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環境管理に対するアプローチ

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2-1 環境管理(大気・水)の目的

大気汚染や水質汚濁は、ひとたび顕在化すると対策には多大な費用と年月を要する。また、対 策を講じても完全な回復は困難であることから、汚染を防ぎ「持続可能な開発」を実現するために、

環境管理の推進は重要な課題である。一方、多くの開発途上国では、人口爆発、工業化などの産 業構造の変化、そして、急激な都市化によって環境問題が深刻化しているが、課題に取り組むべ き公的機関が脆弱で、住民、企業、研究機関などを含む社会全体の成熟度も低い。

開発途上国に対する環境管理に係る協力の観点からみると、環境管理全般の目的は、「人間の 経済・社会システムと環境の間の相互作用を適切に管理し、環境資源の保護と利用のバランスを 保つことで、持続可能な社会の実現を目指す」ことである。その中で、より具体的には、現在生じて いる、あるいは今後生じることが予想される大気環境あるいは水環境の保護と利用のアンバランス、

つまり環境問題を適切に把握、分析、予測し、対策を立て、それを確実に実行していくというプロセ スを確立し、それを維持していくことにより、開発と環境を持続的に両立させていくことである。

経済・社会活動と密接に関連する環境管理において、開発途上国が、こうした一連のプロセスを 持続的に展開するには、「第1章

1 - 3 」

で指摘した環境管理の課題に応えうる能力向上が不可欠と なる。先進諸国は、公害克服経験によって得た知見をもとに、開発途上国に知識を伝えるとともに、

共に対応を考えることで、開発途上国自身の環境問題への対処能力を強化し、公害問題を解決、

予防するとともに、地球規模の環境問題に対して、先進国が率先して取り組みながら開発途上国 の参加を支援することが求められており、当該分野の協力意義はきわめて高い。「第1章

1 - 4 」

で 概観した国際的動向や「第1章

1 - 5

我が国の援助動向」で述べた環境分野の重視や「人間の安全 保障」という視点からも協力が望まれる分野である。

開発途上国では、年間

65

万人が大気汚染に起因する疾患により死亡し29、年間

160

万人の

5

歳未満乳幼児が、安全でない水および非衛生な環境に起因し死亡しているといわれている30。大 気汚染、水質汚濁による悪影響は、社会的弱者ほど深刻なものであり、環境管理に係る協力を通 じて、汚染を抑制することは、地域住民の生命及び人間の尊厳の保障(「人間の安全保障」)の基 本条件を整えることに他ならない。

2-2 環境管理の枠組み

上述の目的を実現するためには、環境資源の保護と利用のバランスを保つための政策、環境基 準や排出規制の設定などの法制度整備、対策の立案・実行、モニタリング、分析、そしてその結果

29 Id. WHO (2002)

30 Id. WHO/UNICEF (2006)

に基づく政策、対策の改善・強化、といった取り組みが必要である。こうした取り組みは、中央政府、

地方政府といった「行政」が中心になって実行していくべきものであるが、大気汚染、水質汚濁とい った環境問題は、人間の社会活動全般と密接な関係があり、この仕組みを適切に維持、管理し、

実効あるものにしていくためには、「企業」の取り組み、「市民」の参加、そして大学などの「研究機 関」からの科学的知見の提供、といった社会の他のアクターとの協働が不可欠である。

具体的に、各主体が環境管理で果たすべき役割や取り組みは次のようになる。

まず、「行政」に関しては、第一に、環境管理に関係する省庁が、それぞれの権限と責務を適切 に果たすことを確保する必要がある。このための調整メカニズムを中央政府あるいは地方政府にお いて構築し、活用することが望まれる。第二に、環境管理課題への取り組みに必要となる環境管理 計画(行政区域全域を対象とした計画、ホットスポットに的を絞った計画、実効性に重点を置いた 対策プログラムなど)の策定や、計画の策定に必要となる調査の企画と実施、計画の重要な要素 である対策手法の検討、さらに対策の持続性を確保するための環境管理メカニズムの構築などを 検討することが求められる。環境管理計画は「第1章

