の雌が死亡)がみられた。母 動物の体重増加量の減少が,125及び300 mg/kg/日ではGD 0~GD 4にかけて,750 mg/kg/日では 妊娠期間すべてにおいてみられた。更に,300及び750 mg/kg/日の雌では脾臓の肉眼的大型化がみ られ(それぞれ10匹と15匹),750 mg/kg/日の少数例では斑点,変色及び/又は形態の変化も伴 っていた。

125 mg/kg/日の雌においてはその生殖機能にサキサグリプチンの影響はみられなかった。300及

び750 mg/kg/日では,胚死亡の増加及び胎児数の減少がみられた。750 mg/kg/日では,更に性周期

変化(発情期平均日数の延長及び発情前期平均日数の短縮),受胎率,黄体数及び着床数の低下

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がみられた。

結論として,サキサグリプチンは雌雄とも用量依存的な臨床的毒性をもたらしたが,生殖機能 への影響は雄では400 mg/kg/日でのみ(受胎率低下),雌では300 mg/kg/日以上でみられた(胚死 亡の増加,750 mg/kg/日では性周期,受胎率,黄体数及び着床に影響を及ぼした)。したがって,

サキサグリプチンは明らかな毒性をもたらす用量においてのみラットの生殖機能に影響を及ぼし た。生殖機能に関する無作用量は,雄では200 mg/kg/日(サキサグリプチン及びBMS-510849の 全身暴露AUCは48899 ng⋅h/mL及び14227 ng⋅h/mL),雌では125 mg/kg/日(サキサグリプチン及 びBMS-510849の全身暴露AUCは62833 ng⋅h/mL及び9951 ng⋅h/mL)であった。

2.6.6.6.2 胚及び胎児発生に関する試験(GLP適用,一部非適用)

2.6.6.6.2.1 ラット胚・胎児発生毒性試験

(1) 妊娠ラット10日間用量設定試験(GLP非適用)

(概要表2.6.7.11,報告書番号019468)

サキサグリプチン安息香酸塩を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,600,900,1200 mg/kg/日 の投与量で,交配した雌のCrl:SDラット(各群8匹)の妊娠6日(GD 6)~15日(GD 15)に強 制経口投与した。対照群として,交配した雌8匹に媒体1.25%Avicel®を20 mL/kg投与した。母動 物の生存,臨床観察,体重,摂餌量,剖検,GD20での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児 の観察,胎児の肉眼的外形検査によって評価を実施した。

すべての投与群においてサキサグリプチンは母動物に毒性をもたらしたが,薬物に関連した胎 児の変化は1200 mg/kg/日でのみ発生した。すべての投与群においてその投与期間中に,母動物に 尿による被毛の汚れ,体重増加量の低下がみられた。更に,900及び1200 mg/kg/日では過剰な流 涎がみられた。1200 mg/kg/日では吸収胚の増加及び胎児体重の減少がみられた。

結論として,サキサグリプチンは1200 mg/kg/日の母動物毒性用量においてのみ胎児に影響を及 ぼした。

(2) ラット胚・胎児発生毒性試験(GLP適用)

(概要表2.6.7.13.1,報告書番号019469) サキサグリプチン安息香酸塩を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,64,240,900 mg/kg/日の 投与量で,交配した雌のCrl:SDラット(各群22匹)の妊娠6日(GD 6)~15日(GD 15)に強 制経口投与した。対照群として,交配した雌22匹に媒体1.25%Avicel®を15 mL/kg投与した。母 動物の生存,臨床観察,体重,摂餌量,剖検,GD20での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎 児の観察,胎児の肉眼的外形,内臓,骨格検査によって評価を実施した。10日間(GD 6~15)の 投与後におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度データは別のトキシコキネティ クス試験(第2.6.6.6.3.1項)で得た。

妊娠ラットにおけるAUCを基としたサキサグリプチン及びBMS-510849の全身暴露は,すべて の用量においてその用量の増加よりも大きく増加した(第 2.6.6.6.3.1 項)。BMS-510849 の暴露

