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2.6.6 毒性試験の概要文

2.6.6.8 その他の毒性試験

2.6.6.8 その他の毒性試験

2.6.6.8.1 抗原性試験(GLP適用)

2.6.6.8.1.1 マウス局所リンパ節試験(Local lymph node assay)

(1) サキサグリプチンフリー体

(概要表2.6.7.17,報告書番号024151) サキサグリプチンフリー体をジメチルフォルマミド(媒体)に 0.01,0.1,1,5,10,25%の濃 度に溶解した。サキサグリプチン又は媒体をCBA/Caマウス(各群雌5匹)の耳介外側に,1日1 回(0.025 mL/耳介),3日間(Days 1,2,3)塗布した。Day 6に,トリチウム標識したチミジン 20 μCiを各マウスに尾静脈内投与した。5時間後,耳介リンパ節を各動物から採取し,取り込ま れたトリチウム標識チミジン量を測定した。

1%以上の濃度において,対照群の取り込み量の3倍以上の取り込み(増殖指数:3以上)が認 められた。したがって,このlocal lymph node assay評価条件下において,サキサグリプチンフリ ー体は皮膚感作性を示した。

(2) サキサグリプチン安息香酸塩

(概要表2.6.7.17,報告書番号025472)

サキサグリプチン安息香酸塩をジメチルフォルマミド(媒体)に0.5,1,2.5,5,10,25%の濃 度に溶解した。サキサグリプチン又は媒体をCBA/Caマウス(各群雌4匹)の耳介外側に,1日1 回(0.025 mL/耳介),3日間(Days 1,2,3)塗布した。Day 6に,トリチウム標識したチミジン 20 μCiを各マウスに尾静脈内投与した。5時間後,耳介リンパ節を各動物から採取し,同じ群の リンパ節はひとつにまとめて,取り込まれたトリチウム標識チミジン量を測定した。

0.5%以上の濃度において,対照群の取り込み量の 3 倍以上の取り込み(増殖指数:3 以上)が

認められた。したがって,このlocal lymph node assay評価条件下において,サキサグリプチン安 息香酸塩は皮膚感作性を示した。

2.6.6.8.2 免疫毒性試験(GLP適用,一部非適用)

DPP-4/CD26は,発現される細胞の種類及びその細胞内又は細胞外の条件に依存して様々な機能

を示す多機能蛋白である8。DPP-4/CD26は蛋白分解酵素,受容体,Tリンパ球共刺激蛋白であり,

接着及びアポトーシスに関与する8,9,10。今日まで,DPP-4/CD26のin vivo Tリンパ球共刺激系に おける酵素活性機能の役割を理解するための検討が行われてきている。それは,DPP-4/CD26には さまざまな結合特異性及び特徴があることから,DPP-4 酵素阻害剤の使用はリンパ球増殖の抑制 を含む望ましくない活性を示す可能性があり,その機能の評価は重要であると考えられているか らである。サキサグリプチンの反復投与試験において,必ずしも一貫したものではなく,すべて の動物種においてではないが,免疫系評価を盛り込み,免疫システムへの影響を観察した。更に,

サキサグリプチン投与がTリンパ球共刺激活性を抑制するか否かを調べるために,抗原及び細胞 分裂促進物質によるリンパ球増殖反応を指標として,ラットを用いた以下の試験を実施した。1)

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Crl:SDラットにおけるKLH抗原に対するTリンパ球依存性液性免疫反応を評価した1ヵ月免疫

毒性試験,2)細胞分裂促進物質による脾臓細胞の反応を含む多種免疫系項目を正常野生型(WT) とDPP-4欠損(-def)F344ラットで比較評価した1ヵ月経口投与探索試験。

2.6.6.8.2.1 ラット1ヵ月経口投与T細胞依存性抗体反応試験(GLP適用)

(概要表2.6.7.17,報告書番号019455)