1 - 1 」の

環境管理の定義にあるように、人間の 経済社会システムと環境の「負荷」と「反応」の相互作用に対する深い解析・考察に基づいたもので なくてはならず、この点で大学、研究機関などによる環境科学技術の支援が不可欠であり、行政が これらの環境科学技術に取り組む組織、団体の活用を意識的にはからなければならない。これは 計画策定のための調査の企画と実施、さらには対策の検討の際にもいえることである。第三に、

往々にして加害者となる企業、被害者となる市民の参加を確保し、バランスのとれた環境の保全と 活用が計画に組み込まれ、実施されるよう適切なメカニズムを構築することも行政に求められる。

「企業」に関しては、規制に対応した汚染物質の排出抑制のみでなく、経済活動のメインアクタ ーとして、合理的な生産や環境マネジメントの導入など、近代化への不断の努力の中で環境管理 に取り組むことが求められる。さらに、このような企業の努力が市場で評価され、当該企業の競争力 の強化につながることが望まれるが、この点で、行政が市場と企業の環境管理努力を橋渡しするこ とが望まれる(

ISO14001

や企業の環境パフォーマンスの

Rating

はこの例である。また、中小企業

のための

ISO14001

の検討も行われている)。このように、公害対策に加え、環境管理の視点で企

業が環境への負荷を低減する取り組みが必要となる。

また、企業は汚染者であるのみならず、コンサルタント企業や公害防止装置の製造業者などのよ うに、環境管理に関する調査、計画策定などのサービスや、汚染対策に必要な技術や施設・機材 を提供する役割をも担っている。

「市民」に関しては、環境汚染の影響を受けるとともに自らの行動や消費を通じた環境負荷の発 生者であるため、汚染の監視者・告発者、企業の環境パフォーマンスの監視者、市場での環境行 動者(環境パフォーマンスのよい企業の製品の購入など)、対策の立案・提案者などの環境管理へ の多様な貢献を担う(行政の支援と参加のメカニズムが相まって効果を上げる)ことが期待される。

最後に、「研究機関」は、環境管理の検討(具体的には、大気・水の汚染などの対策、環境管理 計画の策定・調査・対策の検討)に不可欠な、社会・経済活動と環境との相互作用を、科学的客観 的に把握し、対策に必要な科学技術を提供する役割を担っている。なお、研究機関には大学や企

業の研究所、環境情報を提供するコンサルタント企業などを含む。

以上の各主体の役割を十分に引き出すため、開発戦略目標1として、「行政、企業、市民、大学等研 究機関の協力による環境管理対処能力の向上」を掲げる。なお、

JICA

は政府系援助機関として、相手 国政府の環境行政支援のエントリーポイントとして、

4

者の能力向上をはかることが求められる。

出典:環境管理タスク作成

図 2-1 4者の相互関係

課題の解決には、各主体の能力を動員し、大気質、水質のそれぞれについて、事象に応じた対 策が企画され、実施促進されることが必要となる。大気質に係る諸課題は、①工場や交通などを 汚染源とし都市単位で激甚な被害をもたらすローカルな大気汚染、②酸性雨、黄砂、残留 性有機農薬のような汚染物質の広域拡散によって、国境をまたぐ越境汚染、③温室効果ガ ス(

GHGs

)やオゾン層の破壊などの地球規模の問題と、3つの空間的広がりで、事象を類 型化することができる。また、水質に係る諸課題は、①河川、②湖沼、③地下水、④沿岸海域

(特に閉鎖性海域)の

4

つの水域で、事象を大別することが可能である。そこで、開発戦略目標

2

と して、「空間スケールに応じた大気質に係る環境管理の実施促進」、開発戦略目標

3

として、「対 象水域に応じた水質に係る環境管理の実施促進」を掲げる。

開発戦略目標1は環境管理全般に共通する関係主体の対処能力強化のための目標設定を行 っており、開発戦略目標

2

及び

3

では、事象別にみた大気質・水質環境管理の目標を示している。

具体的な取り組みのためには、まず開発戦略目標

2

あるいは

3

を参照しつつ、対応すべき具体的 な事象を把握し、その事象に応じた対応方策を計画・実施するために、開発戦略目標

1

から関連 する各主体の取り組みを同定し、その能力強化を行っていくことになる。

大学 大 学等 等 研究 研 究機 機関 関

企 企 業 業

市 市 民 民

行 政 政

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