(AUC)はサキサグリプチンの暴露より低かった(0.22倍~0.27倍)。

64及び240 mg/kg/日の母動物及び64 mg/kg/日の胎児に薬物に関連した異常はみられなかった。

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900 mg/kg/日では,1例(不妊動物)が推定妊娠11日目にサキサグリプチンにより死亡し,母動

物体重増加の抑制がGD 6~12に,臨床症状(尿による被毛の汚れ,口周囲の汚れ)がみられた。

胎児において,240及び900 mg/kg/日では骨盤の骨化遅延,900 mg/kg/日で胎児体重の減少(対照 群より7%減少)がみられた。

結論として,サキサグリプチンはいずれの用量においても催奇形性はなく,胎児の発達遅延(ご く軽度な骨化遅延及び/又は胎児体重の減少)が240及び900 mg/kg/日(母動物のサキサグリプチ ン全身暴露AUCは121774及び646843 ng⋅h/mL)でみられ,900 mg/kg/日において母動物毒性がみ られた。すなわち,サキサグリプチンは母動物毒性を起こさなかった用量において胎児発達を遅 延させた。胎児に対する無作用量は64 mg/kg/日(サキサグリプチン及びBMS-510849の母動物全 身暴露AUCは23610及び6384 ng⋅h/mL)であった。

2.6.6.6.2.2 ウサギ胚・胎児発生毒性試験

(1) 妊娠ウサギ13日間投与用量設定試験(GLP非適用)

(概要表2.6.7.11,報告書番号019470) サキサグリプチン安息香酸塩を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,25,50,100,200 mg/kg/

日の投与量で,交配した雌のNew Zealand White(NZW)ウサギ(各群6匹)の妊娠7日(GD 7)

~19日(GD 19)に強制経口投与した。対照群として,交配した雌6匹に媒体1.25%Avicel®を5 mL/kg 投与した。母動物の生存,臨床観察,体重,摂餌量,剖検,GD29での帝王切開時の母動物の子宮 内容物及び胎児の観察,胎児の肉眼的外形検査によって評価を実施した。

100 mg/kg/日以下の用量では,薬物に関連した変化は母動物にも胎児にもみられなかった。200

mg/kg/日では薬物に関連した母動物毒性がみられ,それは投与期間及び投与期間後の体重増加量

及び摂餌量の低下であった。200 mg/kg/日の胎児には,薬物に関連した所見として胎児体重の低下,

GD 28 における 1 匹の母動物における流産がみられた。したがって,サキサグリプチンは 200

mg/kg/日において母動物及び胎児発生に毒性を示したが,100 mg/kg/日以下の用量では母動物にも

胎児にも影響を及ぼさなかった。

(2) ウサギ胚・胎児発生毒性試験(GLP適用)

(概要表2.6.7.13.2,報告書番号019471)

サキサグリプチン安息香酸塩を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,8,40,200 mg/kg/日の投 与量で,交配した雌のNZWウサギ(各群22匹)の妊娠7日(GD 7)~19日(GD 19)に強制経 口投与した。対照群として,交配した雌22匹に媒体1.25%Avicel®を4 mL/kg投与した。母動物の 生存,臨床観察,体重,摂餌量,剖検,GD29での帝王切開時の母動物の子宮内容物及び胎児の観 察,胎児の肉眼的外形,内臓,骨格検査によって評価を実施した。13日間(GD 7~19)の投与後 におけるサキサグリプチン及び BMS-510849 の血漿中濃度データは別のトキシコキネティクス試 験(第2.6.6.6.3.1項)で得た。

サキサグリプチン及びBMS-510849の全身暴露は,用量の増加に比例して増加した(第2.6.6.6.3.1 項)。BMS-510849の暴露(AUC)はサキサグリプチンの暴露の3~4倍であった。

サキサグリプチンはすべての用量で母動物に影響を及ぼしたが,胎児には 200 mg/kg/日の用量

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