サキサグリプチンのkeyhole limpet hemocyanin (KLH,スカシガイヘモシアニン)に対する液 性免疫反応への影響を評価した。サキサグリプチン安息香酸塩を 1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸 濁し,10,50,200 mg/kg/日の投与量で1日1回,各群雌雄10匹のCrl:SDラットに経口投与した。

雌雄各10匹からなる対照群には,媒体1.25%Avicel®を他の群と同量(10 mL/kg)投与した。陽性 対照として,デキサメサゾンを5 mg/kgで9日間(1 mgのKLHを投与する3日前から開始)1日 1回経口投与した。すべてのラットにKLHをDay 23に投与した。KLHの投与後6日目に,血清 中のKLH特異的抗体をELISA法で定量した。更に,臨床観察,体重変化,血液学,血清生化学,

フローサイトメーターを用いた脾臓リンパ球表現系分類(フェノタイピング),剖検,組織学的 検査も評価した。

10 mg/kg/日において,サキサグリプチン投与に関連した影響はみられなかった。

50及び200 mg/kg/日では,用量に依存した脾臓のリンパ性過形成がみられた。200 mg/kg/日では,

更に軽度な体重低下(雄),軽度な血小板数減少,脾臓重量増加,雌の胸腺重量低下,下顎リン パ節サイズの増大がみられた。200 mg/kg/日の肉眼的リンパ性変化は組織学的に,脾臓,下顎及び 腸間膜リンパ節のリンパ性過形成,雌において下顎リンパ節の形質細胞過形成及び低頻度な胸腺 リンパ性枯渇として認められた。リンパ性過形成は特定の細胞の種類や特定の領域に限定される ものではなかった。200 mg/kg/日の雌1例が,リンパ節,脾臓及び唾液腺の亜急性炎症並びに胸腺 リンパ性枯渇を伴う細菌性敗血症を示した。別の雌1例では,主に好中球数及びリンパ球数の減 少(それぞれ 16%及び40%)に起因する白血球数の著明な減少(38%)並びに赤血球数の著明な 減少(31%),胸腺リンパ性枯渇がみられた。いずれの用量においても,CD3(汎T細胞),CD4+CD8

-(ヘルパーT細胞),CD4-CD8+(キラーT細胞),CD45RA(B細胞)を発現する脾臓リンパ球 数,並びにKLH抗原に対するT細胞依存性反応に意味のある薬物関連変化はみられなかった。

結論として,サキサグリプチンは検討した用量において, KLHに対するラットの T細胞依存 性液性免疫反応に悪影響を及ぼさなかった。主としてみられた形態学的所見は50及び200 mg/kg/

日におけるリンパ性過形成であった。

2.6.6.8.2.2 ラット1週間経口投与用量設定毒性試験(GLP非適用)

(概要表2.6.7.17,報告書番号020847) 次項に記載した探索試験(報告書番号020908)の用量設定のために,Fisher 344 (F344)ラッ トの2 系統を用いてサキサグリプチンの耐性及び暴露を評価した。サキサグリプチン安息香酸塩 を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,40,200,600 mg/kg/日の投与量で,各群5匹の野生型(WT) 雌F344ラット(F344/Crl系),及び各群5匹のDPP-4欠損(DPP-4-def)雌F344ラット(F344/DuCrj 系)に経口投与した。各系統の対照群には,媒体1.25%Avicel®を他の群と同量(10 mL/kg)投与

した。Day 7における全身暴露及び血漿DPP-4活性,生存,臨床観察,体重,摂餌量,剖検,病

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理組織学的検査(脾臓,胸腺,リンパ節,肝臓)で評価を行い,更に,脾臓リンパ球フェノタイ

プ,ex vivo脾臓細胞増殖及びサイトカイン産生を含む免疫学的項目の探索的評価も実施した。

サキサグリプチン及びBMS-510849の全身暴露(AUC)は,40~200 mg/kg/日はほぼ用量に比例 して増加したが,200~600 mg/kg/日は用量比よりも大きく増加した。サキサグリプチン及び

BMS-510849の全身暴露に,すべての用量においてWTとDPP-4-defラット間で明らかな差はみら

れず,両系統の F344ラットの暴露パラメーターはHarlan Sprague Dawley系ラットにおいて200

mg/kg/日以下の用量で以前認められた値とよく一致していた。サキサグリプチン投与ラットにお

いて,WTとDPP-4-defラットで同様のDPP-4阻害が観察された。

いずれの系統のラットも,臨床的にサキサグリプチンによる著明な毒性を示さなかった。脾臓 のT,B,NK細胞集団のフローサイトメトリック評価,脾臓細胞増殖及びサイトカイン放出の分 析では,薬物に関連した変化も系統による違いも認められなかった。

要約すると,WT及びDPP-4-defの両系統ラットとも,600 mg/kg/日までの用量かつ同程度の暴 露において,サキサグリプチンに十分耐えた。

2.6.6.8.2.3 ラット1ヵ月経口投与探索毒性試験(GLP非適用)

(概要表2.6.7.17,報告書番号020908)

サキサグリプチンがT細胞共刺激活性を抑制するか否かを調査した。サキサグリプチン安息香 酸塩を1.25%Avicel®溶液(媒体)に懸濁し,200,400 mg/kg/日の投与量で,各群8匹のWT雌F344 ラット(F344/Crl系),及び各群8匹のDPP-4-def雌F344ラット(F344/DuCrj系)に経口投与し た。各系統の対照群には,媒体1.25%Avicel®を他の群と同量(10 mL/kg)投与した。Day 1及び 14における全身暴露及び血漿DPP-4活性測定,生存,臨床観察,体重,摂餌量,眼科学的及び生 理学的(神経学的及び呼吸検査を含む)検査,臨床病理,剖検,限定された病理組織学的検査(脾 臓,胸腺,リンパ節,肝臓)で評価を行い,更に,脾臓リンパ球フェノタイプ,血清免疫グロブ リン(Ig)濃度,Tリンパ球分裂促進物質(Concanavalin A)又は,T及びBリンパ球分裂促進物 質(pokeweed)による刺激後のex vivo脾臓細胞増殖及びサイトカイン産生の評価を実施した。

サキサグリプチン及びBMS-510849のF344ラットにおける全身暴露(Cmax及びAUC)は,ほ ぼ用量に比例して増加し,WTとDPP-4-def間で明らかな差は無く,反復投与による増加もみられ なかった。更に,両系統のF344ラットの暴露はSDラットにおいて以前認められた値とよく一致 していた。血漿DPP-4阻害(Emax及びAUEC値において)の程度及び持続時間は,Day 14のAUEC

値がDPP-4-defラットで予期されない高値であった以外,用量間及び系統間で同様であった。

試験期間中に死亡はみられなかった。全体的に,薬物に関連した変化はWTとDPP-4-def F344 ラット間で実質的な差は無く,SDラットで以前に報告されたものと同様であった。WTラットの

400 mg/kg/日では体重及び摂餌量の低下が認められた。200及び400 mg/kg/日では,両系統におい

て脾臓重量の増加及びリンパ節におけるリンパ性過形成という用量依存性のリンパ性変化がみら れた。更に,ごく軽度な脾臓髄外造血に関連した脾臓サイズの増大(DPP-4-def F344ラットのみ),

ごく軽度から中等度の胸腺皮質リンパ球枯渇に関連した胸腺重量の低下が 400 mg/kg/日でみられ た。

両系統において,脾臓CD3-CD161+ NK細胞数の用量に依存しない減少が,DPP-4-defラットの

400 mg/kg/日ではCD3+ Tリンパ球数の増加がみられた。他のリンパ球フェノタイプ及びCD25活

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